オス単:2005年5月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「どいつもこいつも ワイド版」1〜3巻 雁須磨子 白泉社 B6 [bk1][Amzn:1巻/2巻/3巻

 ついに全部揃いました。思えば最初のバージョンの最終巻となった4巻が出たのが、2000年の10月。その後、普通に全部出るだろうと思って気を抜いてたら5巻以降が出なくて悔しい思いをさせられた「どいつもこいつも」。今回ワイド版になって最終話まで収録され、ようやく積年の大怨が解消。

 お話のほうは、陸上自衛隊に所属する朱野という女の子と、彼女を心憎からず思う同僚男子の乙犬、そして彼らの周囲の面々による自衛隊内ドタバタコメディ。自衛隊を舞台にしていながら、訓練とかの描写はかなりテキトー感が強く、まるで学園ラブコメみたいな感じでお話は推移する。その独特のゆるゆる感がとても楽しい作品だった。キャラクターもちょっと変わった人ばかりで、やたらめったら天然な朱野、犬みたいにキョロキョロした乙犬、美男だけど不器用なイジラレキャラの立花、立花にやたらちょっかいをかけてくる上官カップルの岡二曹と綾瀬三曹……と、みんな個性的。彼らの行動は思わず笑ってしまうほどのオマヌケぶりで、肩の力が抜けまくり。でも一番天然なのは、作者の雁須磨子だと思う。せっかく自衛隊に取材に行っているのに、そういうディティールは全部すっとばして、みんなで遊びに行く話とかバレンタインの話とか、旅行話とかに終始する。そのボケっぷりに最後までやられっぱなしだった。本当に面白いと思います。

【単行本】「神のちからっ子新聞」1巻 さくらももこ 小学館 A5 [Amzn]

 ビッグコミックスピリッツの片隅で、奇妙なワールドを展開している「神のちからっ子新聞」が単行本にまとまった。1回につき4P、見開き漫画2Pと記事2Pで構成されるその誌面はどうにも滑稽。誌面で好きなコーナーは、加字山さんという人が作った新しいことわざを紹介するコーナー。「パンダのはくせいを得る」(入手困難だが、別にいらない物を得た時のたとへ)とか、含蓄があるんだかないんだかよく分からんことわざが満載。これを読むと、自分でも何か新しいことわざを生み出してみたくなるというもの。あとおたよりコーナーへのつっけんどんでいい加減な回答、似てない似顔絵、微妙にオチてなくてもやもやした4コマ漫画など、素敵な要素がてんこ盛り。さくらももこの、こういう不条理ギャグ的なものをさらりと描いてしまう才能はかなり素晴らしいものがあると思う。枯れた絵柄も味わいがある。徹底的に無益であるところが良いです。


▼一般

【単行本】「猿王」 仲能健児 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 1994年にモーニングKCで発売され、絶版となっていた「猿王」が復活。宇宙と自然のひずみから生まれた強大で邪悪な、猿の姿をした悪魔にとりつかれた一人の日本人旅行者が、インド各地を逃げ回るという物語。仲能健児の作風はいつ見ても独特で、ヘンな形の頭をしたキャラ造形、コミカルながら細かい描き込み、いかにもインドインドした雰囲気などなど、怪しさ満点。物語もスペクタクルなんだけど、ユーモラスでもあり、混沌としたイメージに満ちている。絵も話もみんな怪しい。講談社版の刷り部数が少なかったので、手に入れられないでいたマニア筋の人もけっこういたと思うので、こうやって出し直されたのは喜ばしい。

【単行本】「スパイシー・カフェガール」 深谷陽 宙出版 A5 [bk1][Amzn]

 とあるタイ料理屋でその味に感銘を受け、店員となった青年が、その店の武骨でアヤしい店長らのせいもあっていろいろなアジアン系のちょっとヤバめな事件に巻き込まれていく。コミックバンチに掲載された「ラープ・ガイ」「小さな密航者」と、描き下ろしの「ミリオネアランチタイム」「プリッキーヌー」を収録。エスニックだのオリエンタルだのといった言葉がスッと浮かんで来る作画は相変わらずの完成度の高さ。お話のほうも構成が巧み。得体の知れない外国人とかがもりもり出てきて「どうなっちゃうんだろう」と思わせつつ、しっかり後味の良い締めくくりを用意して、お話をまとめてくるあたりはさすがのうまさ。なかなか一つの雑誌に定着しない人だが、できた作品はほぼハズレなく面白い。売れるかどうかとなるとまた別の話だけど……。

【単行本】「すもももももも 〜地上最強のヨメ〜」1巻 大高忍 スクウェア・エニックス B6 [bk1][Amzn]

 ヤングガンガンで連載中のドタバタラブコメストーリー。司法試験を目指す優等生だが、昔のとある出来事がトラウマになってすっかり喧嘩恐怖症になっていた主人公・犬塚孝士のもとに、ある日突然押しかけ女房がやってくる。彼女・九頭竜もも子はちびっちゃくて一見カワイイけど、性格は天然で戦闘力は最強。そんな彼女が犬塚に対して子作りしようと迫ってくるが、とてもじゃないけどそんな気になれない犬塚はそれを拒否し続ける。絵柄は華やかで元気が良く、お話のほうもドタバタと非常に賑やか。ギャグで攻めるところと、恋愛っぽいちょっといいムードなシーンなど、緩急のつけ方もうまくて楽しい。1巻はまだ登場キャラが少なめだが、連載のほうではこの後、犬塚&もも子を狙う巳屋本いろはらが出てきてさらにドタバタ感が増して面白くなっている。ラブコメ好きなら注目に値する、イキのいい作品だと思います。

【単行本】「もやしもん」1巻 石川雅之 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 生まれつき自然界の菌が肉眼で見えてしまう体質の持ち主である沢木成年が、幼な友達である結城蛍とともに東京の農大に入学。発酵食品の権威である教授らをはじめ、変わり者たちに囲まれて、平和かつ風変わりな日常を送っていくことになる。そんなわけでなかなか珍しいバイオ系な農学系の漫画。やっていること自体は文字にすると多少難しいところもあるかもしれないが、ビジュアルで楽しくやってるので菌やら発酵やらのことをわりとすいすい読んでいける。何よりいかにも農学〜って感じの、どこか大ざっぱでバイタリティのある教授や学生たちの様子が見てて楽しい。ただ単行本の装丁は、いくらなんでも地味すぎやしませんかねえ(→画像)。美少女とかドーンと出しても看板に偽りありだとは思うし、内容とマッチしてるといえなくもないのだけれども。

【単行本】「人斬り龍馬」 石川雅之 リイド社 B6 [bk1][Amzn]

 現在イブニングで「もやしもん」を連載中の石川雅之によるハードコアな時代劇。実は人斬りだった坂本龍馬と新撰組の暗闘を描いた「人斬り龍馬」、幕末の世に死んでいった二本松藩の少年兵たちの物語「二本松少年隊」、とある人斬りの悲哀を描いた「とどかぬ刃」、それからちょっと風味は違うが龍退治をめぐる人間の悲喜こもごもを描いた和風ファンタジー「神の棲む山」を収録。どの作品も独特のカッチリした絵柄で丁寧に描き込み、人間ドラマを構築。なかなか読みごたえがある。「もやしもん」みたいなのほほんとしたお話もいいけど、こちらの硬派な味わいもまた良し。

【単行本】「迷宮百年の睡魔」 作:森博嗣+画:スズキユカ 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 森博嗣作の小説を漫画化。同じ組み合わせの「女王の百年密室」[bk1][Amzn](感想:20011230日記)も面白かったし、なかなか良い取り合わせだと思う。機械でできた助手みたいな存在のロイディと共に旅している主人公サエバ・ミチルが、女王の統治する閉鎖された島イル・サン・ジャックを訪れ、そこで首なし死体をめぐる事件に巻き込まれる。さまざまな事象がなかなか明らかにされないミステリアスな雰囲気を、スズキユカの透明感のある硬質な絵で美しく描き出していて完成度は高い。原作は未読なんだけど十分に楽しめた。

【単行本】「愛気」1巻 ISUTOSHI 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 なんかとっても凄い拳法の腕前を持つ主人公・承久國俊が、学園の覇権を巡る争いに巻き込まれそうになるが、独特のふらふらした物腰でどっちつかずを貫き、両陣営に拳法の手ほどきとかをしたりするというお話。……とかいうと何がなんだかよく分からないが、実際にお話のほうも、拳法漫画という点だけはハッキリしているものの、今のところまだ本筋はあんまり進んでなくて先行き不透明な状況。でもこれがけっこう面白い。ISUTOSHIのシレッとした作風が、遊び人的な國俊のキャラによく合ってるし、拳法の描写もオリジナリティがある。物語の推進力が強まってくれば熱血的な面白さも出てくるかもしれないけど、なんかそれは合わないような気も。まったりのほほんと進んでいきそうな雰囲気で、気楽に読めるのが味。いっぱい出てくる女の子たちのキャラがもう少し立ってくればより良い。

【単行本】「ふわふわ悪魔」 阿部潤 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 「the 山田家」などで知られる阿部潤による、ファンタジーテイストな作品。キャベツが大好きな平凡な少年・星空翼が、友達が召喚してしまった雲か羊みたいなふわふわしたかわいい悪魔ふわりんと一緒に暮らし始める。その中で、周りの人たちのために魔力を使った翼の身体は、だんだん悪魔化していくが……。全体にほのぼのとしたかわいらしいお話。ラストのほうはちょっと急展開気味だけど、暖かい読後感を残す、阿部潤らしい愛のある作品に仕上がっていると思う。


▼エロ漫画

【単行本】「Life is Peachy?」 鬼束直 茜新社 A5 [bk1][Amzn]

 COMIC LOで活躍中の鬼束直(おにづか・なおし)の初単行本。非常にスッキリとした、爽やかで口当たりの良い作画の持ち主。田中ユタカをさらにこざっぱりとさせたみたいな感じの素直な絵柄で、フレッシュな質感もあって魅力的だと思います。お話のほうはLO掲載だけにロリ系。幼女系ではなくどっちかっていうと少女系で、ティーンズの女の子を描くことが多い。わりと妹モノが多めかな。ストーリーのほうは鬼畜な話は少なく、ほんのり甘く後味の良い作品が多いのでエロ漫画初心者にも読みやすそう。個人的には、普段は完璧なお嬢さまを演じているけど、運転手兼ボディーガードのあんちゃんに対してはざっくばらんな姿を見せるお嬢さまのラブラブHを描いた「犬とお嬢さま」が印象に残った。こういうのはツンデレとはいわないかもしらんけど、お嬢さまの普段とのギャップが良い感じです。

【単行本】「妹がんばってます!」 舞登志郎 オークス A5 [Amzn]

 舞登志郎久々の単行本は、お得意の妹モノを中心に、非妹のロリ、それから母モノを含む作品群を収録。中でも妹モノは舞登志郎らしいこだわりが強く感じられてお兄ちゃんに恋する妹さんの姿を、たいへんかわいらしく描いている。ぶかぶかのシャツを着たちんまりした姿とか、心細げな甘えた顔つきとか。線の省略のしかたとかも、見てて気持ち良い。「メジャーデビューへの道」については頓挫しちゃったけど、普通のエロ漫画でも十分良いものを描く人なんで、もっといっぱい描いて欲しいですなあ。

【単行本】「乙女系図」 永間ひさし 平和出版 A5 [Amzn]

 平和出版が出していたエロ漫画雑誌「ラブマニ」で描いてて、わりと気になっていた人。スッキリとした描線なんだけど、なんかゆらゆらとゆるめな独特の感触。目の中にトーンを貼り込む、どこかぼんやりした雰囲気が印象的。うまい形容が思い付かないのだけど、絵柄的にはちょっぴり(あくまでちょっぴり)おがわ甘藍を思い起こさせるかなあ。登場キャラは女子高生くらいで、巨乳でもなく貧乳でもないあたりの、並乳がメイン。作品の中では、数話に登場してくるまゆか、あゆか姉妹と、そのお兄ちゃんのエッチ話がけっこう良いです。


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