OHPトップ > オスマントップ > 2003年7月の日記より
このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。
日記形式だと、どうしても日にちが過ぎてしまうと大量の過去ログの中に個々の作品が埋もれてしまうため、このコーナーではダイジェスト的にまとめてみました。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則としてしませんので、普段日記を読んでくださっている方にとっては読む意味がないかもしれません。手抜きといえば手抜きなんですが、まあその点はご容赦ください。
なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でもどんどん入れていきます。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、わりと省略しがちです。
▼強くオススメ
【単行本】「まだ旅立ってもいないのに」 福満しげゆき 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]
長いこと待ち望んでいた福満しげゆきの初単行本。この人は昔、ガロの常連投稿者であったころからなんだか心惹かれる存在だった。
福満しげゆき作品の主人公は、おそらく作者の姿を投影しているのであろう、ひょろりとして頼りなく、とても寂しそうだ。その寂寥感の中で、悩んだり迷ったり性的妄想を抱いたりしながら日々を過ごしている。その姿がなんともいい。共感しているのかといえばそうでもないような気がするんだけど、読んでいてなぜだか不思議と気持ちがいい。作者が寂しがり屋であるからこそ出せる情緒がある。といっても案外じめじめしてなくて意外と屈託がないようにも感じる。そういえばこの人は、この前アックスの作者コメント欄で自分の携帯電話の番号をさらしてバンド仲間の募集をしたりしていた。微妙にやる気なさそうでありそうなラインでゆらゆらしているあたりがどうにも好ましかったりするのだ。ポジティブではないけど、ネガティブすぎもしない。繊細ではあるんだけど案外丈夫。愛すべき存在だと思う。絵は垢抜けているわけではないけど、細部まで非常に丁寧。これも魅力。昔のこなれていない絵柄も印象的だし、現在の丸みを帯びた滑らかな線もこれまた味がある。意外と女の子がかわいかったり乳がデカかったりするのもまた良し。
【収録作品】「子供が終る 子供が泣く」「みか月さん」「フカンゼン少年」「おじさんのうた」「モウカル・ハナシ」「まだ旅だってもいないのに」「つまらない映画の中の君とつまらない映画の中の僕」「駅前で夜」「僕たちは残尿感を感じる為だけに生まれてきたんじゃない」「青春・夢・挫折・その他」「知らないトコロの知らないロボット」
【単行本】「放浪息子」1巻 志村貴子 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
とてもかわいい少年少女たちの物語。主人公の二鳥修一くんは、女の子と見間違うようなきれいな顔立ちをした小学校5年生男子。そんな彼は、秘かに女の子になってみたい願望を持ち合わせていた。そしてそれに気づいちゃっている千葉さおりさん、男の子になりたいと思っている高槻よしのさん、二人のクラスメート女子の存在によって、二鳥くんの女の子変身願望は加速していくのでした……という具合のお話。たいへん可愛くて萌えるシチュエーションなんだけど、志村貴子の淡々としたお話の進め方のおかげでそれが下品にならぬ、ちょうどいいボルテージで推移しているのがなんとも好ましい。「ああかわいいな〜」と素直に見ていられる。志村貴子作品は「敷居の住人」もそうだったけど、基本的には少年少女の生態観察漫画だと思う。一つの世界を用意し、その中で登場人物たちがどういうふうに動いていくのかをじーっと見つめ続けて楽しむという。事件がとくに起こらないときでも観察する喜びがあるし、何か起こったときはこれまた楽しい。時間さえあればずーっとこの人たちを見ていたいなーという気持ちにさせられる漫画であります。
ところで8月12日売りのコミックビーム9月号には、「放浪息子」の特製コミックスカバーがおまけにつくらしい。というわけで単行本を買った人は、ぜひコミックビームを買いましょう。
【単行本】「ホムンクルス」1巻 山本英夫 小学館 B6 [bk1][Amzn]
いや〜面白い。物語にグイグイ引き込まれる。この作品の主人公・名越は、一流ホテルと公園の間に挟まれた道に愛車を停め、そこで路上生活を営んでいる半ホームレス状態の男。しかしやがて金が尽き、車のガソリン代さえ捻出できなくなった彼のもとに、謎めいた男から一つの申し出がやってくる。頭蓋骨の一部に穴を開ける「トレパネーション」という手術を受ける、人体実験を引き受けてみないかという誘いだ。その報酬は70万円。迷った末に名越はその申し出を受け、それがきっかけで今まで知らなかった世界を見ることになる。
この作品でまず印象に残るのが、物語全体に漂ういかがわしげなムード。トレパネーションにより第六感が目覚めるという説は実際にあるようだが、これからしてそもそも怪しさ抜群。それを不自然に思わせないようにお話はちゃんと作られてて、一歩一歩ステップを踏みながら進んでいる。話運びも抜群にうまい。第一話なんかはトレパネーションの話自体はまったく出ず、名越のホームレス生活と、その一風変わった気質の描写で終始する。トレパネーションという言葉が出てきてからも、情報はあくまで小出しに絞りながら雰囲気は盛り上げ、もっと次が読みたいという飢餓感を常に与えている。ハッタリの利かせ方もうまいし、さすがの吸引力。この先、いったいどんな世界を見せてくれるのか激しく気になる。
【単行本】「スキマスキ」 宇仁田ゆみ 小学館 B6 [bk1][Amzn]
キュートなラブストーリーの描き手である宇仁田ゆみが、IKKI誌上で連載した作品。例えばビルとビルの狭間など、なぜだか「隙間」というものに強く惹かれてしまう主人公のヘイサク。最近の彼のお気に入りは、窓の向こうの隣の部屋のカーテンの隙間から、チラリチラリと見え隠れするカワイイ女の子。ところがその相手であるフミオちゃんは、かねてからその隙間を利用して、ヘイサクくんを盗撮、生態観察をしていたのであった……。とまあこんなちょっと変わったシチュエーションから始まるラブコメディ。やっていることはちょっとハンなんだけど、これがとても微笑ましい。実はお互い覗き合っていた仲だけど、それは隠したまま知り合って、どんどん近しくなっていく。最後のメロメロなラブ模様も甘くて心地よい。何より宇仁田ゆみのキャッチでキュートでチャーミングな女性描写がたまらない。コンスタントに楽しいお話を描ける作家さんになってると思います。
【単行本】「ゆびさきミルクティー」 宮野ともちか 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
読んでいると甘さ切なさに身悶えしてしまう、押しの強い萌えラブストーリー。宮野ともちかとしては初の単行本。表題作「ゆびさきミルクティー」の主人公・池田由紀は、趣味でよく女装をしてセルフポートレートを撮影していたりする高校1年生男子。彼は、隣の家に住んでいる女の子・森井左ちゃんを、ずっと妹分的存在として大事にしてきた。しかしそのうちに、クラスメイトでクールなイメージだが美人の黒川水面にも惹かれるようになっていて……という具合に、三角関係恋愛スタート。女の子二人はそれぞれに魅力的だが、由紀がけっこう優柔不断な男で両方に入れ込んでしまい、どちらも選びたい、でも選びづらいという状態に。お話は終始あざといほどに甘く展開。でもまんまとソレにハメられてしまう。
この巻では恋愛関係には全然決着がついてなくて、どちらの女の子が優勢かも見えにくい状況。なんかどっちを選んでも後味は良くなさそうな気はするけれども……。というわけで以降は現在ヤングアニマルで連載中のエピソードに持ち越されている。またこの単行本には短編「肌色ソーダ水」と「ナマイキなあまあし」も収録。絵はすごいうまいかといえばそれほどではないのだけど、透明感のある作画には独自の味がしっかりあるし、ときにハッと印象に残るシーンを作り出してくる。というわけで今後にも期待したい作家さんではある。
【単行本】「乙女失格」 ベギラマ 三和出版 A5 [bk1][Amzn]
アイラとかアイラDELUXEとかで細々と、しかし強烈な存在感を放ち続けていたベギラマの単行本がついに登場。現役のエロモデルであるところのベギラマが、キッツ〜い撮影体験を毎回そこまでせんでもええのにというレベルで赤裸々に語ってしまうという実録エッセイ漫画。有刺鉄線でぐるぐる緊縛されたり、馬に引き回されたり、食紅色つきウンコしたり大活躍。この手の身体を張った作風の先人としてはいわずと知れた大物・卯月妙子がいるわけだけど、自らの内なる衝動に従い崇高な使命感さえ感じてしまう卯月妙子と違って、ベギラマはかなり芸人根性でやってるように見える。それだけに、スゲエことやってるんだけどポップでキュートな感じも受ける。これは特異な芸風だ。あとこの人の場合、世間とどこかつながりを持っているように思う。例えば「ベギラマは自分の想像の範疇を超える変態に出会うとたちまち恋に落ちるという技能を持っている」と自分でも書いてるけど、そういわれると「ああなるほどなあ」とか思う部分もなきにしもあらず。価値判断の基準は違うけれども、なんか地続き感があるのね。だからそのぶん分かりやすいし、生々しく感じられたりもする。強烈で因果でかつ愉快な楽しい1冊。
それにしてもこういう本を見るたびに、三和出版ってすげえところだなあと思う。因果者を惹きつけるオーラが漂いまくってる。
【単行本】「マリオガン」1巻 木葉功一 小学館 B6 [bk1][Amzn]
なかなかスケールのデカい、ハッタリの利いたバイオレンスアクションとなっていきそうで楽しみな作品。アメリカ合衆国でデッカい爆発が起き、パワーバランスの崩れた世界が舞台。主人公のマリオ(小学6年生)は、惚れ惚れするほどにきれいな容姿で、誰からも好かれる性格を持った非のうちどころのない美少年。その彼の元にもとらされた一丁の赤い拳銃。それはアメリカ合衆国が誕生する前のこと、白人たちを震撼させてインディアンの女性の息子が使っていた血で真っ赤に染まった銃だった。その銃がマリオの身体と一体化する。アメリカという国が生まれるまでの血塗られた歴史の中で生まれた凶器が、アメリカが崩壊した世界でまた目覚める。というわけで、なかなか意味深なものを予感させる出だし。この巻ではまだマリオがこれから何を目指していくのかは描かれず、銃の来歴が主に語られる。ただ、そこまででも十分にすごい大風呂敷を広げようとしていることは伝わってきて、わくわくさせられる。木葉功一の力のこもった、迫力のある作画も威力十分。こういう気合いの伝わってくる作品は素直に応援したい。
【単行本】「バルバラ異界」1巻 萩尾望都 小学館 B6 [bk1][Amzn]
非常に本格的で面白い。連載初回は、優しい人たちが住むファンタジー的な世界「バルバラ」で暮らす青羽という少女の生活がまず描かれる。しかしそれは、7年間眠り続ける青羽の夢の中で構成された世界であるということが、他人の夢に潜り込むことのできる能力の持ち主・渡会によって明らかにされ、さらにその夢が渡会の息子であり現在は離れて暮らしている少年・キリヤの思念ともリンクしていく。一人の少女の夢が外の世界にしみだし、さまざまな人々の現実をリンクさせていく重層的な作り。よくこういう複雑に絡み合ったお話を着想できるなーと感心。あとカニバリズム的な要素も、物語に刺激的な味を加えている。まだ1巻だけど、腰を据えて大きなお話を作ろうとしているというのがひしひし伝わってくる。そんなわけで今後も楽しみな作品。
【単行本】「プレゼント」 いくえみ綾 集英社 新書判 [bk1][Amzn]
いくえみ綾は本当にハズレがないなあ……。掲載された作品は「プレゼント」「おうじさまのゆくえ」「あなたにききたい」の3本のみ。しかしいずれも完成度がむちゃくちゃ高くて惚れ惚れしちゃう。余裕のある話運び、言葉選びのセンスの良さ、読みやすいコマ割りなどなど、いずれもたいへん良い。恋愛や友人関係といったものの中にある、キラキラしたものをすくいとる透明感のある描写は抜群。センス任せってわけじゃなくて、漫画作りの技能の部分も高いものが備わってるのが素晴らしい。こういう人が、年齢層高めなマニア向け雑誌ではなく、ずっと別マという若い人向けなフロントエンドの部分で頑張ってくれてるっていうのはとても良いことだなあと思う。
▼一般
【単行本】「Qコちゃん THE地球侵略少女」1巻 ウエダハジメ 講談社 B6 [bk1][Amzn]
クールな小学生のキリオが、空からおっこちてきた女の子型ロボットを操縦して、宇宙人やら何やらと戦うことになるというSFメカファンタジーって感じか。……などとあいまいな書き方をするのは、なかなか全貌が見えにくいタイプの作品であるからだ。ウエダハジメという人は、読む側に情報をドカドカ与えてくれるタイプの作家さんではない。でもだからといって面白くないかといえばそうではない。面白い、というか刺激的だと思うし見てて気持ちいい。描線はたいへんシンプル。でもその1本1本にすごく味がありましてなあ。それから画面の使い方がとても大胆。ページを開いた瞬間に、インパクトのあるイメージが脳味噌にスルッと入り込んで来る感じ。意味はその時点では不明であっても、イメージ自体に快楽があるからどんどん飽きることなく読んでいける。それにストーリーのほうも「フリクリ」のときよりはずいぶん分かりやすいしね。まあそんなわけで次も早く読みたいという気になりました。
【単行本】「ハートを打ちのめせ!」2巻 ジョージ朝倉 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]
これで完結。いやー面白いね。作者は「中学生版ロマンポルノ」を目指したと書いているけど、その成否はともかくとして(というのはロマンポルノをちゃんと見たことがないのでうまいこと判断できないってのがある)、密度が高くてすごく楽しめた。この巻はまず自分とのHを後輩に見せて金をとったりするええ加減な彼氏・セイジとずるずるつき合いを続けている少女、アツコのお話からスタート。「もういい加減にしてほしい、でも好き」って気持ちがギューッと濃縮されてる。それから学校の教師に迫っているどこかミステリアスな美人・森下さんと来て、最後はシリーズで最初に描かれたカップルである根岸&荒井にお話が戻って締めくくり。どの恋愛模様も、若々しいくせになんだかかっこいくて色っぽくて、描写にノッてる作者ならではの勢いを感じる。とくに荒井と別の高校に行くことになって、忘れ得ぬモノを得ようと彼に殴り合いをしようと持ちかける少女・根岸さんの必死さとかすごくいい。なんかこう、言葉とかSEXでなく、どうしていいか分かんないからとにかく殴り合っちゃおうという激しさがすごく印象的。こういうノリはサバサバしてて気持ちがいいし、見ていてもどこか微笑ましくて好きだ。
【単行本】「チカマニアックス」 おがきちか 大都社 B6 [bk1][Amzn]
花丸木リカ名義の作品もごちゃごちゃ集めた作品集。細かい作品が多いのですごくみっちり詰まった感じ。ライトでシャレた絵柄のわりに読みではけっこうある。お話としては、くノ一修行中のドジ娘・九菜が毎回忍法に失敗してHなことをしたりする「きゅ〜な修行中!」と、彼氏を籠絡しようと媚薬を仕込んだ料理を兄に食われちゃってというドタバタ「モーニングフルーツ」、ちょっと変わった風景を描く連作シリーズ「シスター★クラッカー」あたりが楽しく読めた。いずれもコミカルでノリがいい。エッセイものの「ひとはだスパイラル」あたりは手慣れた感じと斜めな視点が個人的にはちょいと鼻についたりするものの、まあ基本的には軽妙で気楽に読める作品揃い。独特の味のあるかわいい絵柄は華があって、パラパラめくって眺めているだけでもなんだか楽しい気分になれたりします。
【単行本】「ファイヤーワークス」 水野純子 イースト・プレス A5 [bk1][Amzn]
水野純子がさまざまな雑誌で描いた作品を収録した短編集。掲載誌は本当に多岐にわたっていて、作品タイトル数だけでも32。よくここまでこまごました原稿を集めてくれたもんだなあと感心。古いモノから新しいモノまで揃っており、水野純子の絵の変遷が見て取れるのも興味深い。その分、1作品ごとのページ数が少なくて読むのは疲れたりもするのだけど、それはまあしかたないところ。ちゃんといろいろ収録してくれたことをまずは評価したい。内容のほうも読めばしっかり面白い。あのキュートでかつ毒々しくて、ときに色っぽくもある水野美少女たちがわきゃわきゃ動き回っている姿は見ていて単純に楽しい。ギャグセンスもけっこういいものを持っていて、例えばいろいろなアルバイトを転々とする女の子のお話「MINA Power Arbeiter」なんか面白かった。 あと作品ごとにつけられている解説で「個人的にはプレイメイトのようなボディの方が好き」という言葉があって、ああなるほどな、と思った。確かに水野純子の描く女の子はプロポーションがぷりんぷりんしててセキシーだ。
【単行本】「プルンギル −青の道−」1〜3巻 作:江戸川啓視+画:クォン・カヤ 新潮社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻/3巻]
雑誌連載のほうが佳境となってきていて、そろそろ事件の全貌を頭の中で整理するためにも買っといたほうがいいかなと思って。近くの本屋さんに3巻までしかなかったので、4巻はネット書店で注文。
物語のほうは、日本韓国の両国で起きていた猟奇殺人事件を巡り、日本の猪瀬、韓国の姜青道の二人が手を組んで捜査を進めていく。そのうち人間を人間とは思えないまでに変形させて苦痛の極みの中で殺していく犯人の心の闇の深さ、そして日韓を股にかけた国際的な陰謀などが次々と見えてきて謎がどんどん深まっていく。絵はたいへんにアクが強いのだけど、猟奇的な内容とマッチしているし、何よりストーリーの読みごたえがある。あと猪瀬、姜がお互いを認め、ときに民族感情も含めてぶつかり合いながら協力していく人間ドラマという面から見ても面白い。日韓関係を考えるという意味でも有益だし、硬派で重量級の刑事ドラマを読みたいという向きにもオススメ。
【単行本】「さくら咲いちゃえ」 私屋カヲル 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
受験のために状況した冴えないメガネくん・コージのもとに、色っぽいイケイケおねえさん風の家庭教師さくらさんが送り込まれて来る……というところから始まる、ちょっとHで楽しいコメディ。最初のうち、さくらさんはいかにも大人の女でコージはそれに振り回されるばかりだが、後半はじょじょにラブ度が増して甘〜くなってくる。するすると明るく楽しく読めるし、だんだん各キャラクターに親しみがわいてくる。微笑ましいラストも後味よろし。分かりやすくて華があってええ感じでございました。
▼エロ漫画
【単行本】「ハード・アクメ」 玉置勉強 一水社 A5 [Amzn]
1年半ぶりの単行本とのこと。しばらく一般系でやった後、エロ方面に復帰してからの玉置勉強はだいぶエロがハードになってるという印象がある。もしかしてエロを描いてなくてたまっていたものがあったのでは。個人的にはなかなか痛快に吹っ切れてるな〜と好感を抱いていた。収録作品についてはどれも芸がある。まず冒頭の「あ、ビール券もつけるよ?」はスカッとノーフューチャーに弾けていて楽しい。それから「バイバイハニー」は肉便器ちゃん的な女の子に想いを寄せているふうな男の心持ちを想像すると切なかったりするし、「妹萌ゆ」は女装癖のあるナヨッちい兄ちゃんと妹の本音のブツけ合いがエロくかつ痛々しい。耳の聞こえない彼女とその恋人である男の物語「サイレンス」はお互いを思いやる気持ちがいとおしく、かと思えば「STAY FREE」は単純にひでーことをしててウケケケと思う。最後の「ハッピーバースデイ」はいい話できれいに締めくくり。
ハードコアなエロから、ウェットで叙情的なお話まで、どれも面白く読めた。芸風の幅広さにあらためて感心。なんとなくなんだけどこの人の場合、「完全にやりたい放題」でもなく「完全に縛る」のでもなく、ある程度ジャンルの枠を意識しつつ、その境界線をハミ出すかハミ出さないかというラインで作品を作っていくのがベストかも……とか思った。そういうわけでエロと非エロを往復するような、現在の状況はちょうどいい具合なのではないかと。
【単行本】「先生とボク」 かるま龍狼 松文館 B6 [bk1][Amzn]
いやー、この人は本当に器用だなあ。どの単行本を読んでも感心させられる。熟女、少女、ロリ、そしてショタ。どんなネタであってもそれぞれに可愛らしく、ギャグを織り交ぜつつ楽しいエロ漫画を展開する腕前は職人芸。今回の単行本はついにショタオンリーで、ネタとしては学校の先生が「ペロペロキャンディだよ、おいしいよ〜」といってかわいい少年にペロペロしてもらったりというお話が中心。女の子と見分けがつかないような男の子ってのばかりではなく、きちんと男の子らしくてしかもかわいいというキャラが描けているのが好ましい。
【単行本】「終末にしましょ!」 みた森たつや リイド社 A5 [bk1][Amzn]
タイトルは「おしまいにしましょ!」と読む。今は亡きCOMIC零式&うさまんで掲載された、SFドタバタエロコメディという感じの作品。主人公の塩野文吉は、ドスケベな大学教授・柏原院内の助手として地下遺跡の調査に来ていたが、その遺跡の中で彼が昔から夢に見ていた憧れの人そのままの姿の女性と出会う。実は彼女は地球の直径と等しい大きさの巨大宇宙船の制御するための端末であり、その宇宙船の支配権を巡って、文吉と性豪である柏原教授とのSEXバトルが始まるのであった……みたいな感じのお話。意外にもお話は大きくて、1巻程度ではまとまりきっていないような印象もなきにしもあらずなんだが、ぶっ飛んだお話はけっこう面白い。うさまん休刊に伴って描き下ろしとなったラストも豪快。まあそれよりも何よりも、この人の作品の場合は「さらくーる」でも発揮された主人公とそのパートナーのアツアツ恋愛ぶりが見ていてとても気持ち良い。「好き!」って気持ちを高いテンションで、ストレートに伝えられるところが良いと思います。