オス単:2006年6月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「RIN」1巻 新井英樹 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 アッパーズ休刊後、ヤングマガジン→別冊ヤングマガジンに掲載場所を移した「SUGAR」の続編。初勝利の後、その天才性を遺憾なく発揮、トントン拍子に連勝街道を登り詰めたリンが世界タイトルマッチに挑戦。そして当たり前のごとく、置いてあるものをひょいとつかむようにタイトルを手にしてしまう。しかし勝ち星を重ねるごとに、リンの奔放さ、傍若無人な振る舞いはエスカレートするばかり。世間を無用なほどに挑発し、接する者の神経を猛烈に逆撫でする。誰からも嫌われるようなヒール役となっていく。

 というわけでリンはものすごい才能と、鼻持ちならないふざけきった態度で、たいへんムカつくキャラに成長。その無軌道さ加減、態度のデカさは相当に不愉快。でもボクシングやってるときのリンのカッコよさは本当にすごい。まさに天才という言葉がふさわしい、神のごときスピードのパンチと、誰も捕らえることのできないフットワークに魅せられてしまう。とにかく勝ちっぷり、ぶん殴りっぷりが痛快至極で、えらく気持ちイイ。人間性は最悪なのに、どうしても目を背けられない、見とれてしまう、そんな吸引力がある。それを描く新井英樹の表現の冴えも素晴らしい。紙に描かれたものであるにも関わらずこんなにも速く見えるのか……という感じ。相変わらずすごく面白いんだけど、最近休載がすごく多いのは残念至極。早く続きが読みたくてたまらんです。

【単行本】「宙のまにまに」1巻 柏原麻実 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 これはほのぼの楽しくて良いです。とある高校の天文部に集まった少年少女の日々を、楽しく暖かく描いた物語。主人公の朔は、親の都合で転校を繰り返していたが、高校入学前に昔住んでいた町に戻ってきて、そこで子供時代にトラウマになるまで彼を引っ張り回し続けた1コ年上の女の子・美星と再会。彼女に引きずられて朔は天文部に入部することになり、さらに朔に片想いする女子・蒔田姫ちゃんらも加わって、楽しい学園生活が繰り広げられていく。

 まあそんなわけで天文部での学園生活が描かれていくわけだけど、何よりいいのが柏原麻実の素直で健康的で朗らかな絵柄。スッキリとかわいらしくて見てて気持ちがあったかくなってくる。学園生活の中で大きな事件やトラブルが起きるわけじゃないんだけど、その他愛のなさがすごく楽しくて、実にほのぼの。また女の子部員さんたちがかわいい。美星のハイテンションで快活、天然な元気娘ぶりも良いし、片想い女子である姫ちゃんの美少女っぷりもナイス。美星と朔の様子を見てやきもち焼いたり、もうかわいらしいったらありゃしない。あと天文部を目の敵にする生徒会長で文芸部の琴塚ふーみんさんもいい味を出してきそうな感じ。ってなわけでほのぼのした学園生活気分を楽しみたい人に、ぜひオススメしたい一作であります。

【単行本】「ライチ光クラブ」 古屋兎丸 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 今は解散してしまった「東京グランギニョル」という、飴屋法水、嶋田久作らが所属していたアングラ劇団の劇を漫画化した作品。今回はずいぶん丸尾末広っぽい絵柄にしているなと思ったら、もともと東京グランギニョルの宣伝美術を丸尾末広が担当してたんですな。そういった方面には疎い人間なので全然知らなかった。でもそういう予備知識がなくても、この漫画は楽しめた。

 この物語は、廃墟を秘密基地として狂気に満ちた日々をともにする少年たちの集まり、「光クラブ」の面々の破滅を描いていくもの。光クラブは、美しくも邪悪なカリスマ的少年であるゼラと、彼を崇拝するジャイボ、タミヤ、ニコ、雷蔵、カネダ、デンタク、ダフ、ヤコブによって織り成される(名前はすべて光クラブ内で使われるニックネーム)。当初はゼラの元、一糸乱れぬ統率を誇っていた光クラブだったが、彼らの作り出したロボットである「ライチ」が、基地に一人の美少女をさらってきたことが契機となり、彼らの関係に変化が生じ、疑念と憎悪が広がっていく。

 そして物語が進むにつれて、光クラブの面々の争いは激しくなり、ゼラの狂気も加速していく。このあたりの畳みかけるような展開は圧巻。耽美的で妖しい魅力に満ちた画面作り、背徳的な物語、残酷な結末に向けて加速していく狂気などなど、怒涛の展開を見せる。古屋兎丸の作画技術もさすがというほかなく、丸尾末広的な妖美な世界を完全に我がものとして、迫力のある画面を作り上げている。古屋兎丸自身がこの劇に惚れ込んでいて、最近になってようやくこれを漫画化できるだけの技量を得たとの自信を得て挑んだとのことだが、それだけに作者の気合いをひしひし感じる。満足しました。


▼一般

【単行本】「ケメコデラックス!」1巻 いわさきまさかず メディアワークス B6 [bk1][Amzn]

 現在、電撃コミックガオ!で連載中で、けっこう楽しみにしている作品。平凡な高校生男子・三平太の家に、花嫁衣装の土偶みたいなケメコが落ちてきて、「今日から私がおまえのヨメだ」と一方的に宣言。混乱する三平太だが、実はロボットであるケメコの中から出てきた美少女が、10年前に出会いずっと想いを寄せてきた美少女と雰囲気が似てることに気づいてまた混乱。さらにケメコと三平太が一緒にいるのを見て、幼馴染み娘のイズミちゃんはやきもちを焼くし、三平太を狙ってよく分からん刺客が押し寄せてくるしで、状況はたいへんドタバタ。

 まあそんなお話を面白楽しく描いたのがこの作品。作画的には吉崎観音チックな味があって、たいへんかわいらしい。ケメコの中の少女はいかにも宇宙美少女って感じでかわいいし、ケメコのデザインもユーモラスで見てて飽きない。ケメコの多彩なファッションもいい具合。また、幼馴染みのイズミちゃんがこれまた良いんですなあ。普段は恥ずかしがり屋だけど、服の下に隠されたバディはたいへんな巨乳。三平太好き好きっぷりも甘い味があって良いです。お話全体がカラッと明るく元気良く、ピチピチしているのも個人的には好印象。

 パンモロとかはほとんどないものの、良い感じのおっぱい描写や、見えそで見えないチラリズムもしっかり押さえていて心華やぐものがたっぷり。今後も楽しみであります。

【単行本】「ぼくらの戦国白球伝」 魚住青時 講談社 新書判 [bk1][Amzn]

 野球大好き少年の吉田くんが、戦国時代にタイムスリップして織田信長に拾われるところからお話が始まり、織田信長が勘違いして野球での天下布武を目指すようになってしまう……というギャグ漫画。1話1話は短く、連載も1巻分で終わっちゃったけど、何気にけっこう楽しくて好きだった作品。まず信長ら戦国武将が非常にバカで、野球を完全に勘違いしてそれを取り入れちゃう様子が面白いし、リアクションもいちいちアホっぽい。基本的にカラッと明るくほのぼのしてたりするところがいい。あと女の子キャラが何気にかわいいのもいいところで、わがままで元気の良い妹キャラとして描かれてるお市の方、忍者娘のお涼さんがけっこう萌える。とくに後半はその二人がいい味出し始めてたので、もうちょっと続けて欲しかったような気もする。

【単行本】「ユートピアズ」 うめざわしゅん 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 いっぷう変わった短編連作を収録した、新鋭の単行本。「いっぷう変わった」と書いたけど、実際に設定は風変わり。例えば「ナオミ女王様に仕えた日々」は、小学生男子がおうちにやってきたSMの女王様を育てていくことになるというお話。彼はペットである女王様を躾ける側なんだけど、やってることは奴隷。でもお話としては「初めて犬を飼った少年」的なテイストで展開する。また「どつきどつかれて生きるのさ」は、ボケとツッコミが男女間の恋愛みたいな感じで社会のシステムとなっている世界を描いた物語で、ツッコミの主人公がキャバクラのお笑い版みたいなところで出会ったボケと想いを遂げてコンビを組むようになるまでを描いていく。これも恋愛をそのままボケ・ツッコミに置き換えて、お話を展開していくところがユニーク。

 こんな感じで、どの短編にもそれぞれ変わった工夫が凝らされていて、「おっ」と思わされる部分を持っている。まあ正直なところ、ヒネリがすごく効いたお話は才気にあふれている反面、小賢しさが鼻につくところもあります。また設定が独特すぎて、引いて見ちゃう部分もなきにしもあらず。ただ発想の面白さは評価したいところだし、意欲的な作品作りも買える。作画もキッチリしてて表現力は高いと思うので、まずは楽しみな新鋭として記憶しておきたいところ。あとはやっぱこの発想力を生かした長編を読んでみたい。「チューブ」なんかは前向きでいい話だし、直球勝負でも勝負できる作風の幅はあると思うし。本作はヤングサンデー掲載作を集めたものだが、ヤングサンデーはこのところ元気ないと思うので、こういう人が新風を吹き込んでほしい。

【単行本】「フルーツ」 木葉功一 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 6人の魅力的な女性、すなわち果実の物語を描いていく短編連作。木葉功一の荒々しくてミステリアス、色気もある作画が映えて、それぞれインパクトのあるお話になっている。6本の中では、世界的なワイン・コレクターである妖艶な女性マダム・ピノ・ノワールの物語が背徳的な雰囲気に満ちていて、個人的にはお気に入り。あとは胸に傷を持つ小学生少女・窪田ミカンちゃんと、彼女に恋するカメラ好きの少年・十熊ヨースケくんの物語である「♥♥♥U・ミカンちゃん」あたりが、打って変わって快活なお話になってて印象的だった。あまり多作な人ではないけど、ハッタリの利いたダイナミックな絵作り、情熱的なストーリーに独自のものがある人なんで、またちょくちょく描いてってほしいものですが。

【単行本】「艶捕物噺 唐紅花の章」 深谷陽 リイド社 B6 [bk1][Amzn]

 東南アジア系な作品が多い深谷陽としては珍しく、江戸時代の日本が舞台の純和風な物語。ゆえあって、兄が与力、弟が花形の女形というまったく異なる環境で育った双子兄弟、星川主馬と澤井鶴助がコンビを組んで、お江戸を騒がす悪を退治するという捕物帳。主馬は剣の達人で、弟は演技の名人。お互いの特技を生かして鮮やかに悪人を召し捕っていくという内容。いつもとは舞台が違うものの、深谷陽の作風は相変わらず独自の味があり、しっかり深谷流時代劇になっている。各話の捕縛劇も鮮やかで気が利いてるし、二人のキャラ、とくに兄のほうが捜査の都合上、女形の格好をさせられたりするあたりが見てて楽しい。安定感があって読みやすい作品。

【単行本】「青いドライヴ」 橋本みつる 新書館 B6 [bk1][Amzn]

 久しぶりに橋本みつるの新作読んだなあという気が。現在はウイングスでときどき描いてるって感じなんでしょうか。ぼんやりとした線と、人物のくりくりした丸い目玉が印象的な絵柄で、不思議な雰囲気を持った少年少女の青春ストーリーを描く。今回は「蒼いドライヴ」「苺の夢」「流星」「こっちへおいで」の4本を収録。お話的にはとりとめもないというかとらえどころがないお話が多いけど、透明感のある作品作りは相変わらずで、読後の清涼感は独特。この手触りは意識して出せるもんでもなかろうし、面白い才能なので、もっといっぱい描いてほしいところではあります。


▼エロ漫画

【単行本】「お嬢様と僕。」 マイノリティ コアマガジン A5 [Amzn]

 非常に高飛車でなお嬢さまの暮尾羽都良(本名:鳩子)ちゃんと、彼女が何かとライバル視している男子・将ノ助の、学園エロエロラブコメライフを中心とした作品。鳩子ちゃんは普段は学園の女王様的な存在として祭り上げられ、とにかく強気なんだけど、将ノ助と二人っきりになると完全なMっ娘に変身。しかも実は将ノ助に完全にメロメロになってて、なんだかもうものすごい勢いでツンデレ。さらに鳩子と並ぶ学園三大姫と呼ばれる娘さんたちのエロ話も展開され、学園ツンデレ祭といった状態。

 マイノリティの作画自体はこぎれいなタイプではないし、ゴチャゴチャした感もあって洗練されてるふうではないんだけど、それだけにお話のほうは押しが強い。鳩子がエッチシーンでがっつりエロエロ調教されつつも、将ノ助大好きーってな顔を見せるあたりはとにかく甘ったるいし、そのボルテージも高くて勢いを感じさせる。彼女がヤキモチ焼いたりするシーンは楽しいし、意外とうっかり屋さんでノセられやすい様子も微笑ましい。エロ描写の濃厚さもラブラブムードの高まりに比例してて、エロも恋愛もみっちり濃くなっている。鳩子ちゃんをはじめ、学園三大姫の人が王冠みたいなヘンな髪飾りつけてたり、なんか妙なところもあるけど、そういう装飾過剰なとこまで含めて、濃くて楽しい作品だと思う。

【単行本】「恋におちよう」 フクダーダ コアマガジン A5 [Amzn]

 ぷにぷにふくよかな体つきの女の子を描くフクダーダの初単行本。ストーリー的には同級生のラブラブHとかが中心で、さほど珍しい部分はないものの、キャラの造形に独特の味があり、作風も暖かみを感じさせる。単行本の中心となるのは、全4話と番外編が掲載されている「アセっちゃダメ2」。汗っかきの女子が、教室でひとりエッチしてるのを目撃されたのをきっかけに、クラスメート男子とラブラブになっちゃうというお話。ちょっと三角関係ラブコメ的な要素も入れつつ、ちとフェティッシュに、また後味爽やかにお話をまとめている。エロシーンはまずまずの充実度。女の子の表情がイキイキしてて、親しみやすいのがいいです。

【単行本】「Love Selection」 如月群真 コアマガジン A5 [Amzn]

 コアマガジン系もう1冊。この人はストレートに実用的なエロさが特徴。女学生、ウエイトレス、妹、人妻家政婦……とまあヒロインについては多彩。ロリ系もあるものの、基本的には巨乳なほうが多いかな。ストーリー的な面白みはさほどないし、洗練された絵柄というわけでもないが、エロ描写がとてもねちっこい。フェラチオシーンでの口の開け方や、舌をぴっとり貼り付かせるような愛撫の仕方、パイズリ、挿入シーンでの乳揺れなどなどがねっとりいやらしく、けっこうグッとくるものがある。シチュエーション的には比較的開けっぴろげで、贅沢をいえば淫靡さや背徳感がもう少しあるとより良いかなと個人的には思ったりもしますが、それでもエロシーンの密度は濃いので満足できる。まあ絵柄の好みにもよるけど、かなり使える1冊といえるのでは。

【単行本】「アカン!もうむちゃくちゃにして」 木静謙二 メディアックス A5 [Amzn]

 久しぶりの単行本だけどやっぱりこの人の漫画はすごくエロいなあ。とくに大人の女性を描かせると抜群。大人の色気を漂わせた人妻さんとかが、ものほしそうな目つきでちんちんに吸いついている様子とか、たいへんツボにハマります。劇画調といかにもな美少女漫画調の間で、うまくバランスがとれた独自のエロ絵を作り上げてると思う。とくに今回収録の作品では、ファーストフード店の店員である主人公が、同僚の人妻さんと資材倉庫でやっちゃう「eats in」が個人的には好き。乳やら尻やらの形がエロっぽいし、よがり顔やらいたずらっぽい表情もグッド。そのほか「中華な母さん」とか馬鹿っぽい作品もあるけど、多少おふざけやってもどの作品もおおむね艶めかしくてエロい。主な掲載誌であったコミックPOTが体制変更になっちゃったけど、その後どこに行くのか気になってます。

【単行本】「お姉ちゃんのお願い」 糸杉柾宏 茜新社 A5 [Amzn]

 柔らかくてスラリとして絵柄で、適度に萌えと抜きを両立した作風が特徴。お話としては姉モノ、妹モノが多め。表題作「お姉ちゃんのお願い」は4話分が収録されており、カワイイ弟くんが姉の下着をあさっていたところ姉にバレる→おしおき女装→そのままHに……という流れで第1話。そのあと姉と弟くんはラブラブになっていくが、その後弟くんに片思いしている同級生女子が登場してそっちとも関係を持ち、三角関係に突入。でもいつまでも弟と一緒ではいられないことが分かっている姉は、彼のために身を引こうとする、ってな感じで展開していく。かわいらしい絵柄と、甘く切ない恋心を描いたお話は、読みやすいしまずまず面白い。ただラストが、もう一つ煮え切らないように思えてしまうのが惜しい。でもまあ全般にキャッチーな絵柄だし、痛々しい描写もないし、万人向けな感じのするエロ漫画といえましょう。


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