◆ 1999年12月中旬 ◆

12/11〜20
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12/20(月)……砂風紀委員

 しばらく禁酒しよう、とか思って1週間くらい酒を口にしてなかったのだが、珍しくギチギチと仕事をしてなおかつ隣駅から早歩きで帰ってきて多少汗もかいていたので、我慢がきかずにビールを一杯。うめーなあ、ちきしゃう。
 以下、本日購入未読分。

【雑誌】MEN'Sドルフィン Vol,6 司書房 B5中
【雑誌】花とゆめ 1/10 No.2 白泉社 B5平
【単行本】「なんとなくいい感じ」1〜2巻 あずき紅 エンジェル出版 A5
【単行本】「ぷりんせす&れでぃ▽」 LAZYCLUB 司書房 A5
【単行本】「ダイヤモンド」7巻 青山広美 小学館 B6

【雑誌】週刊少年ジャンプ 1/10・15合併 No.3・4 集英社 B5平
 和月伸宏、「るろうに剣心番外編」である「弥彦の逆刃刀」が掲載。るろ剣はほとんど読んでなかったのであんまりよく知らないが、ファンの人は要読み。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 1/20増刊号 Manpuku! 小学館 B5中
 榎本ナリコ「スカートIV」が巻頭カラー。ゲイの男が一人入って完全な三角関係になっている三人の、微妙な距離を描き出す。端整な絵柄で、やっぱり技量は確かな人だ。榎本ナリコは短編よりも中編のほうが今のところ好きだが、この作品もシリーズ4回めまでをこなし味がだいぶ出てきた。吉田戦車「山田シリーズ」。現在「山田」と名乗っている動物が、毎回お金にモノをいわせるさまにあやかりたい思い。今号は懐かしのバイトくんまで登場している。吉田戦車の「伝染るんです。」系キャラクターは、やはり輝いている。村上かつら「父伝説」は、どうしても父を尊敬できない男子中学生が、いろいろと考えているうちに自分の中で父の物語を再構成していく話。言葉の使い方や、考えていく過程の描き方が、シッカリしている。地味なシーンでも飽きさせずに読ませるのはさすがといった感じ。そろそろ単行本……。出してくれー。

【雑誌】ヤングマガジン 1/11・17合併 No.3・4 講談社 B5中
 三田紀房「甲子園へ行こう!」が別冊ヤングマガジンから本誌に移籍。平凡な県立高校野球の面々が甲子園を目指して一歩一歩進んでいく物語。平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」は、またまたひどいことをやる。ゲンさんの体毛がオーロラビジョンに大映しになり、悪夢チックなことこの上ない。

【雑誌】COLORFUL萬福星 Vol.09 ビブロス B5平
 篠房六郎「思い出の人」が下らなくていい。とある男子が部活のマネージャーの女の子とデートした帰り道。しかし、彼女はその男子に感謝しつつも、前から憧れていた部活の先輩ポコチンスキーが忘れられないという。四季賞などでガツンといわせた高い描画力をふんだんに無駄遣いし、青春モノ風味でさりげなく下品なギャグをやってくる呼吸がたまらなく面白い。篠房六郎は、マジメな作品もいいんだけどこの馬鹿系ギャグは捨てがたい味。マジメと馬鹿、両刀使いで邁進していただけると幸いナリ。巻頭カラー、TAGRO「Hooky Pooky」。タイトルから想像できるように、ヒロインは風紀委員。最初はわりと普通な学園ドタバタエロコメディかと思っていたのだが、先に進むに従ってどんどんお話がボロボロと崩れていくのが楽しい。月野定規「親にはナイショで。」。月野定規ってなんとなくCG的イメージはないんだけど、鉛筆っぽい雰囲気がきれいに出ていてなかなかいい仕上がり。粟武岳弘「散歩娘」。土っぽい雰囲気がある絵柄が味わい深し。氏家もく「幼馴染み」は少女の表情とかが生っぽくて惹かれる。わりとロリのホンモノ系な細密で端整な絵柄。町野変丸「パソコンゆみこちゃん」は、なかなかパソコンネタの使い方がうまい。ゆみこちゃん型のパソコンの梱包を解きセットアップするまでのお話。

【雑誌】ヤングキングOURs2000 1月号(増刊) 少年画報社 B5平
 表紙に作家名、作品名がまったく入っていないというのは珍しい。犬上すくね、桃色ハナ子(池部ハナ子)、比古地朔弥、西村竜と、コミティア率の高い雑誌。このように揃えられると、なんだか見透かされているようでちょっと悔しい。ビッグネームやごはん系の作家はまったくなし。アクション性は薄く、文系度が高い。各作品はそれなりのものが多いのだが、一冊通しで読むと上品すぎる感じがした。も少し毒気が強い人とか、アクション描ける人とか、強烈にベタベタな人とかを少し混ぜていくと、だいぶイキイキとした印象になると思うのだが。個々の作家は悪くないんだけど、全体で見るとアクセントが足りない。とはいえヤングキング系各誌はだいぶメンツが固定されてきており新人の割り込むスキが減ってきているように思われるので、こうやって新人登用にも使える場が用意されたのは喜ばしい。
 巻頭カラーは犬丸「アレキサンダーの図書館」。目がさめて、広大な図書館に迷い込んでいたことに気づく少年。フルカラーで表現される画面の質感が美しい。とくに登場人物のほっぺたのつやつやとか。犬上すくね「いとしのリボンちゃん」は、総計50ページと力の入った分量。学校教師のまほ先生と、元教え子だった彼氏の甘い恋愛物語。幸福な味わいでくるりと包み込んできてベタベタではあるのだが、読み口は爽やか。桃色ハナ子「ワタスモノ」。こちらもサッパリときれいなラブ物語。おがきちか「仔羊は迷わない」は、この雑誌の中ではアクションがかなりハデなほう。達者な描画で良い。西村竜「EXTRA CHICKEN」は、クリスマスの夜にそれまでケンカしていたカップルが仲直りをするというお話。ちっちゃいけれども、きれいにまとまったいいお話。この作品もそうだけど、この雑誌はわりとこういう小さい風景の中での居心地の良い幸せを描いた作品が多いように思う。
 大石まさる「泥棒猫」は、この前ちょっとやったのと同じように、宮崎駿「名探偵ホームズ」系の動物擬人化系の泥棒モノ。比古地朔弥「Sweets」は、腕はいいんだけど、人付き合いが得意でないケーキ職人とその彼女のお話。比古地朔弥にしてはヌルい。とは思うもののまとまりはいいのでそれなりに楽しんで読める。次号は2000年初旬発売予定。もしコミティア系作家をさらに登用するなら、きづきあきらと藤川毅が第一希望。


12/19(日)……だまってジョガーについて来い!

 参考リンク。前から一度聞いてみたいと思っていたので、持ってる人がいらっしゃいましたら貸していただけるとすごくうれしいです。どうしても聞かなくてはならないほどいいものではないことは分かっているんだけど。あと「ジャガーファイト」を録画している人がいたら、そちらもぜひ。この人には、ぜひ自分で公式ホームページを立ち上げ、ムービーや音曲ファイルをダウンロードできるようにしてほしいもの。

【単行本】「今日のだいちゃん」4巻 太陽星太郎 小学館 A5
 謎の生き物、だいちゃんがお話の中心にいるようでいていないようでいて。だいちゃんを間接的にお話にからめながら、いいお話あり、意地悪なお話あり。Hなことも適度にこなす手際の良さは鮮やか。ヤングサンデーでの連載は今佳境に入っているが、次巻あたりで最終回だろうか。

【単行本】「好きになるひと」 高橋しん 小学館 A5
「高橋しん初期短編集完全版」と銘打たれた作品集。「世界で一番近い島」「TOW HEARTS」「ANCHOR」「歩いていこう。」「好きになるひと」の5作品を収録。といっても発表されたそのままではなく、ほぼ全面的に描き直しているので、描き下ろしに近い。CGを紙媒体になじむ形で鮮やかに使いこなした現在の画風で、昔の作品をリメイクしている。なかなか大胆で面白い試み。ただ、現在の洗練された線も悪くないが、昔の多少やぼったさの残っている線のほうが好きだったので、機会があったら発表時そのままの形のバージョンも見てみたい気はする。
 高橋しんは学生時代ずっと駅伝をやっていた人だけあって、やはり走ることをテーマとした作品が一番イキイキしているように思われる。とくに「世界で一番近い島」と「好きになるひと」あたりが好みだ。「好きになるひと」は、コマを枠線でカチッと割るのでなく、ほぼ枠線なしで絵がポーンと置かれてそこに主人公のセリフが載せられていくという形。陸上部の先輩を好きになってしまった女の子の、切ない想いがつづられる。バックに罫線が敷かれた、大学ノート状の画面がいかにも女の子の日記のようでトキめくものあり。「いいひと。」は説教臭さが鼻につくところがあったが、初期作品のほうはそういう色合いは薄いのでこちらのほうがストレートに楽しめる。
 高橋しんの作品は、語るべきでなさそうな人が説教してくるところとか、言葉で片付けようとするあたりがどうも気になりがちだ。でも絵の魅力もあるしつい読んでしまう。この人の、もう少しいい意味で馬鹿になった、ストレートな作品というのも読んでみたい。現在の作風は、なんかいい子ちゃん的過ぎるように思えてしまう。誰かに何かを説くのもいいが、他人になりふりかまわず自分だけの高みへと向かう姿も見たいのだ。

【単行本】「藍より青し」2巻 文月晃 白泉社 B6
 子供のころの許婚が部屋に転がり込んできて、主人公に尽くしてくれる。その娘が純真で健気でかわいくて和服姿。「ああっ女神さまっ」とか的なパターンの作品であるが、今どきこれをやるかというほどあまりにもベタベタなところが持ち味。ヒネリとかはなくあくまでベタベタラブコメ直球勝負。この巻は、どちらかといえば新キャラ登場および各種イベントが主なので、主人公とヒロインのラブラブぶりは1巻ほどには激しくない。もっともっと凶悪に、ラブの風を吹き荒らすべし。


12/18(土)……栄転する18歳

 コミック・ファン07号(雑草社)の見本誌が届く。買って買って〜。次号は3月15日発売予定。
 以下、本日購入で未読分。山本直樹「ビリーバーズ」に関しては、次の巻が出てから一気にまとめ読みする予定。よってしばらくは積み置き。あと「奈緒子」も14〜20巻を買ってないので、買い揃えた時点で一気読み予定な物件。

【単行本】「奈緒子」24巻 作:坂田信弘+画:中原裕 小学館 B6
【単行本】「ビリーバーズ」1巻 山本直樹 小学館 A5
【単行本】「今日のだいちゃん」4巻 太陽星太郎 小学館 A5
【単行本】「好きになるひと」 高橋しん 小学館 A5
【単行本】「電脳炎」ver.2(ウィン版/マック版) 唐沢なをき 小学館 新書判

【雑誌】ウルトラジャンプ 1月号 集英社 B5平
 この雑誌って、マニア筋の人はみんな読んでるんだけど、不思議と「ウルトラジャンプ大好き!」って人は見ないような気がする。
 作:倉田英之+画:山田秋太郎「R.O.D」が新連載。一時でも本がないといられないような蔵書狂(ビブリオマニア)で、この世にある紙ならなんでも武器にできてしまう女性エージェント・読子が活躍するアクションもの。本、紙を武器にして闘うアクションというアイデアはなかなか面白い。大野安之「異形の街」。初登場。街よりも何よりも、やはりキャラクターの造形が今としては珍しい。足首が太い。お尻が小さい。いいですなあ。伊藤悠「影猫」は今回後編でこのシリーズ完結。シャープでかつ力強い描線から繰り出されるアクションのかっこよさ。一連の動きの中の「止め」が鮮烈にイメージに焼きつく。かなり力がある感じの人なので、再登場が楽しみ。

【単行本】「ワレワレハ」 かわかみじゅんこ 宝島社 A5
 かわかみじゅんこの描くキャラクターは、実に強い。見つめられたほうがたじろいでしまうぐらいに視線がまっすぐだ。表題作「ワレワレハ」のヒロイン・奈真里は、幼馴染みの万を運命の人と思い込み、その運命のために自分を完璧な美少女に作り替えようとする。彼女の目は、怖いくらいに真剣だ。奈真里はほとんど喋らない。でもそのメッセージの力強さたるや、大声で叫ぶよりもはるかに効果的。彼女の意志は、否応なく頭に流れ込んでくるテレパシーのよう。万も奈真里のことを相手にしていないように見えて、実際は確信している。すぐ近くにいながら、彼女らの間には山脈がある。それならば、180度反対方向を向いて地球を一周して巡り合ってやる。そんな力強さがあふれている。かわかみじゅんこの漫画は雄弁だ。まっすぐな恋であれ、すれ違う愛であれ。カバーをめくって中表紙を見ると、そこには物語の中から数々のセリフが抜き出されている。これだけでも、かわかみじゅんこのコトバの強さが感じられようというもの。
 なお、今回の単行本はCUTiE comicに掲載された作品が中心だが、コミック・ピットとエルティーンコミック掲載作も収録されている。とくにコミック・ピット掲載分が収録されたのがうれしい。

【単行本】「シネマ」4巻 六田登 小学館 B6
 最終巻。サバニたちは、ドタドタとやかましい足音を立てながらやってきて、そしてまたドタバタと土煙を残して去っていく。「シネマ」に出てくるキャラクターは、多くの六田登作品のキャラクター同様、みっともなく泥臭く、ジタバタとあがいている。お話自体はもっと大きなものになるのかなとか思っていたので、ちょっと拍子抜けな感じもあり。

【単行本】「蒼天航路」18巻 王欣太 B6
 曹操の息子・曹植が中心となって鮮烈に展開される詩のムーブメント。そして、それが終わった後は狂的に軍略を練り続ける軍師・郭嘉のエピソードへと話は移っていく。だいぶ長くなってきてしまったが、それでも局面局面の描写はダイナミックで激しく、かっこよく読ませる。この巻では曹操はむしろ脇役。

【単行本】「犬神」8巻 外薗昌也 講談社 B6
 あらずじ・データはオスマンのほうに。23と擬態タイプの犬神の闘いは最終局面。23を守るために身を捨て勇気を振り絞る史樹が、どんどんカッコよくなってきている。ふだんは夢見がちで大人しい少年であるだけに、その自己犠牲の姿は多少クレイジーにも感じられてしまうが。

【単行本】「PRISONER IDOL」 マーシーラビット 司書房 A5
 マーシーラビットのいいところは、実用面に完全に割り切っているところ。健康的でハリのある肉体の持ち主である少女たちが、実に気持ちよさそうにSEXする。線にもまったく迷いがない。表題作の「PRISONER IDOL」なんかもう設定がスゴい。敏腕プロデューサーに拉致されたアイドルが、本当に人間が住んでいる巨大なセットの中にほうり込まれ、完全に作られた仮想世界とでもいうべき空間でSEX漬けにされる。アイドルのほうは、理不尽な状況でズブズブに犯されつつも、しだいに感じてしまってメロメロになる。おおむねちんちんいっぱい、体液もいっぱい。女の子は若くてニコニコしてて、おっぱいが大きく感じやすい。ヤッってるうちに女の子が身も世もあらぬといった風情で感じまくり、男にとってむちゃくちゃに都合がいい。後腐れなくヌいて終わり、といった感じの割り切りぶりは潔いほどである。女性の立場から見れば、こんな都合のいいことなんてたぶんあるわけない。でもそこは、気持ち良くヌキたい男のための浪漫、妄念の結晶であったりするわけである。

【単行本】「少女絶頂体験」 A・浪漫・我慢 松文館 A5
「このマンガに登場する人物はすべて18歳以上です」。と注意書きの入っている単行本。おおむね小学生にしか見えないが、すべて18歳以上だ。その点は注意が必要である。
 短編10本が収録されているが、技量はどんどん上がっている。少女たちが、ときに子供っぽさを発揮したり、男たちの凌辱の前になすすべもなく弄ばれたり。楽しげな作品も、苦しげな作品も、切なげな作品も、どれもよくできている。「廃屋」なんかは、大山田満月をちょいと思い出させるような仕上がりになっていて、ある方面での筋の良さを感じさせる。登場する人物がすべて18歳以上であるということを除けば、ロリイタ系(少女系)の人もきっと満足するに違いない。頭身的には幼女系ではなく少女系。


12/17(金)……キメラのキ

 漫画情報誌「コミック・ファン」(雑草社)がリニューアル。本日第7号が発売になったはず。まだ読んでないんで内容は知らないんだが、竹本健治「入神」、比古地朔弥「神様ゆるして」のレビューと、エロ漫画系のコラムを書かせていただいているので、ぜひご購入を。クリスマスプレゼントにも最適! エロ漫画系のコラムは8〜10月に発売された作品で「これだけは読んどけ」ってものを抽出するという主旨の記事。エロ漫画はふだん全然読まない層向けだし、文量的にも大して書けないのであんまり濃くはできなず自分としては少々不満な原稿。お恥ずかしい。15字×81ラインで7冊に触れているのだが、紹介点数をも少し絞ったほうが良かったかもしれないが、でもある程度の数は紹介したいし……。

【雑誌】メロディ 1月号 白泉社 B5平
 作:夢枕獏+画:岡野玲子「陰陽師」。今回はラスト5ページがいい。山の自然の中で佇む晴明と博雅。むせ返るような木々の描写。背景の存在感に圧倒される。メロディに移籍しても、岡野玲子は相変わらず好調だ。桑田乃梨子「男の華園」。不幸なような幸福なような年の暮れ。ほんのり暖かく、年が終わっていくのでありました。雁須磨子「どいつもこいつも」。今回はみんなでミレニアム登山。富士山に登るのだ。今回も自衛隊の職務にはほとんど関係なく、じつにのほほんとしている。酒井美羽「\十億少女」は、三つ編みな眼鏡娘、鹿の子がたいへんにかわいらしくて良い。

【雑誌】ZetuMan 1月号 笠倉出版社 B5中
 あろうれい「あおいのきみ番外編『朱い夜 銀の涙』」。仮面をつけた女性二人の姿がなかなかエロチック。うらまっくがZetuMan初登場。短編「こわれてください」。自分は周りの人を傷つける女であると思い込んでいる、自分に自身のない女性の心を、男の優しさがとかしていく。優しい雰囲気で、お話はきれいにまとまっている。うらまっくは本当に短編がうまい。これだけハズレがないというのは驚異的でさえある。榊原薫奈緒子「アナウメ絶望日記」。タイトルそのまんまな内容の4ページ漫画。日記漫画とは名ばかりで、どんどん壊れた展開になっていくあたり、やはりこの人は一筋縄ではいかない。かわいい絵柄なのに毒性は強い。なお、初単行本「ちちばすと」が1月発売予定。ZERRY藤尾「我が人生に悔い無し」。まるで雪の中の白ウサギのような作品。つまりは白いってこと。お話は、公園のベンチで老人が自分のやりまくりだった人生を振り返るというもの。26日(日)C-21b。同人誌は初挑戦なのだそうだ。

【雑誌】ばんがいち 1月号 コアマガジン B5中
 ホットミルクで「菜々子さん的な日常」を連載中の瓦敬助が、ばんがいち初登場。タイトルは「きらめき」。廃校になる田舎の高校で起きた、ちょっと不思議で爽やかな感動を残す物語。いつものクッキリしたタッチと違って、薄墨っぽい柔らかな画面が、ノスタルジックな雰囲気を盛り上げている。父も母も通った高校に愛着を持つ少年が、図書館で最後の学園祭に向けてクラスで演じる劇の脚本を練る。その途中で現れた不思議な少女。彼女は現れたと思ったらふと消えて、後には「きらめき」と表紙に記された一冊のノートが残される。そこに記されていたのは、戦後初めてこの高校の学園祭を行うことになった生徒たちと教師の物語。自分たちの姿ともダブるその物語を、彼は演劇の脚本とすることに決めた。エロは入っているが、なくても十二分に読めてしまう。学校の中で紡がれた、さまざまな思い出が優しくふわりと拡散していく。懐かしくて切なくて、そして気持ちの良い物語。とてもいいお話だった。朔ユキ蔵「告白」は、女生徒と関係を持つが、彼女にハマるまいと愛の言葉をためらう教師の物語。シャープな描線と、薄暗い画面。やはりこの人の作品は、鮮烈な印象を残す。きりやましんご「最後の決戦」。男と女のSEXバトルロイヤル。セリフとかSEXシーンとか、全体にノリが良くて楽しかった。

【雑誌】コットンコミック 1月号 東京三世社 B5中
 コットンコミックは表紙にしろ掲載作品にしろ、実にC級だ。全体に垢抜けないし、ハッキリいってダサい。でもそこがいい。読み続けているうちに、なんだかそれがすごく心地よくなってくる。作品一つ一つはそんなにいい出来ではないが、雑誌全体としていい。ふだんはそれなりの食事をしていても、ときどき無性に食いたくなるようなペヤングやきそばのような感じ。具なんか実に安っぽいし、麺もボソボソ。パッケージもダサい。だが、一つ一つのアイテムはショボくとも合わさると妙にうまい。そんな雑誌である。読んでてなんか和む居心地の良さ。
 駕籠真太郎「駅前格子」。今回のネタは格子である。乾いたブラックジョークが、実にテンポよく飛び交う。今回はオチも利いてるし、とても面白かった。振り返れば1999年は、駕籠真太郎ブレイクの年だったなあ。渡辺ヒデユキ「ゴールドフィンガー'99」。今回も下らない。コットンコミックのC級なノリの震源地。寿裡「みんなのアイドル」は、子供番組の歌のおねえさんがHな目に遭うお話。かなり巨乳系で、ストレートな実用系。はーおっぱいおっぱい。

【雑誌】オースーパージャンプ 1/20 集英社 B5中
 何か中途半端なオヤジ臭さを感じる雑誌。いまいちパッとしない。タイム涼介が掲載されていたので購入。タイトルは「カミソリキッス」で6ページもの。嫉妬深くて乱暴な女と暮らす男の物語。今回はわりと地味。それにしてもラストページの柱の文句がどうにも野暮で気になる。次号は2月18日発売予定だが、コミックビンゴで連載されていた立原あゆみ「地球儀」がこちらで連載再開されるらしい。

【単行本】「ヨリが跳ぶ」20巻 ヒラマツ・ミノル 講談社 B6
 ついに最終巻。厚みもいつもの1.5倍くらい。ここまで常に意識しあってきたヨリとヒロコの対決。大きな壁として、導き手として常にヨリの前に立ちはだかり続けてきたヒロコ。そしてそれを超えんとしてもがくヨリ。二人の大砲のボールのぶったたき合いは、ボールがいったり来たりするごとにお互いのエネルギーを受け取り合い、高みへ高みへと昇っていく。泣けてくるかっこよさだ。連載中はずっと楽しませてもらってきたが、最後まで面白かった。迫力のある描写、適度なおふざけ、濃くて魅力的なキャラクターたち。正月休みにでも最初っから全部読み返してみるつもり。

【単行本】「おまかせ!ピース電器店」16巻 能田達規 秋田書店 新書判
 今回も工作スピリットがあふれてている。何か面倒なことをしなくても済むようなシステムや機械を作ろうとして、結局は余計に苦労するのだが、そういう努力は面倒とけして思わない。そういうオトコノコ的な、作業にワクワクするスピリットがすごく楽しい漫画。そして、ラブコメありアクションありと味付けがうまいし、キャラクターも魅力的。お話もきれいにまとまっている。しみじみいい漫画である。
 あと、巻末おまけ漫画「ミスしらゆりさんFXその6」の一コマめで、登場キャラが「DOS/Vカスタム」という雑誌を読んでくれている。素晴らしい!


12/16(木)……手の指の、節と節を合わせて、ふしあわせ

 健康診断してくる。おおむね健康。漫画とパソコン漬けな日々だったわりには、視力は左右1.5で、昨年より良くなっていた。きっと俺の使っているパソコンと、俺の読んでいる漫画は目にいいものだったに違いない。

 本日はなんだかやたらにたくさん購入したので、買った分を全部読み切れなかった。全部消化するまで時間がかかりそうなので、今日からは翌日以降回しの購入物件もタイトルだけ記載していこうと思う。情報のジューシーさを重視するってわけで。吉本松明さんの購入記録のパクり? というわけで感想を書いた分以外では以下のようなものを購入。なお、一部早売り物件も混じっているので要注意。

【雑誌】メロディ 1月号 白泉社 B5平
【雑誌】ZetuMan 1月号 笠倉出版社 B5中
【雑誌】ばんがいち 1月号 コアマガジン B5中
【単行本】「PRISONER IDOL」 マーシーラビット 司書房 A5
【単行本】「セスナ」 片岡吉乃 集英社 新書判
【単行本】「藍より青し」2巻 文月晃 B6
【単行本】「おぼろ探偵帖 山田章博全集1」 山田章博 日本エディターズ A5
【単行本】「ヨリが跳ぶ」20巻 ヒラマツ・ミノル 講談社 B6
【単行本】「おまかせ!ピース電器店」16巻 能田達規 秋田書店 新書判
【単行本】「ディスコミュニケーション 精霊編」1巻 植芝理一 講談社 B6
【単行本】「新世紀エヴァンゲリオン」5巻 作:GAINAX+画:貞本義行 角川書店 B6
【単行本】「太陽が落ちてくる」3巻 咲香里 笠倉出版社 B6
【単行本】「少女絶頂体験」 A・浪漫・我慢 松文館 A5
【単行本】「犬神」8巻 外薗昌也 講談社 B6
【単行本】「蒼天航路」18巻 王欣太 B6

【雑誌】別冊ヤングサンデー 1/16 No.1 小学館 B5中
 今号から大漫王→別冊ヤングサンデーに名称変更。
 まずは北崎拓「サイキックデュオ」。同じ学校の、サイコキネシスを使う少年に近づく、先輩の女の子。彼女は読心能力の持ち主。お互い、異能力の持ち主である二人は、これまでその能力ゆえにいろいろな辛い思いをしてきた。そして二人で組むことによって、今度は人を助けようとする。超能力というと、安っぽくなりがちなネタだが、そこはさすがに北崎拓。恋愛風味を織り交ぜつつ、なかなか面白く読ませる。それにしても漫画で「サイコキネシス」って言葉、久しぶりに見たなあ。西原理恵子「山の家」は、「ぼくんち」系の寂寥感と詩情あふれる物語。「ぼくんち」が好きだった人は、こちらも要チェックである。山田玲司「水の鳥」は、ヤリチン男が最後につかんだ愛の物語。途中はあっち行ったりこっち行ったりしながら、最後はちょっと泣かせてきれいにまとめてくるあたりうまい。石原誠「スケートソング」は、絵から話からもろに井上三太の影響を受けまくったストリート系。井上三太の絵自体はアクが強いだけに、マネしてくる人がいるとは意外。作:伊仁完+画:梁慶一「THE FOOLS」は、全70ページの力作。西暦999年。法王が治めるバチカンは枢機卿にいいように振り回され、専横的な権力を振るい民衆の怨嗟の的となっていた。そして、街は性などに対するモラルが乱れ、頽廃していた。そこを襲った堕天使たちの軍勢。その中を、行きがかり上かかずらわったすご腕の殺し屋が暴れまくる。闊達自在なキャラクターが魅力。ページ数が多く、梁慶一の迫力ある作画にも支えられて読みごたえバッチリ。なかなか面白く読めた。あと、阿部潤「プチ」は今までどおり掲載。1色ページになりはしたものの。
 次号は2月28日発売。次号予告で確定しているのが、本上まなみのカラーグラビアだけってのはちょっとすごい。

【雑誌】別冊ヤングマガジン 1/12 No.005 講談社 B5中
 今号はH特集。
 前川かずお「闘破蛇烈伝DEI48」。回を重ねるごとに展開が過剰になり、マヌケさが迸る。馬鹿な表現が随所に満ちあふれ、力づくで笑わされてしまう。なんだか爽快だ。安達哲「曵舟の女」。美人だけど、やたらと強すぎる女性の淡々とした日常。「えっ、これで終わり?」という感じでさっさか終わってしまい、読んでいる側としてはなんだか取り残された気分。いい具合に力が抜けている。抜けすぎなほどに。今週はヤンマガ本誌、スペリオールに続いて安達哲3本である。大橋薫「MA-NA-MI」。今回はH特集であることを意識してか、なんだかとても美少女漫画ライクなノリでエロ。山崎さやか「主婦201号室」。朝っぱらからやろうやろうとせき立てる22歳の妻と、そのテンションについていけない夫32歳。突っ走る奥さんと疲れたダンナのコントラストが愉快。IKARING「少女の鍵穴」は、いけしゃあしゃあと空き巣をして暮らしている女の子と、浪人続きでうだつのあがらない男のお話。軽やかだが急がないペースが心地よい作品。
 天野明「ぷちぷちラビイ」が新連載。田舎の村から東京にやってきた「うさぎ大使」を名乗る転校生3人組。ちょいとイカれた奴らのおかしな日常。天野明は「少年スピン」で非常にテンションの高いクレイジーな世界を作り上げていたが、あのレベルを超えてさらにすっ飛ばしてくれることを期待。イダタツヒコ「ゴルディアス」も新連載で、こちらは「マジカル学園コメディー」と銘打たれている。学校の中枢部で、ナゾの鍵を使い扉を開いてしまった女の子。そこから出てきたのは世界のなんでも開けることのできる、「鍵師」を名乗る美少年。例えばサッカーボールに鍵を差し込み、ひねるとボールはバラバラに解体される。そんな能力を持つ彼が、学園に騒動を巻き起こすのだろう、きっと。蓮古田二郎「しあわせ団地」。このシリーズ、面白いなー。どこにいても居心地の悪いダメ人間のダメ日常を、ひたすら情けなく描き出す。馬鹿馬鹿しくて実に素晴らしい。

【雑誌】ヤングジャンプ 1/20 No.3 集英社 B5中
 毎度書いているが、山口譲司「BOiNG」が毎度面白い。今回は「全ての心優しきボイニストにこの話を贈る……。」という言葉から始まり、酒場でマスターがボインマスターに語る「哀しいボインの話」。今夜は「ボインのピエロ」って話だ。途中の展開といい、最後の締めくくりといい、ニヤリとせずにはいられない。山口譲司、ノリノリである。

【雑誌】モーニング新マグナム増刊 1/14 No.12 講談社 B5中
 最近とくに、回を重ねるごとにテンションが落ちつつある。創作系の息吹のある作品が減って、安定どころが幅を利かせてきた感じ。今号は清田聡が載っていないのでなおさらテンションが低く感じる。読める作品の数自体は以前と変わらないんだけど、今回は一つ一つから受けるインパクトが少しずつ弱かった。
 今回の「ネオ・デビルマン」は安彦良和。かなりベタベタで下らない。スベリ気味であることは確かだが、そこに趣があるともいえるし、とりあえずわりとどうでもよい出来だった。鶴田謙二「Forget-me-not」。最初の4ページのコマ割りはけっこう大胆。そして、嗚呼チャイナ服。マリエルのチャイナ服。鶴田謙二は、描かないときは本当に描かないが、いったん描くとやはりそのクオリティに惚れ惚れする。岩館真理子「月と雲の間」。天然系の母親に振り回される娘二人。のほほんとした味わいで、くすぐる味わいのギャグ風味。びっくりするようなタイプの作品ではないが、きれいにまとまっている。この雑誌だとビックリするような作品を求めてしまいがちなので、ちょっと不利ではあるが。安田弘之「ちひろ」。今回はクリスマスの夜のちひろの物語。クールで飄々とした物腰があっぱれ。土屋瑞姫の新連載「保険Gメン ウキタカ」は、保険会社の査定部に配属された若手と、その上司の活躍を描く作品。モーニング本誌に載ってそうな漫画。まあそれなりに面白くはあるが、それなりレベル。
 加藤伸吉「バカとゴッホ」は、正二が交通事故に遭って意識不明の重体に。彼の回復を待つ堺、そしてゴッホたち。今回のラスト、堺に語らせながら効果的なタイミングで効果的な演出を施し、ちょっと泣かせる。悩み苦しみながらも、前に進まんともがく彼らの姿はすがすがしい。冬目景「文車館来訪記」。今号もオール4色。なんかこの前の「イエスタデイをうたって」でもちょっと気になっていたのだが、最近の冬目景はデッサンがわずかではあるが乱れ気味な感じがする。仕事しすぎなんじゃないかなあ。佐藤マコト「サトラレ」。第2回め。第1回めは、設定がバシッと決まりオチもハマってて実に面白かった。考えることが四方八方にコトバとなって伝わってしまう特異体質を持つ天才「サトラレ」。彼らの才能を有効活用するため、周りの人々は、サトラレ本人が「自分がサトラレである」ということに気づかないよう四苦八苦する。前回はコメディタッチだったが、今回はサトラレと、彼らを取り巻く周りの人々の苦労を真っ正面から描く展開。前回ほどのクリーンヒットではないけれど、確実に読ませる作品。新人の中山一成「AIKO」は、平凡な男とちっちゃな昇天のおばば、そして孫娘を中心として、日常が淡々と展開していく物語。地味だけれども、サッパリとした読後感でなかなか面白い。絵の仕上げなどが安彦良和風。石田康成「台風と猫小屋」。素朴な絵柄と素朴なお話が持ち味。ラストはちょっとホロリとさせるいいお話。あと正木秀尚「雨太」は最終回。

【雑誌】少年チャンピオン 1/6 No.3 秋田書店 B5平
 巻頭カラーで「演神」「球鬼Z」の藤澤勇希が新連載。タイトルは「BM」。人口爆発収まらぬ未来が舞台。食料不足解消のため、人類は「BIO・MEAT」略してBMを開発しそれを解消した。BMがどのような形状のものか、今回ハッキリは描かれないが、金属やガラス以外はなんでも食い尽くす強力な消化能力を持つ生きた肉塊のようだ。それだけに、飼育施設の外に出た場合、恐ろしいことになる。普段は厳重に管理されている施設だが、地震と人為的なミスが重なって、BMが外に逃げ出してしまう……というところで第一話完了。このBMとの対決がメインとなるお話になりそうだ。主人公はたぶん、今回登場した腕白小僧ども。施川ユウキ「頑張れ酢めし疑獄!!」。今回は最後のヤツ「桃のレジェンド〜航海編〜」で思わず笑う。読者の裏をかく間合いが絶妙。

【雑誌】漫画ホットミルク 1月号 コアマガジン B5平
 コアマガジンから見本誌がなかなか届かないので購入してしまったが、家に帰ったら見本誌が到着していたのでダブり買い。今月から誌面が大幅リニューアルされ、それに併せて以前は独立して刊行されていたコミックジャンキーズが統合。同人誌レビューや作家インタビューなどもさらに充実。880円と、エロ漫画雑誌としては最高値の部類になってしまったが、この情報量を考えればコストパフォーマンスは高いと思う。今回は漫画のほうも気合いが入っていて、かなりいい出来。
 まずは形を変えて復活したコミックジャンキーズ部分について。特集は巨乳&美乳コミック。どちらかというと巨乳寄り。それから山文京伝インタビューもあり。エロ漫画新刊単行本レビュー執筆陣は、以前のコミックジャンキーズでも執筆していた永山薫、伊藤剛、我執院譲治に加えてDATゾイドが新規参入。4人で80冊超のエロ漫画単行本を一気にレビューしている。というわけで俺(我執院譲治)も20冊ほど書かせていただいている。なお、各レビューの文字数はそれぞれ300文字程度。個々のレビューの出来については各自で判断してもらうとして、以前は隔月ペースだったジャンキーズに比べ、月刊ペースで情報がフォローできるようになったのはデカい。できれば雑誌を買っていただけると、ジャンキーズが存続する期間が長くなると思うのでぜひ。自分の書いた部分についてはなんともいえないけれど、これからどんどん内容を上げていくべく頑張るのでどうぞよろしく。
 それでは漫画のほうに。まずうれしいのは、田沼雄一郎がひさびさに登場したこと。タイトルは「G街綺譚」。単行本「LoveMe」に収録されている、私立探偵モノ「月光街綺譚」シリーズの最新作である。私立探偵にいつもひっついているお嬢さまが、袴姿で大正浪漫、燃えるのだ。田沼雄一郎は、ホットミルクで描いているときがやはり一番しっくりくる。またときどき登場してほしい。インタビューが掲載されている山文京伝の「砂の鎖」は、奥様が子供によって堕とされていく過程が、先を急がずじっくり描かれている。濃厚な作品になりそうで期待。瓦敬助「菜々子さん的な日常」。毎度ゆったりとして開けっぴろげ。健康的でかつドキドキする感じがたまらなく好き。瓦敬助は今号で表紙も描いている。CG講座、インタビューもありだ。広瀬総士「おしえてアルムの揉みの木よ」は、エッジが鋭いシャープな絵柄が魅力。ページ数は少ないけど、なかなか達者。G=ヒコロウ「みんなはどう?」。今回はちゃんと載ってるー、と思ったら2ページだけ。あと才谷ウメタロウ「Sacrifice」は46ページと、読みごたえはあり。神と魔族の争う剣と魔法的世界……って感じで、あんまり好みでない道具立てではあるが。
 次号ではわんぱく、みほとこうじ、馴染しんも登場ってことで引き続き楽しみ。エロ漫画新刊レビューは100冊オーバー。俺も30冊ほど書いてます。今度は12月25日発売。買ってケロ〜。


12/15(水)……早歩きのハイアラーキー

 明日は会社の健康診断。ここ数年、酒量が増えているのであんまりうれしくない。健康のためにもちょっと歩くかとか思って、会社帰りに隣の駅から歩く。ただ歩くだけならけっこうよくやっているので、今日は早歩きにしてみた。普通に歩くと40分くらいかかる道をずっと早歩きしたのだが、それなりに運動にはなる感じ。ただ、25分くらい早歩いたところで「腹減ったなー」とか思ってパスタ系のファミレスに入って飯を食いつつビールを呑んだりもしたので、たぶん健康的には全然利いていないはずだ。意志のファッキン弱い俺よ。

【雑誌】ビッグコミックスペリオール 1/1 No.1 小学館 B5中
 リニューアル。表紙のロゴも変わった。なんとなくリイドコミックみたいな印象。
 読切で安達哲が登場。タイトルは「漂流女子高生」。扉は4色カラーで、美人のねーちゃんとYシャツ姿の男……という、ちょっとHな期待も……という絵柄だが、実際にこの人たちは本編にまったく関係ないあたりがイカしている。実際はデブで半分ハゲかかったオヤジと、ガングロで異生物系な顔つきをしたコギャルの二人が孤島に漂着し、罵りあったりしながらもなんとなく不思議なチームワークを作り上げるって感じの作品である。すごく面白いってわけではないが、それなりにまとまってはいる。安達哲にしてはかなり大人しい部類。巻頭カラーで「キリン」の東本昌平が新連載。タイトルは「SS」。妻と子供二人を抱えた自動車整備工の男が主人公。会社はうまくいっておらず、リストラの噂も出て、彼は鬱々と楽しまない。車を駆ることには人一倍の情熱を持つ彼だが、なかなか思うような生活はできない。そんなとき、彼はTVでパリ・ダカールラリーのスタートシーンを目にする。といった出だし。恐らくここからお話は膨らみ、ラリー漫画になっていくんだと思う。脂っ気はないが、骨太で渋い作風。じっくり読ませる作品になりそうだ。伊藤理佐「こんなんで一家」も新連載。4コマ漫画。乳のデカい女の子に、男が「好きだ」と告白するところから始まる。この人らしい、ちょっと下品で軽いノリのお話になりそう。あと、コラムで青木雄二が「銭道」という金もうけ講座の連載をスタートさせた。この種の連載だと、ヤングチャンピオンの「ゴールデンアップル」のほうが好みだが……。「ゴールデンアップル」は西条真一のイラストと、むやみやたらな威勢の良さが楽しい。
 次号では花村萬月+さそうあきらのコンビで新連載「犬・犬・犬」が始まるし、読切で石坂啓も登場予定。ここにきて、ずいぶん大幅なリニューアルが行われてきている。今までマンネリ気味な雰囲気のあったスペリオールだが、ちょっと楽しみになってきた。

【雑誌】ヤングマガジンUppers 1/5 No.1 講談社 B5中
 桑原真也「0(ラヴ)リー打越くん!!」。シノヴに血を吸われた京花が、血の臭いで性的興奮を覚えるようになる。そして、シノヴによる殺戮で発情した京花は……。今回は京花がやたらにH。しかも、これほど直接的な展開になるとは。ちょっとビックリ。つくづくこちらの予測を裏切ってくる作品だ。そういう先の予想がつかないところがいいんだけど。梶原崇「ゾンビ忍者バクチカ」。やたらに濃厚で、かなりヘンなノリが気に入っている作品。過剰な演出とか、セリフ回しとか、絵の感じとか実にヘン。包茎ちんちんに足が生えたみたいな形状をした巨大なバケモノとか、グロテスクな顔のついたかたつむり型のバケモノが主人公に塩をかけられ「つくつくほーっし」と阿鼻叫喚の声をあげてたりとか、「さっさと片付けてキンキンに冷えた脳汁で乾杯といこーぜ」などなどイカれたセリフとか……。割り切った展開が痛快。かなり特殊な作風なので、奇矯なモノをお求めの方にオススメ。
 次号からサガノヘルマーの新連載「コリドラー」がスタート予定。「レゾレゾ」のほうはどうなるんじゃろー。

【雑誌】ビジネスジャンプ 1/10 No.2 集英社 B5中
 巻頭カラーで中島史雄「Refrain」がスタート。気難しい義母のせいで夫婦生活もままならない男の家の隣に、クリスマス・イブの夜、一人の女性が引っ越してきた。彼女がその後、彼の生活をかき乱すことになりそうな気配。といった感じの出だし。山花典之「夢で逢えたら」は、例の二人が結婚。ここまでさんざん焦らしてきたが、ついにゴールインである。これからは結婚生活編に入っちゃうのかな?


12/14(火)……青銅諸君!

 思いもよらない雑誌から、今年の漫画&今までの漫画ベスト1投票企画のアンケート要請メールが届く。企画は部外秘なのかもしれないのでとりあえず雑誌名は書かないけど、男モノカッチョイイ系ファッション雑誌であるとだけは記しておく。意地悪して強烈なの投票しちゃおっかなー。ペンネームは無い「少女調教録」とか、蜈蚣Melibe「バージェスの乙女たち」とか。……でもまあ実際にはたぶんそんなに奇を衒いはしないつもり。とりあえずまずは1年分の日記を読み返して作品ピックアップしなくちゃ。

【雑誌】ネムキ 1月号 朝日ソノラマ A5平
 今市子「百鬼夜行抄」。今回も端整で、非常に美しくまとまっている。物語をちょっとヒネってきれいに着地する手際も鮮やかで、読ませるいいお話。でもやっぱりフキダシの数が多すぎるのは惜しい。も少し整理するとより読みやすくなって、もっと楽しめると思うのだけど。TONO「チキタGUGU」。百年間かけてマズい人間をおいしく熟成させてから喰うという行「百年」ことを行っている妖怪と、喰われる側の人間。主人公のチキタと妖怪ラー・ラム・デラルはそんな関係。しかし、彼らは同じように「百年」を行っていた妖怪と人間の姿をみる。百年もつき合っているうちにだんだん情が移って喰うことができなくなってしまう。チキタとラー・ラム・デラルの関係もだんだんそういう非常に密なものになりつつあるが……。ちょっと悲しく、そして暖かいファンタジックな物語。透明感があって、淡い読み口が心地良い。伊藤潤二「富江」。今回の富江は、彼女を愛する余りに殺してしまった男によってミンチにされている。しかし、富江はミンチにされた肉の一粒一粒から再生しようとする。それを恐れた男は再生するそばからまた富江をミンチにしていくが……。ミンチにした肉がどろどろと液状化しているのがたいへんグロテスクで、途中の展開は悪夢のよう。奇想の奔流は迫力あり。富江ミンチを酒にして、それを呑むあたりはとくに良い。うぐいすみつる「タコちゃんの青春シュビドゥバダ」によれば、ふんどしはゴムの圧迫がないので気持ちいいらしい。試してみたくなった。

【雑誌】別冊マーガレット 1月号 集英社 B5平
 きら「まっすぐにいこう。」。ヒロインの郁子が、秋吉とつき合っていることが原因で陰湿なイジメにあうハードな展開だったが、やっと少し光が見えてきた。この重苦しい雰囲気も緊張感があり、読みごたえがあった。こういう息が詰まるようなあたりをしっかり描いておくと、苦楽のメリハリが出る。河原和音「先生!」は、嫌がらせを続けてきていた後輩の女の子のお話が一段落。ストレートに恋愛してて微笑ましいですのう。

【雑誌】ヤングチャンピオン 1/1 No.1 秋田書店 B5中
 岡田和人「天使じゃないッ!」。読切で再登場。悪魔のおねーさんとやる気のないスケベ男のドタバタ。も少し露出度が高いといいかなー。今村夏央「ファイヤーキャンディ」。ヒロインのユキトが拉致され大ピンチ。怒り狂ったリョーキたちは、敵のアジトのまん真ん中に飛び込んでいくが……というところで以下次号。次回はヴァイオレンスな感じになりそう。

【雑誌】漫画アクション 12/28 No.52 双葉社 B5平
 なんか最近楽しみな雑誌になりつつある。今号のトピックはなんといっても、町田ひらく初登場、読切「青銅の味」。中学の同窓会の夜、ホテルに二人でいる男女。男は思い出す。彼と彼女が中学生だったころのことを。当時転校生だった彼女は、モデルである母と彫刻家の父が発する情事の声を漏れ聞き、複雑な思いのお年ごろだった。少年時代の男は彼女を初めて見たときから、とあることに気づいていた……。彼女の秘密を知りながら、6年間手は出さずに運命だけは信じていた男。一瞬一瞬の連なりを、印象的な構図で空間から切り取る。メジャー系で登場するのはエクストラビージャン(1999年10/30号)掲載の「虹蟲」以来だと思うが、今回のほうがよりエロ系で描いているときの雰囲気に近い。その分イキイキした感じ。クールな描写で物語を進め、少し苦みのあるラストで締めくくる。さすがのクオリティで興味深く読めた。かいともあき「白い少年」。素晴らしい。白い少年、中村玉男を愛する女の子、加藤愛が再登場。公園で王子様的ファッションに身を包んだ玉男と踊る!踊る! 踊りながら話す二人。馬鹿馬鹿しいノリ、妙に豪快なアクション、ダイナミックなポーズ、表情。この力の余りっぷりはハンパじゃない。おもしれー。あと、「漫歌」はやはり相原コージお休み。代わりにいとう耐が描いている。今回は相原コージの「跡目が欲しい……」という発言と共に「漫画作者二代目」の募集まで行われている。「何がオモロイの!?」が原因と思われるダメージは、相当に深いものだったような気配。


12/13(月)……庭に埴輪ニワトリ

 本日は帰りが遅かったので、読むのに時間がかかりそうな別マとネムキは明日以降。

【雑誌】まんがタイムジャンボ 1月号 芳文社 B5平
 今号もこうの史代「こっこさん」がお目当て。かわいらしくて心暖まる。そして4コマ誌では珍しい1ページぶち抜きのコマもハッと目を引く。線は多くないのに、美しい一幅の情景として完成されている。この線は、どこか懐かしくしっとりとして暖かい。

【雑誌】週刊少年ジャンプ 1/8 No.2 集英社 B5平
「BOY」の梅澤春人の新連載「無頼男」(「ブレーメン」と読む)がスタート。型破りな少年たちの、ケンカありロックありな青春物語といった感じ。作:ほったゆみ+画:小畑健「ヒカルの碁」。いい。塔矢アキラがキリリとしてて、バシバシとその実力を発揮しておりかっこいい。作品中の空気が凜としている。尾田栄一郎「ONE PIECE」。今回の舞台はデッケえ者どもが住まう島。個性的なキャラクターとダイナミックな描写、気持ちのいいセリフ等、相変わらずよくできた面白い作品である。デッカさが即、痛快な読み心地へとつながっている。

【雑誌】ヤングキング 1/3 No.1 少年画報社 B5中
 堀田あきおの読切「大家族」が掲載。両親+六男四女の大家族の中に生まれた少年の生活を、ドタバタ楽しく描いたお話。堀田あきおのいい具合に枯れた、でも肌にしっくりする感触の絵柄はけっこう好き。お話も地味めながら面白く読ませる。和む味わいでいいですな。それから花見沢Q太郎「僕とキミと犬の俺」。犬の散歩の途中ですごくかわいい女の子と知り合うが、なかなか現実は甘くないもので……。でもやっぱり惚れた弱みでいいように扱われてしまう。相変わらずすっきりと甘くかわいい絵柄で、トロトロである。

【雑誌】ビッグコミックスピリッツ 1/3・10合併 No.2・3 小学館 B5中
 巻頭カラーで曽田正人の”ミレニアム新連載”、「昴」がスタート。一見クールな小学生の女の子・すばる。だが彼女は、弟である和馬が脳の腫瘍のために記憶障害でずっと入院中という重い現実を抱えていた。そんな中、彼女は和馬の記憶をつなぎとめるべく、病室で身体中の力を振り絞って弟との思い出を演じ和馬に見せる。その姿を覗き見たた友人の女の子……という感じで第一話は終了。スタートからしてハイテンションで、相変わらず絵のクオリティも非常に高い。シャープでありながら熱を感じさせる。弾けるような感情表現、動きのダイナミックさは見事。それはそうと「め組の大吾」が、藤田和日郎「からくりサーカス」と共にアニメ映画になるそうだ。2000年1月22日(土)、23日(日)、新宿ピカデリー3にて9時から1回上映とのこと。問い合わせ先はp.20の柱を参照のこと。映画といえば伊藤潤二「うずまき」も映画になる。詳しくはhttp://www.uzumaki.to/へ。それにしてもいいURLだな、コレ。江川達也「東京大学物語」。今回はけっこう面白い。谷口さんと村上のやり取りが楽しい。面白いときはちゃんと面白い漫画だと思う。読めないときは本当に読めないが。青山広美「ダイヤモンド」は今号で最終回。静かに爽やか、きれいなラスト。ちょっと寂しい感じではあるけれど。

【雑誌】ヤングマガジン 1/10 No.2 講談社 B5中
 望月峯太郎「ドラゴンヘッド」が最終回。これだけのデッカい話だったわりには、なんだか中途半端な終わり方という印象。単行本でまとめ読みすると印象が変わるかもしれないが。月イチ連載、安野モヨコ「花とみつばち」、安達哲「バカ姉弟」が共に掲載。両方とも面白い。両方とも月イチなんだから、一つの号に集中させず別の号に分けたほうが雑誌的にはいいのではとか思わないでもない。それにしても「バカ姉弟」だが、最初はすごくやる気のなさそうな作品だなーと思ったものだが、連載が続くにつれだんだんいい味を出してきた。力の抜けっぷりが絶妙である。今回は、日々デルモのねーちゃん用の服をデザインすることに倦んだファッションデザイナーが、バカ姉弟にみつばちなどの姿をかたどった衣装を着せて現実逃避するというお話。サガノヘルマー「レゾレゾ」は後編掲載。本筋がどこにあるのだかよく分からないまま、とりあえずエロをやっておく無軌道性が気持ちいい。無軌道であることに関しては、すぎむらしんいち「超学校法人スタア學園」。演技の修行するのかと思えば。下らなくて素晴らしい。平本アキラ「アゴなしゲンとオレ物語」は、ゲンさん逮捕&脱走編が完結。相変わらずヒドいお話だ。ヒドいっていいよね。


12/12(日)……金玉均's roomへようこそ

 サッカー天皇杯3回戦、横浜FC vs.ヴェルディ川崎をTV観戦。結果は2-3で横浜FCはVゴール負けしたが、内容はとても面白かった。ヴェルディに退場者が一人出たこともあるけれど、サイドをぐいぐいとえぐったり中央突破をはかったり攻撃がうまく行っていたし、選手たちから気迫が感じられた。とくに良かったのが右サイドバックの幸田。ベテランながら果敢にあがってセンタリングをぼんぼん上げまくり頼もしかった。あと、後半途中出場したMFの高木。本来はボランチで起用される選手だが、本日はほとんどFW的な役割。ボランチとしてはボールをこね回しすぎでミスも多く危なっかしいのだが、ドリブルなどのボール扱いがうまく運動量も豊富。今日はその特徴が存分に発揮され、ポストプレーやロングシュートなど大活躍。パベルの2得点両方に絡んでいた。気になったのは、渡辺一平、稲垣のセンターバック二人。スピードなさすぎ。とくに稲垣は守備範囲が狭くボールへの反応が鈍いので、むしろ高田を起用してほしかった。それにしてもヴェルディは、チャンスは少なかったけど、それを実にしっかりとものにしていた。ここらへんがJ1とJFLの格の違いって感じがする。ともあれ、今日の試合は面白かったし、これなら2001年にJ2に上がってもそれなりにやれるかもと思ったのだった。

【単行本】「王道の狗」5巻 安彦良和 講談社 A5
 蝦夷地での強制労働から脱走した貫正人=加納周助は、アイヌに身をやつし武芸を学び、金玉均のボディガードを経て、勝海舟の元で働くことに。船乗りとなって、中国−朝鮮−日本の間を行き来するスパイというか遊軍というかな役割を担うようになる。彼の活動を通して、戦争の世紀へと突入していく日本を描く。最近ずいぶん安彦良和も漫画がうまくなってきたが、このお話もなかなか読みごたえがある。もともとすごくうまかった絵に加えて、歴史的知識という武器を身につけたのは大きい。金玉均、勝海舟、陸奥宗光、李鴻章、袁世凱、孫文……といった、時代を彩った人々も各所で登場し、物語を華やかなものとしている。物語として、生きた感覚でこの時代を見てみたい人はかなり興味深く読めると思う。

【単行本】「白い冬−黒い夏」 月角 心交社 A5
 毎度おなじみ、確信犯ホンモノ系ロリ漫画。鉛筆描きタッチの凶悪にかわいいロリ娘たちが、楽しそうにちんちんいじったり、身体を触りっこしたりしててけっこうエロい。ところで最近の法案的事情とかのせいか、月角先生が描く女の子の乳がデカくなっているのは気になる。月角的女の子はやはりつるんとしていてほしいものではあるが、まあいろいろあるし仕方ないのだろう。読めることのほうが重要。

【単行本】「なんのこれしき 大江戸馬鹿艶劇」 EB110SS メディアックス A5
 平ぺったい顔つきの絵柄が特徴のEB110SSの初単行本。江戸時代モノを収録。ちなみに成年コミック。江戸時代モノより現代モノのほうが好きだが、まあそれは今後に期待ってことで。それはともかく、この人の絵は好きだ。口が横方向にカパッと開くキャラクターたち。表情がくるくると変わるが、どこかのんびりしていて和む。女の子たちが、かわいすぎないところがいい。多少の野暮ったさがたまらない。線がシャープすぎないあたりも。つまり結果的にはかわいいんだけど。


12/11(土)……MAJIでまじなう5秒前

 ホームページを移転して2ヶ月近くが経ったが、ようやくYahoo!がリンク先を変更してくれた。なかなか登録内容を変更してくれないんで、Yahoo!はもうこういう依頼には応じてくれないのかなと思って半ば諦めていたのだが、根気強くやると変更してくれる模様。申請をしつこく出したので、Yahoo!側の担当者さんにはご迷惑をおかけしたかもしれず申し訳ない。以前のスペースのアクセス解析を見ても、やはりYahoo!からのアクセスが一番多かったので、これでちょっと安心。

【雑誌】コミックビーム 1月号 アスペクト B5平
 今号も充実。
 まずは連載陣。巻頭カラーは桜玉吉「幽玄漫玉日記」。雑誌を開くと、桜玉吉が暗い海と灰色の空をバックに佇む姿がドーン。インパクトあるなあ。志村貴子「敷居の住人」。今回も面白い。ともに学校になじめずフラフラし続ける本田くんとキクチナナコの間柄が、いい具合にこなれてきていて心地いい。大きな物語はないのに、彼らが暮らすさまを見ることがなんと楽しいことか。有川祐「彼女とデート」。セッちゃんとノギーがデート。八神はその間にプロポーズを受ける。八神の楽しまぬ目つき、暗い夢、無口なセッちゃんなどなど、日常は淡々と進みつつピーンとした緊張感がある。これからもますます楽しみ。羽生生純「恋の門」。今回は巻中4色カラーあり。門の才能に目をつける女性の出現、門のバイト先の店長と恋乃の出会い。打算と自己愛が絡みながら結びついていた門と恋乃の間に暗雲が漂う。次号以降かなり揺れ動きそうだ。タイム涼介「東京カイシャイン」。あけっぴろげな下品ぶりと、下らないギャグが楽しい。新商品のデザインと名前が非常にナイス。
 しりあがり寿「弥次喜多 in DEEP」。天に向かってどこまでも伸びる石段を上り続ける、弥次喜多と宿場のオカマ。その道程で交わされる彼らの会話はユーモラスだが、さまざまなものが消えていく悲しさと、それらに対する暖かい思慕に満ちていて、読んでいて思わず泣けてきた。余分なものを削ぎ落とした表現が、ダイレクトに突き刺さってきて胸を打つ。いましろたかし「釣れんボーイ」。今回もすごい。釣り用のまきえを、渾身の力を込めて叫びつつ握りまくるヒマシロ先生の勇姿。「わかるかっ!? バカ共」「いやわからんでいい!!」。サイコー!! 鮪オーケストラ「BAD TRIPPERS」は最終回。イマイチ乗れず。金平守人「かねひらだもの」。いい加減な線で描かれた女の子が、なんとなくフラフラしつつ行き当たりばったりな生活を送る。女の子のセリフ回しがちょっと楽しい。今回は面白かった。

 それから今月は読切が実にシブい。松山花子はライトで今風だが、なんといっても入江喜和と三好銀という取り合わせがすごい。まず入江喜和「あこがれ」は、例の小料理屋一家の生活を描いた作品。下町情緒なんて言葉で片付けてしまうのはなんか安っぽくてイヤだが、この世界の温度はしっくりと肌になじむ。三好銀「まじない女のトマトソース」もいい。ちょっとした問題はあるがおおむね普通の人たちの日常を、しめやかな筆致で淡々と描き出す。ものすごく地味な作品だが、味わい深い。そして新谷明弘「期末試験前也 〜僕と僕と僕と君〜」も面白かった。期末試験の勉強にいそしむ少年が、ときおり細胞分裂する。この世界では人間は単細胞生物だ。にょごにょごと分裂を繰り返しながら、試験勉強は延々と続く。発想の特異さ、そしてそれを実に自然に昇華している。このシリーズ、回を重ねるにつれどんどん良くなってきている。
 次号では須田新太郎と市橋俊介が新連載。そして松本充代、高木律が読切で登場。ますます熱いコミックビームだ。

【雑誌】コミックバーズ 1月号 ソニー・マガジンズ B5平
 今号の目玉はズバリ古屋兎丸。4月号から始まる新連載「Marieの奏でる音楽」のプロローグ編30ページ。最初のページをめくって、扉の見開きを見た瞬間にほうっとため息。細部まで描き込まれた風景は、いっぺんで読者の脳裏に世界のイメージを刻み込む。深い谷と山の間を縫って走るトロッコに乗って、目的地へと向かう少年・カイと少女・ピピ。しんしんと静かで、荘厳。透明で清浄な世界は、涙が出るほどに美しい。このクオリティで毎回やられたら鼻血噴いちゃうかもしれん。楽しみなことこのうえない。すでに期待はパンパンに膨れ上がっているし、古屋兎丸はきっとそれを裏切ることはないだろう。巻頭カラーで新連載、作:藤木稟+画:坂本一水「SUZAKU」がスタート。「帝都物語」っぽいお話だが、1回めはなんだか安い印象であまり興味が持てなかった。細野不二彦「眠らない男」は、夢を喰う獏に悩まされ眠れなくなった男の物語。さすがにまとまってはいてきっちりお仕事という感じ。冬目景「羊のうた」。一砂に血を吸われる千砂の表情がやたらに色っぽい。これはもう千砂ファンは狂喜乱舞、のたうち回って天に祈れ。あと、大雪師走「はち」が新連載。

【単行本】「新ナショナルキッド」 丸尾末広 青林工藝舎 A5
 1980年代後半に発表された作品を中心とした作品集。このころの丸尾先生はキレまくっててすごく面白い。病的で不吉で、かつ美しい。読み進めていく読者を、いともやすやすとエロとグロの渦巻く異世界に導く。美麗な線の一本一本から甘美な毒がにじみ出ており、クールな悪意に翻弄、圧倒されずにはいられない。

【単行本】「トトの世界」1巻 さそうあきら 双葉社 B6
 女性を連続して拉致し殺害していた殺人鬼によって、17年間犬とともに育てられ、人間の世界から完全に遮断されていた少年の物語。殺人鬼の狂気が、完全なる野生児を作り出す。殺人鬼の逮捕とともに、彼は外界に迷い出し、女子高生・真琴の家に転がり込む。彼女たちと暮らす中で、その少年は「トト」と名付けられ、人間の世界を一つひとつ認識していくが……。野生児が人間世界に触れていく姿を通して、「人を人たらしめているもの」が何かという非常に大きな問題を描き出す作品。さそうあきらは一見地味だが、その実力は確か。これだけの大きなテーマをどう料理していくのか、先が楽しみな作品。うまくいけばすごい作品になるだろう。さそうあきらだけに、うまくいかなかったとしてもそれなりの出来には仕上げてくると思う。

【単行本】「ザ・ワールド・イズ・マイン」9巻 新井英樹 小学館 B6
 トシモンは社会現象になり、ヒグマドンの脅威は人の心を揺るがす。大事に育まれてきた友情を描く一方で、問答無用の人間破壊も行われる。意味と無意味がハイスピードで交錯し、読者を世界に引きずり込んでグラグラと揺さぶる。大作である。この作品は、トシモン、マリアといった中心キャラクターもいいのだが、そのほかの周辺キャラクターが実に強烈な印象を残す。ひとクセふたクセある奴らばかりで、それがまた物語を盛り上げる魅力となっている。物語の部分部分では、完全に彼らが入れ替わり立ち替わり主役となっている。

【単行本】「アゴなしゲンとオレ物語」3巻 平本アキラ 講談社 B6
 身体中を覆う剛毛、ムサイ顔。バツイチ独身32歳の、二人だけの運送屋を経営する人間のクズ、ゲンさんの愉快で下品で馬鹿でどうしようもない人生を描く。2巻に入っても、手を触れたくないむさ苦しさは健在。ゲンさんは、横暴で小心で醜男で下品で無教養で、まったく救いようがない人物だし、その人生は醜悪だが、それは実にカラリとしている。近くに寄りたくはないが、遠くで見ている分には愛すべきダメ人間である。過剰でパワフルな展開がべらぼうに楽しい。ゲンさんのいやったらしい笑顔とか、新キャラのやたらにイライラを誘うプリプリしたケツだとか、人のイジメ心を刺激するアイテムを絶妙に描き出している。好き嫌いは分かれるかも知れないが、一度好きになったらやめられねえ、ニヘヘヘ。


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