オス単:2004年12月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「トモネン」 大庭賢哉 宙出版 A5 [bk1][Amzn]

 祝・単行本化。この人の作品はコミティアでよく同人誌を買って読んでいたのだが、そのころからしみじみ良いなあと思っていた。たいへん柔らかで優しい線をひく人で、人物、それから自然物の描写が実に気持ち良い。スタジオジブリっぽい感じの造形で、手になじむ暖かみと清涼感が同居してて、見ていてうれしい気分になってくる。お話のほうも絵柄同様たいへん優しい。もっといろいろ作品を読んでみたい気持ちにさせてくれる人です。ちなみに作者ホームページはhttp://homepage3.nifty.com/tkotrxtiny/

【単行本】「かすとろ式」 駕籠真太郎 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 駕籠真太郎の最新短編集。単行本前半の「駅前」シリーズは若干不調かなあと思ったのだが、後半の表現実験的な短編群が素晴らしい。「駅前増殖」では最初のページに置かれていたコマが、どんどん次のコマを生み出していくという内容だが、コマの流れが2系統になったり途中で合流したり遺伝劣化してったりと、ページが進むにつれてゴチャゴチャの様相を呈していくさまが圧巻。「国民の創世」では、お得意の1ページを6個の正方形で区切るコマ割を立体に見立てて、その立体性を生かした奇想天外な画面を作ってみたり。コマを果てしなく細分化していく「ブローアップ」は着想だけでなくオチも気がきいてるし、「要心無用」の漫画の絵と枠の関係性を揺り動かしてみようという試みもたいへんユニーク。こういううまくハマった実験系のネタは大好き。やっぱり駕籠真太郎の発想はスゴイなあとしみじみ感じた。

【単行本】「あのころ、白く溶けてく 安永知澄短編集」 安永知澄 エンターブレイン  B6 [bk1][Amzn]

【単行本】「やさしいからだ」2巻 安永知澄 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 端整で美しい線と、つかみどころのないふわふわした叙情をとらえて鮮やかに描き出す作風が特徴、現在コミックビームで「やさしいいからだ」を連載中の安永知澄の単行本が2冊同時発売。

 「あのころ、白く溶けてく」は未発表作「白い本」も含む短編集。収録作品は「夏休み」「くそがき」「待ち人」「ももこの禁止生活」「脱皮」「水の底」「白い本」「まる。」。初めて出てきたときからうまい人だなーと思っていたけど、こうして読むと、けっこう絵柄については(意図的な部分もあるだろうけれども)バラツキがあって、どんどん洗練されていっていることが分かる。この本の中では、「まる。」が自分としては好きで、お話もいいんだけど、地球が回転しているから手を動かさないで立っていたらすごく大きな丸が描ける→でも公転もしてるから正しい円にはならない→宇宙も膨張しているからさらにぐにゃぐにゃになる……というロマンチックな発想とかすごくいいなーと思う。あと人と人とのつながりを、どこか引いた感じで見つめる視点も新鮮。「脱皮」のオチなんかなるほどなあと思うものがあった。

 現在連載中の「やさしいからだ」のほうも、毎回いろいろな仕掛けが施されてて面白い。ときどきちょっと分かりにくいかな?と思えるときもあったりするんだけど、深読みできそうな、そこまで考えなくても良さそうな、不思議な感触がある。2巻では話としては一人の中年男が、なぜか自分のかばんに入っていたかつての同級生の日記をきっかけに、これまで歩んで来た道程や現在の自分を振り返る角沢栄一さんシリーズ3本が最もまとまっている。とはいえ、へその近くにいた妖精さんをつぶしてしまったことから、奇妙なお話が繰り広げられる米山高志さん編とか、トリッキーなお話もまた味があったり。こういった上品な作風の人は、得てして毎回似たような印象の作品を描きがちだけど、安永知澄はいろいろと違ったものを描こうとしている点が刺激的。きれいに収めようという方向性と、現在のものを壊そうという方向性を同時に感じさせてくれる、面白い才能だと思う。


▼一般

【単行本】「神社のススメ」1巻 田中ユキ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 新米神主である主人公の里見が、巫女さんたちと一緒に送る神社ライフを描いていく作品。現時点でお話のメインとなっているのは、里見が15歳の巫女さんの真鍋さんに惹かれていく……というラブコメ路線。この二人のやりとりや、里見に昔から恋していた巫女の了子ちゃんがからんだ恋愛模様はなかなか面白い。あと、意外とビジネスライクに運営されている神社の実状は、読むと「ほう」という感じになって興味をかきたてられもする。田中ユキらしいシャープさは随所にちりばめつつも、基本的にはけっこうまったり。ちょいとゆるめな空気が楽しい作品となってると思います。

【単行本】「鉄子の旅」1〜2巻 菊池直恵(監修:横見浩彦) 小学館 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻

 IKKI連載の鉄道マニア・横見さん観察漫画がついに単行本化。女性漫画家の菊池直恵が、JR全駅で下車したことのある超ディープな鉄道マニアの横見浩彦に引きずり回され、やりたくもないのにローカル線全駅下車や130円一都六県めぐりの旅をしたりする。旅行漫画といえば旅行漫画だけど、やはり注目ポイントは、冒頭にも書いたとおり横見さんという鉄道野郎の生態を観察すること。常人には分からない鉄道のお楽しみポイントを、ハイテンションでまくしたてる彼の底知れぬエネルギッシュな生き様は、(目の前にいたらどうか分からないが)漫画で見ている分にはとても面白い。まあ旅行のほうもそれなりに面白そうではあります。マネしたくはないけど。

【単行本】「ストーリー」 戸田誠ニ 宙出版 A5 [bk1][Amzn]

 戸田誠二の3冊目。今回は短編5本を収録しているが、前2冊よりも1本1本のボリュームがあって、満足感があった。お話のほうは、仕事に学業に、一生懸命余裕なくやってきた現代人がホッと一息ついて自分を見つめ直す……って感じのが多い。作画自体は地味めではあるんだけど、奇策を用いずじっくり人間ドラマを描いていこうとする作風には好感が持てる。また絵にも話にも、ホッとさせられる暖かみがあって、読後感が爽やかな点も評価したいところ。間口も広いと思うし、もっとメジャーなフィールドでもやっていける人かもな、という気がする。

【単行本】「潔く柔く」1巻 いくえみ綾 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 うまい。面白い。少女の恋愛模様を描いたオムニバス形式の連作シリーズといった感じで、この単行本にはACT1とACT2を収録。ACT1は、同級生と付き合い始めたが、毎朝通学電車で一緒になる学校の先生が気になってしょうがない少女のお話。ACT2は、男子二人女子二人でずっとやってきた仲良し4人組が、高校生になって恋愛感情が絡み出して……という内容。どちらの作品も日常がつらつらとあって、そこから地続きで恋愛感情が芽をふいて育っていき、その気持ちの行き先を熟練の腕で鮮やかに描き出していてしっかり読ませる。「かの人や月」あたりはどちらかというと変化球っぽかったが、こちらはストレートに読みやすい。読切形式だが1話1話のボリュームがあって読みごたえはあるし、キレも抜群。さすがうまいなーと感心しながら読みました。

【単行本】「あいびき」 勝田文 集英社 新書判 [bk1][Amzn]

 勝田文の漫画は読んでて気持ちいいです。とてもリラックスできる。表題作「あいびき」は、銭湯をやっている実家に出戻ってきたバツイチの長女とその家族、そこに居候として転がり込んで来た青年を中心に繰り広げられる、ほのぼのホームドラマ。最初はこの長女さんと居候さんのラブストーリーになるのかと思ったら、別にくっつくでもなし離れるでもなし、のんびりのんびり日常描写が続く。勝田文の、上品ながらどこかゆるめな絵柄もあって、非常にほんわかした物語になってて好感が持てる。この単行本にはそのほか、「木俣くんの手品」「サマー・ジョブ」「ベイ・デイ」「妹の花火」と読切4本も収録。どの作品も気が利いた内容となっているし、とても読みやすい。そういえば「あのこにもらった音楽」[bk1][Amzn:1巻/2巻]はなんとなく買ってなかったんで、買えるうちに買っておかねば。


▼エロ漫画

【単行本】「♭38℃ Loveberry Twins」 月野定規 コアマガジン A5 [Amzn]

 ホットでスウィートなラブと、テンションの高いハードなエロがてんこ盛りで、12月発売のエロ漫画の中では個人的にイチオシ。内容のほうは、それまで美人双子姉妹のメグミ・いつきにいいようにおもちゃにされていた水原少年が、前作「♭37℃」でメインを張っていた七瀬先輩に焚き付けられたことをきっかに、3人の間で成立していた主従関係が逆転。姉妹は水原くんの猛烈な想いのこもったセックスの虜になっていく。

 で、この作品の良いところは、3人の愛情表現およびエロシーンが、たいへん濃くて甘くて熱烈であること。熱に浮かされたようにお互いを求め合い、深く深くつながろうとするテンションの高さは特筆もの。エロ描写のほうも、ぐじゅぐじゅに溶け合うお互いの体液がたいへんな熱そうな感じで、熱気むんむん。ただエロがハードなわけじゃなくて、それが愛情と正比例してヒートアップしているところが素晴らしい。ハードなセックスを描きながらも、ラストの「今……灼熱の恋をしている!!」という言葉が表すように、エロがあくまで愛情に支えられているので全体的にとても気持ちの良い作品となっている。片やギャル系、片やお嬢さま系と、タイプの異なる二人の姉妹もそれぞれ魅力的。ページ数も多いしたっぷり楽しませていただきました。

【単行本】「ありすブレイカー」 ゴージャス宝田 FOX出版 A5 [Amzn]

 最近のゴージャス宝田作品はいいな〜。最初の単行本「おりこうぱんつ」あたりは鬼畜っぽいロリエロで、これはこれで良かったんだけど、最近の作品はロリロリ少女に対する愛情があふれまくりで個人的にはこっちのほうがかなり好み。マジで少女と恋愛して、そこから愛情こもりまくりのエッチに至るというファンタジーを、気合い入れて構築しているのがいい。

 例えばこの単行本収録作「キスが必要」で、教え子の少女に勢い余ってキスしてしまったロリコンの主人公が、彼女に「嫌… って… 言ったら…?」と問われて返すセリフなんか素晴らしい。「俺はロリコンだぞっ」「少女が好きなんだっ 愛してるんだっ」「愛してるから愛されたいっ」「愛されたいからその娘が嫌がる事も怖がる事も悲しむ事もしないっ出来ないっ」「レイプしたいんじゃないんだ」「ロマンスを夢みてんだよっ」。アツい、アツいぜ、ゴージャス宝田! ロリコンたる者、かくありたい。あとお話的には「キス上等」なんかも素晴らしい。一本気なヤンキー兄ちゃんが、心臓手術をして身体に大きな手術痕ができてしまい引きこもっていた少女に、6年越しの愛を熱く告白するシーンなんかはかなりジーンとくるものがある。

 まあ多少鬼畜っぽい作品もあるけど、基本的には甘い恋愛モノが中心で、描写にも茶目っ気がきいててエロシーン以外も楽しく読める。現在のロリものでは、この人と國津武士、ほしのふうたあたりが個人的トップスリーという感じです。

【単行本】「妹!?(マルいも!?)」 瀬奈陽太郎 富士美出版 A5 [Amzn:ドラマCD付き初回限定版/通常版(2005年6月)

 表題作のマルいもシリーズは、とあるご一家を舞台にした兄と妹のドタバタラブコメH物語。第1話「妹は美少年!?」では、オトコノコの格好がたいへん似合う妹が、美少年である兄を無理やり女装させて、倒錯した迫り方をしてくる。んでもってその後やっちゃったかと思ったら、次の回ではまるで姉のように振る舞う妹が。そしてその次の回でもまた……というふうに、次々妹が。でも普通の「お兄ちゃん……」と妹がうるうるしてるようなタイプの妹モノって感じじゃなくて、あくまでお話はドタバタ展開。これがすごく楽しい。瀬奈陽太郎のシッカリとした流麗な線は、あんまり萌え系っていう感じじゃないんだけど、その絵柄にお話がよく合ってる。たいへんテンポ良くノリノリでストーリーが展開されてて、妹ネタもいい具合にヒネって調理してあってとても面白い。かといってギャグだけに行くわけでなく、エロシーンもむっちりしてて濃密。作者がノッて描いてるな〜ということが伝わってくる、愉快な作品だった。

 このほかエロ漫画家の瀬ニャヨータローとその美人担当編集者、美少年美少女アシスタントによって繰り広げげられるコメディ「萌えよペン!」、前の単行本「ハロ・ハロ」のEPISODE.0も収録。こちらもそれぞれ楽しい。なお本単行本の初回限定版には、マルいもシリーズ第1話「妹は美少年!?」を約20分の「サウンド・ドラマ」にしたドラマCDが付属。主人公を須本綾奈、妹の純子を鈴美巴、ちょい役の女の子を風華が演じている。

【単行本】「いたずら注意報!」 ほしのふうた 久保書店 A5 [Amzn]

 いつもながらたいへんかわいいロリロリエロを描いてます。この単行本に収録されている作品群は、いずれもアンソロジーの「貧乳」シリーズに掲載されたもの。自分はこのシリーズは読んでなかったので、未読の作品ばっかりでうれしかった。ほのぼのとした明るい絵柄で、健康的な少女たちをとてもかわいく描写。しかしながらエッチシーンも、女の子たちの柔軟でなめらかな体つきをエッチに描いてて、意外にグッとくるものが。いつ見てもええなあと思います。ちなみにほしのふうたはこの単行本で10冊目。初単行本の「秘蜜のささやき」が2000年11月だから、1年につき2.5冊ぺース。エロ漫画家としてはかなりハイペースだが、しっかりクオリティを保っているところも素晴らしい。そういえばこの単行本も、表紙が「いたずらスイッチ」[Amzn]と同様、ザラザラした手触りの紙質だけど、ツルツルしたコート紙よりも暖かみがあって、ほしのふうたの作風には合ってるような気がいたします。

【単行本】「かめとあそぶ」 らいむみんと 茜新社 A5 [Amzn]

 COMIC LOで活躍中のらいむみんとの初単行本。まるで油絵みたいな独特のタッチで、かわいらしい幼女をこれでもかとばかりに描いてくる。写実的な質感なんだけど、全体として見るとしっかりロリ絵という、なかなか美味しいラインをひた走った画風が特徴的。あとエロのほうはしっかり濃いんだけど、シュールなユーモアもそこかしこに盛り込まれている。パパが娘さんにおちんちんを「ヒヤシンス」だといって差し出してお世話させ、ラストではお父さんが学校のクラスの後ろの方にちんこを出したまま並んでるとか。実用的な幼女エロをやりつつ、なおかつ飄々としたノリを保ってるところがユニークです。


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