オス単:2006年8月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「鈴木先生」1巻 武富健治 双葉社 A5 [bk1][Amzn]

 待望の単行本化。現在漫画アクションで不定期掲載されている作品なんだけど、すごく変わった味のある作品で、最近とても楽しみにしている。本作は、とある中学校で2年生を受け持つマジメな男性教師・鈴木先生が、学校で起きるさまざまな問題に真っ正面からブチ当たっていくという物語。というとごく普通の学園ドラマに聞こえるだろうし、実際やってることは普通の学園ドラマだったりする。でも読んでみると分かる、いや読んでみないと分からないと思うけど、この作品の雰囲気はなんとも不思議なのだ。

 本作品の最初のエピソードである「げりみそ」は、それまでマジメだった男子生徒が給食時間に突然下品な言葉を聞こえよがしに呟くようになって、それがクラスに波紋を呼ぶというもの。問題自体はたいへんちっちゃくて、まさにコップの中の嵐。しかし鈴木先生はその問題を非常に重要なこととしてとらえ、その男子生徒の気持ちを理解しよう、正しい教育的指導をしようと努力する。鈴木先生は非常に教育熱心で、普通にイイお話とも言える。しかし本作品のヘンなところは、問題のスケールと比べて、その描写が余りにもシリアスすぎる点にある。たかだか給食を食べるときのマナーの問題でしかないのに、先生も生徒もそれがあたかも人生の苦悩、一大悲劇であるかのように接していく。キャラクターの表情も、サスペンスドラマかのような深刻なもの。そんな過剰なシリアス展開が連続していくうちに、思わず知らずそのペースに引き込まれていってしまう。

 第二エピソード「酢豚」も大変。給食のメニューから酢豚をなくすかどうかという問題に、鈴木先生が誠心誠意対処していく。これもまた人の生き死にや社会正義でもかかってるのかってな感じの、おっそろしく真摯なノリ。絵柄もやたらシリアス。あんまりにもマジにやられるので、かえって「これはもしかしてギャグでやってるんだろうか……?」という想念が頭をもたげてきてしまう。しかしやってることは真面目そのものな教育漫画なので、これをギャグととらえて笑っていいものなのか、それともこっちも真摯に受け取るべきなのか、ものすごく迷ってしまう。しかも第三エピソードである「教育的指導」は、普通に大きな問題なのでそのノリが似つかわしくて、これがまた判断を迷わせる。

 本作品では、これ以上ないってくらい日常的で地味な出来事を取り上げている。それなのに、どう受け止めたらいいのかたいへん惑わされる。読んでいると、自分の認識のゆらぎというものをすごくありありと実感できる。「この漫画はいったい何をやろうとしているんだろう」と、読んでいる間中、すごくワクワクするような不安なような、不思議な気持ちにさせられた。絵柄的には親しみやすいほうではないし、妙な作品なので好き嫌いは分れるかもしれない。でもほかにはないものを持った作品であることは確かなので、興味を持たれた方は、ぜひチャレンジしてみてほしい。

【単行本】「謎の彼女X」1巻 植芝理一 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 これはユニークで面白いっすねえ。妙にエロチック。にゅーあきば.comのレビューでも取り上げたとおり、この作品は謎多き転校生の少女・卜部美琴さんと、彼女に惚れてしまいそのよだれをなめたことから、そのよだれをときどき摂取しないと禁断症状が出るようになってしまった少年・椿くんとのラブストーリー。卜部さんはいつもはぼさぼさ髪で周りに目も見せない、奇行もめだつ女の子だけ椿くんだけに見せる顔は格別にカワイイ。そしてときにはスカートの中からはさみを取り出して、周囲のものをめったやたらに切り刻んだりと、激しい面も。その意外性のある行動に椿くんは圧倒されながらも、ふとした折りに彼女が見せる魅力にメロメロになっていってしまう。

 この作品で植芝理一は、キスやエッチといった肉体的接触はなしにエロい雰囲気を醸し出すということを非常に熱心に行っている。とくによだれがらみの描写は気合い入ってて、卜部さんがくちゅくちゅと口を動かして、よだれを指に移して近づけてくる動作だけで、なんだかムラムラくるものがある。口からよだれをたらりとこぼしている、卜部さんの表情もこれまたグッとくる。そしてそれを椿くんがぱくりと咥えるシーンも煽情的。

 そんなフェティッシュで、「イケナイこと」をしている感覚たっぷりながらも、全体としては楽しく読めるラブコメに仕上がっているのもお見事。たいへん不思議な甘〜い感覚のラブコメに仕上がっててオススメ。やっぱ植芝理一は才能あります。

【単行本】「群青学舎」1巻 入江亜季 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

【単行本】「コダマの谷」 入江亜季 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 現在コミックビームで「群青学舎」を連載中の入江亜季の単行本が2冊同時発売。この人の、上品だけれども、艶とキレが共存する美しい画風は、一見して惚れたって人も多いんじゃないかと思う。実際キャラの絵は非常に達者で華があるし、背景もキレイでなんとも良い雰囲気を醸し出してる。ビームの若手の中でも期待度二重丸な作家といえる。

 まず「群青学舎」のほうだが、こちらは読切短編シリーズ。学校の不思議的物語から恋愛、青春モノ、自然モノと毎回世界もキャラも異なるが、それぞれクオリティは粒ぞろい。女性キャラが魅力的だなあというのは一つあるけど、それ以外もイイ。何より線にツヤがある。とくに目の光。水面は澄んでいるけれども底に行くに従って深い色を増していく湖のような、鮮やかな目の光が非常に印象的。お話のほうも、甘やかな恋愛気分に浸れるものや、ほのぼのするもの、切なくほろ苦いものと揃っていて、それぞれしっかりまとまっていてうまいなーと思う。

 「コダマの谷」のほうは、同人誌で「流星学舎」シリーズとして発行されていた連作「コダマの谷」と、ぱふで連載されていた4ページ漫画「フクちゃん旅また旅」12話分を収録。メインとなるのは「コダマの谷」のほう。こちらはビームで活躍するようになる前の作品で、画風もまだちょっと創作同人っぽさがあるかな。お話のほうは、王立の学院にお忍びで通っている王子・アーサーと、いい加減でフラフラしているように見えて実はすごくキレ者である彼の学友・ライダー、それから王子の結婚相手として送られて来た女の子の3人を中心とした学園青春ストーリー。まだこのころは同人時代ということもあって、お話の見せ方はいくぶん分かりにくいかな。ライダーの背景事情とかは説明が不足気味だし、キャラの描き分けももう一つ。ただ最初から作画は品が良く、それが回を重ねるごとに、だんだん今のような艶を帯びてきていることが分かる。あと全体の雰囲気はほの暖かく茶目っ気もあって、読んでて楽しい気分になれる。

 個人的には今の画風のほうがより色気があって好きだけど、昔のもこれはこれでスッキリしていて悪くない。紹介の順が逆になっちゃったけど、「コダマの谷」→「群青学舎」という風に読んでいくと、作風の変遷なんかもよく分かってなかなか興味深いものがある。まあそんなわけですでに技量、完成度的にはかなりなものとなっていると思う。今後はどんどん長い作品にも挑戦して、商業での代表作といえるような作品を一つモノにしてくれるといいなーと思います。そうするともう一段ジャンプアップできるんでは。何はともあれ期待してます。


▼一般

【単行本】「僕と王様」 にしかわたく 東京漫画社 A5 [bk1][Amzn]

 ぬおー。まさかこの人の単行本が出よるとは。四季賞やちばてつや賞で入賞したがその後忽然と消えてしまった作家、にしかわたくの初期作品風。「僕と王様・蜜街」「ペロンの降る夜」「ノーチェ・ブエナ」「イレブン・イヤーズ・オールド」「魂拾い」「僕と王様」を収録。一番最近の作品で2000年、古いので1993年と漫画についてはまさに幻っぽい作家さん。絵のほうはコミカルな造形なんだけど、どこか薄ぼんやりした影のある、叙情的なタッチが特徴。そんな絵で、ファンタジー心のあふれる、ギュッと胸にしみるような寂しさを含んだお話を描いており、印象に残ります。丸っこい絵柄なんだけど、この人のタッチには不思議な情感と色気がある。商業誌でバリバリやっていくというタイプの絵柄ではないかもしれないけど、一枚絵も味があるし、面白い才能だと思う。

【単行本】「ユリア100式」1巻 作:原田重光+画:萩尾ノブト 白泉社 B6 [bk1][Amzn]

 ヤングアニマルでやってる、エッチでオバカなドタバタギャグ漫画。これは下らなくてアホらしくて、なかなか面白いです。

 お話は、自分でモノを考え行動する、人間そっくりの超高性能ダッチワイフ・ユリアが、開発者のオッサンのもとを飛び出し、純朴な好青年・瞬介に拾われて彼の部屋に住みつくところからお話はスタート。ユリアには「初めてヤッた相手が御主人様として刷り込まれる」というプログラムが施されているが、ユリアがダッチワイフだとは知らず、田舎に彼女がいて異様に身持ちの固い瞬介は、操を守ってユリアにはけして手を出さない。そんな優しい瞬介にユリアも惚れてしまうのだが、ついダッチワイフとしての習性が暴走させて、瞬介を押し倒しちゃったり、エロい行動に走ろうとしてしまう。そんな状況を面白おかしく描いていく。

 本作で良いのが、エロいことをしようとするも失敗してばっかりなユリアのオバカさんぶり。エロいことをしようとしてても、ドタバタした作風とユリアの天真爛漫な性格のおかげで、あんまり淫靡なふうにはならず、作風はあくまでカラッと明るい。あとテンポが良くて繰り返しギャグがうまい。とくに、ユリアのダッチワイフとしての習性を解説する「ユリア100式マニュアル」は、内容が下らないうえ、何度も執拗に繰り返されるんで、出てくるたびにおかしさが増していく。

 本作の原作は「イッパツ危機娘」を手がけた原田重光。ちょっと下品なギャグ、執拗な繰り返しなど、ネームに関してはモロに原田重光風味。たぶん原田重光自身が描いても十分面白い作品になっただろうとは思うけど、萩尾ノブトのほうが絵柄がキャッチーで、よりカラッと明るく間口の広い作品に仕上がっている感がある。これはなかなかいいコンビネーションといえるんじゃないでしょうか。原田重光は以前「けっこう仮面P」(作画:湊青樹)とかでも原作をやってたけど、原作者は向いてるんじゃないかと思いますね。

【単行本】「そこはぼくらの問題ですから」 桂明日香 太田出版 B6 [bk1][Amzn]

 子供のころから変態にばかり好かれてしまう性質の持ち主である女子高生・若杉ヤエコちゃんが、すごく美形の青年・六朗に出会って一目惚れするも、彼の正体は真性のロリコンであると判明。そんなヤエコが六郎と同居するハメになり、二人は変態という障害はありつつも、だんだん好き合うことになっていくのでありました……というドタバタラブコメディ。

 現在「BLOOD+」を描いている桂明日香がドタバタものに挑戦した作品で、達者な絵柄と賑やかな展開でまずまず楽しめる。ただ、ヤエコの変態を引き寄せる性質が1話以降はもう一つ生きていないのと、ヤエコと六朗が好き合うようになるあたりの動機付けがちょっと弱いように思える。全般的な雰囲気は好きだし、きれいで達者な絵柄は上々でキャラもかわいげがある。出だしとラストの締めくくりもいい。それだけに中盤の押しの弱さが惜しいなーと感じた。

【単行本】「鈴木式電磁気的国土拡張機」 粟岳高弘 コスミックインターナショナル A5 [bk1][Amzn]

 コミティアでいつも買ってる粟岳高弘の2冊めの単行本。同人誌で発表された作品を中心に、九龍、SF Japan、メガフリークに掲載された作品を合わせての刊行。のんびりとした田舎の風景に、SFのようなそうでもないような的生物や機械類が自然に溶け込んだ世界は、一種独特ののほほんとした雰囲気を作り出している。そして青い空と、裸だったりふんどしだったりスク水だったりする少女たちのコントラスト。垢抜けないけど親しみやすいそこらへんにいそうな女の子たちが、田舎の風景の中にポーンと半裸でいる光景は、不思議な解放感があって気持ちいい。粟岳世界は裸でいてもほの暖かそう。飄々としたお話作りと、肌になじむほの暖かい手触りが好きです。

【単行本】「これが未来だぜ!!」 古泉智浩 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 「変身エロイダー」「四番目の男」「巨大戦闘メカ ガロハロ」「ヘルレイジャン」「ヘルレイジャンII」を収録。「てきとうなSF&ホラー作品集」と帯に書いてあるけど、たしかにてきとう感にあふれた作品が多く、生暖かい空気が漂ってて独特な面白みを発揮。「変身エロイダー」は主人公の少年が、エロで興奮してそのパワーで変身ヒーローとなって戦うという話だが、仮面はまるでパンツかぶってるみたいだし、攻撃方法も股間の筒をこすって中から出てくる液で敵を溶かすとか。見るからに情けない外見だし、倒す敵も加藤鷹みたいな感じ。ヒーローものなのにあんまり盛り上がらず、ただまったりとくだらないことやってるだけという感じがしてしまうあたりが面白い。「四番目の男」も超能力を与えられた平凡な人たちが集まってうだうだしてるだけみたいな感じで、これまたやる気なさげ。

 全般にだるそうなんだけどお話自体は軽妙でもあり……という不思議な感覚が、見てて楽しい。登場人物たちは脂汗かいてることが多いけど、作品全体の雰囲気も、汗に湿ったTシャツみたい。ほのかにじっとりした生ヌルさが味です。

【単行本】「さらい屋五葉」1巻 オノ・ナツメ 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 ものすごく不器用で頼りなさげな侍・政が、遊び人風だけど実は誘拐を仕事としている賊の頭領である弥一に用心棒として雇われる。政は実はかなりの腕前の剣士なのだが、小心者なので賊に手を貸すことにおっかなびっくり。でもつき合っているうちにだんだん弥一という人物に興味が出てきてしまい……といった感じでお話は展開。

 というわけでオノ・ナツメが現在IKKIで連載中の「さらい屋五葉」が単行本化された。オノ・ナツメらしく絵はシャレており、弥一と政の関係も少しBLっぽい雰囲気を漂わせつつ、ドラマは展開している。その様子を眺めているのはまずまず心地よい。ただ、現時点ではオノ・ナツメ作品としてはいまいち面白くない部類かなあって気がする。政のキョドキョド頼りなさげな態度はちょっとかわいいし、弥一には色気があってカッコイイのだが、お話面でのフックが1巻めの段階ではまだ弱い。まあこの人の場合、話が続いていくにつれ良さがどんどん出てくるってところがあるので、今後の盛り上がりに期待したい。

【単行本】「ホスト一番星」1巻 小田原ドラゴン 集英社 A5平 [bk1][Amzn]

 とてもくだらないです。ホストになって女をヒィーヒィーいわせるのが目的で状況した男、後家山一番星が、ホスト界の頂点を目指していくというお話。といっても普通のホスト漫画みたいなド根性モノって感じじゃないので、ヘネシーボトル一気飲みとかそういうことはとくになし。なんの実績もないのに、女の子に対してやたら高飛車に接する「オラオラ営業」をしてみたり、キャッチでつかまえてくる客がヒグマだったり、後家山のやることは何から何までピントがはずれまくり。そのアホさ加減、しょうもなさが楽しい。あんまり力が入ってなくて、いい感じで脱力した味なのが良いです。何気にホスト漫画でこいう力の抜けた作品って珍しいかも。


▼エロ漫画

【単行本】「となりの精液さん」 上連雀三平 茜新社 A5 [Amzn]

 上連雀三平名義のエロ漫画単行本はすげー久しぶり。「アナル・ジャスティス 肉棒射精編」「飲尿女神」が2002年なので実に4年ぶり。いやー待たされましたなあ。でも待たされただけの面白さはありますよ。この単行本に収録されているのは、COMICバニラ→COMIC RINに掲載された「となりの精液さん」全7話と、「ふたなりっ娘LOVE」掲載の「肉の天使舞い降りて」全3話、「ケモノっ娘」掲載「放課後ネコミミFuck!」の全11本。

 掲載作品の中で面白いのは、やっぱりなんといっても表題作「となりの精液さん」。ご家庭でふたなりのお姉ちゃんの性欲処理係を日々こなしていた5年生の女の子・沙弥香ちゃんが、お隣に越してきた同い年の少年・悠くんに一目惚れ。悠くんも母親と毎日やりまくっており、沙弥香と悠くんがセックスするのも時間の問題……とか思っていたらそうは問屋が卸さない。その寸前までは行くものの、悠くんは母親や沙弥香の姉とやりはじめちゃうし、学校でやろうとしても悠くんがクラスの男子のちんちん係になっちゃったり、やろうとするたびにどうもじゃまが入る。それでもメゲずに沙弥香ちゃんは悠くんとのエッチを目指すのだが……ってな感じでお話は展開。

 本作品においても、上連雀三平の基本的なノリは変わらない。いけしゃあしゃあぶっとんだセックス観を披露、淫語たっぷりのセリフをまるで日常会話のように堂々と連発する。「うちのママも淫肉人妻でさ」「さ お姉ちゃんの精液を飲んだらもう寝るのよ」「セックスはいいけど 遅刻はカンベンしてほしいよね」などなど、清々しい表情で面白セリフを連発してて楽しくてしかたがない。「セックスの神様に謝りなさい!!」というお姉ちゃんのセリフも良かったな。最後のほうもそのノリのまんまでラブコメやってるし、たいへんご立派。あーあとちんちんの描写のご立派さ加減もお見事というほかない。実に隆々として、幹の反り具合、先端のきれいなカーブと、すごく楽しそうに描かれている。まあこういったノリは実際読んでみないと面白さが伝わんないと思うんで、ぜひガツンと購入したうえでドピュッと読んでいただきたいものであります。

【単行本】「QG キュートガールズ」 ED コアマガジン A5 [Amzn]

 にゅーあきば.comのレビューでも紹介したけれども、なかなか達者な絵を描くエロ漫画の新鋭でこれが初単行本。キャラの輪郭が直線的な作画は、パッと見スッキリした印象でスタイリッシュ。でもキャラの造形とか表情とかは萌え度が高し。そして体のほうは肉感的で、性器の描き込みもしっかりしててエロ度もかなり高め。萌えとエロがしっかり両立できていながら、ちょいとオシャレでキャッチーでもあるという、最近のトレンドな感じの作風で雑誌掲載時から注目しておりました。

 お話のほうは、基本的に甘ったるいラブラブなお話がメイン。ツンデレ娘も描くし、デレデレ娘も上手。あと同じキャラを使ったエピソードで、2〜4話程度のまとまったものが3本あるので、読みごたえ的にも上々のものがある。とくに個人的には、冒頭に収録されている妹分的ツンデレ娘さんとの学校H漫画、「好きと言えない…。好きと言わない!!」「好きと言わせたい!!?」がお気に入り。普段はツンケンしてて隙を見せない女の子が二人っきりになると……という甘さがたまらんです。あと「the Couple」シリーズの水着シーンのムチムチ感も良いな。

 それにしても最近のエロ漫画の人は、出始めからバリバリうまい、完成度の高い人が多くなってきましたねえ。新人さんのレベルは本当に高くなったと思う。その中でもこの人なんかは、話的にも絵的にもちゃんとしてるし実用面も上々。表紙もパッと目を引くデザインなんで、初単行本からけっこう行くんじゃないでしょうか。このままですでに十分売れ線だと思う。あとはそのうち1冊まるまるの長編モノにも挑戦して、代表作といえる作品をモノにしてもらいたい。

【単行本】「ハニーダーリン」 北河トウタ ワニマガジン A5 [Amzn]

 2002年の作品から近作まで、新旧織り交ぜた単行本。以前からこの人の作品は好きだったけど、やっぱいいですな。キュートだけれどもきっちりエロいというのを、以前から変わらずキープしてて、コンスタントなクオリティ。基本ラインは変わってないけど、最近の絵柄はまた艶が増してきた感じで、カワイイ小娘だけでなく、アダルトな熟女もちゃんと描ける幅ができてきた。今回の冒頭に収録されてる「奥様は痴女!」なんかは、欲求不満気味の奥さまをムンムン色っぽく描いてていい具合。かと思えば「イノセント」ではツンケンしたお嬢さまキャラ、「サクラサクラ」ではやさしいお姉さんキャラ、「ハニーダーリン」では天然系めがねっ娘と、多彩なヒロインをいずれもそれらしく、かつかわいくエロく描きこなしている。ハードコアっていうほどではないけどちゃんとヌケるし、お話のほうも後味悪い作品はないので、エロ漫画ビギナーにも幅広くオススメできる。

【単行本】「シスプラ」 狩野蒼穹 コアマガジン A5 [Amzn]

 ほのぼのしたロリ系漫画で楽しい作品をコンスタントに描いている狩野蒼穹の最新巻。単行本タイトルどおり、兄妹、姉弟によるラブラブ話が多め。普段は内に秘めてるけど、兄あるいは弟さんのことが大好きな女の子さんが毎回かわいく、ぷにぷにした絵柄も親しみやすく、かわいくてよろしいです。あまり下品にならずほんのり甘いって感じで調理したお話も、暖かみがあってグッド。まあ実用っていう観点からいうとヌルいけど、ないものねだりしてもしゃーないんで、ここは一つその甘ったるさ、かわいらしさに浸るのが吉。


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