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「つれづれなるマンガ感想文2001」12月後半
「つれづれなるマンガ感想文」1月後半
一気に下まで行きたい
同名のゲームのマンガ化。たぶん電撃大王連載。あらすじについては「こみっくパーティー」公式サイトを参照。
本作では主人公・和樹は大学生、美大に入れず自分の表現の場を探している青年として描かれている。話の進みはアニメ版より遅く、まだ女の子キャラも全員登場していない(あるいは登場キャラを絞っているのか)。
猪名川由宇とは、アニメ版よりはラブラブに近い関係になっている。全体的にどちらかというとラブコメ色が強い。
たぶん成年コミック。短編集。絵柄は藤原カムイとひさうちみちおと昔の後藤寿庵を足して3で割ったような感じ。内容は意味らしい意味はほとんどなく、作者の趣味らしいバイクや兵器を女の子が扱ったり。あとオナニーしたりする。1話は10ページくらいしかない。
今20歳くらいの人が読んだらこれをどう思うだろうか。まったく理解できないか、それとも最近ブッ壊れた物語は多いから案外入っていけるか。80年代の雰囲気を知るものには非常に懐かしいテイストの作品群ではある。
作者名で検索したら、どうも本人らしいHPを見つけたんだが、今は絵柄がまっったく違っていた。同じ人間とは思えないほどに(まあそれもよくあることだが)。
読みきり作品、「エム 完全版」桂正和が載っていたのでひさしぶりに購入。マンガオールマン96年4月号に掲載されたものの再掲載らしい。
今頃、12月頃出た雑誌が登場。当然、もう売ってません。いいの! 私のメモ書きだから!(開き直り)
「バイオレンスジャック 戦国魔人伝」永井豪は、現代の暴走族が戦国時代にタイムスリップして戦う話。「関東地獄地震」とか、なんかあまり関係がない。早くも豪ちゃんの最近作「戦群」のキャラクターがモデルとなっているキャラが出ている(「ジャック」の趣向の定番ですな)。
複雑な意味でのマッタリ具合がどうしようもなくて、なんかもーどう評していいかわからない作品なんだけど、トキワ荘世代とそのすぐ下くらいの作家がほとんど「マッタリ状態」に突入してしまっている昨今、まだマシなんじゃないかと思います。
ラストは尻切れトンボ。まだ続くのか。
「キリエ 〜吸血聖女〜」杉村麦太は、第4話。西部劇時代の吸血鬼の話。戦闘シーンのかけひきなど、けっこう面白い。絵もかわいいところはかわいいし、迫力を出すところは出している。
エッチ寄りグラビア&情報雑誌。「パチ漫」が終了したのでしばらく読んでいなかったが、先月号を見たら「ぼくとメス犬」野田ゆうじという連載が始まっていた。今月で連載第4回。
「少年少女」福島聡は、毎回さまざまな時代・場所での少年少女を描く連作読みきりらしい。前回は、田舎の村で同級生を誤って突き飛ばし殺してしまった女の子と、死んだ同級生の少年の弟の話で、絵柄がわりとかわいらしいわりには昔の「ガロ」とかに載ってそうなドロッとした作風の人だなあという印象を受けた。
それと、何月号だったか忘れたが(すいません)「幽玄漫玉日記」桜玉吉で「定食屋に入ったら、貧乏な親子が一人前だけ注文するのを見て客の女二人が冷笑。店内のテレビでやっていた『街頭で女の子にキャベツの千切りをさせてできないのを笑う』テレビを見てそれも冷笑、そして自分たちの食べていた料理のキャベツの千切りを残して去っていった、ということに憤りを感じる」というエピソードは実に素晴らしいと思った。
あと、テクノ混じり(そのものではない)のDJマンガとして「LAZREZ」作:TKD+画:竹谷州史に注目している。いまさらですが。
読みきり、「大人になれば……」鈴木マサカズ。30歳で童貞の男が、苦労したあげくバイト先の女の子を部屋に呼んでHしようともくろむが……という話。要するに「ダメ人間」系の話だが、物語終盤の、部屋にやってきた女の子のセリフが実にきいている。しかし、逆に言えばすべての説明をこの女の子が担っているような気もしてしまう。主人公の、他人と違う決定的な「ズレ」がもっと引き立っていればいいのに、と思った。
イキナリかなり前の雑誌で申し訳ない。でも、コレは私のメモ書きだから。
「カネヒラデスカ?」金平守人が異様に面白かった。アヤシゲな科学防衛隊NASUに入隊した女の子を主人公にしたギャグものなんだが、秘密基地のディティールが実にすばらしい。こういうの、企画段階ではありがちとか思われるかもしんないけど、技量がすべてだからなー。技量はすべてを凌駕するなあ。
ヤングマガジン連載。頭に矢が貫通している女の子・鳥井あすみと、その「矢」ゆえに孤立しがちな彼女を友人として見守る同級生・山田料詩の物語。
特別企画として、モデルの女の子があすみを演じた写真マンガ「生(ナマ)射矢ガール」を収録。常々、ヤングマガジンの「マンガの実写化企画」への情熱に不思議な感覚を抱いていたのだが、今回もまたそういうのをやった、という感じ。まああすみ役の子がかわいいからいいか。
「もし、1冊も売れなかったとしても、おれは後悔しない」
ええと、確かテレビ放送して、その後ビデオとDVDになった、ゲームを原作としたアニメ。ゲームは、同人誌をつくったり女の子と仲良くなったりという恋愛シミュレーションだと思うが、すいません、やってません。
毎日を漠然と過ごしている高校生・千堂和樹は、幼稚園時代からの親友・久品仏大志にいきなり同人誌即売会へ連れて行かれ、一緒に同人誌をつくろうと持ちかけられる。大阪から転校してきた同人少女・猪名川由宇の協力もあり、その気になる和樹。中学からの腐れ縁で和樹のことを密かに好いている高瀬瑞希は、自分にまったく興味がない同人界に引き込まれていく和樹がなんとなく面白くない。
今年の感想第一弾がアニメになろうとは、自分でも思わなかった……。「オタクアミーゴス」のライブでオススメ作品として紹介されており、興味をもって全7巻のレンタルビデオを見た。
今回、この「マンガつれづれ」でアニメ作品である本作を紹介するのは、本作が同人誌に対する非常に優れた批評になっているからだ。
たとえば、「同人誌とは何か?」を考えさせるキャラクターとしての女の子たちの配置がいい。同人誌嫌いの瑞希、そこそこ売れてるアニパロ作家の由宇、大手サークルの大庭詠美、同人誌も扱う印刷屋の娘・塚本千紗、あまり売れないが地味にいい作品を描き続ける長谷部彩、マンガは描けないがコスプレ好きの芳賀玲子、そして同人イベント「こみっくパーティ」の古参スタッフ牧村 南などなど。
「何のために描くのか」、「なぜイベントに参加するのか」などの問いも作中で投げかけられ、答えが出されていく。理想論だという人もあるだろうが、ひとまずどんな分野の同人誌でも、それに関わっている人にとっての一般論を導き出そうとする描き方には好感を覚える。
問いを「同人誌とは何か」に絞ったことで、「イベントという場の楽しさ」という、通常マンガ執筆においては考慮の範囲外とされていたことに言及されているし、ドラマにしやすい「売り上げ倍増計画」みたいな部分から離れたことで、主人公のモチベーションがすごくはっきり描き出されることになった。
中盤、ラブコメ的小休止として挿入された和樹(同人誌が売れなくてへこんでいる)と瑞希が海に行くエピソードは、いわば「あしたのジョー」における「敗れて彷徨するジョー」の部分だし、同人誌とはまったく関係ない学園祭のエピソードは、「同人誌づくり」をものづくりとイベントづくりにまで一般化することに成功。
いったん挫折した和樹が、再び「同人誌」をつくることを決意するのがクライマックス。ここで女性キャラクターたちがさまざまな役割を担っていて、たとえば美少女がゾロゾロ出てきてなぜか全員主人公に惚れている、といったような狂ったシチュエーションではない、落ち着いたドラマ展開が楽しめる。
最終回のラストシーンに、本作の「同人誌とは何か」という答えは集約されていると思う。繰り返すが、それをきれいごとと言うはたやすい。だがここから出発しなければ、「マンガ」単体のことはともかく、「同人誌」について理解することはむずかしいのじゃないかと思う。
(02.0103)
・「こみっくパーティー」(1) 犬威赤彦(2001、メディアワークス)
・「青春ボタン寺かけわすれ」 平嶋製作所(1986、松文館)
・「週刊ヤングジャンプ」6+7号(2001、集英社)
・「別冊ヤングジャンプ」第14弾 週刊ヤングジャンプ2001年12月10日号増刊(2001、集英社)
・「週刊少年チャンピオン」6+7号(2001、秋田書店)
・「ウォー! B組」マガジン・ウォー!2月号増刊(2001、マガジンマガジン)
・「コミックビーム」1月号(2001、エンターブレイン)
・「コミックビーム」12月号(2001、エンターブレイン)
・「コミックビーム」7月号(2001、エンターブレイン)
・「すべてに射矢(いや)ガール」(3) ロクニシコージ(2001、講談社)
【アニメ】・「こみっくパーティー」(2001、ケイエスエス)
・「こみっくパーティー」(1) 犬威赤彦(2001、メディアワークス)
最初の即売会で50部のうち41部販売というから、アニメ版和樹より優秀だ(笑)。同人の描写については、和樹がすでに自作を描き上げてから創作同人誌を読んで「アニパロと違う魅力がある」と衝撃を受けたりといったナゾの矛盾はあるが、久品仏の「上を見るでなく下を見るでなくまっすぐに前を見ろ(大意)」というマンガ指南にはなかなか含蓄がある。
ちょっとした描きこみに平野耕太風味を感じる。作者がパンクスファンというのが面白い。
(02.0114)
・「青春ボタン寺かけわすれ」 平嶋製作所(1986、松文館)
当時、美少女と自分のシュミ(SFとか特撮とかミリタリーとか)を半ば強引に結びつけ、なおかつヤマなしオチなしイミなし、というようなマンガがマイナーながらあったと記憶している。美少女コミック誌に短編として、あるいは学漫の会誌にだれかがシュミでポツリと、描いたりしていた。本作はその流れに位置する(と思う)。
(02.0114)
・「週刊ヤングジャンプ」6+7号(2001、集英社)
松田は睦月を好きになり、告白した。しかし彼女は、「SEXしないなら彼女になる」という。カタいのかオクテなのか、いつか絶対おとしてやると決心して付き合い始める松田だったが……という話。
想像よりずっとよくできていた。表題の「エム」は、睦月とできない松田が「M」じゃないか、というようなところから来ているが、睦月がセックスを拒否する理由をどこまでも逃げ水のようにアイマイに描いているのがいい。メジャー美少女作家がエッチを描くのは柳の下の土壌のナントカでイヤだ、と思って本作を描いたんじゃないかと思うのはうがちすぎか。
(02.0111)
・「別冊ヤングジャンプ」第14弾 週刊ヤングジャンプ2001年12月10日号増刊(2001、集英社)
「スモーク×スモーク」諌山朗、水穂しゅうしは、第9回YJ原作大賞新人賞受賞作。タバコが表現上の小道具になっているハードボイルド作品。
元警視庁のキャリア、今は私立探偵の五木健介が、あかぬけた美女からストーカーを追い払ってくれと頼まれる。しかしその「ストーカー」というのがその美女の故郷での幼なじみで……という話。
ネームが軽妙でイヤミがないし、たぶんドラマ「探偵物語」とかが好きなんだろうな〜と思わせつつ、しっかり自分の作品になっている。少しお涙ちょうだいに流れすぎた印象を個人的に感じるのだけど、まあこれはこれでいいのかもしれない。すぐに連作にできる作品だと思う。水穂しゅうしの絵も合ってる。
「メリー」亜太川ふみひろは、頭に羊の首が乗っている青年を描いた不条理4コマ。おもしろ。
「スーパーヒーロー僕」渡辺祥司、あだちつよしは、第1回MANGAグランプリネーム部門入賞作品。特撮ヒーローに憧れる少年・ピーハチの友達(女)フカダが連続殺人犯に捕まってしまう。携帯のメールで危機を知らせるフカダに、ヒーローバカのピーハチはどうするのか……!?
ネーム部門の賞を受賞しただけあって、非常に読みやすくかつ引き込まれる。あえてSF的な設定を使わないことが本作の面白味になっている。なんとなく大学の自主制作映画にありそうな、手づくりチックなプロットがいい。
「秘密と嘘と月明かり」加藤マユミは、36歳のさえない独身男が、デリヘルの女性に「両親が上京してくるので1日だけ彼女のフリをしてくれ」と頼み込む。
過去、1億万回繰り返されてきたパターンだが、この人、前作も別冊ヤンジャンで読んだけどプロットそのものに目新しさがあるわけではない。絵も美少女系だが特徴があるわけではないし。でもどこかジワッとした味わいがあってなんとなく読んでしまう、という感じ。器用ではないけれど着実に押してくるような印象の作品(おそらくヤンジャンの新人賞そのものが、そうした味の作品をセレクトしているのではないかと思う)。
「サーファーズ」HIDEは、MANGAグランプリ佳作受賞作。サーフィンに明け暮れていた青年たちも、社会に出ていろいろ面倒なことに行き当たらなければならなくなる。本作ではその青年たちになんの結論も出ていないんだけど、まあこういう作品もあっていいかな、と。バイクとかサーフィンものってのはそういうのなくていいような気がする。悪い意味ではなくて、なんつーか自然との交感はそれ自体意味があることだから。
「ブラボーフェスタ」菊嶋高志朗は、不条理4コマ。おもしろ。
(02.0111)
・「週刊少年チャンピオン」6+7号(2001、秋田書店)
「エイケン」松山せいじは、伝助がエッチな夢を見てどーたらこーたらというまあありがちな話だが、このアベレージを保てればこのまま「妙な面白いマンガ」として行けるんじゃないかと思う。「ロッリーン」っていう擬音がいいね。
「ななか6/17」八神健は、温泉に行って混浴でどーたらこーたらという話。表紙で人気投票の結果が伝えられているが、1位が17歳のななかってのに本気で驚いた。なんかねえ、マンガ/アニメ系のサイトとか見てると一億総ロリコンだって錯覚起こすんですよ。5位の五月が実にシラけた顔をしているのがおかしい。
「スクライド」黒田洋介、戸田泰成は、たぶんアニメとぜんぜん違う話なんですよね?(ちゃんと見てなかった) 自分がアニメを知ってればもっと楽しめるのになあ、と残念に思う。
(02.0110)
・「ウォー! B組」マガジン・ウォー!2月号増刊(2001、マガジンマガジン)
今までのあらすじは、「姉と二人暮らしをしているケンイチ。誕生日に姉からプレゼントされた犬・すずなは、どこから見ても全裸の人間の女の子。それでまあその女の子があんなことやこんなことをされてしまう」というもの。そういう展開を見ていくと、調教Hマンガですよねたぶん。
しかしだ。途中から読んだせいか、お話がスゴイことになってるんですよ。そのケンイチのお姉さんってのが、旧ロシア特殊部隊スペツツナズに襲われ、そいつを張り手一発で倒したりしてるんですよ。
それでそのときにケンイチは何してるかっていうと、友達の家に行ってすずなを調教してるんですよ。でもあくまでもケンイチは、まだすずなのことを犬だと思っている。どういうこと?
ということで、かなり続きが気になるんですけど。
(02.0110)
・「コミックビーム」1月号(2001、エンターブレイン)
今回は終戦後のドイツを舞台にしたトマスとカーチャの物語。で、わりと微笑ましい話ではあるんだが、最後にカーチャが初潮を迎えるシーン、ああいうのを書くところがやはりなんとなくドロッとした感じをあたえる理由なんだろうと思った。要するに、第一印象よりも人間の汗とか垢とか体液とか、そういうのを感じさせる作風なんだな。
「ももこの禁止生活」安永知澄は、漫画に関するWebページ「OHP」の過去日記によると昨年の10月号で「くそがき」という作品を描いた人と同一人物だと知ってビックリ。絵柄はまったく違うし、作劇法もなんとなく違う。「くそがき」は、小学生の少女と近所の店屋のオヤジの心の交流といったしみじみ系な話だった。
これに対し、本作は「ももこ」という少女が自分に自信を持つために余剰をどんどん削減していく生活へ突入する。テレビも本も、娯楽に関するものはすべて捨て、近所のキャベツを盗んで食う生活(バイトはいちおうやめない)。ももこはどんどん衰弱していき、周囲もけむたがってきて……というもの。
「生きる実感」とか「ヴァーチャルでない生活」を希求して結局失敗するという、なかなかせつない話だが、主人公・ももこのオバQみたいなデフォルメされた顔や、一大決心をしてエキセントリックなことをしているはずなのに、「あちら側」へ完全に行くことのない不思議に愛嬌のあるキャラクターが独特な味わいをつくっている。
(02.0106)
・「コミックビーム」12月号(2001、エンターブレイン)
「恋の門」羽生生純は最終回。途中から読んだんでよくわからなかったが、どうもマンガ家を目指す男女の恋愛ものだったらしい。
私は主人公とその恋人、それともう一人が投稿作品を描き始めたあたりから読み始めて、最初は独特な絵柄とむやみに「熱い感じ」に「何だろう?」ととまどいを感じたがだんだんやめられなくなり、かなり続きが気になる作品となっていた。先月号がクライマックスだと思うが、なかなか感動しましたよ。
最初から読んで、きちんと感想を書きたい作品。
「トニーの背中はよく曲がる」鮪オーケストラは、何というか不条理マンガというか何というかな作品だが、すいません、正直わからないっス……。「ボーボボ」はわかる気がするんだけどなあ。これはよくわからん。
(02.0106)
・「コミックビーム」7月号(2001、エンターブレイン)
(02.0105)
・「すべてに射矢(いや)ガール」(3) ロクニシコージ(2001、講談社)
引き続き、この年頃の女の子のむずかしさと、あすみ本人のむずかしさと、そして「矢」が刺さっているというむずかしさをなかなかに鋭く描いている。
個人的にはHEAD40 山田のコンプレックスが印象深い。実は山田が虫ぎらいだったことが発覚し、日頃頭に刺さった「矢」をコンプレックスのもととしているあすみが、はからずも「コンプレックスのある人間」を外部から見ることになるという話。ラストがドキッとするし、なんだか不思議な解放感がある。
それと、昔の読みきり「今、ニャン時ニャン分ニャン秒?」収録。
(02.0105)
【アニメ】・「こみっくパーティー」 監督: 須藤典彦(2001、ケイエスエス)
だから、以下の感想はアニメのみのものとなります。
しかし、もともと絵を描くことが好きな和樹は、即売会へ向けてマンガを描き始める……。
いわゆるギャルゲーを元にしてはいるが、恋愛の要素はほぼ和樹と瑞希の間柄のみに絞られており(はっきり言って、他の女の子キャラは全員男でも大丈夫な内容)、他はすべて主人公・和樹の同人誌における挫折とその復活に物語の重点が置かれている。
「売れてこそ正義」の詠美と、「売れることがすべてではない」由宇が犬猿の仲でいつもケンカしていたりする。アドバイザーとして売れセン同人誌のリサーチをしろしろという久品仏も、実は和樹の人間的成長を影で見守っている。悪役として毎回登場する悪い意味でのオタク二人が、作品の見る目だけはしっかりできているなど、なかなか奥が深い。
本作において特筆すべき点は二つある。
ひとつは和樹のやろうとしていることは「マンガ」ではなく「同人誌」であるという視点に絞ったこと、もうひとつは売り上げの拡大ではなく、あくまでも和樹自身の内省的な問題に絞ったことだ。
なおかつ絵も描かず口ばかり出している久品仏を文化祭実行委員長として描くことで、彼が「言うだけ番長」ではないことをさりげなく証明したりしている。
その間に、瑞希の和樹に対する気持ちの変化(より愛情が強まっていく)を描くことも忘れない。実にうまい展開となっている。
「(同人活動も、女の子とのあれこれも)こんなにうまく行くわけない」とつっこむのは後にして、まず「ひたって」もらいたい作品。
正直、和樹の同人誌が売れないシーンには泣けた。自分を思いだして(笑)。
「つれづれなるマンガ感想文2001」12月後半
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