◆ 1999年3月下旬 ◆
3/21〜31
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3/31(水)……ヨンガーツカムヒア
4月のお買い物予定。注目はなんといってもCOMIC CUE Vol.6。今回はどんな作品を見せてくれるのかが楽しみ。雑誌ではあと変玉と新マグナム増刊、MANGA EROTICSが楽しみ。変玉は、たしか前号の予告だと4月発売と書いてあったと思う。それから単行本ではもうすぎむらしんいち「HOTEL CALFORINIA」。元は講談社から出ていたのだが、全冊揃いで入手するのがとても難しい本だったのだ。KKベストセラーズ偉い! それからいよいよ藤原カムイ「福神町綺譚」も単行本化。
日 | タイトル | 作者 | 価格 | 出版社 |
1 | タプタプ▽みるく | 美女木ジャンクション | 819 | 一水社 |
2 | おまかせ!ピース電器店(12) | 能田達規 | 390 | 秋田書店 |
5 | Difference View | ナヲコ | | コアマガジン |
5 | 柔らかい肌(3) | 山田たけひこ | 486 | 小学館 |
5 | 同じ月を見ている(3) | 土田世紀 | 505 | 小学館 |
6 | 超・学校法人スタア學園(15) | すぎむらしんいち | 505 | 講談社 |
6 | Grass Breath(1) | 城倉浩司 | 505 | 講談社 |
6 | ギンザ小学校(1) | 地下沢中也 | 505 | 講談社 |
7 | チョコの歌(2) | 架月弥 | 505 | ソニー・マガジンズ |
8 | バロン・ゴング・バトル(7) | 田口雅之 | 390 | 秋田書店 |
8 | 雲男 | やまだないと | 933 | 祥伝社 |
9 | 恋人プレイ(2) | 玉置勉強 | 505 | 講談社 |
9 | SATELLITEぢゅにゃ(2) | サガノヘルマー | 505 | 講談社 |
9 | 0リー打越くん(1) | 桑原真也 | 505 | 講談社 |
10 | 零式 | | | |
10 | 進め!聖学電脳研究部 | 平野耕太 | | 新声社 |
15 | MANGA EROTICS | | | 太田出版 |
中 | 変玉 | | | |
中 | ぬるぬるパンツ(仮) | みかりん | 819 | 一水社 |
中 | バイエル〔なつびより〕 | やまだないと | 1100 | 太田出版 |
17 | 俺たちのフィールド外伝 | 村枝賢一 | 390 | 小学館 |
19 | 福神町綺譚(1) | 藤原カムイ | 505 | 集英社 |
19 | けだもの会社(1) | 唐沢なをき | 590 | 集英社 |
19 | 薔薇のほお | 岩館真理子 | 505 | 集英社 |
21 | ワッハマン(11)(完) | あさりよしとお | 429 | 講談社 |
22 | 1001Nights | 天野喜孝 | 600 | 角川文庫 |
22 | 蟻地獄・枯野の宿 | つげ義春 | 590 | 新潮文庫 |
23 | ショートカッツ(2) | 古屋兎丸 | 860 | 小学館 |
24 | 敷居の住人(2) | 志村貴子 | 620 | アスペクト |
24 | GIVEMEたまちゃん(上)(下) | 永野のりこ | 620 | アスペクト |
24 | レッツゴー武芸帖 | よしもとよしとも | 952 | 双葉社 |
25 | HOTEL CALFORINIA | すぎむらしんいち | 1700 | KKベストセラーズ |
26 | 新マグナム増刊 | | | 講談社 |
26 | COLORFUL萬福星 | | | ビブロス |
27 | ギャラリーフェイク(16) | 細野不二彦 | 505 | 小学館 |
27 | まちこSHINING(3)(完) | 藤野美奈子 | 505 | 小学館 |
27 | 宙舞(そらん)(1) | 作:小林信也+画:秋重学 | 505 | 小学館 |
28 | ただいま寄生中▽ | あさりよしとお | 505 | 白泉社 |
下 | COMIC CUE(6) | 手塚治虫先生をトリビュートした皆さん!! | 897 | イースト・プレス |
下 | アックス(8) | しりあがり寿、根本敬他 | 933 | 青林工藝舎 |
下 | ボーナス・トラック | 山田章博 | 1200 | 日本エディターズ |
【雑誌】週刊少年マガジン 4/14 No.18 講談社 B5平
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サンデーが中日ドラゴンズ「川上憲伸物語」で、マガジンは読売ジャイアンツ「高橋由伸物語」。絵はサンデーの奴のほうがうまいが、ヘンテコなノリはマガジンの奴のほうが面白い。キューバ人たちが「違えねえ」と哄笑するあたりはとくに。小学館はこの前中日ドラゴンズ特集をやっていたビッグコミックスピリッツといい、ドラゴンズを押しているんだろうか? 森川ジョージ「はじめの一歩」。ついにデンプシーロール発動だが、効くんだか効かないんだかはどうも定かでない。それにしてもマガジンはあんま読むとこないな。
【雑誌】週刊少年サンデー 4/14 No.18 小学館 B5平
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と思ってたら、今号はサンデーもイマイチ。ちょいと連載がマンネリ気味になりつつあるので、そろそろ入れ替えがあってもいい時期。曽田正人「め組の大吾」は、かなりダイナミックな方法で大吾が難を逃れる。このくらいやってくれると気持ちいい。
【単行本】「電脳炎」ver.1 ウィン版/マック版 小学館 新書判
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唐沢なをきページのほうに追加しておいたので、そちらを参照のこと。
3/30(火)……すぱいだあとちゅうりっぷ
最近どうも仕事やらWebページ作成がサクサク行かないのだが、その原因の一つは紛れもなくMicrosoft Plus!98のスパイダーソリティアであるとようやく受け容れ、ちょっと遠ざけることを決意する。スパイダーソリティアとはWindows標準添付のソリティアの1万倍くらい難しい一人カード遊びで、手ごわいだけに中毒性はソリティア以上に高い。普通のソリティアなら1ゲーム2分もあれば終わるが(ちなみに俺のソリティアの最高記録は71秒。Let's noteのトラックボールでも98秒を出したことがある)、スパイダーは試行錯誤しながらゲームを進めて行くので1ゲームにかなりの時間がかかるのだ(正確に計ったことがないのでどのくらいかかっているのかはよく分からない)。
遠ざけるといっても、スパイダー依存度が高くアンインストールまではふんぎれなかった俺は、スタートメニューの深めのところにスパイダーを配置することにした。その結果、効果はわりとてきめん。スタートメニューをたどっている間に「ハッ、いかんいかん」と我に返りプレイするのを見合わせられるのだ。今までスタートメニューの一番上の階層にあったため、気づくと立ち上げていて「せっかく立ち上げたんだから一回やるか」ってな感じになっていたのだ。
そんなわけで中毒症状からのリハビリは着々と進んでいる。これを読んでいる方々も、ああいう悪魔的ゲームにはハマらないよう、重々注意されたい。……とかいっているそばからエミュのゲームが山ほど入ったCD-Rを職場の同僚から入手してしまい、仕事などに差し支えそうな気配の俺だ。
ぢたま某の巻頭カラー「兄の匂い妹の匂い」。お互いが好きで好きでしょうがないけど隠している兄妹が、相手の体臭のついた服やら布団やらで興奮して自慰にふけっていて、そのうちに一線を越えてしまう……というお話。最初は残り香だけですれ違わせながらためていき、最後に一気になだれ込むというリズムの取り方がうまい。OKAMA「スクール」。下手すると一人よがりになってしまいがちで当たり外れがけっこうあるOKAMAだが、このシリーズはわりと単純で分かりやすくて好き。今回は美しいものの美しさに溺れていなければ生きていけない、繊細で脆い心を抱えた同級生蝸のお話。このシリーズにしては、閉じた感じでいつもより哀しげな雰囲気。まあたまにはこんなのもいいでしょ。
松本耳子「Double Love Attack」。キャラクターの顔つきは平ぺったいがわりとポップな絵柄。少し米倉けんごっぽさが入ってきたような。なんとなく気になる人。YUG「TWINWALK」は、漫画家を目指す少女が煮詰まっていたとき、自分の作品の主人公が原稿から抜け出してきて励ましてくれて……というお話。エロシーンはなし。やわらこうてあたたこうて、清潔感があってすごく気持ちの良い絵柄。いつもながら見ていてトロトロになってしまう。線は簡潔なのに、心地よいとこ心地よいとこをズバズバとついてくる。たまらんですばい。ポヨ=ナマステ「便所の恋」。女子便所に入って覗きを行うのを日課としている高校生男子が、とある女の子の放尿シーンを見て恋をする。彼の情報収集はトイレ覗きに止まらず日常生活にまで及ぶようになる。……とここまでの偏執狂的な主人公の行動が業が深くて好きだ。ラストのほうは少しヌルくなっていくのがちと残念。もっとぶち壊れたラストにするとSABE的な面白さがあったのになあと思わないでもない。
【雑誌】ヤングキングアワーズ 5月号 少年画報社 B5中
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どざむら「薄明かりの尺蛾」。邪馬台国あたりと思われる時代が舞台で、征服者に無理矢理純潔を奪われて囲われた巫女が、しだいに相手の男に依存していく様子を描いた作品。最初は男を拒んでいた古代の巫女の籠絡ぶりが妖しく色っぽくていい。それから佐野タカシ「うさぎちゃんでCue!!」。冒頭のサービスシーンが迫力あってなかなかいいなあと。乳がツヤツヤして張りがあるのがええ感じ。
【単行本】「ダイヤモンド」3巻 青山広美 小学館 B6
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ベテラン投手浜野との血沸き肉踊る対決が終わり、影武者四番打者種田は、さらに新たな次元を目指してバッティングピッチャーの山田と対決する。野球漫画としては、選手のフォームとかいくぶんぎこちない点はあるのだが、ココという一瞬でのカタルシスは抜群。飛んでくるボールを思いっ切りぶっ叩くさまは豪快で爽快。
【単行本】「月下の棋士」23巻 能條純一 小学館 B6
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A級リーグ、大和天空戦が決着。かなりマンネリ気味なのでちゃっちゃと先に進んでもらいたいところ。20巻以上もやるような作品じゃないと思うんだけどなあ。輝いているうちに終わらせてほしかった。
【単行本】「ムカデ戦旗」5巻 森秀樹 小学館 B6
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ストーリー等はオスマン参照のこと。武田家の没落と共に、金掘り衆も苦境を迎え変化を迫られる。これまで頭目ムカデの佐吉の良きパートナーとして付き従っていたてんも代替わりして、佐吉の周りは何かと騒がしい。その中で自分、そして金掘り衆のアイデンティティを求めて佐吉は思い悩む。
この巻は金掘り衆たちの立場も微妙になってきており苦しい展開。そのため、物語的なカタルシスはあまり得られない。緻密に描き込まれた堂々たる絵柄で地に足の着いた面白さは相変わらずだが、この巻は作者自身も金掘り衆の行く末をどうするか迷っていたような感じも受ける。
幼いころ慕っていた兄貴分の三雲氷介が起こした暴力事件によって廃部になった高校の野球部を、自らの力で復興させようとする少年・天野光一が主人公の野球漫画。ここまでは「SOMEDAY」の連載と重なっていたためか休載がちだったので、単行本でまとめて読んだほうが読みごたえはあると思う。とはいえ、原秀則らしく筋立てとしては非常に簡潔であるため、連載時にとびとびで読んでても分からなくなるということはなかったが。「やったろうじゃん!!」は最初は爽やかなところからスタートして暗い方向に進むという感じだったが、「青空」は最初から重苦しくスタートしだんだんと曙光が見えてくるという、まったく逆の展開。現在はヤクザまがいのことをしている氷介以外は、キャラクターがちょっと弱い感じもするのだが、まあ手堅く読める。最近「SOMEDAY」終了と共にスピリッツ本誌の連載も毎号掲載になったので盛り上がるのはこれからかと思う。
3/29(月)……モルヒネでお昼寝
会社宿泊モード突入。5月4日のコミティアで出る本用の原稿をまだ一文字も書いていないのだが、テーマが決まってないうえにこんな状態で果たして書けるのだろうか。うーん。詰むや詰まざるや。会社に泊まっているといいな〜と思うのは、Webページをアップロードするときの速度。専用線なのでホントにあっという間である。作るほうもこんなふうにサクサク進めばいいんだけどねえ。
【雑誌】ヤングマガジン 4/12 No.17 講談社 B5中
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恐ろしいことに巻頭が平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」である。さらに恐ろしいことに今回は2本立て。もしかして人気あるとか?まあ人気あるなしはどうでもいいけど。俺が楽しければいいんだし。で、今回は1本めがとくにパワフルだった。アゴなし運送が裏ビデオを配達した先が、以前出てきたバカ教師タキザワで、バカと人間のクズの果てしなく醜いやり取りが交わされる。ゲンさんの顔面パワーと口汚い罵り、そして執拗な責めが悪夢のように面白い。汚ねんだよ!!ペッ。
すぎむらしんいち「超・学校法人スタア學園」では、コキジたち体あたり朝練部の面々が豪快なハプニングで大人気に。これでもかと攻めてくる下らないギャグがたいへんに愉快。それからうれしかったのが、かたぎりわかな「しすたぁ・モルヒネ」がひさしぶりに掲載されたこと。おねえちゃんのテンションの高さは相変わらずで、近寄るとたいへんにあぶない人ぶりを存分に発揮。次の登場はいつになるのか。俺はいつもビンビンで待っている。馬場康士「ナイトロ」は今回で最終回。わりとアッサリ。「リザードキング」を見ちゃうとちょっと大人しすぎな感じはあり。一部で期待の新鋭、天野明「ぴっちゃん」が再登場。今回は前編。やたらに思い込みの激しい人たちが、どこかあさっての方向を見ながら奇矯な行動をするテンションの高い作風が好きなのだ。このシリーズは「少年スピン」よりかなり抑えめ。「少年スピン」を単行本化してほしいというのは、人類(=俺)の宿願だ。前川かずお「闘破蛇烈伝DEI48」。なんかへんなバケモノが出てきたと思ったら、レスリング無敗のチャンピオンにマングースのDNAをかけ合わせた生物兵器だったらしい。く〜、馬鹿馬鹿しい。ついでにうなぎに梅干しの遺伝子をかけ合わせたりするといいと思うぞ。あと破武男がガラスに穴を開けるシーンも注目だ。
【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 4/12 No.17 小学館 B5中
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能條純一「月下の棋士」を監修している河口俊彦が、名人戦に向けて谷川浩司にエールを送っている。単行本の巻末でいつも「月下棋人の譜」という文章を書いている人だが、この人の文章はけっこう好きだ。将棋界の人物たちについて、なんか分かった気になれるしかっこいい。一條裕子「2組のお友達。」は最終回。一條裕子らしいしずしずとした終わり方……とか思っていたら、最終ページの柱に4月22日発売の単行本で「お山の分校に老人たちがいた理由」が明かされるようなことがほのめかしてある。さすが一筋縄では行かない。伊藤潤二「うずまき」では、うずまきに呪われた町で、竜巻に乗っかって駆け回る「蝶族(バタフライ族)」が暴れ回る。なんだかどんどんダイナミックな展開になってきて圧巻である。吉野朔実が読み切りで登場。タイトルは「瞳子−俄か雨」。親離れ子離れできない母娘の思うところありの平凡な日常を描いたお話。綺麗で上品でそれなりに楽しいんだけど地味でもある。すごい面白いというほどでもなくまあそれなり。
【雑誌】週刊少年ジャンプ 4/12 No.18 集英社 B5平
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うすた京介の新連載「武士沢レシーブ」が巻頭カラーでスタート。ヒーローモノのテレビなどの研究を続けているが非常に弱っちい学園のヒーロー部。その部長の妹が学園に入学してきてヒーロー部に喝を入れようとするがなかなかうまく行かない。そこに非常に強っちいがやることは破天荒な男ヘルメット武士沢が現れ、いろいろとヒーロー部やら悪者的奴等をひっかき回す、という出だし。脈絡のないギャグをやっているわりには画面的になんとなく地味だが、力の抜けた楽しさがある。この人はギャグ系だけど、絵がわりとパサパサと淡白で、押しつけがましくないところがけっこう好き。女の子のキャラクターも清潔な感じで可愛いし。尾田栄一郎「ONE PIECE」。ダイナミックな展開で盛り上がっている。タメを作って一気に見開きで爆発させるリズムの作り方とか、パースを効かせた構図とか、きっちり計算して演出を積み上げて相乗効果でより面白くしているという感じ。少年漫画はロジックで描かれているというが、そのいい見本だと思う。仕掛けと仕掛けがキッチリ組み合わさって、思い通りの効果を生み出している。その計算にだまされまいぞとする人もいるかもしれないが、俺はあえてだまされてみる。楽しむためならいくらでもだまされてやる所存。
3/28(日)……土器片
PL法がどーだこーだという話が出てくると引き合いに出される、「電子レンジにネコを入れてはいけない」と書かなかったら訴えられたメーカーのエピソード。アレって以前は「アメリカではいかにもありそうなことだよね」という感じでけっこううのみにされていたことだが、最近になって「アレはPL法の説明のために例として作られた架空の話なんだよ」といわれるようになってきた。こうなると、「レンジネコは架空の話である」っていうのも、「まあ普通やんないよな」というわけでこれまた何の気なしにうのみにしてしまっている。
でも、レンジネコを否定する話にせよ肯定する話にせよ、よく考えてみるとどこが出どころなのかいまいちよく分からない。たぶん知り合いの人と話しているときにでも聞いたのだろう。レンジネコの話を聞いたときも何の気なしに信じていたし、否定されたときもとくに疑問も持たず「そうなんだ」と思った。でも、ひょっとしたらどこかのレンジでネコは死んでいたのかもしれない。しなかったと否定し去る材料を俺は持っていない。それなのに「なんとなく」疑問も持たず、確認もしないで信じ込んでしまっているわけだ。別にレンジネコが真実か嘘であるかはどうでもいいのだが、本当に信頼できるか分からない出どころの確かでない情報を、何の疑いもなく信じてしまうのは実は危険なんじゃないかとか思ったしだい。こういう「真実である」と思い込んでいるけれども実際につついてみるとあやふやな情報が、砂上の楼閣の材料になってしまうのだろう。
【単行本】「されどワタシの人生」 東陽片岡 青林工藝舎 A5
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当初の予定からずいぶん発行が遅れたが、期待に違わぬ、いや期待以上の出来。しみったれた絵柄と力の抜けたお話で、すかしっ屁のような、鼻汁のような世界を創出する。学歴だの情熱だの栄達だのとはまったく関係なさそうな底辺的環境から、実に気楽に楽天的に、世の中を見つめるその視点はなんともうらやましい。別に世界を変えようとするわけでもなく、斜めに見るわけでもない。人生これ暇つぶしって感じのスタンスは、これはこれですごくかっこいい。薄汚いアパートで二人で暮らす、キックボクシングをしているオヤジとその弟分やら、日がな一日鼻くそをこねくり回して遊んでいる男やら、なんとも素敵な町のヒマ人大集合である。力の抜けた絵柄ではあるけど、描き込みは異様に細かく、細部まできっちり描き込まれた画面の質感はなんだか股ぐらのように生暖かくて奇妙な居心地の良さがある。いやー、面白かった!
「蝶々のキス」でマニア筋の注目を一気に集めた片岡吉乃の最新刊。現在のいくえみ綾に近めの絵柄で、センシティブなお話を描く。で、今回の収録作品はコメディふうの作品が中心。「蝶々のキス」とはだいぶ雰囲気が違うためさほど期待はしていなかったのだが、読んでみるとけっこう面白かった。肩の力を抜いた軽やかなノリでスルリスルリとギャグを差し込みながら見せてくる。完成度が高くきっちりうまい。もうちょっと作品を頻繁に描いてくれるとうれしいけど、それでクオリティが落ちるようなら今のままでも全然構わない。
【単行本】「ディスコミュニケーション」13巻 植芝理一 講談社 B6
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一時期あんまり面白くなかったが、最近の煩悩爆発な展開はけっこうイケる。初期の硬質で不思議な雰囲気のころのが一番好きなのは今も変わらないが、今のは今のでまた面白い。この巻では最後に収録されている第76話「いつまでも」が非常に良かった。松笛が失踪している間に起きた、戸川と昔の彼・香坂とのやり取り。香坂との関係に完全な決着がつき、松笛が戻ってきてからのエピソードは、最終回にとっておいても良かったんじゃないかという感じ。そろそろ新しい物語、作品世界に挑戦してほしいところではあるが。いっちょ読切でも描いてくんないかなあ。
【単行本】「ドキドキ変丸ショウ」 町野変丸 イースト・プレス A5
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町野変丸ページのほうに追加しといたのでそっち参照。
3/27(土)……アイスとショコラ(略してアイコラ)
【雑誌】きみとぼく 5月号 ソニー・マガジンズ B5平
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藤原薫「おまえが世界をこわしたいなら」。作品全体に滅びの予感が漂い緊張感のある作風。現代に生きる吸血鬼たち(というかそうなってしまった人間たち)が、抑えられない血への欲望と、生きていくうえでの気持ちになんとか折り合いをつけようとするのだが、なかなかうまくは生きられない。絵もかなり切羽詰まった感じでお話とマッチしている。架月弥「チョコの歌」は今月から新展開。大好きな忍くんとともに、東京で芸能界を目指すためそういう学校に通うことに、という夢のような展開を迎えた圭都がその幸せに浸るというお話。圭都と忍の人目をまったくはばからない二人の世界っぷりが愉快。藤枝とおる「レンアイアレルギー」。クッキリとした描線でインパクトのある作品。お話もサッパリしてたり熱かったりでなかなか。
巻頭カラーはいくえみ綾「アイスクリームチョコレート」。ある日目が覚めたら、自分が片思いしている幼馴染みの男が好きな娘の顔に変わっていた女の子のお話。そして顔をとられた人間は存在そのものが消滅してしまうらしい……という設定でお話は始まる。綺麗な絵柄でスルスル読ませる見事なお手並み。よしまさこ「うてなの結婚」。軽くて肩の凝らない絵柄と楽しい雰囲気が好き。くらもちふさこ「天然コケッコー」。そよたちが村から一番近い、そよいわく「百貨店」、大沢いわく「毛の生えたスーパー」でお買い物するお話。本当にお買い物するだけなのだが、そよの虚栄心やら何やらを細かく描いてくる。うまいものだなあ。萩岩睦美「水玉模様のシンデレラ」は今回で第二部完。丸く収まった感じで良かった良かった。
【雑誌】コミッククリムゾン 5/1 No.7 創美社 B5平
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TONO「ダスクストーリィ」。霊が見えてしまう少年タクトだが、見えるということが必ずしもいいことではないという悩みを抱えていて、それに備えて死体写真などを見て心をきたえようとする。そして見えたものに無関心でいられるようにするが……。キラキラとした雰囲気に満ちた優しい絵柄とストーリーで毎度面白い。青木光恵「となりの芝生」は、クラスの中で浮いている人形作りが趣味の少女と話したくてうずうずしていた女の子の話。メールを出してみようとしてキャンセルしたが、なぜか不思議なことに相手にメールが届いてしまい、そこから友情が芽生える。なんてことない友情話ではあるのだが、楽しい雰囲気で面白かった。
津田雅美「彼氏彼女の事情」。今回は十波の恋愛話。前半の女の子がきゃいきゃいいうている楽しげなあたりが好き。あとはなかじ有紀「ビーナスは片想い」が、大学生の話なのに、中学生的なラブコメやってて楽しいな、という感じ。
【雑誌】コミックピンキィ 5月号 オークラ出版 B5中
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百済内創「ハッピーラッキーバースディ」。女の子の身体の描き方がむっちりしていて、仕上がりのきれいな絵柄でなかなか。深田拓士「愁」。人妻が今は医者をやっている昔の先輩の計略にハマって肉奴隷にされるというお話。連載4回めだが、ここまでずーっと一貫して責めっぱなし。泥臭くて濃厚なエロス。そろそろ奥さんも客をとらされるころかなあ。もりしげ「G4改」。3人の少女が誘拐され、一人だけが解放される。ところがその女の子は、残りの二人の家族から「ほかの二人を犠牲にして自分だけ助かろうとした」と責められ、学校ではイジメに遭い、さらにインターネットで監禁中に受けた凌辱の模様のムービーがバラまかれるという生き地獄を味わう。相変わらずまったく救いがない悪意バリバリの物語。すげー。舞登志郎。今回は原稿落ち謝罪スーパー読み切り「メジャーエロゲー原画デビューへの道」2ページのみ。下らなくて笑えるけど。ちなみに舞登志郎が原画をやっているゲームはスピカから6月下旬発売の「エンジェリーズン〜天使のいいわけ〜」というもの。
巻頭カラーは天竺浪人「IN TO THE MIRROR BLACK」。ハッキリした顔立ちで気も強い女の子と、とろくていじめられやすい容姿を持った女の子。まるっきり陰と陽の関係にある二人の女の子が、お互いを自分に必要なものとして離れられずに生きていく様を描いた作品。妖しい二人の心理が絡み合って物語が展開していくのは見事だけど、深さはいまいち足らんかな、って感じ。場面がコロコロ変わる構成は悪くないとは思うが読むテンポは多少乱れる。十羽織ましゅまろ「ABC」。家庭教師のおねーさんと、気が弱そうなメガネくんがエロエロに絡み合う。ダイナミックでパワフルなエロ描写がええ感じ。この人はギャグやらせてもエロやらせてもなかなかにうまい。西安「籠に住まう雛」。激漫初登場。相変わらず絵に艶があってたいへんうまい。エロもキッチリやってるし、実にソツがない。MARO「ABILITY」は、最近ちょっとトーンダウン気味だが今回のセリフはなかなか。「「気の強い女は尻の穴を責めるに限るな!!」とのこと。SEXジャイアント巳月竜司、相変わらず大馬鹿だ。
3/26(金)……鈍器到着
仕事から帰るとおうちになんだか宅急便が届いていた。荷物の包み紙はリブロのもの。で、差出人の名前を見てピーンと来た。アレが届いたのだ。アレとはフランス語で「行け」って意味だったっけ……いや、そうじゃなくて、そのブツは非常に重たいことで定評のある辞書、広辞苑(岩波書店)である。といってもタダの広辞苑ではない。なんと表紙に藤原カムイ氏のイラストが入っている特別なものなのだ。ウルトラジャンプで連載中の藤原カムイ「福神町綺譚」ファンの間で、岩波書店が行っている広辞苑の名入れサービスを利用して、福神町イラスト入り広辞苑を作ってしまおうという話になっていた。その計画は通称「K計画」(詳しくはこのページを参照。どんなイラストが入っているのかも見ることができる)。銀色で福神町イラストの入った広辞苑は、なんだか広辞苑っぽくない。心なしか重量も通常の10%減って感じである(見た目)。とりあえず持っていれば絶対何かに使うはず。
萩尾望都「残酷な神が支配する」。キャラクターたちをもうガッツンガッツンに追い込んでいてすごく息苦しい。この甘えを許さないギチギチの展開は本当にすごいと思う。濃厚で面白い。それからPFコミックスクール佳作受賞作、いのまたゆう子「家族」がけっこう良かった。両親が事故死して一戸建ての家に一人住まう男子高校生ユウ太のもとに、それまであんまり口をきいたことのない同じクラスの男・西川が転がり込んでくる。アニメ系オタクのユウ太と、不良系だけど意外に優しいところもある西川の奇妙な二人暮らしが始まる。それぞれにハードな家庭事情を抱えた二人が何やらほのぼのとした生活を送るさまを淡々と描く。落ち着いた雰囲気の絵柄と作品世界がマッチしていて、のんびりとした青春模様がとても楽しく描けている。竹宮恵子「平安浄瑠璃物語 秘色」。栄達の望み立たれた王子と下男の、肉欲に溺れる退廃的な逃避行の物語。濃厚で、怪しくなまめかしい描写が素晴らしい。
収録作品リストがコミックバーズのページに。スコラ営業停止により最終号となってしまうのか。そんなわけで何かと注目の号であるが、まだ業務停止が決まってなかったころに作られた本なので、ちょうどタイミング良く最終回だったほりのぶゆき「喜劇空想特撮温泉」以外は、物語は途中のまま。さてどうなるんだろう。ただ、個人的には作品の行く末はそんなに心配していない。バーズ掲載作品はむちゃくちゃヒキの強い作品ってあんまりなかったからだ。作:夢枕獏+画:岡野玲子「陰陽師」とかはどこで終わってもなんとかなるだろうし、またバーズが再建できなかったとしても引く手はあるんじゃないかと思う。冬目景「羊のうた」も今売れっ子だし、恩を売る意味も込めて引き受けたい雑誌は多いのでは。俺としては一番気になるのが作:夢枕獏+画:板垣恵介「餓狼伝」。中断した格闘モノをわざわざ引っ張ってこようとする雑誌があるとはいまいち考えにくい。しかも今回、物語は黒幕的な存在をほのめかしたところで終わってたりする。う〜ん、続きが気になる。でも、原作読めばいいのか。ともち「愛をあげよう」は今回かなりハッピーな展開だったので、このままでもいいかなとか思ってしまう。奥瀬サキ「FLOWERS」は表紙には載っているものの掲載されていないので注意。
なんか最終号になるかもしれないということを意識したコメントが並んでしまったが、読んでいる最中はそのことは頭の中から追い出していた。そういうことは読む前と読んだ後に考えれば十分。感傷もまた読書中は夾雑物。最後になろうがなるまいが、読んでいる最中はフラットな状態でいたい。
まあとにかく俺が心配してもどうにもならんので、編集部のスタッフがどう動くのか、また作品の移籍はあるのか、そこらへんのアナウンスを待つ。
【雑誌】ヤングアニマル 4/9 No.7 白泉社 B5中
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二宮ひかる「ナイーヴ」。幸せいっぱいのところ、なんだか怪しげな雲行き……とか思ったら、次号で最終回。全27話になるってことは単行本は3巻分だろうか。ちょうどいいボリュームって感じがする。1作品の冊数は、2〜3冊ってのが一番好きだ。竹内桜「特命高校生」が再登場。俺にはあんまりピンとこない作品だけど、竹内桜ファンの人はどうぞ。山口よしのぶ「名物!たびてつ友の会」。ほのぼの楽しくて、駅弁がおいしそう。てつな方々がうらやましくなる危険な漫画。馬場民雄「ご馳走さま!」は今回で短期集中連載ラスト。最後はまあそれなりにまとめてきた感じ。最初はあんまり面白くなくても、きちんと盛り上げてくる手際は週刊少年誌でもまれた底力を感じる。こいずみまり「コイズミ学習ブック」。今回は痴漢の話。俺は男だけど痴漢されたことがあるが(したことは残念なことにまだない)、あれはやられてみるとかなり怖いぞ。ちなみに男にやられた。高校生のころだからもう10年くらい前だけど。当時は色白、少しぽっちゃりした少年だったわけで、そういう方にはおいしそうだったのかもしれぬ。ちょっと気持ち良かったところがまた怖いのだ。逃げたけど、しばらくどよ〜んとイヤな気持ちになったのを覚えている。いや、女の人はたいへんですな。俺はその経験があるので、他人にはこんな怖いことはすまいと心に誓ったわけである。
次号ではSUEZENが登場予定。
【雑誌】漫画サンデーフォアマン 4/9 No.7 実業之日本社 B5中
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こちらは正真正銘休刊である。会社はなくならないけど、雑誌は確実になくなる。巻頭カラーはみやむー夫のナカタニD.「ガブリエルのおしえ」。カラーページはテラテラしすぎてていまいちだが、モノクロページは男も女もうまくてなかなか。オチはまあ下らないがそこそこ。カサギヒロシ「クマロボ」。当然最終回。クマロボの姿がなんだかのどかで愛敬があっていい。カサギヒロシ描く女の子もやはり色っぽいし。単行本になってほしいけど、8話しかないんじゃ無理かなあ。東陽片岡「東陽片岡裏町劇場」。ああ、もう志の低さがたまらない。社会の底辺に近いところで、何の取り柄もなく呑気に暮らすおっさんどもの姿が妙に愉快。
ではさらば!漫画サンデーフォアマン!
【雑誌】別冊ヤングジャンプ 5/1 集英社 B5平
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熊谷カズヒロ「サムライガン」が巻頭カラー。野暮ったい絵柄な部分もあるのだが、アクションシーンは派手でかっこいいし、女性キャラクターがけっこう色っぽいのもプラス点。単行本を買うかどうか悩むラインの作品。とかいってるときは買ったほうがいいんだよな。よし買おう。作:中山眞+画:七瀬あゆむ「琉球屋台三保先生」は、昔は医者を目指していたが現在は医食同源の立場から、沖縄料理の屋台を出している男・三保先生のお話。七瀬あゆむの描く女の子は、目がクリクリしててわりと好き。それから壬生ロビン「リィナと五平」がなかなか良かった。明治時代の小さな村に棲む五平という下男が、英国から来た異人の娘リィナと出会う。五平は村ではいいようにこき使われているが、絵を描くのが何より好きで至るところに木炭で絵を描きつけている。その絵にリィナは感動し、言葉は通じないながらも心を通い合わせる。その出逢いが彼らの人生を変えていく……というお話。荒削りだけどきっちり描き上げられた爽やかな画風と、それからポジティブなお話が良かった。
【雑誌】エクストラビージャン 4/30 集英社 B5中
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平松伸二「どす恋ジゴロ」。今回はちょっと大人しめな印象。下らないことはいつもどおり下らないのだけど。それから冬目景が読切で登場。タイトルは「サイレンの棲む海」。就職も決まってなくて現実逃避のために、海辺のひなびた町へ旅してきた男が、その土地の老舗旅館の娘に出会う。彼女もまた現実から逃れようとして男に近づくが……というお話。どうにもならぬ現状を不満に思いつつも、なんとなくそれを捨てられない無力感。やっぱり冬目景の現代青春モノはいいなあ。ひんやりとした空気の質感を感じる。それから新人の成田学「ユウジ」もわりと良かった。絵柄的にも話的にも、秋重学と似ていると思う。バイクに乗って旅をし、自分がカメラに収めるべきものがなんなのかを模索し続ける男ユウジの物語。まだ未熟なところはあるけど、爽快感のある作風。
3/25(木)……約束のイエー
【雑誌】週刊少年チャンピオン 4/8 No.18 秋田書店 B5平
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能田達規「おまかせ!ピース電器店」。今回は珍しく次回につづく。ケンタローが国際的な謀略に巻き込まれて、軍事政権によって拉致される。で、ピース一家が総力を挙げる……というお話。モモ子やら月影アイも交えてアクションしそうな感じで期待してしまう。芝田英行「悪魔博物館」。なんかこの人久しぶりに見たような感じ。相変わらず垢抜けない絵で怪奇モノを描いている。しばたはしばたでも「しば」の字が俺と同じ「芝」である人は珍しいというのもあって、ちょっと気になる作家さん。
【雑誌】別冊YOUNG YOU 1999SPRING 4/30 集英社 B5平
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目玉はなんといっても坂井久仁江「約束の家」最終回。一挙100ページである。父・雅樹とその恋人である男ダイゴローと共に3人で暮らしていた春佳が、「結婚を前提に」といって恋人を連れてくる。雅樹は大嫌いだった自分の父を思い起こさせるその恋人の姿を見て、結婚に反対するが……という展開。ボリュームたっぷりで非常に読みごたえがあったが、スッキリとした画面構成と作画もあってスルスルと気持ち良く読めた。〆も前向きで味わい深いいいラストだった。それからやっぱり絵がいい。女性キャラクターのクリクリとした瞳、気持ちのいい造形。満喫。そのほかでは巻頭カラー、池谷理香子「お願い大吉くん」が、サッパリした楽しさで目を惹いた。
【雑誌】ヤングジャンプ 4/8 No.17 集英社 B5中
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前回に引き続き、猿渡哲也「高校鉄拳伝タフ」がいい感じである。プロレスに賭ける男の意地を見せてくれる。とくにプロレス好きでない人間にも、その心意気は伝わる。高橋ツトム「ALIVE」。天周はなんかわりとアッサリ肝心なポイントに到達した感じ。次号で決定的な展開がありそうだが、さてどんなもんだろう。
岡田芽武「ニライカナイ」が巻頭カラーで新連載。沖縄文化の香りを漂わせながら、奇妙な妖術などを駆使して人智を超えたバケモノどもを倒すんだかなんだかする人たちが主人公の物語のようだ。妖怪ハンター系の話は正直いってあんまり好きじゃないのだが、とりあえず画面に迫力があり、妖しげな緊迫感も漂っているのでまあまあ楽しめた。これからの展開しだい。遠藤浩輝「EDEN」。どんどん甘っちょろさが消えてきて、シビアな話になってきている。今回もわりと激しかった。だんだん盛り上がってきた感じ。芦奈野ひとし「ヨコハマ買い出し紀行」。アルファさんがじーっとモノを考えているだけの話なのに、構図の取り方、コマ割りなどの演出がうまいから、動きがなくても気持ち良く読めてしまう。北道正幸もそうだけど、この人も一度短編読んでみたいなあ。沙村広明「無限の住人」。百琳に対する拷問がかなり痛そうで無残でええ感じ。サディスティック。かなり楽しんで描いていると見た。
植芝理一「ディスコミュニケーション」は、かわいすぎる息子に誘惑されて理性がグラグラしちゃってるお父さんのお話。もともと絵は抜群にかわいいだけに、こういうストレートな話をやられるともうたまらん。高橋ツトム「地雷震」は、元囚人たちが選挙に打って出るこれまでのシリーズが完結。しめくくりはちょいとあっけないような気もするのだが、甘っちょろい展開にならなかったのはいいと思う。近藤和久の集中新連載第1回め「フォワード」は、なんだかものすごく一昔前な宇宙モノSF。宇宙!銀河!宇宙船!傭兵!パワードスーツ!……まあそういうお話である。小原愼司「菫画報」。今回はスミレたちの新聞部が活動停止の危機に。なんだか窮屈な活動を強いられ、いつもと違って息苦しい感じ……とか思ってたら次で最終回とのこと。でもまあ次回作にすぐ取りかかるってことなんでまあいいか。そろそろ新しいお話も読みたくなってきたところだし。森徒利「二軍昆虫記」は今回でおしまい。絵はわりといい感じで気にはなっていたのだが、なんとなくしっかり読んでいなかった。読む者を引きずり込む力はちょっと足りなかったかなあ、と。
なんかアフタヌーンも全体的に連載陣を入れ換えようという雰囲気が感じられる。ただ、入れ替わって入ってくるのがウルトラジャンプっぽいテイストな作品が多いのは気になるところ。次号からはあさりよしとおの「宇宙家族カールビンソン」が、「ロスト・イン・ユニバース」というタイトルで始まっちゃうらしいし。
【雑誌】モーニング 4/8 No.17 講談社 B5中
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井上雄彦「バガボンド」。武蔵と吉岡清十郎が対峙するが、清十郎は今までの相手とは段違いに強そう。血沸き肉踊りますな。ヒラマツ・ミノル「ヨリが跳ぶ」は、ヨリとヒロコに引っ張られてオグリの面々の神経と気迫がどんどん研ぎ澄まされていく。これからの成長の予感に期待が膨らむ。ときどき物語がギャグ方向に流れても、必ずまたピークへと盛り上がっていく。なかなか飽きさせない。っていうかここまでずっとすごく面白い。高梨みどり「Order-Made」。高梨みどりはあんまりパッとしない人という印象があったが、この作品はけっこう軌道に乗っている感じがする。手堅く面白い。主人公の花梨が、友達の結婚式用の衣装を作ることになるが、相手は外人さんで……というお話。読切、桐間トッペイ「地獄のエステティシャン」は、注射やらボンデージなどを駆使する恐ろしきフリーのエステティシャンの話。オチはまあそこそこだけど、途中のSM的描写が濃厚でけっこうイケる。ラバースーツで身体を覆ったうえに歯を抜いたり注射しまくったりして、強制的に美人にしてしまうのだ。
【雑誌】ヤングサンデー 4/8 No.17 小学館 B5中
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あだち充「下駄とダイヤモンド」が、創刊13周年記念読切として登場。軽くて、そして鮮やかに決めるいつものあだち節。あだち充って軽んじられがちな作家だけど、きれいにまとめて来る力や雰囲気、間のとり方はさすがに大したものだと思う。しかも、意外にフォロワーを全然見ない。似たような人というのも記憶にない。実はワンアンドオンリー。岩田やすてる「球魂」。明彦がシングルスで大きな経験を得る。卓球漫画というと松本大洋の「ピンポン」でキマリって感じはあるが、この作品はこの作品でまた別枠の面白さがあってけっこう好きだ。原秀則「SOMEDAY」は今回で最終回。まったくソツがない安定した力量はさすがである。しっかり仕事していて、いつも感心する。阿部潤「the山田家」。今週はみちるのガールフレンド、田中ミヨがメイン。それにしても暴走しまくる妄想やら、むちゃくちゃな表情、高すぎるテンションが本当にすごい。
【単行本】「PLANET 7」1巻 竹谷州史 アスペクト B6
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コミックビーム掲載作品。アスペクトらしく「どこから発掘してきたんだろう」と不思議になってしまうイキのいい新鋭。宇宙の片隅ののどかな和風文化を持った星に、宇宙連邦のお姫様が逃げてくる。お姫様を取り戻そうと送り込まれてくる連邦の追手、成り行き上お姫様を助ける星の人々……という構図でお話は展開。というと、なんかスペースオペラっぽくてお姫様もフリルふりふりなドレスを着ているようなイメージを持つかもしれないが、そんなことは全然ない。星の住民は、着物をベースにしてそれを動きやすくアレンジしたような、亜和風とでもいうべきいでたちをしているし、絵柄もわりと土臭い。単行本の帯には「純和風スペースオペラ!!」とあるが、和風のチャキチャキした部分を切り取ってきてカスタマイズしたような雰囲気がある。
それにしても絵がイキイキしていて魅力的である。ベースのラインは寸詰まりでコミカルな感じでカッチリまとまっていてキュートなのだが、線のぶっとさ、荒々しさ、黒々とした画面の仕上がりはちょっと珍しい質感がと迫力がある。ラフな感じではあるのに、細かいところまで力いっぱいガシガシと高密度に描き込まれた、筆圧の高そうな絵柄がなんとも気持ちがいい。先物買い、というとちと語弊があるかもしれない。これからどの程度ののびしろがある人なのかよく分からないからだ。しかし、この一瞬の輝きはぜひ受け止めておきたい。表紙の絵柄を見て、ちょっとでも気になったらぜひ買っておけといっておこう。
3/24(水)……クレクレスコラ
今日はいつもよりちょっとだけアクセス数が多かった。スコラの業務停止が報道されたため、コミックバーズで検索してこのホームページに来た人がいたからなのかもしれないが、俺はタダの読者に過ぎないので報道されている以上のことは知らない。あしからず。
コミックバーズはたぶん続刊は難しいんじゃないかと思うけど、創刊当初からいつなくなるかと思っていた雑誌でもあるので、正直なところあんまりショックではない。っていうか覚悟はできていたようなところはある。もちろん好きな作品はそれなりにあるし、それらの作品がどうなるのかは気になるが。とりあえず当事者のいないところであれこれ考えてもしょうがないので、あんまり考えないことにしたい。
【雑誌】週刊少年サンデー 4/7 No.17 小学館 B5平
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作:坂田信弘+画:万乗大智「DAN DOH!!」。弾道が傷ついたひざ小僧を自分でペロペロなめているあたり、かなりショタ系狙っている感じ。藤田和日郎「からくりサーカス」。ヨーロッパ編と日本編がついに一本の線に交わってきそうな気配。そろそろ合流の日も近いかな?
【雑誌】週刊少年マガジン 4/7 No.17 講談社 B5平
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原案:さいふうめい+画:星野泰視「勝負師伝説 哲也」。謎の老人たちの通しのメカニズムが解明される。まあだいたい予想通り、っていうかあれだけヒントを出してりゃ普通気づくか。それにしても哲也とダンチって、どうやって会話しているんだろう。塀内夏子「Jドリーム完全燃焼編」。日本代表に欠けていた一人が戻ってきた、と思ったらなんだかヤケにあっさりした展開。とはいえ、次の試合への不安も暗示してはいるけど。
【雑誌】CUTiE comic 5月号 宝島社 B5平
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今月も面白かった。安定どころとニューパワーがいい感じでからんできている。一部クオリティ的に落ちる作品もあるけど、逆に全部の作品がクオリティ高いと捨て所がなくて読むのが疲れるから、このくらいがいいバランスなのではないだろうか。
安野モヨコ「ラブ・マスターX」。登場人物たちがそれぞれに「スキ」という気持ちの行き先に悩み迷う。話がすごく動いているわけでもないのに、整理された画面とクールな作画で気持ち良く読ませてくれる。1ページのコマ数も少なくて、やっぱ読みやすい。小野塚カホリ「マークシェイキとポテトザフライ」。若い男を囲っているちょっと太めの女性の、少女時代からの生き様をオシャレに艶っぽく、かっちょよく描く。結局お嬢さんのまんまオトナになっていく姿が、少し哀しくまた楽しい。今回は描写がわりと軽やか。南Q太「夢の温度」。ひんやりとした感触が心地いい、中学2年男女恋愛物語。クールでほのかに暖くて、距離感の付け方が絶妙。かわかみじゅんこ「ワレワレハ」。感性がみずみずしくて、読んでいてワクワクする。主役の二人の行動は理解しにくいのだけど、テンポが良くて、イキもいい。ありきたりの結論に終わらない闇雲なパワーも力強い。魚喃キリコ「南瓜とマヨネーズ」は、いつもと変わらないのだがやっぱりいい。肩ひじ張らずに自然にかっこよく見えるように描いているんだろうし、それはかっこつけではあるんだと分かっていながら、やっぱり自然でかっこよく思えてしまう。実に大した力量だと思う。
【雑誌】花とゆめ 4/5 No.8 白泉社 B5平
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樋口橘「桜下怪談」が今号では目を惹いた。この世に名残を残したまま死んで成仏できなかった幽霊達のラブストーリイ。淡くて品が良くて、ほのぼのとしたところもある落ち着いた絵柄がいい感じ。ラストの〆も爽やかでわりといい。そういえば今回は中条比紗也「花ざかりの君たちへ」と羅川真理茂「しゃにむにGO」は休載だった模様。
暗殺機械として育てられてきた少女・キリコの鉄のようなガードが、遊佐の熱と力によって破られていく2巻。キリコの針金のようなしなやかな身体を駆使したアクションがあまり見れないのは少し残念だが、その分遊佐が目立つ。ダイナミックでハッタリの利いた演出、激しさの中に艶を忍ばせた作画はなんともかっこいい。
【単行本】「スカタン天国」3巻 北道正幸 講談社 B6
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ギャグという点から見ると、とくに笑えるってわけではないと思う。噴き出すとかいうことは別にない。ただ、各所にそれなりに凝った仕掛けが施されていて、物語全体の雰囲気はすごく楽しい。そしてやっぱり絵。今回の表紙の上品な美しさなんて思わず見とれちゃうほどだ。一本一本きっちりとした線で描き込まれた達者な絵柄、確かな描画力は見るたびにほれぼれする。線のタッチの美しさが感じられる絵柄ってすごく好きだ。この絵とこの雰囲気だけで、買って損はない。北道正幸については、絵も達者だし話とか作り込むタイプだから、たまには読切作品も描いてくれないかなーとは思う。読切やらせたら、なんかスゴイの描いてきそうな気がするのだ。
3/23(火)……バージェスのゆみこちゃん
巻頭カラーは町野変丸「バージンゆみこちゃん」。まあいつもの町野変丸なのだが、何やら次回に続く模様。表紙に「感動読み切り長編」と書いてあることだし、次回何が起こるというのだろうか。フラミンゴ漫画大賞準入選受賞作、やまたのをろち「おひる」。精液ごはんを食べるシーンはちょっとウッとくるが、フラミンゴを読み慣れている人間からするともう一押し欲しいところ。一発ネタだけではちと弱い。北原武志「GOOD WORKING」。予備校の女講師が、北原武志独特の陰湿で執拗なイジメに遭うのだが、いきなりあっけなくハッピーエンドにガタガタとなだれ込んじゃうあたりも北原武志らしい腰砕けぶり。古賀燕「放課後せっかん」。精密で耽美的な絵柄には嗜虐美があってなかなかいい雰囲気。ただやってることがちょっと大人しめすぎかな。海明寺裕「歌はともだち」前編。芸能科に属するK9が本格的にアイドルを目指す。そのドラマを描くというわけで、K9世界はさらに進化を続ける。ますます本格的に構築されてきたK9世界。狂った世界観もこれだけきっちりやられると納得。楽しいなあ。
【雑誌】ビッグコミックオリジナル 4/5 No.7 小学館 B5中
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浦沢直樹「MONSTER」。ルンゲ警部がついに開かずの扉を開けてしまう。何もない部屋なのに、なんだか怖い。何か良からぬことが起こりそうな、不吉な空気をはらむ。これだけ引っ張ったのだから、さぞ恐ろしい謎なのだろうなあ。画:山田貴敏+取材/脚本:流智美「笑う東郷」は4回目。戦後活躍した日本人悪役レスラー、グレート東郷の生涯に迫り続けるドキュメンタリー。東郷の憎々しげなキャラクターに抜群の存在感があっていい感じである。
【雑誌】ヤングキング 4/19 No.8 少年画報社 B5中
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今回とくに良かったのが吉田聡「荒くれKNIGHT」。主人公・善波と彼が退学した学校の熱血老教師との、心暖まる男らしいお話。お互いに体当たりで男の意地を見せ合っていてかっこよかった。いい話である。有村しのぶ「HOPs」では、ヒロインのあずみちゃんが不良達に輪姦されそうになる。グズグズしてないでサッサとやっちゃえばいいのに……とか思わないでもない。ヒロインがひどい目に遭うというのは燃えますな。あんまりストレートにやられちゃうと逆に萎えちゃったりもするのだが。寸止めくらいでちくちく来られるのが一番好き。小池田マヤ「聖☆高校生」。今回はヒロインというか、主人公の憧れのヒトで、主人公の親友の彼女である鮎子の性の悩みのお話。4コマベースなのにけっこうH。紅潮した頬に2色カラーの効果あり。
【雑誌】ヤングチャンピオン 4/13 No.8 秋田書店 B5中
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創刊11周年記念号。そんなわけでそれを記念した新連載、高口里純「ロイヤルドッグ」。43歳工務店店主とその家に居候している19歳の男が、ある日川で溺れていた男の子を拾う。店主はその子を引き取ろうとするが、何やら人の心を読んだり運命を見たりすることのできる能力をもっているらしい居候のほうは、その子を追い出すことを主張する。無垢な顔つきで眠る子供に、なんとなく不吉な雰囲気が漂うが……という出だし。最初は地味な感じだったのだが、途中で超能力系の話が出てきてちょっと意外に思った。高口里純って、俺がFEEL YOUNGなどで読んだ限りではいまいちピンとこない作品が多かったのだけど、これはどんな感じになるもんだろうか。
今村夏央(おそらく米倉けんご)「ファイヤーキャンディ」。死の恐怖から免れるため、快楽と狂騒の猛烈なスピードに身を任せる若い半獣人たち。今回もズンズン陰鬱で追い詰められていてテンションが高い。緊迫感のあふれる画面がかっこいい。村生ミオ「サークルゲーム」。今回もありさがむちゃくちゃ怖い。貼り付いたような邪悪な表情とベタベタな描写がとても濃厚。いやー、スゲエ、とか思ってたら次号でついに最終回。ホッとするやら残念に思うやら。そして今回はなんといっても富沢ひとし「エイリアン9」。思っていた以上に、エイリアンたちの仕掛けは周到。かわいげな絵柄なのに、ガシガシとハードな仕掛けを用意して毎度読んでいるほうを驚かせてくれる。何も知らないで係を一生懸命やっていただけの女の子たちが、どんどんエイリアンたちにごく自然に蝕まれていく。日常が非日常に侵略されていくさまは、それがゆるやかであるだけにより冷たい恐怖感がある。っていうか面白いのだ。
【単行本】「バガボンド」1〜2巻 井上雄彦 講談社 B6
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骨太、豪快、痛快、爽快。まあそんな感じの言葉が似つかわしい。吉川英治原作「宮本武蔵」に題材をとり、井上雄彦的武蔵像を描き出す物語である。どちらかといえばもっさりとして朴訥な野武士という印象を武蔵には抱いていたが、「バガボンド」の武蔵像は日本刀のように鋭利であり、しかも鉈のような迫力を感じさせる。それを支えるのが、井上雄彦の緻密にして雄々しい描画である。きっちりと計算された画面構成の巧みさ、アクションシーンのリズムは少年誌で培ったたまものといえるかもしれない。武蔵の振り下ろす剛刀によって、襲いかかる敵の頭蓋がグシャリとつぶれるシーンなどは、凄惨ではあるが圧倒的なカタルシスがある。それから、粛々とした我慢強き乙女というイメージを持ちがちなおつうが、無邪気でまっすぐでちょっと抜けた女の子として描かれるのも新鮮。絵もストーリーも、それから構成も見事。隙のない面白さである。
吉田戦車ページに追加したので、そっちを参照のこと。
3/22(月)……フシアナ・トキオ
昨日やんちゃに呑みまくっただけに、今日休みだというのはありがたい。休みというのは何日あっても良きものなり。
【雑誌】コミックドルフィン 5月号 司書房 B5中
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巻頭カラー、じゃみんぐ「鬼の杜」は、ある地方の鬼を祀る村で行われる淫らな儀式を題材にした連載。絵柄は泥臭いが、それだけに汗やら汁のあふれるエロシーンはハードでいやらしい。このぐちょぐちょぶりがじゃみんぐの持ち味。みやびつづる「艶母」。相変わらずパワフルでいやらしい、後妻と血のつながっていない息子との近親相姦劇。後妻の妹にまで手を出し始めた息子に、激しく嫉妬する後妻。恥も外聞もなく息子を誘惑して、いやらしいことをしてもらおうとする奥さんがいじらしく、また熟れ熟れですごくいやらしい。濃厚。
KASHIみちのくが最近載っていないのは残念だけど、そのほかの作品もみんな乳がデカめでストレートに実用を狙っている。キッチリお仕事している雑誌。
【単行本】「Happy End」 あるまじろう フランス書院 A5
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スッキリと洗練された、清潔感のある絵柄が持ち味。絵柄だけで気に入っちゃう人も少なくないだろう。パッチリ見開かれてまっすぐ前方を見つめてくる、キラキラとビー玉のように輝く瞳が特徴的。スリムでスマートで気持ちいい。というわけで絵柄自体はきれいだが、実用性も案外とある。きっちりちんちんも描いてくるし、キャラクターの表情やポーズ、アングルなどには染み出すよう色気がある。
とにかくいっぷう変わった漫画である。絵に関してはまんま浮世絵調で、お話も江戸の情緒がふんだんに香る。浮世絵巻をそのまま漫画に起こしたような、その作風はかなり特殊。浮世絵風といっても、漫画になじまないわけではない。白と黒のコントラストが映えた画面は美しいし、コマ割りもしっかりとしていて読みやすい。お話もそれぞれに鮮やかなしめくくりを見せていて面白い。そしてなんといっても、書き文字から背景まで統一された江戸情緒。なんだかすごく見事な作品。一見の価値あり。なお単行本のシリーズは、小学館プチフラワーコミックスだ。吉本松明先生もオススメしてるぞ!
【単行本】「北神伝綺」下巻 作:大塚英志+画:森美夏 角川書店 A5
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待望の下巻。柳田國男が完成させて民俗学を学問として一般化するために、その中から排除せざるを得なかった、日本の土俗に溶け込んだ暗部に、天皇が君臨する前から日本に居た謎の民族「山人」の存在を通じて光を当てる。衒学的でもあり、禍々しくもある歴史の暗がりを描いた作品を、さらに奥行きのあるものにしているのが森美夏の絵。線自体は少ないが、洗練されて揺るぎがなく、退廃的な妖艶さと薄暗さ、邪悪さを持ち合わせている。常軌を逸した怪しい目つきをしたキャラクターたちの造形が実に見事。暗闇から一瞬の光でスパッと切り取ったような構図どりやらアングルもかっこいい。それでいながらとくに気負うでもなく、サラリと自然に描かれている。絵とストーリーが相乗効果をもって、お互いの魅力を引き出している。
【単行本】「たとえばこんなラヴ・ソング」1巻 北崎拓 小学館 B6
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連載スタートは平成2年(1990年)。連載当時読んではいたのだが、単行本を買うまでには至っていなかった。このたび、ワイド版(B6で厚い奴)での刊行が始まったようなので、これを機に揃えようかと思う。
現在は「なぎさMe公認」を少年サンデーで連載中の北崎拓だが、「たとえばこんなラヴ・ソング」あたりからガラリと画風が変わった感がある。線が細くなって、それまで元気のいい少年漫画風の絵だったのが、仕上げの細かいちょっと大人っぽい画風に変わった。ただ、今読み返してみると、このころはまだ絵柄の転換期にあったようで今ほどに画風は練れていない。
ストーリーは大ざっぱにいって高校生三角関係モノ。中学時代付き合っていた龍介と瞳だが、卒業のさい、瞳が一方的に別れを告げてくる。瞳は九州の高校に転校し、龍介は釈然としないものを引きずったまま地元の高校に進学する。瞳と離れて徐々に傷のいえた龍介は新しい彼女・真理子と付き合い出すが、そこにある日、瞳が転校して戻ってくる。それとともに真理子と龍介の仲もギクシャクしだしてきて……というお話。昔読んでいた人には今さら説明の必要もないかもしれない。この作品は恋愛モノではあるのだけど、恋愛の幸福さやらカタルシスはほとんど描かれない。三角関係にある3人がそれぞれの思いを抱えながら、息苦しい展開が続く。最初は朗らかだった真理子が、だんだん龍介と瞳の仲を疑い出し、イヤな女の子になっていく姿が読んでいてかなりズッシリくる。そんなハードさ、うっとうしさが連載当時はいやがられていたようにも思う。でも、こういう気の重くなるお話を延々描き続けたというのは、北崎拓にとっては大きな経験になったんじゃないだろうか。読んでいるほうとしても、読みごたえがあるのは事実だし。
3/21(日)……芸術的瞬間
本田健、それから俺という、なんだか嫌になるような血縁者の間で「酒呑みに行きてえっ!」ということで意見が一致したところに、ちょうど月下工房#書評系のサイトウマサトクさんと一緒に呑みに行く話がまとまり、ガソリンのSAI2COさんも交えて4人で池袋で呑む。池袋は芳林堂コミックプラザに集まり、入口が高さ1メートル程度とやけに低いのが特徴の「くい菜てしごとや」というイカした居酒屋さんで呑み、そして語る。最近、仕事が忙しいらしく弱まっているサイトウさんに喝を入れつつ、漫画の話、Webの話、その他もろもろで盛り上がったしだい。「OHP掲示板のオフもやればいいのに」というお話も出て、「そのうちやってみるかいのう」などと酔っ払った頭で考えつつ呑んだり、トイレで明日の体調を考えて微調整を施したりする。
呑みに行ったお店は魚系(ウオティック)な食べ物が炭火焼き系(スミビズム)でおいしく、また日本酒も豊富。それがいけなかったのだ。日本酒は日本人、そして俺たち兄弟の身体に馴染みすぎる。肉体に染み渡り尽した日本酒は俺と本田健を破壊した。たぶんサイトウさんとSAI2COさんから見れば、俺のほうが酔っ払っててヘロヘロに見えたことだろう。だが、俺様は酔いつぶれ経験が兄より豊富である。シャレにならないような壊れっぷりをしたこともあり、だいぶ懲りている。呑みつつも、先ほども書いたようにトイレで微調整を施していたのだ。サイトウさん&SAI2COさんのお二人と別れてからは兄が主役だった。だから以下の事項は彼らも知らない。
半蔵門線に乗り込み、後は終点までぐわーっと寝るだけ。俺は寝た。しばらくして、兄が俺の膝をちょんちょんとつつく。しかも2回。うっすらと目を開けると、兄の足元に芸術的な世界地図が描かれているではないか。俺はその芸術が創出された瞬間には意識を彼方に飛ばしていたのだが、目覚めてみると車内の注目は俺たちに集まり、俺たちの座っている座席の島だけは空白地帯となっていた。直接の被爆地の正面の席に移動した俺たちは、その爆心地を見つめつつ10駅くらいを談笑しながら帰った。車掌さんごめんなさい。兄のウォーキングシューズはナイスな粘液にまみれ、俺様は幸いにも被害なし。現場を立ち去らなかったのは俺たちのせめてもの良心だと思ってほしい。スポーツ新聞でも落ちていれば、後始末くらいはしたかったのだが。とはいえ、俺たちだって呑みに行ったとき、常にこうなるわけではない。いつもはわりと普通なのだ。だから、俺たちに酒に誘われたからといって恐れる必要はない、といっておく。芸術は爆発であり、日本酒はその源である。気をつけよう、甘い言葉と旨い酒。
まあそんなわけで帰ってきてから読んだのが以下の漫画群だ。
【雑誌】週刊少年ジャンプ 4/5 No.17 集英社 B5平
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作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。けっこう面白いと思っていたのだが、今回は巻頭カラー。整った絵柄と着実なストーリー回しで、碁という地味な競技をかっこよく見せている。能條純一みたいにハッタリを利かせまくるのも手だが、これはこれでまた面白い。富樫義博「HUNTER×HUNTER」。ゴンと、キルアを屋敷から去らせまいとする執事の駆け引きの描写がうまい。地味なシーンだけど、しっかりと見せ場にしてしまうのは大したもんだ。森田まさのり「Rookies」。不良たちが目を輝かせて野球に夢中になり始めた。クサくて熱くて、そして爽やか。気持ちいい。
【雑誌】ヤングマガジン 4/5 No.16 講談社 B5中
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福本伸行「カイジ」。ティッシュ箱を使っただましのからくりが見えてくるが、あの老人がそんな方法に引っかかるもんなのだろうか。そもそも相手と同等の条件で勝負しなくてはならないギャンブルに乗ってくるとも思えないが。いかにその舞台に乗せるかの駆け引きが見どころといえるかも。前川かずお「闘破蛇烈伝DEI48」。扉は相変わらずミミガーズにこだわりつづける。狙ってるなあ。すぎむらしんいち「超・学校法人スタア學園」。コキジたち「体あたり朝練部」は、身を犠牲にしつつも一気に知名度を上げていく。展開はどうしようもないけど、その力づくさ加減に思わず笑う、っていうかすげえおもしれえ〜。平本アキラ「アゴなしゲンと俺物語」。相変わらずゲンさんのケンヂに対する仕打ちはひどいが、ケンヂのやることはもっとひどい。弱者というかいやなものに対して容赦しないところが、たいへん愉快。城倉浩司「グラス・ブレス」。読売ジャイアンツ・元木がモデルらしい、上ノ宮がいい味。元木ってどんなに頑張ってもサボってるように見えるあたりが好きだ。努力が似合わない男である。東和広「ユキポンのお仕事」は、ユキポンのご主人ちゃまのあけみちゃんのクズ人間ぶりが加速。和む絵柄と作風。
【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 4/5 No.16 小学館 B5中
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原秀則「青空」はようやく週刊連載スタート。ヤングサンデーの「SOMEDAY」が終わったので、ようやく余裕ができたってところだろうか。ゼロから始めた野球部もようやく形になってきたが、その行く末はいかに。原秀則は明るそうに見えて途中からストーリーを暗いほうへ暗いほうへと向かわせがちな人だが、この作品は最初から息苦しい展開だった。その点で、今までの作品と若干趣が違うので、どうなるか気になっている。脚本:園村昌弘+作:都筑政昭+監修:小津家+協力:松竹+作画:中村真理子「小津安二郎の謎」は今回で最終回。謎っていうほど謎ではなかったけど、まあ小津安二郎の生涯についてはある程度知ることができた。後世の記者たちによって、その生涯が語られるみたいな形になっているが、いっそそういう仕掛けはなくても良かったように思う。最後のシーンはいまいち余韻がなくて残念。万蔵「おめっとさん」。場末のあばら家に集まる浪人衆と、剣術が滅法強い謎の侍のお話。地味ながらしっかりした作画で、確かな読みごたえ。新人らしくない落ち着いた感じがある。
【単行本】「ARMS」7巻 皆川亮二 小学館 B6
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第二部完結。緻密で迫力のある作画と、大掛かりなストーリー運びは読む者をわくわくさせてくれる。若干、話が安っぽい方向に流れる傾向はあるが、それを差し引いても十分に楽しめるだけの迫力はある。すでに「手堅い作品」といってもいい。
【単行本】「フラワーズ」1巻 奥瀬サキ スコラ A5
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連載で読んでいたときは、何がなんだかよく分からず「単行本でまとめ読みすれば話の全貌が掴めるだろう」と思っていた。しかし、単行本を読んでもよく分からない。すごく絵がうまく、怪しく、美しく、そして謎めいている。その世界にはひどく惹かれるのだが、内容についてはまだなんともつかみどころがない。でもかっこいい。すごくかっこいい絵と、そして空間なのだ。陰鬱でシャープで狂気をはらみ、そして美しい。話が分からなくても読んでしまいたくなる魅力は確かにある。
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