オス単:2003年4月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。

 日記形式だと、どうしても日にちが過ぎてしまうと大量の過去ログの中に個々の作品が埋もれてしまうため、このコーナーではダイジェスト的にまとめてみました。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則としてしませんので、普段日記を読んでくださっている方にとっては読む意味がないかもしれません。手抜きといえば手抜きなんですが、まあその点はご容赦ください。

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でもどんどん入れていきます。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、わりと省略しがちです。


▼強くオススメ

【単行本】「爆音列島」1巻 高橋ツトム 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 この漫画、すごく好きだ。お話はちょっとしたことで補導されて転校した少年が、転校先の中学校の友達と一緒に暴走族への道を歩んでいくというもの。舞台設定は1980年東京。そのころの風物をふんだんに盛り込みつつ、一人の少年が、いかに暴走族というムーブメントに身を投じていったかを描いていく。この作品の素晴らしいところは、ゾク描写が非常に生々しいこと。別に突飛な設定なんぞ必要としない。いかにもいそうな奴ら、ありそうな出来事だけに臨場感は抜群。端々に登場するアイテムとかセリフとかも良くて、例えばステッカーを売れと先輩に命令された主人公の仲間が「オレよォ『成りあがり』買っちまって金ねェんだよ」というシーンなんかすごく好き。この時代のヤンキーたちが何を考え、どう生きたかということをつぶさに語ってくれる物語には興味津々。

 漫画で暴走族モノっていうと、やれ悪のグループと抗争を繰り返す正義のヤンキーだの、だらだら続く青春日常空間だの、公道バトルだのが描かれるんだけど、この作品にはいってみればそういう「ドラマ」はない。あくまで普通の少年が普通に暴走族になっていく物語。つまり普通の暴走族モノは、「暴走族になってからどうするか」ってドラマだったりするんだけど、「爆音列島」では「暴走族になっていく」という体験そのものがドラマであり日常であるわけなんだよね。正義だの悪だのではなく「そこに仲間がいるから」「ただなんとなく」「友達がやってるから」といった、もうありがちもありがちな理由でゾクになる、そういった過程というのはこれまでの暴走族漫画では意外と語れてこなかったような気がする。この作品のヤンキーは異世界のヤンキーじゃなくて、たしかに自分も生きたその時代の、生のヤンキーたちなんだよね。そこに惹かれます。

 ところでこの単行本、カバー見返しのところにある高橋ツトムが矢沢永吉についての思いを語った言葉がえらくいい。「みんな永ちゃんから生き方を教わり 夢を見た オレはカミさんにプロポーズした後『長い旅』を歌った」。あんたカッコ良すぎるよ!

【単行本】「阿佐谷腐れ酢学園」 SABE ワニマガジン A5 [bk1][Amzn]

 精神鑑定で「終わってる」と出た者だけが入学できる学校「阿佐谷腐れ酢学園」! そこに集まった終わった生徒たちが繰り広げる、どうしようもない日常を描いてくアブノーマル学園モノ。登場人物はヤクザの娘のブルマちゃん、その影武者としてヒットマンに狙われるブルマちゃんの盾として入学させられた日陰ちゃん、ウンコもりもりしまくりなウンコ太郎、校内に大量に生息しているペンギンを虐殺しまくっているペンギン虐待女……と、出てくるキャラは当然ヘンなのばっかり。

 いちおう主役はブルマちゃんと書いてあるのだが、彼女にコンプレックスを抱きつつ愛さずにはいられない日陰ちゃんが物語の中心人物といっていい。ブルマちゃんにイジメられたり、彼女に対する征服欲に目覚めたり、アナルの快感に酔いしれたりと日陰ちゃんの人生は波瀾万丈。でも全体としてはまったりしているような気もする。そのほかのキャラではブルマを愛し、いつもフード付きの服を着込んでおり変態的な趣向の持ち主でもあるフード女もいい味を出している。閉じた世界の中で怪しい奴らが怪しいなりに、平和に蠢いている。そんな様子を見てニヤリとしたり脱力したり爆笑したりする作品。下らなくて大好き。

【単行本】「こんちゅう稼業」 秋山亜由子 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 小さき虫たちをいとおしみ、そこから実に素敵なファンタジーを紡ぎ出す描き手、「虫愛づる姫君」秋山亜由子の単行本第2弾。この単行本も素晴らしい。短編集だが、虫たちの描写はリアルなものありコミカルなものあり。表紙からして後ろ姿のこおろぎが、横笛を吹いているという構図。画風はとても上品で細やか。一つ一つの描線が非常に丁寧で、本当に虫たちに愛情込めて描いてるんだなあということが伝わってくる。第一単行本の「虫けら様」[bk1][Amzn](感想はオスマン2002年5月の日記より参照)と併せてお勧め。

【単行本】「浅倉家騒動記」1巻 桝田道也 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 いや〜、これいいよ。下らなくて面白い。というわけでモーニングにときどき掲載されていた時代劇モノのギャグ漫画が単行本化。江戸時代は幕末、江戸から近いような遠いようなという中途半端なポジションに位置するとある藩に仕える、浅倉家の面々の活躍を中心としたお話。浅倉家の当主、その息子、お殿様と登場人物たちがみんな間が抜けているのは見てて楽しいし、ギャグもけっこうヒットするものが多くクスクス笑えた。とくに臆病で武士としては全然見込みなわりに手先は意味もなく器用で、ASIMOみたいなからくりを作っちゃう浅倉息子のエピソードなんかすごくいい。絵は垢抜けないものの慣れてくるとだんだんそれが味になってくる。帯に吉田戦車がコメントを寄せてるのはちょっと驚いたけど、確かに彼が気に入るのも分かる。ボケにもツッコミにも殺伐としたところがなくあくまで呑気。ちと画面がゴチャゴチャしてて読みにくいところはあるものの、基本的には肩の力を抜いて気楽に読める。なかなかいいセンスしている。こういうギャグの描き手って貴重だと思いますよ。キレもだんだん良くなってて期待を持たせる新鋭。

【単行本】「マニマニ」 宇仁田ゆみ 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 イッツソーキュート! 宇仁田ゆみがFEEL YOUNGで描いている恋愛モノのオムニバス形式なストーリー。第一話は東京での仕事をやめて実家に戻ってきた初音というねーちゃんが主人公。久々に田舎に戻ってみたら、昔っから自分になついていた近所の歳下のコがけっこういい男に育っててびっくり……というところから生まれるラブストーリーを描いている。んでもってそれ以降のお話は、彼女たち近辺の人たちへ主役がバトンタッチされていきそれぞれの恋愛模様を描いていく。で、最後は初音たちのエピソードにまた戻ってくるという感じ。恋人たち、それから恋人がいない女子男子といった人たちの想いが、暖かく可愛らしく描けていて読んでいて楽しい。ラストがハッピーエンドできれいに締めくくられているのもマル。読後感を良好にしてくれている。なお、現在発売中のFEEL YOUNG 5月号に、初音の二人の姉を描いた「マニマニ」番外編も掲載されている。こっちもいいお話なんで興味を持った人はぜひどうぞ。ところで帯に浅田弘幸が推薦の言葉を書いているのだが、「彼女と一緒にヤロウ共も読むと吉!」とかいってる。ひどいや。彼女のいない男子が読んでも面白いですよ。


▼一般

【単行本】「こどものあそび」 南Q太 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 田舎の村で育った一人の背の高い女の子の人生遍歴を、淡々と追いかけていく物語。えーと南Q太の自伝的なお話なのかなあ。それはどうでもいいと割り切るべきか、切り離して考えるべきかはちょっと悩ましい。ただお話としては面白いと思う。自然体で一人の女の子の、そのときどきの気持ちをすくい取った透明感のあるお話。こういうのだと恋に生きるお話になりがちだが別にそんなんでもなく、そのときどきで運動に熱中してみたりバイトにいそしんでみたり。そういった生活をごく自然っぽく描けているのは高い技巧があってこそ。生活空間内の空気を描くのがうまいなーと感じる。

【単行本】「ジンクホワイト」3巻 小泉真理 少年画報社 A5 [bk1][Amzn]

 これにて最終巻。きれいな締めくくりだったと思う。美大を目指すマキと、彼女になついてくる後輩の男の子。二人の関係を軸に描かれる青春物語。やっぱりキャラクターに魅力があるなーと思う。別に珍しい人格、外見とかじゃないんだけど、ごくフツーにまっすぐな人たちである点が好ましい。読んでいてたいへんに気持ちいい作品でした。

【単行本】「踊る島の昼と夜」 深谷陽 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]

 神々、そして魔の住む島・バリで和風居酒屋を経営している男を主役として、島で起こる魔術がらみの事件を描いていく読切シリーズを中心とした単行本。この人の作品には、その地にある熱気、魔術が行われていることを素直に信じたくなるような空気が、画面の中にしっかり封じ込められているのがいい。あと登場する女性たちがみんな魅力的。お話もキレが良くて粋だ。

【単行本】「いばらの王」1巻 岩原裕二 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 身体が石化していくという治療不明な奇病「メデューサ」にかかり、治療法が確立される未来に望みをたくしてコールドスリープに入った人々。彼らば目覚めてみるとそこは約束された未来ではなく、見渡す限り人の姿はなく、巨大生物たちが跋扈する世界であった。主人公は、双子のシズクを残して自分一人だけがコールドスリープするメンバーに選ばれてしまったことを負い目に感じ続けている少女・カスミ。彼女と一緒に目覚めた数人の人々、とくに何かいわくありげなマルコ・オーエンを軸として、異世界での冒険譚が進行していく。

 内容的にはとくに難しいところはなく、派手に展開する未来モノアクションといった感じ。岩原裕二の滑らかでダイナミックな作画は見ていて気持ちいい。うまいなーと思う。ただストーリーの牽引力は今のところあんまり強くないかなという印象。舞台設定や作画は良くアクションもしっかりしてるんだけど、キャラの魅力がまだあんまり出てないような気がする。主人公のカスミがもっと物語を引っ張っていくようになってくると、面白みが増してきて、さらにもっと広い世界が描かれ出すと面白くなってくるのではないかと。1巻はまだ序章といった趣。

【単行本】「ちまちまぱぺっと」 ひな。 角川書店 B6 [bk1][Amzn]

 お人形さんと純情少年が織り成す、かわいらしくて微笑ましいコメディ。主人公は、女の子と見間違うばかりの外見で、人形師になるという夢を抱えた男の子・サトミくん。彼は同級生の女の子・桜坂さんに夢中だけれども、彼を幸福にしようとやってきたときどき人間の女の子の姿に変わるちっちゃい人形のむめのおかげで、その仲がうまく行かなくなってしまう。この作品でまず目に付くのは登場人物たちのかわいらしさ。むめはもちろんのことだけど、サトミくん、桜坂さん、それから里見くんのことが大好きなちっちゃな女の子・木菜子ちゃんと、いずれもキュートでラブリー。ひな。の作画の魅力が存分に発揮されている。で、お話のほうは最初ドタバタコメディでずっといくのかなという具合に始まるんだけど、むめがサトミくんの幸福を願いつつも自分のせいでそれが果たせないことに気づいてしまったときの切ない気持ち、それからサトミくんの優しさなどが丁寧に描かれて、気持ちの良い暖かい物語に仕上がっている。1巻できれいにまとまった佳作。

【単行本】「制服ぬいだら♪」1巻 渡辺航 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 らびゅ〜♪ チャンピオンREDで連載されている、超天然ボケ系お色気着替えヒロイン漫画。とにかく頭がトロくて天然でうっかり者の女の子、果実みのりが変身スティックを与えられ、それを振ると出てくるコスチュームに着替えて宇宙怪獣と戦う。のだけれど果実みのりはとにかく爆発的にトロくて、着替えにものすごい時間がかかってしまう。元々スカートを履き忘れたまま学校に行ってしまい、それにずっと気づかないほどのトロさを誇る彼女のこと、怪獣退治などという役目はまるっきり向いていないのだがそんなことはまあどうでも良い。彼女の長〜い着替えシーン、パンツ丸見えなところを楽しみまくるという作品。独特のぽわぽわした気楽のノリがとても楽しい作品。明るいトーンの絵柄だが、パンツに代表される下着の描き方には非常なこだわりを感じる。萌えでヘンな作品が好きな人はもう即買いすべきでありましょう。

【単行本】「彼岸島」1〜2巻 松本光司 講談社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻

 さびれた商店街に住み、いつも集まってはワイワイやっていた幼なじみたち。彼らはメンバー間、とくに紅一点的存在であったユキを巡って多少のもやもやしたものはあったものの、平凡に暮らしていた。そこにミステリアスな一人の美女がやってくるまでは。彼女と森と海しかない小さな村からやってきたのだが、なぜか主人公・明の失踪した兄の免許証を携えてきた。そして彼女は彼とその仲間たちを村へと誘う。しかしそこは血に飢えた吸血鬼のひしめく地獄のような土地だった……というのが大まかなストーリー。

 「クーデタークラブ」で見せた、力強く物語を引っ張っていきガンガン盛り上げていく手腕は健在。緊張感のサバイバルホラーを描いている。ただ「クーデタークラブ」のときのほうがドキドキする感じは強かったとは思う。あちらは非日常がどんどん日常を侵食してくる過程がスリリングで良かったんだけど、「彼岸島」は最初っから非日常領域に踏み込んじゃってる分、今後の展開でさらなる仕掛けが必要になってきそうだなと思った。

【単行本】「HELLS ANGELS」1巻 ヒロモト森一 集英社 A5 [bk1][Amzn]

 「あ〜んちこくちこく」と家を飛び出して学校に向かったコギャルのりんねちゃんが、交通事故に遭って目覚めたら、そこは地獄にある学校だった。クラスメートたちは化物じみた奴らばかりだが、それでもりんねちゃんは持ち前の明るさとポジティブさとバイタリティで強く生きていくのでありました、というお話。ヒロモト森一の描くオンナノコは何気にけっこうかわいいなと思っているのだが、りんねちゃんもなかなかいい。にょきーんと長い足とかすごく魅力的。あと地獄だっていうのに、バレーボール大会したり意外とほのぼのしてたりするのも見てて楽しい。パワフルだけどキュートでもある作品。なおモンスターデザインは韮沢靖が担当している。

【単行本】「どんまい!」4巻 作:矢島正雄+画:若狭たけし 集英社 B6 [bk1][Amzn]

 これにて最終巻。良い作品でした。老人介護という現場で奮闘する、ドジだけど人に元気を与えてくれる魅力を持ったホームヘルパーの女性、里見優を主人公に描かれる人間ドラマ。老人介護という現在とてもホットな現場を舞台とした物語は、人間が生きるということについて考えさせられるものをいっぱい持っていって読みごたえがあった。こういうお話を描かせたら当代きっての名手であるところの原作者・矢島正雄によるしっかりしたドラマ作りも生きていて、なかなかに感動的なドラマとなっている。正直けっこう泣けた。

 あと主人公・里見優の献身的な介護が、「彼女ほどのエネルギーがなければできないモノ」であることを、作中で素直に認めている点も良かった。超人的なスーパーヒーローがいてその人が難事件を解決めでたしめでたしわーいわーいというのはフィクションとしては痛快だろうけど、現実ではそういうことは起きないし、仮に起きたとしてもそこで終わらない。無私の奉仕をシステマチックに供給するのは難しい。ならばどうしたらいいのか。そういう問いも読者につきつけてくる。とはいえ若狭たけしの元気かつ爽やかな作画のおかげで、じめじめしないで読める点も評価したい。

【単行本】「金魚屋古書店出納帳」1巻 芳崎せいむ 少年画報社 A5 [bk1][Amzn]

 マンガのことならなんでも知ってる素敵な古本屋さん、金魚屋古書店に通う人たちのドラマを暖かく綴った作品。非常に端整に作られてて、かつ本を大事に思う気持ちも伝わってくる佳作。たぶん本好きなら全員、とはいわないけどかなりの人が古書店という空間が好きであるに違いない。それだけに最近、新古書店問題がなんだかんだいわれて昔のようには接しにくくなってきたのは残念に思っている人も多いんじゃないだろうか。この作品の持つ優しい雰囲気は、そういう人の心も解きほぐしてくれるんではないかと思う。「こういう古書店が現在の市場で生き残り得るだろうか……」と切ない気持ちもまた抱いてはしまうかもしれないけど、そういう儚さもあるだけにかけがえのない空間であるという想いは募る。

 個人的なことをいうと、最近はほとんど古書店に行っていない。新刊のほうで手一杯なので古書まで漁ってる余裕がないというのがその主な理由。古本、新刊、どちらにも等量の時間を配分することはできない。ならばどちらか一方を選ぶか、それとも新刊に使っている時間を古本方向に割り振るか。そういう選択肢の中で、現在自分は新刊を選んでいる。古い本にも自分の知らない素晴らしい世界があることはもちろん分かっているし、一度読んだ本をまた丹念に読み返す楽しみも当然ある。でもまだ「今の漫画」についていけてるうちは、そっちを優先したいという気持ちが強い。新しい魅力を持った漫画が出てくる可能性ってものはまだまだ信じている、あるいは信じようとしているので、しばらくはこっちにいさせてもらおうと思ってます。古本発掘や再読の楽しみは、もう少し年をとってからのお楽しみに残しておくつもり。もっと年とってから今ため込んでる漫画を読み返したら、きっと楽しいだろうなあ。……などと、自分の読書スタンスについても振り返ってみちゃう1冊でもある。良心的ないい本ですよ。

【単行本】「まよなか」 冬野さほ ブルース・インターアクションズ A4 [Amzn]

 もう完全に「漫画」という枠には収まりきらなくなっちゃった感のある、冬野さほの最新作品集。子供たちの奔放で何ものにもとらわれない思考の世界がだだ漏れな感じながら、しっかりファンタジーになっちゃっている。すごくキュート。そしてすごく自由。読むんじゃない、感じるんだ、といった趣の1冊。

【単行本】「コペルニクスの呼吸」 中村明日美子 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 これで完結。細い男の身体を色っぽく描かせたら一級品。お話のほうもなかなか読みごたえがあった。元はサーカスにいたが金持ちの男に買われ男妾に身を落とした青年・トリノスと、彼の周囲の人々の愛のかたちを描いていくというストーリー。オオナギという名の初老の変態男にトリノスが翻弄され、身体をいじくり回されるシーンとか、エロティックだしミステリアスでもある。いろいろな出来事が終わった後、万感を包み込むようにして終わっていく幕引きも鮮やかだった。


▼エロ漫画

【単行本】「かてきょ」 木静謙二 メディアックス A5 [Amzn]

 Hだねえ。最近の実用系エロ漫画家としては個人的にトップクラスの評価。今回の単行本は、以前隣の家に住んでいて昔なじみだった男の子の家庭教師をしている由季子さんが、彼が自分の名前を呼びつつオナニーをしているシーンに出くわしちゃったことから激しいHに突入……という「かてきょ」全4話が中心。本当にこの二人がやるというだけのお話なのだが本番するまでに3話を使っているだけあって、エロ描写はみっちり。ガードのユルいメガネッ娘である由季子さんは、性経験は全然ないんだけど、乳がとてもデカくて色っぽい。この人お得意のフェラチオ描写も山盛り。絵もうまいし、いや〜堪能させていただきました。

【単行本】「熟娘」 小暮マリコ ジェーシー出版 A5 [Amzn]

 ここ最近でとみに絵がエロくなってきている小暮マリコの初単行本。女の子がスタンダードに可愛い華やかな絵柄ながら、女体のボリューム感がアップ、汁気も増してずいぶんいやらしくなっててた。MUJIN掲載作品を集めたということで、かなりエロ直球勝負。ズーンズーンと激しくやりまくっております。でも鬼畜系的な殺伐としたところはあまりない。MUJIN掲載作品はハードコアということで女体が固めに見える作品が多いというイメージがあるんだけど、この人のトロトロとろけるような絵柄は目を惹く。すごくムチムチ密度が高い。

【単行本】「Replace Girl」 ムサシマル 三和出版 A5 [Amzn]

 絵がうまいなあ。肉感的だけどスタイリッシュ。髪の毛の描き方とか、細かいところもいい。最近の三和出版エロ漫画雑誌の中で、シャープな線による達者な作画でけっこう目立ってる。もともとはイラスト仕事がメインの人だったとのことで、これが初単行本。漫画のほうに来て日が浅いということもあり、いろいろなストーリーを試してる様子が伺える。SFっぽいのがあったり、ロリだったりラブコメだったりハードエロだったり。ストーリー面ではいずれもいい線行ってるんだけどもう一押し足りないかなという印象を受けるのだけど、魅力的な絵柄はいろいろなタイプのストーリーで生きそうだし、可能性は感じるし期待してます。

【単行本】「Tokyo Pop」 井上眞改 司書房 A5 [Amzn]

 不定期にふらりとドルフィン誌上とかに現れては、スタイリッシュな絵柄のまったりした漫画を描いていく井上眞改。この作品は、流星学園という学校でなんだかよく分からん活動をしている解決(怪傑)部に所属するかわいい女の子3人と、生徒会からカイケツブにスパイとして送り込まれたけど3人に捕まってペットにさせられた美少年1名が織り成すのんびり学園モノ。なんかカイケツブのリーダー的存在のシブヤとあやせはレズ関係にあったり、ちょっとHな要素はあったりするけど、別にその比率は高くない。とくに事件が起こるわけでもなく、カイケツブが何をやってるのかもよく分からぬまま平和に学園生活は進行。エイケン部みたいなものかしら。井上眞改のスタイリッシュで流麗、ちょいヌルめな描線と、これまたヌルいまったり学園ムードを楽しむ作品。読んでてなんとなく気持ちいい。

【単行本】「らって好きなんらもん」 EB110SS メディアックス A5 [Amzn]

 いつもながらにあどけない顔つきの幼女たちが、ずっこんずっこん激しくやりまくり。ロリ系のハードエロ作家として、すっかり安定株という感じになってきた。まあその分ちとマンネリ気味かなーという気もしたりはするんだけど、現在コミックPOTで連載中の「マッスル先生」ではギャグっぽさもけっこう取り入れて変化はつけてきている。絵柄的にはかなり好きなだけに、「幼女とやるだけ」に止まらない新たな路線をどんどん開拓していくか、もしくは「幼女とやる」妄想をもっと突き抜けるくらいの次元まで追求していっていただきたい。


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