オス単:2007年3月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「青春うるはし!うるし部」 堀道広 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 アックスで連載されたなんだかかなりぶっ飛んだ作品。うるしに見せられた少年少女が集う、全国きっての名門うるし部のある尻毛高校を舞台に、うるし野郎たちの青春がスパークする。絵柄はヘタウマ系。池沢さとしを稚拙にした感じの絵で、ヘンなお話を展開しまくる。この作品で何よりスゴいのが、とにかくうるしについての知識が本格的なこと。そしてやっていることがムチャクチャなようでいて地味でもあること。

 ストーリー自体は脈絡ないんだけど、超展開的な部分も多いのだが、うるし部のみんなは普段はけっこう大人しくペタペタとうるしを塗っている。そしてうるしについても学びまくっている。その様子はたいそう地味だが、そもそも学校にうるし部がある時点でヘンだし、キャラの行動も何かと妙。先生がうるしについての技法を説明しまくるのだが、うるし塗りを入れる棚は大根のゆで汁を使うと湿度・温度を保ちやすいと聞いてものすごいショックを受けたり、玉虫厨子と聞いただけでハッとしたり、驚き方の力点が妙ちきりん。出てくるキャラも当然変わったのばかり。主人公格の漆原塗平はやたら死にそうになるし、最後のほうは頭が割れちゃって脳味噌を隠すためにうるし塗りかぶったりするし、うるしの塗り方もゲームセンターあらし調だし、やることがムチャ。

 なお作者はなんでこんなにうるしについて詳しいんだろうと思ったら、13年間ほどうるし関係の仕事をしていたらしい。うるしについてはおそらく日本一詳しい漫画家なのではないだろうか、と思う。ちなみに単行本シリーズも「URUSHI COMICS」だ。とにかくノリが妙ちきりんな漫画で、それを文章で伝えるのはなかなか難しいので、うるしに興味がある人はとにかく読んでみてほしい。そうすればきっとあなたもうるしを塗ってみたくなる……なんてことはないか。しかしこの作品が、後継者問題に悩むうるし業界に与える影響は、けして小さくはないとは言えないだろう。

【単行本】「掃除当番 武富健治作品集」 武富健治 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 「鈴木先生」で話題を呼んでいる武富健治の短編8本を収録した作品集。このような本が出るとは、売れるって素晴らしい!

 で、収録作品についてなのだが、もうどの作品を見ても武富健治の個性、作家性がものすごい勢いであふれてて圧倒されてしまう。「鈴木先生」は商業誌で描き慣れてきたためこなれた部分もあるけど、今回の収録作品についてはまだ売れてなかったころの作品群ということもあって、武富風味がさらに濃厚。あの「萌え」だの「サービス」だのといった要素とはまったくかけ離れた、クセの強いシリアスタッチがより荒削りな生の形で提示されている。

 お話のほうも特徴的。「掃除当番」「ポケットにナイフ」といった作品は、学校内で起きた事件や意見の衝突などを、ねっちりみっちり描いた作品で、「鈴木先生」に通じる要素がかなり色濃い。「掃除当番」の、「真面目にやっている人間が、不真面目な奴らのせいで理不尽な想いをする」ということに対する複雑な心情を掘り下げていく描写は迫力さえある。「ポケットにナイフ」は「鈴木先生」にも出てくる小川さんが登場するエピソード。スリリングなストーリー展開も凄いが、ラストシーンも独特のセンスだなあ。小川さん面白い。「シャイ子と本の虫」についても、本好きの女の子が友達の女の子の行動を見て、グラグラと揺さぶられていく様子がとにかく劇的に描かれていて凄い濃厚。

 「8月31日」なんかはちょっと異色作だが、「女みたい」と言われ続けている主人公の心情を緻密に描写。とにかく人間の内面描写をものすごくしつこくやるというのは、どの作品にも共通している。あと「まんぼう」はオチが……。この作品みたいにギャグっぽいこともいきなりやってくるので、武富健治は油断がならない。万人向けとはいいがたいけれども、読めば心に深く刻み込まれる。そういう作品を描ける、稀有な才能だと思う。

【収録作品】「掃除当番」「ポケットにナイフ」「シャイ子と本の虫」「まんぼう」「勇」「康子」「8月31日」「カフェで」

【単行本】「すみれの花咲く頃」 松本剛 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 松本剛といえば、最近の読者的には「甘い水」の印象が強いと思う(「甘い水」の感想は2003年1月2003年6月のオス単参照のこと。最近講談社BOX版も出ました[bk1][Amzn])。寡作ながらも非常に素晴らしい青春モノの作品を描く人で、ときに切なく、ときに暖かく、ときにアツく、厳しく、激しくもある物語は読む者に非常に鮮烈な印象を残してくれる。その松本剛の初期短編集が、一部収録作品を変更して復刻。今回のバージョンには、「すみれの花咲く頃」「ヒューストンと女の子」「教科書のタイムマシン」「ハッカのびろおど」「なかない渚」「すこしときどき」が収録。このうち「なかない渚」と「すこしときどき」は単行本初収録。前のバージョン収録の「もんくのある気持ち」「呼べない名前」は今回ははずれた。

 で、改めて読み直してみてもやはり良い。個人的なイチ押しは「教科書のタイムマシン」。主人公の女の子の隣の席に座っていた変わり者の少年が、彼女に残していったちょっと素敵な思い出を描いた物語。なんてことはない学園生活の中の一風景なのだが、ちょっと不思議でしみじみした気持ちを呼び覚ましてくれる。ラストに向かう情感に満ちた数ページは本当にジーンと来る。別段ものすごくドラマチックなことをやってたり、過剰なセリフなどがあるわけではないが、コマ割、セリフ選びがとても素晴らしい。

 また表題作の「すみれの花咲く頃」もこれまたいい青春学園物語。演劇部の部長をしている男子と、周囲に内緒で宝塚を目指していたクラスメートで同じ演劇部所属の女子の物語を、ほろ苦く、そして暖かく描く。少年少女のそれぞれにまっすぐな想いが交錯するお話はしっかりとした読みごたえもあり。またラストシーンは、切なさに胸がキュッとなるけれど、同時になんとも気持ちの良い読後感を残してくれる。珍しく麻雀誌で描いた「なかない渚」(近代麻雀オリジナル1996年12月号)も、ちょっとトボけているけれどもしみじみした味わいがある。「すこしときどき」(ヤングマガジン1993年52号)もいい。転校して行った女の子と、クラスメート少年少女に残されたちょっとどきどきな想い出の物語を、鮮やかな筆致で描いている。

 松本剛作品は、短いページの中にいろんな気持ちが詰めこんで、それを実に丁寧に表現している。構図取りなどの漫画的技術も実にさりげなくうまい。本当に寡作で、滅多に作品にお目にかかれないのが本当に惜しい。あ、あともう1点惜しい点がある。この単行本はお値段が1200円とちと高い。外箱は雰囲気あるけど中表紙は無地だし。こういう価格設定だからこそ、少部数の本でも出せるってのはあるんでしょうけれども。まあそんなこともありちょっと手が出しにくく思う人もいるかもしれないけど、読切好きな人にはたまらんものがある作家さんなので、この機会にぜひ読んでみていただきたい。


▼一般

【単行本】「少年少女漂流記」 乙一+古屋兎丸 集英社  A5 [bk1][Amzn]

 乙一&古屋兎丸という豪家な組み合わせで、さまざまな少年少女の姿を描いていく。基本的にはオムニバス形式。ある少女は自分を魔法少女と思い込むことでなんとか現実に踏みとどまり、ある少年は飼育している蟻の世界に閉じこもる。またある少年は、幼なじみだったヤンキー少年の死をきっかけに前を向き、ある女の子はもりもり甘いものを食いまくる。そんなわけで閉塞あり、前進あり、恋あり、友情ありといった感じで少年少女の姿を描いていき、最後は怒涛のラストへと向かう。ときに奇抜だったり鋭かったりする発想はユニークだし、それをしっかりヴィジュアライズして、読んで面白い漫画に仕立て挙げている古屋兎丸もやはり漫画巧者。くすぐりも読みごたえもある一冊。

【単行本】「街角花だより」 こうの史代 双葉社 A5 [bk1][Amzn]

 帯には「待望の最新作!!」と書いてある、中身のほうは一部を除いて1995〜1999年あたりに描かれたものが中心。といってもこうの史代の、手描きの暖かみのある気持ちいい絵柄や基本的な作風は昔から変わっちゃいないので、とくに問題はなかろうと思いますが。内容は何誌かを渡り歩いた「街角花だより」シリーズと、短編の「俺様!」「願いのすべて」を収録。

 中心となっている「街角花だより」は、のんびりした花屋の女性店長・うららさんと、会社をやめてその花屋さんでバイトすることになった女性・凜とのほのぼのした日々を描いていくというもの。ものすごく大きな事件が起きるわけではないのだけど、ゆったりとした絵柄、話運びで朗らかにコメディを展開してて楽しめる。あと、ときにハッとさせてくれる美しい風景描写もやはり素晴らしい。ところで「街角花だより」の最終話で取り扱う花が百合なのは、やっぱそういうことなんでしょうか。店長さんと凜のやり取りがけっこうそういう雰囲気があるんで、ちょっと心トキめいたりもした。

【単行本】「ばら色の頬のころ」 中村明日美子 太田出版 A5 [bk1][Amzn]

 面白かった。「Jの総て」の前日譚ということで、ポールとモーガンが出会った中学生時代の物語を展開していく。モーガンは市長の息子、不真面目ではねっかえりで生意気。ポールはクールで真面目。ぶつかりながらもお互い引き付け合っていく、とくにモーガンがいろいろな出来事を重ねながらポールへの想いを強めていく様子がじっくりと描かれている。中村明日美子の絵はシャープで艶めかしく、お話のほうもしっとりした色気がむんむんしていてたいへんステキ。この人はますます腕を上げてますね。あー、そういえば「Jの総て」は単行本買ってなかったな。そのうち買おう。

【単行本】「江南行」 佐々木泉 メディアファクトリー B6 [bk1][Amzn]

 コミック三国志マガジンで連載された作品が待望の単行本化。佐々木泉といえば「墨戯王べいふつ」(感想は2004年6月のオス単参照)でも中国歴史人物モノを描いていたが、この作品では「三国志」から呉を代表する軍師の一人、魯粛の生き様を描いている。

 魯粛といえば、吉川三国志などでは温厚で賢明ではあるものの、そのせいで周瑜、諸葛亮とかにはちょいと遅れをとる役というイメージが強かったけれども、この作品では度量が大きくて包容力があるおっさんといった趣。性格も明朗快活で思慮深さも兼ね備えており、実に頼もしい存在として描かれている。佐々木泉の作画は品が良く整っており、物語についても後味が良くてキレも感じさせる。魯粛が主役ということで、「三国志」モノとしては変わり種ではあるものの、漫画として見るとオーソドックスで端整に作ってある。派手なタイプではないけれど、手堅くシブみもある佳作。

【単行本】「ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日」1巻 戸田泰成 秋田書店 B6 [bk1][Amzn]

 原作:横山光輝+脚本:今川泰宏の、今川版GRシリーズの最新漫画版。草間大作少年が主人公なのは変わらないけど、アニメの「地球が静止する日」とは設定を変えて、新たな物語を展開している。今回の大作少年は、BF団、国際警察機構の双方に付け狙われて、またタイヘンそうな感じ。衝撃のアルベルト、静かなる中条、神行太保 戴宗、そしてお銀ちゃんと、今川GRを彩るサブキャラたちももりもり登場。戸田泰成も頑張って密度濃い目で描いており、アツくなりそうな気配ではある。ただ序盤は要素をいっぱい詰め込み、作画もびっちり濃い目でやってるんで、多少読みづらいかなーという気もする。

【単行本】「大地獄城・血だるま力士」 平田弘史 青林工藝舎 A5 [bk1][Amzn]

 平田弘史の昔の作品は、本当にぼんぼこ出てきますねえ。この作品には、壮絶な復讐劇モノの「つんではくずし」と、驚愕の力士の生き様を描いた「大相撲士魂伝」2本が掲載。

 「つんではくずし」は、この単行本では「大地獄城」というタイトルになっているが、一族を殺害して国を奪った武将に対して、滅ぼされた家の遺児が復讐を果たそうとするという物語。主人公の太平は戦乱のさ中に片足を失うも、その強力でもって武勲をあげ、身分を偽り仇の武将の元で仕官して出世を果たす。そして相手が完全に信頼しきったところで復讐に転じるのだがその様子がすさまじい。凄惨な拷問を行い、生爪をはがし目をえぐり、腕や足が腐ってきたらそれを切り落とすといった具合に、体の部位を一つ一つ奪っていく。しかし相手に死ぬことは許さず、気も狂わんばかりの労役につかせるなど、ありとあらゆる人道にもとる行為を加えていく。復讐が復讐を呼んだ末の愚を、これでもかこれでもかとものすごい濃度で描き連ねていく様子はまさに圧巻。その残酷描写の強烈さには度肝を抜かれるし、何よりお話としても面白い。古さをまったく感じさせない迫力ある一作。

 あと「大相撲士魂伝」は、江戸時代の強烈な力士群像を描いていくといった内容で、こちらも強烈。相手の肉を突き破るくらいまでに頭突きを鍛え上げた力士とか、やはりものすごく過剰。とにかく力づくで読ませる雄渾な作風に、またまたシビれさせていただきました。

【単行本】「チナミの風景」 野本明照 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 新鋭の初単行本。町の変人たちについつい関わってしまう、ヒネクレ者の小学生女子・チナミの日常を描いていく物語。なかなか面白かった。野本明照の作画は描線がカッチリしてて、線に迷いがなくて完成度が高い。松本大洋風ではあるけれど、画風はしっかり洗練されている。で、チナミと変人たちの関わりようも見ててなかなか楽しい。町中に石で巨大な建造物を作り続けているおっさん、夢遊病で町中を歩きまくる男、悪魔ヅラの怪人などなど、彼女が関わるのは第一級の変人ばかり。でもそれを案外心温まるエピソードにまとめてくる手際はなかなか鮮やか。日常の中のファンタジーを、気持ち良く描けている。単行本描き下ろしの最終話もジーンとくるものがあった。単行本帯に「技巧派新鋭」って書いてあるけど、たしかにうまいし完成度も高い。この作品は読切連作という感じで不定期掲載だったが、今度はも少し長めの続きモノ連載も読んでみたいところ。

【単行本】「パノラマデリュージョン」1巻 小原愼司 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 心霊犯罪の捜査官をやっている女の子・ヤブキリン子の活躍を描いていく物語。彼女がやっているのは、「自分がすでに死んでいる」という自覚なしに現世をふらついている幽霊たちをきちんと成仏させること。リン子の妹であり言葉で人を操れる能力を持つミミ子も一緒に活躍。まあ心霊モノではあるけれども、捜査の模様は、あんまりおどろおどろしいって感じではなく、わりと呑気な調子。リン子はすごく乱暴かつマイペースだし、セーラー服姿でうろうろしている様子はけっこうかわいかったりもする。まだすごく面白いってほどでもないけれど、茶目っ気のある小原愼司らしさはちょこちょこ見えてはいる。これからの盛り上げに期待。

【単行本】「私家版魚類図譜」 諸星大二郎 講談社 A5 [bk1][Amzn]

 相変わらず面白いなあ。以前「私家版鳥類図譜」という作品を描いていたが、今回はそれも魚版。魚(人魚含む)にからんだネタを、諸星大二郎らしい奇想たっぷりに味付けした物語の数々がとても面白い。あるときはちょっと切なく、あるときは幻想的に、あるときは飄々と。いずれのお話も一ひねり二ひねりあって、読んでて飽きない。まあ今風の絵柄ではないけれども、諸星大二郎が今風だった時代なんて相当昔だろうし、時代に左右されない面白さがあるんでそこは気にする必要ナッシング。絵が地味なのでパッと見では引き付けられないかもしれないけど、読めば面白いので、諸星大二郎未読の人はぜひ、この作品に限らずチャレンジしてみてほしい。

【単行本】「大東京トイボックス」1巻 うめ 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 「東京トイボックス」がコミックバーズに移籍して再出発。ゲーム業界漫画で、前作の主人公・天川太陽、星山月乃の二人に加えて、今回は気合いと根性だけでゲーム屋を目指す新進気鋭の女の子・百田モモも参戦。1巻は彼女がいかにして、太陽率いるゲーム会社G3の下っ端として加わろうとするかという悪戦苦闘青春ストーリーが中心。太陽・モモが師弟コンビって感じでいい雰囲気なのに対して、星乃さんはちょっとジェラシーって感じの構図。といってもラブコメメインではなく、やっぱりゲーム屋話がメインなのは今回も変わらず。まだお話は序の口ではあるけれど、これからどんどんアツくしていってくれるよう期待しております。

【単行本】「いとしのニーナ」1巻 いくえみ綾 幻冬舎コミックス A5 [bk1][Amzn]

 Webスピカで連載中の作品。高校1年生の主人公・外山厚志の友達、押川正行が、いつもツが区電車で見かけててカワイイと思っていた憧れの美少女・青田新名(ニーナ)を拉致ってしまうところからお話はスタート。正行は同じ学校の不良・牛島に半ば脅されるように焚き付けられていたのだが、さすがにそれはヤバいということで、厚志は彼女を解放する。その後いろいろあり、厚志は責任を感じ、ニーナを守ることを決意するが……。

 といったあたりが1巻のあらすじ。まあ具体的に厚志がニーナをどう守るのか、二人の関係性がどう変わっていくのかといったあたりまでは進んでないのだけれど、熟練の話運びでやっぱり面白い。読みやすいし、キャラ同士のやりとりにもユーモアがあって楽しい。ハズレがないですねえ。

【単行本】「新婚はん」1巻 IKARING 祥伝社 A5 [bk1][Amzn]

 元は遊びまくりだったヨーコさんと、結婚するまで童貞だったジュンジュン。二人のアホウでしょーもないけど愛情だけはだっぷりな新婚生活を描いていくというドタバタギャグ。「しまいもん」と比べるとギャグ的にはちと大人しいかなーとは思うものの、呑気でノリの良い作風は健在。いちおう最初は美人系の女だったはずなのに、結婚生活の中でどんどんゆるんでデブチン化していくヨーコさんとか、彼女を溺愛しまくりなオタク系男子ジュンジュンの掛け合いはユーモラスでニヤッとさせられる。リラックスしてだらーんと読めるのが良いところだと思います。

【単行本】「ひたいに三日月」 時計野はり 白泉社 新書判 [bk1][Amzn]

 花とゆめで「お兄ちゃんと一緒」を描いている時計野はりの短編集鵜。表題作の「ひたいに三日月」全3話と、「学園七不思議くん」「キラキラ一番星」を収録。この中では3話ある「ひたいに三日月」がやはり良いと思う。引越前に好きな女の子のひたいに三日月型の傷をつけてしまったことをずっと気に病んでいた忍者オタクの少年が、本当の忍者になって帰ってきたーって感じのラブコメ。その好きな娘さんの前にはなかなか姿は見せないながら、何くれとなく彼女を守っちゃおうとする忍者少年の行動が、シャイでかわいらしくて楽しい。時計野はりの魅力である、キュートでちんまりした絵柄も良い具合で、女の子さんもきちんとかわいい。

【単行本】「魔乳秘剣帖」1巻 山田秀樹 エンターブレイン B6 [bk1][Amzn]

 「乳こそがこの世の理」ということで、社会全体が巨乳史上主義になってしまった江戸時代を舞台に繰り広げられる巨乳忍法絵巻。主人公である千房は、その時代における乳の使い手の一門・魔乳家の跡取り娘だったのだが、秘伝書を盗んで出奔。迫り来る追手たちと、乳と剣を用いて戦っていくことになる。

 というわけで巨乳至上主義に彩られた時代活劇を展開してくという、たいへん馬鹿馬鹿しい内容の作品。山田秀樹は昨年「涙そうそう」の漫画版(感想は2006年11月のオス単参照)を出したが、この作品はそれとは打って変わったしょうもない内容。でも作画は非常にフレッシュで達者。そういう絵で大真面目に下らないことをやるというノリはなかなか楽しいものがある。

 あと主人公が、相手の乳を切るとその大きさを吸い取る、つまり切れば切るほどデカくなるという魔剣の持ち主という設定で、お話が進むにつれて乳がデカくなっちゃっていく様子とかは見てて面白い。まあ絵がキレイすぎて、「良い乳だなあ」「眼福眼福」とは思うものの、あんまりエロいって気はしないんですけどね。それにしても巨乳とギャグって、なんでこんなに相性がいいのだろう。


▼エロ漫画

【単行本】「日本巨乳党」 RaTe ワニマガジン社 A5 [Amzn]

 「一般的に巨乳といわれているような胸よりも、平らに見える胸のほうが実は巨乳なのである」という大胆かつ珍妙な新理論を展開した話題作「巨乳平面説」を収録した単行本。その詳細についてはネタバレになっちゃうので詳しくは触れないけれども、RaTeらしくぶっとんだお話を、堂々と開けっぴろげに展開した内容はユーモラスで、思わずニヤリとさせられる。巨乳平面説そのものだけじゃなくて、「国際巨乳連合が『Aカップ以下はおっぱいと認めない』という決定を下した社会」という基本設定もユニーク。

 このほかの作品もギャグとエロが楽しく共存したものが多い。単行本タイトルからも分かるとおり、巨乳モノがメインではあるものの、この人はちんちんおよび精液好きっぷりも相当なもんで、毎回独特のこだわりとユーモアセンスを感じさせる作品を繰り出してくる。ほっぺたなどがもちもちした女性キャラの描き方も昔から好き。エロ漫画家としてのキャリアはもうかなり長い人だけど、枯れることなく頑張ってるなーと思う。

【単行本】「へべれけ」 かるま龍狼 ワニマガジン社 B6 [bk1][Amzn]

 相変わらずエロとギャグがしっかり融合してて楽しい。この単行本の中心となるのは、家人のみならず家に来る人、近所の男とまで物凄い勢いでやりまくるパワフル家政婦・酔子さん大活躍の「へべれけ」シリーズ全6話。ムチムチ感あふれる酔子さんが、とても楽しそうにのべつまくなしエッチなことをしまくる様子はエロいし面白い。あとそのほかの作品では、家のドアに女性型のカギが埋め込まれた形になっていて、それをイカさないとドアが開かない……というドタバタギャグ「ドア端会議」も、エロシュールで個人的にはけっこう気に入っている。基本的にどれもお話はギャグベースなので、「いざヌカん!」とするとギャグが邪魔になったりすることもままあるんだけど、やっぱり体のラインの描き方、見せ方がうまくて、きちんとエロ心のツボは突いてくる。申し分なくうまいです。

【単行本】「半熟少女」 大庭佳文 久保書店 A5 [Amzn]

 えーと初単行本でしたっけか? アンソロジーの「貧乳××」シリーズで描いた作品を集めたものということで、基本的にはつるぺた系で、スッキリしたキュートな絵柄が魅力的。まだ線にいくぶん固さはあるものの、ほんのり甘やかなテイストがあって、なかなか雰囲気がよろしい。あと浮気性な友達の彼氏に抱かれちゃった女の子の話である「佐藤敬子さんは○○な人ですけど」とか、親友女子に切ない恋心を抱いている娘さんの気持ちを綴った「SUGAR BABY LOVE」など、女の子の気持ちを描いたセンチメンタルなお話など、話作りも上々な部類。ヌキ用としては弱いけど、絵柄がキュートで作劇も心地よく読ませるものがあり、なかなかいい感じの1冊だった。


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