「ワガランナァー」表紙 羽生生純
Jun Hanyunyuu

ワガランナァー

全1巻 アスペクト アスペクトコミックス
ISBN:ISBN4-7572-0078-1 C0979 本体価格:1300円
初版発行:98/07/07 判型:A5

コミックビーム連載作品

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 奇才・羽生生純がコミックビームで連載した作品。羽生生純はやけに手足の長くて、見るからにどこもかしこもアンバランスな(精神面も含めて)感じのするキャラクターが特徴。老人やルンペンなど、しわしわで汚らしい(というと老人に失礼だが)人間を描くのが大得意。
 絵を見ると一目で分かると思うが、なにかキャラクターたちの目にまともでない光を感じる。どこかこの世でないはるか遠くを見ているかのような……。そして「ワガランナァー」の内容もこれまたアブナイのだ。「ワガランナァー」の主人公はルンペンの老人、テーさん、ヨメン、一人旅の3人。これにかつては女王様をやっていて零落したイッキュという女性が加わる。
 あんまりネタをバラしたくはないが、羽生生純テイストを理解していただくために「ワガランナァー」の第11話「サマードライブ」(コミックビーム1997年9月号掲載)の内容を以下に要約する。ネタを知りたくない人は急いで目をつぶるべし。

【以下要約】
 ある日、4人組は「町内サマージャンボパトロール車両徴発」として、通りすがりの一般人の車を奪う。そのまま気の向くままにドライブするが、免許を持っていないテーさんが運転した車はあえなく事故で大破。行き着いた場所は深い山の中。
 途方に暮れる4人だが、山のふもとの牧場で馬を一頭捕獲。その馬にまたがったテーさん、「ヒゲジジイが馬に乗るとなんかエラそうでヤな感じ」とのイッキュの言葉でスイッチが入る。暴走を始めるテーさん。「自分はエラそうなのではない。エラいのである。自分は高貴な家の出なのである」とやみくもな確信を抱いたテーさんは、町内宇宙サマージャンボパトロールに出かける。
 パトロールの途中でふと立ち寄った茶屋。そこには名を持たぬ娘が一人。テーさんは彼女を「おっぺしょ娘」と命名し、この土地を守りパトロールするよう指令を出す。……そして40年後、老婆になったおっぺしょ娘は額に飾られたパトロール隊長テーさんの姿(おっぺしょ娘画)に本日のパトロール終了の報告をするのだった。彼女はあれからおっぺしょ娘として、日々山を守り続けていたのだ……。
【要約終了】

 以上の要約でどんなお話かつかめただろうか? つかめなかった人も多いに違いないが、事実お話は突拍子もない。そしてキャラクターたちの顔。とくにおっぺしょ娘。ラストでパトロール終了報告をするときの至福の表情。服装も明らかに幸福の国に旅だってしまっている感じ。これ以外の話も毎回毎回、「こんなん載せていいんか?」といいたくなるようなアブナイのばっかし。とにかくすごい迫力なんで、ぜひ読んでみてほしい。

「強者劇場」表紙  なお、羽生生純の単行本には、
「強者劇場」 ISBN4-7561-1187-4 アスキー出版局
「ファミ通のアレ」全3巻 アスキー出版局 原作:竹熊健太郎

の4冊がある。この中で俺のお勧めは断然「強者劇場」(画像)である。「ファミ通のアレ」も絵はものすごいのだが、内容はあんまり面白くないところも多い。「強者劇場」は短編集なのだが、どの作品も羽生生純らしいイカれた作品となっている。その中で俺が強く推す作品は「キャンデーヅ」。「ワガランナァー」に出てくる3人組オヤジどもみたいな奴らが、道端に落ちていた奇妙な薬を飲んで、角を生やしたり足が8本になったりするなど、異形の姿に変身するという話。「まあ、よくこんなアブナイ話を……」と思うような作品。必見。

 羽生生純にはこのほかに、ビームで前に連載していた「サブリーズ」という作品もあるのだが、これは単行本にまとまっていない。ぜひぜひ単行本にしてほしいもの。頼むぜ、アスペクト。