OHPトップ > オスマントップ > 2007年2月の日記より
このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません。
なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。
▼強くオススメ
【単行本】「ナチュン」1巻 津留泰作 講談社 B6 [bk1][Amzn]
現在アフタヌーンで連載中の新鋭の初単行本。混沌としてはいるんだけど、これはなかなか面白い。注目の一作。
お話のほうは、事故により脳の大半を失ってしまった教授が撮影した、イルカの生態観察ビデオを見た主人公が、そこからものすごいインスピレーションを得るところから始まる。彼はそのビデオを見て、「もっとイルカの観察を続ければ超画期的な人口知能がつくれるぜ、スゲー!」「これさえあれば世界征服も夢じゃねー!!」的な考えに至り、イルカ観察をしようとするが、日本国内ではそれに適したスポットがなかなか見つからず。しかしそれでもくじけない彼は、沖縄のとある小島に住まう漁師のおっさんのところに転がり込んで、その漁を手伝う傍ら、イルカ観察をしようともくろむのであった……。
というのが第1巻のあらすじ。このように書くと、「ものすごくハードな観察やらが描かれるアカデミックな内容になるのでは」と思う人も多いかもしれないが、今のところそんなでもなくて、描かれるのは主人公とおっさんの島での生活模様がメイン。おっさんは腕のいい漁師ではあるがかなり自堕落で気まぐれで乱暴でスケベ。そのおかげもあって観測は遅々として進まず、日常はぐだぐだと経過する。しかしその様子が読んでいてなんだか心地いい。そこからどう話が転がるんだかさっぱり予想はつかないながらも、ぐだぐだしたままでもいいし、お話が大きくなっていってもいいし、全方位な構えを作り出している。
絵柄的にはゴチャゴチャしているが、それがまたいい。既存作家でいえば、大山玲に近いかな。混沌としてはいるものの読みにくいというほどではないし、先行きが見えないお話と、どことなく呑気で気怠げなお話にもよくマッチしていると思う。主人公とおっさんのやり取りとかもテンポが良くて見てて楽しいし、その島に住む口のきけない女漁師のねえちゃんもミステリアスで不思議な魅力がある。このままうまく進めば、かなり印象的な作品に育っていきそう。楽しみ。
【単行本】「極道めし」1巻 土山しげる 双葉社 B6 [bk1][Amzn]
大食いバトルをエキサイティングな漫画に仕立てた「喰いしん坊!」で、グルメ漫画界に旋風を巻き起こした土山しげるの新機軸。これもなかなかネタとしては画期的。この作品を一言で現すなら「バーチャルグルメ漫画」とでも申しましょうか。
お話のあらすじとしては、刑務所に服役中の囚人たちが、正月に出るおせち料理のおかずを巡って、「食い物自慢話」バトルを繰り広げるという内容。要するに「一番旨そうに食い物話をできた奴が、ほかの服役囚から好きなおかずを一品ゲットできる」というルールで食い物話をしていくというもの。つまり漫画としては、旨そうな食い物はいっぱい出てくるんだけど、実際に囚人たちが物語時間の中のリアルタイムでそれを食うわけじゃない。あくまで自慢話をするだけなのだ。
普通の料理漫画といえば、基本的にはその食い物のうまさを競うのが基本。ウンチクやら演出やらに彩られていても、それについては変わらない。しかし「極道めし」内の勝負で問われているのは、「いかにうまく話すか」、つまり話術なわけだ。「絵に描いた餅」という言葉があるけれども、ここでは「餅のうまさ」を競うんじゃなくて、「いかにうまく絵を描いたか」を競っているのである。
あと勝負内容で面白いのは、「話のネタにする料理が旨ければいいってもんでもない」という点。「食い物自慢」なので、いかに聞き手に「旨そう」と思わせるかが勝負のポイントとなっているため、各人が味を具体的に想像できないといけない。いかにうまくても「宇宙人の作った緑色の流動食」とか、味が想像しようがないもんだったら意味がない。さらにほかの囚人たちの嗜好の問題もあるので、より万人受けするタイプの料理の話にする必要がある。ここらへんのバランスが実に難しく、読んでいるほうも「あの料理だったらどうかな?」みたいなことをつい考えさせられてしまい、お話に引き込まれる。ここらへんは設定の妙。
「喰いしん坊!」は「料理のうまさ」ではなく「いかに早く、大量に食うか」を物語の軸にしていたわけだが、こちらは勝負の軸をズラしたうえ、さらに「実食しない」というコンセプトまで取り込んでいる。これはグルメ漫画としては相当にトリッキー。まあそれだけに見せ方も難しいとは思うんだけど、そこらへん土山しげるはとてもうまくやっている。テクニカルな部分に左右される作品だけあって、「喰いしん坊!」みたいなストレートに燃える、テンションの高い面白さってわけではないけど、こちらはこちらで味のある作品となっている。また、旨そうなものの話を実に旨そうに描いてて説得力はある。「次はどんな料理の話をするのかな」というワクワクさせられもする。やっぱこの人、漫画うまいですねえ。
【単行本】「キミキス −various heroines−」1巻 東雲太郎 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
待ちに待ってたという感じの第1巻。にゅーあきば.comのレビューでも、連載100回めで取り上げたけれども、これはやはり素晴らしいと思う。近年のギャルゲー系、といわず萌え系のラブコメ作品の中でも相当上のほうにランクする作品に仕上がっていると思う。
お話のほうは、「キス」にこだわった学園ラブコメという感じで、主人公の光一くんと多彩なヒロインたちの恋模様が描かれていくというもの。東雲太郎といえば「Swing Out Sisters」で、エロ漫画方面で一気にブレイクした人だが、その勢いそのままにメジャー系も席捲。東雲太郎の、キレが良くて爽やかさで、なおかつミルクのような滑らかさも兼ね備えた絵柄の魅力は、舞台を移しても健在、というかますます輝いてる。お話の内容にもバッチリ合っていると思う。
第1巻では、光一とその年上の幼なじみ・摩央姉の恋模様が描かれていくのだが、これがもう実に甘ったるい。光一をモテる男にしてあげる、といって摩央が彼をチェックしていくというふうにお話は進行していくんだけど、そのトキメキ感は尋常でない。触れ合う機会が増え、キスを重ねていくにつれ、恋心が盛り上がっていく様子はむせ返るような甘さに満ちている。最初の膝小僧へのキスや、プールの回での指フェラなどがたいへんエロっちく、そこがおおいに話題を呼んだりもしたけれども、ラブコメとしての密度、ボルテージの高さも大したもの。じりじりと温度を高めていく手管、瑞々しくてトロけるような感触にたちまちヤラれてしまう。
あと摩央姉ちゃんが女の子として実に魅力的に描けているのも素晴らしい。お姉さん風を吹かせつつも、実は自分も恋愛経験が豊富なわけでなく、キスやら何やらのたびにドキドキしまくっている様子に胸がキュッとくる。摩央姉編の締めくくりも甘くて爽やかで、なんとも好ましいものがあった。お話的にゴール地点に設定されてるのが「キス」だってのもいい。エッチとかまで行かない分、初々しさ甘酸っぱさがより鮮烈に映るし、そこに至るまでの過程もじっくり描かれたものとなっている。本作の漫画化に当たって東雲太郎を起用したのは大ヒット。東雲太郎は「Swing Out Sisters」で長足の進歩を遂げた感があるけれども、この作品ではまた漫画うまくなったなあと感じる。天晴れ、であります。
▼一般
【単行本】「ペンギン娘」1巻 高橋てつや 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]
にゅーあきば.comのレビューにも書いたとおり、最近めっきり萌え路線を強めている、週刊少年チャンピオンのニューパワー。見た目はカワいくて超金持ち。でもその中身は超オタクである転校生女子・南極さくら、通称「ペンギン娘」とその学友たちが織り成すドタバタ学園ギャグ漫画。
この作品の特徴はなんつっても作画がたいへんキャッチーであること。カラーの表紙なんかは華やかだし、美少女たちもわんさか出てきて、わきわき動き回る。パンチラとかサービスもたっぷり。まあレビューでもすでに触れたとおり、通常コマ割と4コマが入り混じるページ構成は、かなりゴチャゴチャしていて読みづらいっちゃ読みづらい。お話もハチャメチャでお話を貫く筋立てがあるというわけではないんで、「なんじゃこりゃ?」と思う人もけっこういそう。
てなわけで「文句なく面白いか」と聞かれると、その点は微妙なところ。ギャグはすごく笑うってレベルではないし、まったりほのぼのするには想像しすぎる。その代わり、毎回お祭り的な賑やかさにあふれている。だこの作品の場合、「とにかくかわいい女の子を目立つように描く!」という信念が全編にわたって貫かれていて、その点で押し出しがとても強い。先ほど書いたような変則コマ割りも、ひとえに女の子をデッカく描くためのもの。その割り切りぶりは潔いし、実際女の子もかわいい。パンチラとかはふんだんだけど、それ抜きにしても目を楽しませてくれるし、眺めているだけで心華やぐものがある。
最近のチャンピオンにおける萌え路線の作品といえば、哲弘「椿ナイトクラブ」、桜井のりお「みつどもえ」などがあるけど、それらの作品はギャグ漫画としての体裁も整っている。それと比べるとこの作品はだいぶ混沌としていて未整理な部分が多く、萌えチャンピオンの中でも敷居は高いほうだと思う。とはいえピチピチしたイキのいい作品であることは間違いないし、混沌としたパワーは感じる。この勢いは買いたいし、これから先どうなっていくのかも注目していきたいところではある。
【単行本】「ヤンキー君とメガネちゃん」1巻 吉河美希 講談社 新書判 [bk1][Amzn]
週刊少年マガジンで連載中のドタバタ学園コメディ。なかなかイキの良い作風で気に入っている作品。お話のほうは、学校イチのヤンキーである品川大地に、同じクラスで学級委員長をやってるめがねっ娘・足立花がつきまとうようになるところからスタート。花は外見はメガネ・三つ編みといかにもマジメでカタブツっぽいけど、実はけっこうオバカで元ヤンキー。そんなわけで同じ匂いを持つ男、品川に接触をはかってくる。まあそんなわけで、ヤンキーとメガネでパッと見は対照的だけど、実はウマが合うような合わないようなって感じの凸凹コンビの活躍を描いていくお話。
で、まあこれがけっこう楽しいんですな。作風はカラッと明るく元気が良くて好感が持てるし、とくにメガネちゃん・花のトボけているけどバイタリティにあふれるキャラは憎めない。また二人の友達とも恋愛ともつかないようなちょっと変わった関係、距離感も面白い。勢いの良いドツキ漫才ってな感じだけど、全体的に見ると、けっこう心温まるほのぼのしたお話に仕上がっているのも良い。そんなわけで楽しい作品なので、このままの勢いでさらに伸びていってほしいもんです。
【単行本】「アワヤケ」1〜2巻 羽生生純 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]
羽生生純の最新作は、濃厚でぶっ飛んだ家族モノ。売れないイラストレーターである淡谷家の父親が、家族をまとめるべく家を買うのだが、その家に住んでいるうちに家族の心はどんどんバラバラに。それは日を追うごとに、夫妻と娘1息子2の家庭がまさにしっちゃかめっちゃかになっていく。その模様をしつこく描いていくダークなホームコメディといった感じの物語。
淡谷家は最初のほうはまだ平凡な家庭といった感じなんだけど、これが回を重ねるごとにヤバい状態になっていく。とくに父親である淡谷大惨事は、家族がうまくいかないこと、昔の仕事仲間が大出世したことへの嫉妬などなどが原因となって、ものすごい勢いで暴走の度合いを強めていく。家族の人たちも、羽生生純キャラらしくみんなクセがありまくり。ストレスのあまり暴力方向に突っ走っていく妻、性的な倫理観がまったくない娘、イジメられっ子気質の息子、何考えてるんだか分からない弟……と、家族の団欒を形成するには、あまりにも不向きな奴らばかり。それを無理に家族の型に当てはめようとするもんだから、無理が生じて家族は崩壊状態に。
まあそんなわけでかなり混沌としたお話なんだけど、全体的には妙なテンションのギャグにもなっていて、やはり強烈なインパクトがある。イカれた家族のイカれた所行を観察するのがタイヘン楽しかったりする。どう踏み違えるとこうなるのかなあ、って感じのカオスっぷりが圧巻。「このままの調子でイカれていったらどうなってしまうんだろう」と興味をそそられもする。やっぱり羽生生純の漫画は強烈に濃いです。
【単行本】「夏のあらし!」1巻 小林尽 スクウェア・エニックス B6 [bk1][Amzn]
「スクールランブル」の小林尽がガンガンウイングで描いている作品。夏休みを利用して田舎の祖父の家に遊びに来た少年・八坂が、その地にある喫茶店でものすごく美人のおねーさん・あらしに出会う。彼女は人なつっこいけど不思議な雰囲気の持ち主。それは彼女が過去から来た存在だからだった……ってな感じで、一夏の不思議な物語が始まっていく。女の子さんはかわいいが、ちょいとノスタルジックな雰囲気を感じさせるジュブナイルとなっており、「スクールランブル」とはまた違った触感。基本的に日常は楽しいけれども、ちょっと切ない展開も見られるようになってくるかな? 今のところ作者が好きなように描いている感じで、「すごく面白い」となるかはちょいと微妙なライン。「スクールランブル」と比べると地味めなところもあるし。ただうまくハマれば良い作品になりそうではあるので、今後の展開に期待といったとこでしょうか。
【単行本】「ピコーン!」 作:舞城王太郎+画:青山景 小学館 B6 [bk1][Amzn]
「SWWEEET」を描いた青山景と舞城王太郎のコンビネーション。表題作である「ピコーン!」は「SWWEEET」の前に描かれた作品。主人公の女の子が毎日フェラチオをしてあげていた恋人が、ある日無残な死体となって発見され、その現実をにわかには受け入れられないでいた彼女が、その死の真相に迫る……というのが大まかなストーリー。舞城王太郎のエネルギッシュなお話が、瑞々しい青山景の作風と相まって、けっこう面白く読める作品に仕上がっていると思う。
また「ピコーン!」のほかに、描き下ろしで「スクールアタック・シンドローム」も収録されている。こちらは働かない父親と、ひねくれて不穏なことをノートに書き散らしたりしている息子の物語。こちらもまずまず悪くない出来。青山景はけっこう良いものを持ってる人だと思う。あんまりコジャレた感じやパサパサ乾いた作風にはならないで、直球勝負できる人材に育っていってほしいところではある。
【単行本】「鏖 みなごろし」 作:阿部和重+画:三宅乱丈 小学館 B6 [bk1][Amzn]
バイト先の店からロレックスの時計をチョロまかした男が、それが元でヤクザまがいの店長から追い込みをかけられ、どんどん切羽詰まった状況になっていく……という物語。その過程は息苦しくて緊張感がある。ただ三宅乱丈にしてはちょっと大人しめかなあ。この人の原作モノは何本か見たけど、やっぱ本人オリジナルの作品のほうが面白いと思う。まあそれが売れるかどうかはまた別問題ではあるのですが……。
【単行本】「宇宙家族ノベヤマ」1巻 岡崎二郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]
日本のごく平凡な家族が、地球外の文明と接触するという使命を与えられて、宇宙の旅に出るという物語。まあタイトルどおり宇宙家族モノなわけだけど、岡崎二郎らしい落ち着いた味のある作品になっていて、けっこう面白い。
ノベヤマ一家は、お父さんが仕事の虫で家庭をほったらかしにしていたこともあって、物語の開始時点では家族がバラバラになりかけな状態。それが宇宙へ出て力を合わせて行動するようになって、家族の絆強まっていく。そういったホームドラマ的な部分が、本作品の面白みとしてまず一点ある。それからSF的な要素がもう一点。ノベヤマ一家と、宇宙船のそのほかのクルーの御一行は、宇宙を旅していくうちにいくつかの文明と接触していく。その中で、異文明がもたらすものの取り扱い、文明同士の対立がどういう形をとっていくのかを考えていく過程はなかなか興味深いものがある。
派手さはないけれど手堅く、味のある物語を構築していると思う。今後ノベヤマ一家がどうなるのか、異文明との接触、先進テクノロジーの受容といった問題にどういう答えを出していくのか。先の展開が楽しみ。
【単行本】「ライフ・イズ・デッド」 古泉智浩 双葉社 A5 [bk1][Amzn]
「セックスすると感染する」ゾンビ病が蔓延した社会を舞台にした物語で、主人公はゾンビ病に感染者の少年。このゾンビ病はエイズのような感じで、感染してもすぐ発病するわけでなく、軽症であれば普通に生活することも可能。しかし重度になると完全にゾンビ化して、まともな意識はなくなり人間を襲うようになる。「発症したらもう先がない」という状況の中で、主人公は悩み苦しみつつ、日常を送っていくことになる。
というわけでゾンビものではあるのだけど、お話は一般的なゾンビ退治とかにはならず、むしろ闘病モノ的な感じで展開。古泉智浩らしく主人公はニートキャラ。ゾンビ化=死を前にしていても、別段珍しいことができるわけでなく、趣味でヘンな歌を作ったり、ゲームやったり、AV見たり。そんな日常の様子は地味で馬鹿馬鹿しくもあるのだが、回が進むにつれてやっぱり切なさも増してくる。
こういう状況だったら十分あり得る、というかエイズという形で現実にあるわけで、その分生っぽい手触りがある。古泉智浩はこれまで作品内で死をダイレクトに扱うのは避けていたそうだが、トボけているようでシリアスでもあるお話はけっこう読みごたえがあった。けっこういろんなお話描ける懐の深さがあるなあと感心させられもする。
【単行本】「EVIL HEART」気編 武富智 集英社 B6 [bk1][Amzn]
ヤングジャンプで連載されたものの、不完全燃焼のまま全3巻で終わってしまった「EVIL HEART」の続編が登場。300ページ以上もの描き下ろしで単行本化となったわけだが、いったん打ち切られながらもここまでこぎ着けたというのはちょっとすごいかも。
お話のほうは合気道にすっかり魅せられた梅少年が、その稽古を通じて人間的にもだんだん成長。その急成長ぶりと、梅の姿を目にして触発されたダニエル先生の内面を掘り下げていくというのがこの巻のメインとなる。で、梅は合気道の空気投げの映像を目にして、ダニエル先生にいろいろつっかかっていくのだが、そこでちょいと衝突。その後にダニエル先生が故郷のカナダに戻ったこともあり、それを追っかけて梅もカナダに乗り込んでいくのだが……ってな感じとなっていく。
物語のほうは、合気道を媒介として、人と人とが心を通わせながら成長させていく青春ストーリーを、しっかり展開していてけっこう読みごたえがある。合気道を扱っているものの、スポーツ漫画というよりは、青春漫画という色合いのほうが濃い。武富智のシャープでスッキリしているけれども凜とした強さもある作画は、やはりパッと目を引くものがある。その絵柄のおかげもあって爽やかな作品に仕上がった。なお1〜3巻ではヒロインだった合気道少女・鶴は、この巻ではほとんど存在感なし。まあ恋愛方面にお話を振る気は元々あんまりなかったんでしょうな。
▼エロ漫画
【単行本】「弟になんか感じない!」 狩野蒼穹 オークス A5 [Amzn]
暖かみがあってやわらかい、ほのぼの感あふれるかわいい絵柄が気持ちいい狩野蒼穹の3冊目。この本はタイトルを見ても分かるとおり、お姉ちゃんと弟モノのお話でまとめられているんだけど、これがたいへん楽しい。弟にぞっこんラブなお姉ちゃん方がとてもかわいらしいし、お話としても微笑ましいものがある。この単行本にはちょっと昔のお話も入ってるけど、絵もだいぶ良くなってるなー。こなれてきてるし、キュートさ、ほんわか感、オシャレ度、いずれもアップしてきている感がある。
収録作品の中では、まず表題作「弟になんか感じない!」前後編が良い。弟と次女がエッチしているところを目撃しちゃった長女さんが、なんだかんだあって結局3人でやっちゃうという展開な漫画なんだけど、やたら弟を甘やかしている長女さんの人の良さそうな感じが実に好ましい。「おねぃちゃん計画」もなかなか。弟に対して自分の想いを伝えられなくて、「彼女ができたときの練習」という名目で、弟と体だけでもつながろうとするお姉ちゃんの気持ちが切ない。でもおしまいのほうは甘ったるいけど。
まあそんなわけでラブラブであまあまな姉モノを読みたい人にはオススメな1冊。キュートで明るいタイプの絵柄なので、実用度という面では弱いけど、まあかわいさ、ラブラブ度を求めて読むタイプの作品なんで、それはノープロブレムでございましょう。
【単行本】「思春期クレイジーズ」 紺野あずれ コアマガジン A5 [Amzn]
コアマガジン系は相変わらずイキがいいっすねえ。暖かみのあるやわらかい絵柄が持ち味の紺野あずれの2冊め。この単行本で特徴的なのが、キュートでライトな画風ながら、内容的にはやたらおしりにこだわっているところ。
とくに表題作「思春期クレイジーズ」全4話+αは徹底していて、前でやるのはあくまでおまけ。ヒロインである女子高生のおソノちゃんが、友達である神社の娘・弥生とその彼氏になった男子・片山に、何回もアナルセックスしているところを見せつけられ、だんだん理性をとろかされていき、おソノちゃんもアナルセックスの虜にさせられてしまう。基本的に軽いノリであるにも関わらず、おしりにはたいそうこだわりを見せている。個人的にはあんまりおしり趣味はないんだけど、楽しく読める作品だし、やってるシーンもたいへん気持ち良さそうなんで、「これなら俺も」的な気分にさせられてしまう。
またバレー部の新キャプテンに任命された女子が、前キャプテンと顧問の先生によっておしりを開発されてしまう「キャプテンのお仕事」も、これまた尻穴で頑張っている。すぼまり部分がちっちゃく慎ましやかなこともあり、下手に前でやるよりもキュートに見えるって部分もあるかもしれない。あとかわいらしい絵と大胆な行為とのギャップも、作品を特徴づけている。基本的に間口の広いあっさりした絵柄だし、お話のテンポも良くて読みやすく、適度な刺激もある。明るくかわいく楽しんで読める1冊。
【単行本】「AQUA BLESS」 大和川 茜新社 A5 [Amzn]
初単行本ながら達者。大和川の特徴は、なんといってもその瑞々しい作画。パーッとした華やかさがある作画はたいへん瑞々しく、エロさもしっかり。内容のほうは、女子高生、アイドル、幼なじみ、戦隊モノコスプレ、女装、お嬢様……と幅広く押さえる。ロリ系、陵辱系はないものの、明るめのお話ならだいたいオッケーのオールラウンダーといったところ。あとこの人のいい点としては、女性キャラの表情がイキイキしていることのほかに、プロポーション、ポーズの付け方が良いところ。足が長く、きゅっとおしりの上がった女性キャラは、適度に健康的で、なおかつエロっぽさも振りまいている。続きモノはないので読ませるといった感じではないけど、見映えのする作画と分かりやすいエロさはキャッチーであります。
【単行本】「ちちカノ」 HG茶川 エンジェル出版 A5 [Amzn]
にゅーあきば.comのレビューでも取り上げました。HG茶川はエンジェル倶楽部掲載時から注目していたのだが、これがその初単行本。この人の特徴は、そっちの記事でも書いたとおり、とにかく女の子の乳がデカいこと。しかもハンパなくデカくて、人間のそれとは思えないほどのものが、美少女キャラに付属しているアンバランスぶりが凄まじい。またそんなキャラでラブコメやっちゃうのも、なんだか得も言われぬ味がある。
最近この手の言語道断なモンスター級のデカ乳を描く人はあんまり見ていなかったので、久しぶりに来た来た来た〜って感じで、ワクワクしながら見ていた。まあお話的にはすごく引き付けられるってほどではないし、絵のうまさで見せるというタイプでもないけれど、この「乳をでっかく描くこと」へのこだわりや勢い、パワーは個人的には買い。もちろんこれだけデカすぎると引くっていう人も多かろうかとは思うけれども、やはりエロ漫画界にはこういう特殊なのを描く人が何人かはいないと寂しい。
まず今回は初単行本ということで、超乳の威力を見せつけた段階でまずは合格点。これからは超乳をさらに発展させたり、作画作劇の面でプラスアルファとなるものを出していってほしい。さすがにデカいだけだと単調になっちゃってそのうち飽きがくるだろうから。
【単行本】「淫虐監獄島」 氏賀Y太 松文館 A5 [Amzn]
氏賀Y太といえばやっぱり残虐描写。といってもこの単行本については臓物まき散らし系のネタは、この人にしてはかなり少なめ。監獄島に送り込まれた女性エージェントのアイスが、所長や囚人たちに犯されまくる「アイスクリーム」全6話を中心に、「猿鳩先生の止事なき授業風景」「「世界の中心に咲く花」「時限童貞」を収録している。
この単行本では、メインとなる「アイスクリーム」のヒロイン・アイスが、ヒドい陵辱を受けるけど別に血みどろになったりしないし、ラストもギャグ調ということで、まあそんなにグロくない。というわけで氏賀Y太初心者でも比較的読みやすい単行本になっているといえるのでは。「世界の中心に咲く花」「時限童貞」あたりは血みどろなシーンもあったりするけれども。
この人の描く残酷漫画は、いつもすんげえヒデーことばかりやってるんだけど、読んでいるとなんかだ妙にスカッと気持ちいいものがある。残虐なんだけれども、突っ走りまくっている分、陰湿な感じはしないし、けっこうジョークも利いている。駕籠真太郎とはまた違った感じで、楽しく残虐描写をしていると思う。
【単行本】「ぐんぱんSPECIAL 飼育 巨乳母子相姦集」 ぐんぱん 司書房 A5 [Amzn]
かなり久しぶり感のあるぐんぱん(白井薫範)の新刊。相変わらず、っていうかますます濃いなあ……。もともと太め、っていうかデブい女性を徹底的に辱め、調教していく作品を得意としていた人ではあるけど、この単行本はそれがさらに極まっている感じ。
最近のエロ漫画家でも、太めの女の子を描く人は、きのした順市とか何人かいるけれども、こういうった人たちのは基本的に「肉付きが良くてかわいい」という感じでけっこう萌え度は高い。ぐんぱん先生のはそういうのとは一線を画していて、ヤラれるのは基本的におばさん。年もけっこういってるし、あくまでも怠惰な日常の中で肉がたるんで鈍重になったっていう感じのスタイルで、熟れてはいるけど萌えというにはちょいと……ってなかんじのオバハンばかり。顎や首周りをたるんだ肉が覆い、腹や腰もだっぷんだっぷん、尻も足も不格好に太い。そんなオバハンたちが、ハードな調教を決められてブヒブヒよがる。そんな作品ばかり。
というわけでもう、内容のほうは一読しただけでゲップが出るほどに濃厚。「コレでヌケるか」と言われたら、「そういう趣味の人ならヌケるだろう」としかいえない。自分はキビしい。でもこの圧倒的な濃さ、「とにかくデブい女を犯しぬくさまを描く」ことにこだわる情念の迸りは、「スゴいもの見たい!」という人には一読の価値あり。こういう特殊な作品が載るような雑誌がまた出てきてほしいもんですが……。
【単行本】「アフタースクール」 藤原俊一 クロエ出版 A5 [Amzn]
この人の描くエロ漫画はわりと好きです。絵的には少し垢抜けないところもあるんだけど、キャラっに独特のエロさがある。ヒロインの顔を赤らめたあえぎ顔は目つきがエロっぽいし、エロシーンのじりじりとした盛り上げ方も悪くない。あと乳とか、フェラチオ時の口をもごつかせた感じとか、独特のねちっこさを感じる。あとこの単行本では顕著ではないものの、桃姫でやってる「憧れの女」で示したように、寝取られ系のシチュエーションでもけっこうグッとくるものを出せる。この独特のエロっぽさはそのまま保ちつつ、作画が伸びてくればかなりいい感じになるんじゃないかと期待。