神塚ときお
Tokio Kazuka

ゆめいろの翼

全2巻 角川書店・ドラゴンコミックス 判型:A5

巻数ISBNコード初版発行価格
1ISBN4-09-926045-X C037994/10/30980円
2ISBN4-09-926052-2 C097995/01/30980円

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「ゆめいろの翼」表紙だよん  神塚ときおというと、バイク大好きで元気いっぱいの少女が飛び跳ねるって感じの作品の印象が強いが、この作品はそういったものとはちょっと雰囲気が違う。
 あらすじはこんな感じ。

 ずっと頼りにしていた姉が亡くなって以来、すっかり内向的になり、笑うことを忘れほとんど人とも話せなくなっていた少年・勇。鬱々とした毎日を送っていた勇の前に、ある日、天使が現れる。それは死んだはずの姉・あやかだった。しかし、彼女の姿を見ることができるのは勇だけ。それでも、その導きによって次第次第に勇はほかの人に心を開くようになり、ゆっくりと成長を遂げていく……。

 元気な少女たちが活躍するバイク系の話と違って、この主人公の勇はすごく内気でまともに自分の意見をいうこともできないもどかしい少年だ。物語にも、当然バイクもののような明朗快活さはない。しかし、主人公・勇がいろいろな出来事を通して、しだいにはっきりとものを言えるようになり、自分でものごとを判断できるようになっていく、その成長の過程が丹念に描かれていて、非常に感動的だ。神塚ときお=バイクという感じで見ていた俺としてはとても新鮮だったし、また感心した。

 セリフ回しや、端々の描写にオタクっぽいノリはある。とくにキャラクターが初登場するときに、いちいち「CV」(キャラクターボイス)といって声優の名前が書いてあるのはちょっと……と思う人もいるだろう。ラストもわりと予定調和的ではある。
 でも、この物語は面白い。ラストの予想がつこうが、余計な描写があろうが、それはこの物語の価値を損なうものではまったくない。誰がなんといおうと、いいものはいいのである。

 神塚ときおの作品の中で、「ゆめいろの翼」に似た路線のものとしては「おとうさんといっしょ!」(富士見書房)があるが、完成度的には「ゆめいろの翼」のほうが上回る。両作品とも機会があったらぜひ読んでもらいたい。