オス単:2005年1月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「俺と悪魔のブルーズ」1巻 平本アキラ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 待望の単行本化。平本アキラといえば、ヤンマガ連載の「アゴなしゲンとオレ物語」の下品ギャグのイメージが強いが、今回は完全にシリアス。「十字路で悪魔と取引すれば、すべての願いはかなえられる」という「クロスロード伝説」などで有名な伝説のブルーズマン、ロバート・ジョンソンの生涯を下敷きに、一人の黒人青年RJがたどった数奇な道程を描いていく。

 平本アキラはアゴゲンでも時折写実的で力の入った作画を見せることがあるが、この作品では全編にわたってそれを展開。黒々と描き込まれた画面が、狂気をはらんだ闇の存在感を際立たせ、作品を非常に迫力のあるものにしている。アメリカ黒人社会の雰囲気も、実際はどんなものだったのかは知らないけど、いかにもそれっぽく感じさせる、リアリティある描写で描き出している。ストーリーも骨太。クロスロード伝説のシーンはとてもドラマチックだし、それまで平凡な青年だったRJが、どんどん底無し沼のごときブルーズの深奥に引きずり込まれていく様子は緊張感バリバリ。

 基本的には重い話であるものの、コマ割り等、漫画的な技術はかなり高く、スムーズに読んでいけるのもいい。「アゴなしゲン」についてもネタが変化に富んでいるし、ときどき「オッ」と思わせるようなトリッキーな回があって、この人は漫画うまい人だなと思ってたんだけど、本作を読んでそれをさらに確信した。この人にはまだまだ作家的な奥行きがありそうな気がする。

【単行本】「東京命日」 島田虎之助 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 初単行本「ラスト・ワルツ」[bk1][Amzn](感想は2002年12月31日の日記にあり)で、マニア筋にインパクトを与えた島田虎之助の2冊目。今回は小津安二郎の60回めの命日に、その墓のある寺を訪れた人々の生き様を追っていくという内容。「ラスト・ワルツ」でもそうだったが、最初は一見まったく関係ないかのようにパラパラと登場してきた人物たちの物語が、お話が進むにつれて有機的に結びついていき、ラストに向かって収束していくという構成が見事で見てて気持ちがいい。今回は1点から始まったお話が拡散し、また1点に戻っていくという感じ。雑誌掲載時だとお話が断片的すぎてよく分からないんだけど、単行本になるとその全貌が見えて、「ああ、そうだったのか」と感心させられる。この人の作品は、本当に単行本でまとめ読みしてナンボ。淡々とした調子でお話は進み、終わってみればなんだか胸にジンと染みる何かを残してくれる。作画も独特のモノがあるし、たいへんユニークな才能だと思う。

【単行本】「ぼくのためのきみときみのためのぼく」 きづきあきら ぺんぎん書房 A5 [bk1][Amzn]

 現在はCOMIC SEED!などで活躍しているきづきあきらの同人誌作品を収録した短編集。このころの作品は、絵柄が現在の「ヨイコノミライ!」とはだいぶ違ってて、切り絵を思わせるようなクッキリとしたタッチ。お話のほうは可憐な少年少女らが登場する物語ながら、ときにビターな後味を残すお話が多め。このころから同人誌で追っかけていた人だけど、久々に昔の作品を読んで、やっぱりいいなあと思った。例えば巻頭作の「BLUE」は、お互いに惹かれ合っていて一線を越えてしまいかねない境界で揺れる兄と妹の物語。といってもただ単純に兄と妹が結ばれてハッピー・エンドというわけではなく、そこに至るまで、そしてその後の二人の心理のアヤを巧みに描いている。弱いようでいて実は芯に強いものを持った妹の振る舞いに、ゾクゾクさせられた。あと手の表情をテーマにフェティッシュな要素をからめつつ恋愛物語を展開する「ヤサシイ ユビ」も非常にうまい。ときに甘く、ときに優しく、ときに冷酷に、お話を見せていく技量は大したもの。同人誌で見てた人も見てなかった人も、この機会にぜひどうぞ。

【収録作品】「BLUE」「SWIMMING LOVERS」「彼女の秘密」「ヤサシイ ユビ」「愛する私の…」「prohibition」「恋のたまご」「DISCOVERY OF LOVE」

【単行本】「日本の夏、天狗の夏。」 藤本和也 宙出版 A5 [bk1][Amzn]

 以前からコミティアや「何の雑誌」とかで掲載作品は読んでいた人だが、これが初の商業単行本となる。この人の特徴は、非常にコミカルでありながらしみじみとした情緒がにじみ出ている独特な作画。とても完成度の高いきっちりまとまった絵柄は、現代風とはいえないかもしれないが、なんともいえないじんわりとした暖かみがある。「中央線系マンガ家」というキャッチが振られているが、たしかにそんな感じ。コミカルでポップな雰囲気でありながら、四畳半とか銭湯とか赤ちょうちんとかが妙に似合う、独特の感触がある。お話のほうも気が利いたものが多い。うーん、この雰囲気の良さは言葉だとなんとも説明しにくいな。餅屋ブックでイラストや絵日記が見られるので、そちらも参照してみてください。

【単行本】「魔女」2巻 五十嵐大介 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 この巻も素晴らしい。さまざまな生き方をしている魔女たちの物語を、オムニバス形式で描いていく連作。細かいペンタッチで描かれた幻想的な光景が非常に美しく、魔女たちの運命を描いていく物語もミステリアスでドラマチック。自分としてはとくに「PETRA GENITALIX」が好きで、普段は人里離れた地で弟子のアリシアとともに暮らしている魔女・ミラが、一般の人々には蔑まれながらも、世界を救うために身を捧げていく姿が崇高でとても美しい。『いちども空を見たことがない人が、「晴れた空は青い」と言ったら、言葉は間違ってなくてもそれはウソなんだわ。』などなど、心に残るセリフもしばしば。読んでいると物語世界の中にググッと吸い込まれる感じで、ゾクゾクするような気持ち良さがある。このファンタジー構築能力はやはり凄い。なお今回は「PETRA GENITALIX」「うたぬすびと」に加えて雑誌未掲載の「ビーチ」も合わせて収録。どの作品もそれぞれ読みごたえ十分。うーん、しみじみ素晴らしいな。


▼一般

【単行本】「雲の上のドラゴン なつこの漫画入門」 塀内夏子 講談社 新書判 [bk1][Amzn]

 「Jドリーム」「オフサイド」「フィフティーン・ラブ」などで知られる塀内夏子が、漫画の描き方について語ったエッセイ漫画を1冊にまとめた本。これはなかなか参考になる部分が多くて面白かった。まあテクニックについて事細かに述べているわけではないけど、実際の新人さんの漫画を添削しながらの説明とか、なるほどなあと思わされるものはあった。

 塀内夏子はすでに実績のある作家さんであり、実際にスポーツ漫画の描き方はとてもうまいと思う。とくに「オフサイド」「Jドリーム」なんかは、その技巧が存分に発揮された作品。まずサッカーはフィールドにいる人数が多いので、個々のキャラの描き分けが難しい。また個人技、組織プレー、どちらにも面白みがあるスポーツなのだが、個人技はまだしも、組織プレー、とくにディフェンスのテクニックをちゃんと描けている作品はそう多くない。塀内夏子はそういう部分をきちんとクリアしつつ、ちゃんと読みやすい漫画に仕上げることができている。するする読めちゃうので普段はあんまり意識しないけど、そこらへんは職人芸的。漫画の解説もきちんとしてて分かりやすい。あとモノの見方はけっこうシビアでクール。日本サッカーがW杯に初出場したときに、3戦全敗と予想していたサッカー漫画家はこの人くらいなんじゃないかと思う。

 最近の連載作品「覇王の剣」等は正直なところあまりノレないし、エッセイ漫画とかだとちょっとエラそうで鼻につくところはあるものの、こういう確かな実績を持つ人が漫画の描き方について語るというのは良いことだと思う。スポーツの分野では引退した名選手が解説者やコーチをやったりするけど、漫画の世界でも似たような感じのことをもっとどんどんしていってくれると面白そう(やっている人はいるけど、もっと多くてもいいと思う)。まあ漫画家さんは、そういうのよりも「生涯現役」を目指す人のほうが多そうではありますが。

【単行本】「エロせん」 神原則夫 日本文芸社 A5 [bk1][Amzn]

 普段は中学校で理科教師をやってて、夜はホテトル嬢をやっている、大目に見てせいぜい樹木希林程度の要望、40歳のおばさん・藤本正子さんの生活をまったり描いて行くというギャグ漫画。飄々とした調子で、人生の機微をさりげなく赤裸々に描き出しちゃったりしているあたり、なんとも神原則夫らしい。正子さんが度重なるチェンジにもメゲずに稼いだ金をむしり取り、一瞬でパチンコ台のもくずと消えさせる母親とか、やってることがしょうもなくていい。「西高ジャンバカ列伝 かほりさん」のババ雀ガオーの人たちといい、神原則夫は熟しているどころじゃない女や男を描くのがうまいなあ。

【単行本】「小田原ドラゴンくえすと!」1巻 小田原ドラゴン 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 小田原ドラゴンが、キャバクラに年200万だか300万だか使っているライターの石川キンテツらとともに、都会の怪しげなスポットを取材するというダメ人間ルポ漫画。まあ基本的には取材モノなんだけど、そこに小田原ドラゴンらしいダメ人間に対する絶妙な嗅覚が発揮されてて面白い。とくにいわゆる「ぶっかけモノ」のアダルトビデオでAV女優さんに精液をぶっかけるために集められる存在である「汁男優」、そしてストリップで踊り子さんにリボンを投げることに情熱を注ぐ「リボンさん」の生き様に迫ったエピソードは絶品。リボンさんの「何でこんなことにそこまで……」と思わずにはいられない情熱には、なんだか心を打たれさえしてしまう。あとさすが小田原ドラゴンだけあって、童貞がらみの話も面白い。声優学校の体験入学とか軽い内容の回もけっこうあるけど、基本的にはむんむんくる嫌オーラを発している男たちを、軽妙かつ鋭く取材しているのがいいです。今後もより生臭い世界に迫ってほしい。

【単行本】「米吐き娘」1巻 古林海月 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 なんか独特のゆるい作風が気になる作品。主人公の山田みのり22歳は米吐き娘。1日に何度か、身体の中から湧き出してくる米をざらざらと吐く不思議な体質の持ち主。そんな人間だけに、米に対する愛情は人一倍。たまたま県庁のごはん食を推し進める課でバイトを始めたのをきっかけに、さまざまな人に米食え米食えといったり、お米作りに携わる人たちと触れ合ったりしていく。……と書くとごはん大好き料理漫画になりそうだが、別にそんなことはなく、米吐き娘みのりちゃんの奇妙な日常を描くドタバタコメディとして展開。彼女が精米機よろしく「ざらざら」という擬音とともに米を吐く様子は、なんだか妙に気持ち良い。絵的にはまだまだなところがあるし、話もヘンなんだんだけど、独特のほんわかした雰囲気は妙な楽しさがあります。

【単行本】「コドモノコドモ」1巻 さそうあきら 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 小学校5年生の少女・春菜が、友達の男の子と公園で行ったちょっとした遊びによって妊娠してしまい、出産することになるまでの騒動を描いていく物語。この巻ではまだお腹が大きくなるところまでは行っていないが、春菜は周囲の大人の理解を得られず、一人で悩みを抱えていくこととなる。とはいえ、事態の深刻さはあまり理解していないので、子供らしい生活も滞りなく営んでいってはいるのだけれども。春菜の今どきの子供らしさをしっかり描きながら、着々とお話を進めていて、さすがにさそうあきらはうまいなあと思う。今のところすごく面白いというほどではないけど、とくに目立つアラもなく隙がない。

【単行本】「昭和の男」1巻 入江喜和 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 孫を溺愛する昔気質の畳屋のガンコジジイ・箕浦茂雄が、軟弱な世間に憤りつつ、孫を硬骨漢として育て上げるべく奮闘するファミリードラマ。入江喜和は相変わらず絵がこなれていて粋です。こういう線はなかなか引けなさそう。お話のほうも地味ではあるけど暖かみがあっていいですな。こういうガンコ一徹だけど情にもろい、昔ながらのジジイはカッコイイですな。そばにいてほしいかどうかは別としても、共感できる部分は多々あります。

【単行本】「あのこにもらった音楽」全2巻 勝田文 白泉社 新書判 [bk1][Amzn:1巻/2巻

 連載時から面白いなと思っていつつもなんとなく買ってなかったんだけど、なんとなく今さら欲しくなり、絶版になる前に買っておこうとか思って購入。いやー、これはいいですね。お話のほうは、老舗旅館の娘である梅子18歳と、彼女が子供のころからよく遊んでもらっていたお兄ちゃん的存在で32歳・元天才ピアニストである蔵之介が結婚する第1話から始まり、この二人の結婚生活を描いていくというほのぼの夫婦物語。軽やかな絵柄とお話、のんびり急がない雰囲気がなんとも良いのです。お話にトゲトゲしたところが全然なくて、読んでいるとほんわかした幸せな気分になってくるし、絵柄も品が良いうえに親しみやすい。登場人物がそれぞれ適度に抜けてるとこもいいです。

【単行本】「機動旅団八福神」1巻 福島聡 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 戦時下にある架空の日本が舞台で、軍隊に入隊した新米兵士、たぶん総勢8人の姿を描いていくという感じか。帯には「選ばれし八名の少年少女! 彼ら兵士に与えられたのは機密の起動兵器 その名も”福神”!!!」と、勇ましいアオリ文句が書いてあるのだが、実際に読んでみると意外とまったり。1巻では、各話それぞれ一人の兵士をメインにお話が展開されていくのだが、出てくるキャラはみんなちょっとずつヘンな感じ。やたらモノを考えるけど行動がズレてて、燃える福神を前にして服を脱ぎ出して素っ裸になっちゃうような奴だったり、相手の考えることが見えるとかいってエキセントリックで不可解な行動に出る奴だったり。まだまともな戦闘はほとんどないので展開的にはたいへん地味で、彼らが今後どんな闘いを繰り広げていくのかいかないのかは分からないけど、なかなか面白げな人物が揃っててそれを観察していくのは楽しくはあります。

【単行本】「妹あいどる」 山本マサユキ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 幼なじみの妹分的存在だった女の子が、1億の借金を抱えて転がりこんできて、主人公がそれをなんとかしようと一肌脱いで、彼女をアイドルに仕立て上げるべく奮闘……というお話。山本マサユキの描く女の子はけっこうかわいいと思うんだけど、今回の作品はかなり割り切って女の子を見せる路線で勝負。たいへん軽いお話だけど、まあ肩凝らずにサクッと気楽に読めます。

【単行本】「げこげこ 水上悟志短編集」 水上悟志 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 こちらもなんとなく買ってなかったのだけど、という本。ヤングキングアワーズで活躍中の水上悟志の短編集。ドタバタギャグからのんびりした内容の作品まで揃ってて、内容はいろいろ。この中ではとくに表題作の「げこげこ」がいいなあと思う。ある日突然カエルに姿に変えてしまった彼氏と、それを見守る彼女のお話。ちょっと切ないところもあるけれども、あまり思い詰めず、飄々とした雰囲気があるのがいい。なんとなく古き良きマニア向け少年誌(キャプテンとか)的な匂いのある、のほほんとした絵柄が見てて落ち着きます。

【単行本】「お父さん物語」 平田弘史 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

【単行本】「人斬り」 平田弘史 マガジン・ファイブ A5 [bk1][Amzn]

 「お父さん物語」は、平田弘史がヤングマガジンで連載した、自身の日常を描いたエッセイ的作品。普通のエッセイ漫画はわりと軽めだけど、平田弘史の場合、主張や述懐など、やたら密度が濃い。セリフもむちゃくちゃ多く、正直なところたいへん読みづらいのだが、その凝り固まりっぷりがいかにも平田弘史らしくて圧倒された。通常の日常描写でさえ妙な気合いが入ってておかしい。とくに娘婿が結婚の承諾を求めに挨拶に来たところで、彼を指差し「う 海になれるか!」などと語り出すところとか、とても面白かった。なんていうか物凄く骨のある「THE 大市民」といったテイスト。時代劇だとあれほど似つかわしい絵柄が、日常漫画だとこんなに奇妙な味を醸し出してしまうのかと思った。不思議な作品だ……。

 「人斬り」のほうは、幕末に生き、武市半平太のもと要人暗殺に明け暮れた剣客・岡田以蔵の不器用な人生を描いていく物語。1969年公開の映画「人斬り」と同時発表された作品だそうだが、力強い作画は今もって古びないものがあり、さすがの迫力。新時代に適応するような頭を持たず、無類の強さを持ちつつも、人に利用される不遇な人生を送るほかなかった岡田以蔵の人生を骨太に描写。以蔵の武骨で愚直、どこかユーモラスなキャラ作りが秀逸で、その末路はもの哀しい。しっかり読ませる力の入った作品。

【単行本】「義経ちゃん剣風帖」1巻 小野寺浩二 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 お嬢さま学校のめがねっ娘委員長・静流ちゃんに、転生した源義経の魂が入り、二人のコンビでさまざまな敵を成敗していくというお話。出てくる相手は宿敵・鬼一法眼によって魔力を与えられた人間なんだけど、その力を使ってやることといったら、女の子を全員ネコミミにしたりとか、おさげにしたりとか、ドジッ娘にしたりとか、いかにも小野寺浩二ワールドらしいものばかり。明るく元気良く下らなくて、楽しく読める作品。「団長ちゃん」「ヤマモト」とかと比べると多少ゴチャゴチャしてるかなという印象はあるけど、実はけっこう少年漫画的な味わいのある小野寺浩二のオタクネタは、清々しいので好きです。


▼エロ漫画

【単行本】「きもちイイコト」 甘詰留太 ティーアイネット A5 [Amzn]

 現在はヤングアニマル掲載の「もてね?」等で活躍している甘詰留太の、エロ漫画方面の最新刊。あの濃い絵柄で、密度の高いエロをやりつつも、情感たっぷりなお話を描いていてやっぱり読ませる。今回の収録作品は、ラブラブなお話あり、ハードコアなエロあり、切ないお話あり。ラブラブ路線では魔法で分身しちゃった満子ちゃんが彼女が恋する友達のお兄ちゃんに迫る「続・三人のマジョ」、濃い絆で結ばれた姉弟の物語「いまのうちキョーダイげんか」あたりが良い。あと少年少女とその友達である淫魔娘のやるせないお話「忘れられない」も印象的。美少女におちんちんが生えてきて、そのおつきのあんちゃんがそれを慰める「ついている娘は好きですか?」もユニークな作品。あと、エロ方面では最近単発モノが多いけれど、そろそろ長めなシリーズものも読んでみたいところ。さすがに単行本まるまるとかいうのは難しいとは思うけど、3話連続シリーズとかでやってくれたりするとうれしい。

【単行本】「DOGMAN SCRAP」 世棄犬 コアマガジン A5 [Amzn]

 いやー、懐かしいですなあ。司書房版の「DOG MAN」が発売されたのが1996年。なんと9年ぶりの新装版。独特の線で世棄犬は艶めかしいエロ漫画を描く人で、その才気あふれる作風には当時とても注目していたものだった。あまり多作なほうではなく、品葉諸友、馬利権造とちょくちょく名義を変えてまれにふらっと出没しては、味のある作品を残していった(この2名義については今回の新装版で同一人物であることが明確にされている)。このほかアフタヌーンで掲載された博内和代と同一人物では?という説も取り沙汰されており(ファンサイトもある)、この単行本収録の「万世破綻」「紅い少女」などの絵柄を見ると確かにそうであろうと思われる。まあ最初に出たのが9年前なので、現時点でヌケるかといえばどうかなあというところではあるけれども、やっぱり絵はとてもうまいと思う。 最新作は昨年のコミックメガストア11月号でも新作「金融侮辱列島II」になるのかな。才能ある人だと思うので、ぜひまた本格的に活動再開してもらいたい。気長に待ってます。

【収録作品】「真・桃太郎伝説」「爆笑!!(珍)千鶴劇場」「AVE MARIA」「SPEED!!」「勧誘のシオリ!」「HYPER DIMENSION CONTACT」「Childhood's End」「紅い少女」「万世破綻」「漫画はぢめて♥物語」「秋の大運動会奮戦記!!」「神鍵」「Artifical Intention」「高い城の男」「(有)ウルトラ警備保障!!」「帰ってきた(珍)千鶴劇場」「SCRAPPED ILLUSTRATIONS」


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