OHPトップ > オスマントップ > 2006年5月の日記より
このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません。
なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。
▼強くオススメ
【単行本】「デトロイト・メタル・シティ」1巻 若杉公徳 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
更新が遅れたのですっかりムーヴメントが取り残されてしまったファック!! というわけでヤングアニマルで連載中のデスメタルギャグがついに単行本化。最近のギャグ漫画の中でも屈指の笑える作品だけに、待ちに待ってたという感じでとても喜ばしい。発売は5月29日だったが5と2を入れ替えるとすなわち259(地獄)。DMC降臨の日にふさわしい。
お話のほうは、素顔はナヨっちいフォーク野郎な根岸崇一が、なぜかインディーズのデスメタルバンド「デトロイト・メタル・シティ(DMC)」のカリスマヴォーカル「クラウザーII世」として活動。普段は大人しい根岸だが、ひとたびクラウザーさん姿に変身するやテンションが上がりまくりで悪魔のごとき言動・行動を繰り返す。その様子がものすごく面白おかしく描かれている。
クラウザーさんの行動はいちいち伝説になるほど凄い。1秒間に10回「レイプ」を連発するシャウト、警察官を地獄へと突き落とす「48のポリ殺し」の一つ「非情なるギター」、かつてのデスメタルの帝王をファック合戦で打ち負かしステージ上で公開レイプ……などなど、どれ一つとっても悪魔そのもの。そしてついついそんなことをしてしまって思い悩む、素の根岸部分との葛藤も面白い。普段は人畜無害なようでいて、心の奥底にドス黒いものを潜ませた根岸。まったく恐ろしい。
あとやっぱこの作品で面白いのは言葉。やたら「ファック」や「レイプ」「SATSUGAI」などといったワードを連発するDMCの曲の歌詞は見ただけで慄然として笑いが吹き上げてくる。あと「ファック」は伝染る。これ読むとつい語尾にファックをつけたくなるファック。それからこの作品を盛り上げる上で欠かせないのが、やたらノリがいいDMCのファンたち。「クラウザーさんが0.5ファック勝ったぞ」とか、DMCの演奏中ずっとしょうもないことを叫び続けてる。クラウザーさんたちのポーズもいちいちいい。遠目に見るとカッコ悪……もといなんか神々しい、いや悪魔悪魔しいまでの人文字など、ヴィジュアル的にも素晴らしい。
なんだか初版の刷り部数が足りなかったようで、DMC難民も各所で出ている模様。早いとこ増刷して、みんながファックしてSATSUGAIしてレイプする日が来るといいなと思います。
【単行本】「しあわせももりんご」1巻 うさくん FOX出版 A5 [bk1][Amzn]
これは素晴らしい。うさくんといえば、最近COMIC LOで活躍中だけど、こちらはとらのあなのWebサイトで連載されている作品。お話の内容は「ランジェリータウン」というアホが多いことで有名な町に住む、エロが大好きな中学生・桜咲桃彦くんと、その周囲の人たちの日常を描いていくというもの。これがもう抜群に下らなくていいんですよ。最近読んだギャグ漫画の中では一番笑ったかもしれない。
この作品で何より素晴らしいのは、いかにも厨房的なスケベ心を、実に面白おかしくギャグにしている点。この手の中学生の妄想とかをギャグにする作品の場合、ノスタルジーまじりなものがけっこう多いけど、うさくんの作風はそういう空気を全然感じさせない。なんかもうモロに現役バリバリって感じ。その中学生エロ心を、楽しげかつ熱意たっぷりに、すごくあっけらかんと表明しちゃっているところがとても楽しい。体育祭でなんとかポロリを実現するための種目を考えたり、ちっちゃくなって女の子の体の上を移動するならどこに入りたいか……といったことを真剣に論じてしまう、そのアホさ加減の徹底ぶりに感心さえしてしまう。
エロの向かう方向もいかにも中学生っぽくて、「実際にエロいことしたい」っていうよりは、「エロを見たい」「エロ本を見たい」という方向に向かってて、かなり無害っぽい。実際の行為にあまり結びつかない、役に立たなさ加減が妄想のくだらなさをより増幅している感がある。脇キャラも見てて楽しい。桃彦の尽きることなきエロ魂、オールマイティぶりもいいけど、桃彦の幼なじみ女子・りんごちゃんのパパもいい。すでに初老なんだけど巨乳をこよなく愛し、画家として巨乳画を描き続けている。こちらも中学生である桃彦くんに特撰エロ本を分けてもらったり、やってることがすごくしょうもない。とにかくみんなエロ好きなんだけど、基本的に無邪気なのがいい。
絵も好き。ぷにぷにしてかわいらしいし、下着描写のもこもこ感とかは特筆もの。このかわいらしい絵のおかげで、エロについて描いても、ベタベタに下品な感じにはなってない。これもまたうさくんの優れた点だと思う。あと作中にときどき差し挟まれる、エロ妄想の対象物に対する作者コメントの数々も、一見マジメっぽい文体で下らないことばかり書き連ねてあって爆笑してしまう。読むのが苦にならないわりに密度も高いし、かなり楽しめました。なおこの単行本の帯では、なぜか石田敦子がコメント寄せてたりします。
【単行本】「リストランテ・パラディーゾ」 オノ・ナツメ 太田出版 B6 [bk1][Amzn]
オノ・ナツメの老眼鏡紳士好きが爆発した作品。お話の舞台は、老眼鏡をかけた紳士でないと店員になれないというレストラン。その店のオーナーと結婚するため自分をほっぽらかしにした母・オルガに文句の一つもいってやろうと、レストランに乗り込んだ主人公女子・ニコレッタだが、彼女もやがてそのお店の老眼鏡紳士・クラウディオに惹かれていく。というわけで、このレストランにおける人間模様を描いていくわけだが、これがまたオシャレでとても楽しい。クラウディオをはじめとした老眼鏡紳士である店員連中を、実に色っぽくかっちょよく描いてて、作者のキャラに対する愛情をひしひしと感じる。ドラマの作り方も暑苦しくなく、情感たっぷり。届きそうで届かない、ニコレッタの片想いの様子もほの甘くて心地よい。自分のスタイルをしっかり確立してて、実に見事であります。
▼一般
【単行本】「ABARA」上下巻 弐瓶勉 集英社 B6 [bk1][Amzn:上/下]
久々の単行本。ストーリーのほうは、単行本の裏表紙のほうに簡潔にまとめられているのでそれを読むと、だいぶ整理して読んでいけるが、この人の場合はストーリーうんぬんよりもやっぱり圧倒的なヴィジュアル。ハードコアで未来的な、建造物やクリーチャーの作画が相変わらずやたらカッコいい。巨大な建物、異形の生命体や非生命体は、いつ見てもすごい迫力。これだけの絵なので、B6じゃなくてもっと大きい判型で読みたい。いつも思うことではありますが。
【単行本】「voiceful」 ナヲコ 一迅社 A5 [bk1][Amzn]
二人の少女の心のつながりを暖かく美しく描いた表題作を中心とした作品集。「voiceful」は、ひきこもりをしていた内向的な少女・かなえと、ネット専門の少女歌手・ヒナの友情を描いた物語。かなえはヒナの歌を心の支えとして、ひきこもり状態から少しずつ外に出始めるようになるが、外出したときにたまたまヒナに出会い、パニック状態になりながらも自分の想いをヒナに伝える。ヒナのほうも、それまで人前に出る勇気が持てずネットの世界にこもっていたが、かなえとの出会いが刺激となって、ライブなどにも挑戦していこうと決意していく。
途中二人の気持ちはすれ違ったりはするものの、お互いの存在を心の支えに、少女たちが前に進んでいこうとする物語は、暖かく切ない。百合姫での連載作品ではあるけれど、あまりベタベタした百合恋愛物語って感じではなく、あくまで二人の少女の強い絆を描いた友情ストーリーって感じで清々しい。ナオコの柔らかな作画も良好で、ちょっと陰を持たせた絵作りも、しっとりと情感的で雰囲気たっぷり。美しくまとまった佳作だと思います。
【単行本】「ラブ・ぽっ!」1巻 森見明日 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]
ヤングキングで連載中のドタバタ学園ラブコメ。美術部部長の女の子・柏木千夏子は、部員である後輩男子・鳴門くんに激片想い中。しかし鳴門くんは最近部活をサボりがち。なぜかと思って調べてみると、彼は現在なぜかラブホテル住まいで、そこで年上の美人家庭教師・鳩子さんに勉強を教えてもらっていたからだったのでした……。といったわけで、千夏子が鳴門くんのところに押しかけアタックするも、鳩子さんにフラフラしている鳴門くんの姿にヤキモチやいちゃう……という感じでお話は展開。
まあ片想い連鎖系のラブコメなんだけど、明るくてドタバタした作風はなかなか楽しい。とくにキャラクターでは千夏子部長が良くて、ヤキモチやいては鳴門くんにカカト落とし(withパンツ丸出し)を喰らわす威勢の良さが面白い。あとガサツっぽいけど、片想いなんだかんだいって鳴門くんにメロメロな甘ったるさも良し。それから千夏子部長をいつもサポートしている、知音ちゃんも眉毛太めのおっとり顔でかわいいし。年上女性の鳩子さんはしんなりした大人の色気を醸し出しててこちらはこちらでまたよろし。ハキハキ元気が良くて、かつラブコメの甘ったるさもあり、パンチラ等もたっぷり。ヤングキングらしい、サービスシーンいっぱいラブコメとして、なかなか楽しく仕上がってると思います。
【単行本】「アニキ」1巻 たくまる圭 小学館 B6 [bk1][Amzn]
親御さんに見捨てられた7歳の女の子・ゆずと、その遠い親戚である工務店社長・通称アニキ。この二人の日常を描いていくホームドラマ。たくまる圭の柔らかい絵のおかげで、いくぶん切ないけれども、ほのぼのした心暖まる物語に仕上がってます。この作品でいいのが、ゆずとアニキのキャラクター。ゆずは親に捨てられたという経験からいろんな物事に大して臆病になっているのだけど、子供なりに一生懸命アニキやその周辺に気遣って、一生懸命行動しようとしている様子が健気。そしてアニキ。武骨でぶっきらぼうで外見は怖いけれども、人情味があって頼りがいがある。そんな昔気質なイイ男に描けている。両方とも口下手で、相手に気持ちを素直に伝えられないけど、一緒に暮らすうちにだんだん絆が強くなっていく様子は、とても微笑ましい。パッと見地味だけど、応援したくなる作品。
▼エロ漫画
【単行本】「わすれな」 ゼロの者 一水社 A5 [Amzn:通常版/ハイグレード版]
ゼロの者が初の長編にチャレンジ。これだけキャリアがあって初めてだってのはちょっと驚きではあるけど、これはなかなか良いです。お話の内容は兄と妹のラブストーリー。といってもこの作品でちょっと面白いのが、お話が兄が29歳、妹も別の男と結婚した時点から始まる点。結婚した後も兄と仲の良い妹が、兄の家に出かけていき、そこで情事が行われていく……といった具合。つまり妹モノと人妻モノ、両方の感覚が味わえるというわけだ。そして大人になってからのエピソードをやった後、2話めで二人の関係が始まった少年少女時代に戻り、また大人編をやって4話から少年少女時代編が続く。少年少女時代は雑誌では「旧わすれな」というタイトルで掲載された話だが、「旧わすれな」パートは二人とも学生なので、スタンダードな妹モノとなっている。
エロシーンについてはゼロの者独特の、ものすごく柔らかそうな肉体描写、トロトロつゆだくな汗の描写が映えてしっかりエロい。基本的にはオーソドックスなエッチしか描かない人だけど、それでもじゅうぶんに密度は濃い。あと最初に「大人になってもお互いへの未練が振りきれない兄妹」というのをやっているので、そのおかげでエロシーンがものすごくしっとり情感たっぷりなモノとなっている点もいい。妹が兄に対して向ける思慕の視線がなんとも切なげでいいし、それにからみとられてしまっている兄の気持ちもむべなるかな、という感じ。ずっとやりっぱなしではあるけど、基本的に常に「イケナイコト」をしているという雰囲気が漂ってるのもドキドキ感があっていい。初挑戦ながら、ちゃんと長編として面白い作品になっていると思う。今後の展開にも期待したい。
【単行本】「倒錯小説家」 ムサシマル ワニマガジン A5 [Amzn]
前の単行本「Replace Girl」(三和出版)が2003年4月発売なので、約3年ぶりの2冊め。お話のほうは、新人編集者が女性官能小説家のもとに原稿取りに行かされて、そこでエロいことをされてしまうという「倒錯小説家」シリーズ4本が中心。単行本は久しぶりとなるが、ムサシマルの絵はやっぱり達者だなあ。描線にキレがあってシャープだけど、同時に艶もあるし肉感的。あと誘うような目の表情の描き方もグッド。短編とかのストーリーはいくぶん弱めだけど、「倒錯小説家」シリーズはドタバタ感のあるエロコメディに仕上がってて楽しく読める。良さげなモノを持った人なので、もっとバリバリ活躍してほしいところではあります。
【単行本】「姫ごよみ」 天竺浪人 コアマガジン A5 [Amzn]
天竺浪人最新刊は、なんだかギャグ風味の強い作品が揃った短編集となった。以前から天竺浪人はAV女優の話するの好きだったけど、今回はその趣味を前面に押し出した「マネージャーのお仕事」が収録されてるし、そのほかアイドル系のネタもあり。とくに「はだか姫」は馬鹿馬鹿しくていいですな。小倉優子がモデルっぽいぽやんぽやんな女の子・ゆうかりんがヒロインなのだが、主人公をはじめとした性欲の強い人には、彼女が常に裸で見えるという設定。んでもって彼女が裸に見える、鬱屈した性欲を抱えている人たちを、ゆうかりんは尽きることなき優しさを発揮して、その体で一生懸命元気づけてしまうのだーってな話が展開される。最初の設定やその後の展開の下らなさが見てて楽しいし、解放感たっぷりなおめでたいラストも面白い。まあ淫靡なものをお求めな人や、ヌキ目的の人にはちと厳しいかもしれないけど、トリッキーなエロコメディが好きな人にとっては一読に値する一冊といえるんじゃないでしょうか。
【単行本】「凌辱学園〜部活調教恥獄責め〜」 ぶるマほげろー メディアックス A5 [Amzn]
タイトルのほうはかなりおどろおどろしくて、いかにもハードコアっぽいんだけど、なんだかかなりぶっとんだ内容になっている。エロゲーの漫画化で、作画はゲーム版とおなじくぶるマほげろーが担当。なんだけど、コレってゲームのほうもこんなにイカれた感じだったのかなあ。学園の教師が3人の女生徒を調教するという内容はゲームと一緒のようだけど、なんかやってることがたいへんしょうもない。メイン格の女の子が音楽室で調教を受けたかと思ったらその成果としてあそこでラッパを吹き出したりするし、ラストも魔法少女のコスプレしたから魔法が使えるようになりました〜とかいって、ぐだぐだで終わるし。なんかたいへん頭が軽くてぽやんぽやんなストーリー展開。ものすごくしょうもないんだけど、こういう馬鹿馬鹿しい漫画は好きです。
【単行本】「乱暴しなさい」 EB110SS 茜新社 A5 [Amzn]
EB110SSらしいロリロリなエロスを安定して展開。いかにも美少女〜って感じではない女の子を、キュートに描く作画が相変わらず良い。とくに今回の掲載作品では、目つきが悪くて同級生男子にからまれている女の子と、彼女のことが好きな男子の恋物語である「キッカケはオシリから」がラブラブな感じで良かった。あとはクラスの男子全制覇を目指して、日々エッチにいそしんでいる女子が主役の「すてきにコップ」も、イタズラ心が利いてて楽しい。タイトルのわりに痛々しい作品はなく、安心して読めるロリ漫画単行本に仕上がっている。