成田アキラ
Akira Narita

超愛の人

全5巻 講談社・モーニングKC 判型:B6

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「超愛の人」5巻の表紙なりー  オヤジ系週刊誌などのテレクラ漫画でおなじみ、成田アキラが突如としてモーニングに連載した作品。成田アキラというと、「テレクラに行ったり温泉に行ったりして、SEXをしまくっているだけ」の人という印象を持ってはいないだろうか? いや、たしかにそういう人なんだとは思う。しかし、そういったテレクラ漫画とかもまとめて読むと、なんか非常に人間の欲望の奥深さを垣間見れて興味深かったりするのである。
 そして、この「超愛の人」も非常に面白い作品だった。中盤から最後のほうにかけて、けっこうダレる展開はあったものの、最初のほうのインパクトは素晴らしい。

 ストーリーはこんな感じ。
 平凡なサラリーマンだった一平は行き詰まっていた。現実が虚構に見えてしょうがなかったのだ。仕事などの忙しさで本来の自分を失っていたと考えた一平は「野性への回帰」を思い立ち、深夜にジョギングを始める。その途中で、ふと通りがかった植物園。無人の植物園の中を走っているうちに一平は強烈な衝動に駆られて、服を脱ぎ捨て全裸で走り始める。そのとき、前方から一平と同じように全裸で走っている女性が現れた。二人はたちまちにして、相手のすべてを受け入れる。走っていて、すれ違うだけで体が熱くなり強烈なエクスタシーを迎えるのだった。
 女性の名前は「空子」。一平にとっては運命の出会いだった。彼女は妙艶亭亜院という師匠のもとで、茶道を習っている女性だった。この妙艶亭亜院は、「わび」「さび」に加えて、新たに「艶=まび」という美の概念を打ち立てそれを探求する人間だった。ここから一平にとっての、新たな人生が開けていく……。

 で、一平の探求が始まっていくのだが、その過程の描写がなんだかすごいのだ。例えば第1巻に収録されている空子との出会いのあたり。走りながらすれ違うだけで相手のすべてが分かり、極限の快楽まで昇り詰めてしまう。また、二人が相手と約1mくらいの間隔を空けたまま体の動きをシンクロさせ、体全体をくねくねさせたり、ジャンプしてみたり、ジグザグに走り回ってみたり、なんだかわけのわからない触れ合いも面白い。この意味なさげな突飛な行動も実は二人にとっては性行為の一つだったりするようだ。

 この二人の追求していく愛の形もまたすごい。肉欲を果てしなく崇高に昇華させていって、アガペーの愛に近いところまで行ってしまっている。 最初のほうは、「なんだ成田アキラか」とか思っていたが、その圧倒的なテンションの高さに押しまくられてしまった。絵は別に色っぽくないんだけど、実に深い性の世界を描いていて哲学的でさえある。
「テレクラ漫画」というイメージで馬鹿にしていた人は、ぜひ一回読んでみてほしい。成田アキラに対する見方がきっと変わるはずだ。

巻数ISBNコード初版発行価格
1ISBN4-06-328388-7 C997994/10/21520円
2ISBN4-06-328399-2 C997995/01/23520円
3ISBN4-06-328408-5 C997995/04/21520円
4ISBN4-06-328420-4 C997995/07/21520円
5ISBN4-06-328423-9 C997995/08/23520円