オス単:2007年4月の日記より


 このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません

 なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。


▼強くオススメ

【単行本】「預言者ピッピ」1巻 地下沢中也 イースト・プレス A5 [bk1][Amzn]

 長年待ち続けた単行本がようやく。COMIC CUEで2003年夏に単行本化という告知が出てから延期されること4年。正直なところ「今回も期待薄だろうな……」とか思ってたんで、ちゃんと出たときにはえらく驚いた。

 で、内容のほう。本作の主人公は、「ピッピ」という名前の人間型のロボット。ピッピは科学技術の粋を集めて作られた超高性能なコンピュータで、最初は地震を予知するのが役目だった。しかし親友であったタミオ少年を失って、そのショックによりいったん機能を停止する。その後しばらくして機能停止から復活したピッピは、地球上のありとあらゆるデータを取り入れ、予知の範囲を地震のみならず、すべての事象へと拡大していこうとする。「すべてのものの行く末を知る存在」の出現は、人類に何をもたらすのか。この作品はそんな大きな命題に真っ正面から取り組んでいく。

 というわけで要するに「ラプラスの悪魔」を近未来社会に出現させ、その影響を描いていく作品なわけだが、これが実に面白い。「完璧な未来予知は人を幸福にするのか?」というテーマ自体は、SFとしては古典的なのかもしれないが、回が重ねるごとに、ページが進むごとに緊張感が高まっていくストーリーは迫力満点。地下沢中也の絵柄自体はどちらかといえばコミカルなものだが、お話はシリアスそのもの。最初はうっすらとした不安程度のものだったのが、だんだんに膨れ上がり、それが人類全体の行く末を左右するほどのものへと変貌していく物語にグイグイと引き込まれていってしまう。

 ……とすごく面白い作品なのだが、本作品は2003年5月に出た COMIC CUE Vol.300に掲載された第7話を最後に中断している。というかCUEがその号を最後に出ていないので続きようもないのだが。ただ「今どきこんなガチンコな作品を描く人はそうそういまい」と思えるくらいに大きなテーマであり、シミュレーションもやっかいそうな内容であるだけに、収拾をつけるのは難しかろうなという気もする。ここまでがすごく本格的に作られてきただけに、ハンパなケリの付け方するわけにもいかないだろうし。でもやっぱり未収録分も単行本化してほしいし、できれば続きも読ませてほしい。なんとかならんもんですかね。

【単行本】「はなまる幼稚園」1巻 勇人 スクウェア・エニックス B6 [bk1][Amzn]

 待望の単行本。ヤングガンガン連載時から単行本化をすごく楽しみにしていた作品。

 この作品は、とある幼稚園で繰り広げられるドタバタした日常を描いていくというお話。主人公の杏ちゃんは、幼稚園のセンセーである土田(つっちー)がとっても大好き。年の差離れまくりだし、つっちーは同僚の巨乳な山本先生が好きなんだけれども、杏はそれにまったくメゲることなく、つっちーを振り向かせようと、子供ながらに日々頑張る。その様子を中心に、毎回ドタバタとても楽しく描いていく。杏をアシストしようとするその友達の小梅ちゃん、柊ちゃんもこれまたかわいいし、つっちー・山本先生と、園児たちを見守る大人たちも人が良くて暖か。

 まあそんなわけで、幼女がわらわら動き回る作品ではあるんだけど、邪な要素はまったくナッシングで、お話はあくまで朗らか、無邪気に展開。元気良く動き回る子供たちの様子は微笑ましいことこのうえないし、絵のほうも明るいトーンでポカポカした暖かみがある。もこもこしたかぼちゃぱんつもチャームポイント。いちおうラブコメ的なこともやってはいるんだけど、さすがに幼稚園児なのでベタベタしたものになるはずもなく、他愛なくかわいらしい。おひさまではなまるでひまわりでひだまりで……ってな感じの、陰りない明るい雰囲気に満ちている。読んでいると、なんかもうあまりのかわいらしさに、思わず知らず顔がニコニコほころびまくってしまう。

 にゅーあきば.comのレビューでも紹介したけれど、この作品の感想を書こうとすると、どうしても文章が「かわいい」「微笑ましい」「ほのぼの」といった言葉で埋まってしまう。まあそんなわけで長く書いても、その手の言葉の繰り返しになっちゃうので、このくらいにしときますが、本当に読んでて暖かい気分になるし、癒されまくる良い作品だと思う。隅から隅までかわいいオススメの一作。

【単行本】「仮面ライダーをつくった男たち」 村枝賢一 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 これは燃えマックス。タイトルどおり、「仮面ライダー」という番組を作るために尽力した人々を描いた実録ストーリーなのだが、漫画としてもとてもよくできている。

 この単行本では、前半で「泣き虫プロデューサー」といわれた平山亨、後半で仮面ライダーのアクション部分を担当した殺陣師集団「大野剣友会」の面々の活躍を描いていく。このような実録ストーリーであれば、監督さんや主演の役者さんにスポットライトを当てるのが普通だろうけど、そういった面々ではなく裏方といわれるような人々を取り上げているところはシブい。

 とくに泣かせるのは、やはり平山亨のエピソード。普通だったら低く見られがちな特撮番組なんぞにアツくなり、子供たちに夢を与えるヒーローを作り出そうと必死になる彼の姿には心動かされるし、彼が涙を浮かべながら仮面ライダーへの想いを語るシーンでは読んでるほうもつられて泣けてきてしまう。バイク事故で負傷した藤岡弘を代役を立てるかどうかでモメるシーンなんかは、その一言一言からアツいものが迸っている。まあ実際のやりとりがここまで泣けるものだったかは分からないけれども、漫画としての盛り上げ方がうまい。大野剣友会編でも、仮面ライダーを支えながらも顔は出せず、人々からも認知されることのない殺陣師たちの職人根性、心意気をしっかり描いて骨太なドラマを構成しており、こちらもまたアツくなれる。

 あと、村枝賢一の「仮面ライダー」に対する思い入れ、製作に関わった人たちへのリスペクトが、漫画の端々からビシバシ伝わってくるのも良い。セリフ回しや演出は、一歩間違うとクサく感じられてしまいかねないものだが、それがいちいちツボにハマっており、ストレートにアツくなれる。題材と村枝賢一の資質がすごく良くマッチしているってことなんでしょう。たいへん面白かった。この作品については、にゅーあきば.comのレビューでも取り上げているのでそちらもどうぞ。

【単行本】「しゃべれどもしゃべれども」 作:佐藤多佳子+画:勝田文 白泉社 B6 [bk1][Amzn]

 メロディの別冊付録で読んだときも面白いと思ったけど、改めて読み返してみてもとても良い。読み終わって「あー、面白かった」という気分に包まれた。これはすごくよくできてると思いますよ。

 お話の内容を大ざっぱに説明すると、半人前の落語家である主人公・今昔亭三つ葉と、それぞれの事情から彼のもとで落語を習うことになった老若男女4人組の物語ということになる。一人ひとりはちょいと変わり者でなかなかうまく世を渡っていけないような5人だけれども、みんなが集まったことで、ちょっとずつスムーズに物事に対していけるようになっていく。その様子を非常に軽やか、ほのぼのと描いていて、読んでいてすごく楽しい。人情味があるし、ラブストーリーとしてもうまくできている。あとキャラクターたちがみんな親しみやすいのも良い。原作がいいってのもあるだろうけど、それが勝田文のほんわかした作風にすごくよく合っていると思う。とても爽やかで、かわいらしい良作。

【単行本】「かわたれの街」 勝田文 白泉社 B6 [bk1][Amzn]

 勝田文もう1作。こっちも面白いなあ。別れた妻への想いを断ち切れないまま、商店街で料理教室をやっている男と、彼に片想いしている気のいい豆腐屋の娘さん、そしてそれを取り巻く町の気安い人々の日常をのんびり描いた一作。これはお話としてはたいへんゆるゆるなんだけど、勝田文独特のほのぼのとした空気がものすごくよく出ていると思う。とくに個人的に気に入っているのが第3話で、二人が潮干狩りに行ったときの見開きシーン。見開きで砂浜の風景描いてるんだけど、それがなんか浮世絵の風景画的なまったり感が漂いまくってて、緊張感のかけらもない。あまりにも能天気な風景に思わずニヤけてしまった。なんなんだろう、この呑気さは。実に愉快だ。

【単行本】「GIANT KILLING」1巻 作:綱本将也+画:ツジトモ 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 面白いです。最近のサッカー漫画の中では個人的にはイチオシ。日本国内のプロサッカーチームで活躍したあと海外に渡り、現役引退後はイングランドの片田舎のアマチュアクラブで監督を勤めていた主人公・達海。彼が日本の古巣チームに呼び戻されて、ときにエキセントリックにも映るやり方で、チームを強豪撃破(ジャイアント・キリング)へと導いていくという物語。

 綱本将也は「U-31」(作画:吉原基貴)でも原作を担当した人だが、この作品でもサッカーマニアぶりが伝わってくる。そもそも主人公の出発点がイングランドの5部リーグで、FAカップの試合から始めているあたり、マニアだなあと思う。フツーのサッカー漫画で5部リーグなんぞ描くことはまずないし、そもそも5部リーグなんてものが存在するなんてことを意識している人さえ多くないと思う。そういったマニアックな知識を分かりやすく説明できてるのも良い。

 作画担当のツジトモも頑張っていると思う。これが初連載ということで、作画的にこなれていない部分はあるけれども、ペンタッチに独特の味があるし、サッカーのプレーも分かりやすく、印象的に描けていると思う。キャラ作りも上々。とくに達海は飄々としてるけど頭はキレそうで、「なんか面白いことやってくれそうな監督だな」という期待感を持たせてくれる。チーム作りも型破りなようでいて、理屈を聞かされると納得できる。

 このほか選手やフロント、そしてサポーターと、それぞれのサッカーに対する熱い想いもしっかり感じさせてくれるし、読みごたえは十分。まだお話のほうは初期段階ではあるけれども、これからどういうふうにチームを作っていくのかというワクワク感にあふれている。今後のチーム、そして監督がどのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、すごく楽しみ。ただちょっと惜しいのが、単行本1巻の表紙だけ見るとサッカー漫画だとパッと分かりにくい点。絵柄自体はわりと目立つかなとは思うんですけどね。


▼一般

【単行本】「福助」1巻 伊藤静 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 モーニングで短期集中連載された作品で、雑誌連載時から気になっていたが、これはまとめて読んでみると、思った以上に良い作品だった。

 祖母の死後、ひとりぼっちになってしまい、収入も少なく、前につき合っていた男との子供まで宿してにっちもさっちも行かなくなっていた主人公・千晶。そんな千晶がある日、祖母の遺品である「福助」と書かれた箱を開けるとそこから小さな男の子が出てくる。彼は千晶にしか見えず、彼女に福をもたらすたびに年をとり、成長していく。二人の暮らしはちょっとヘンだけど暖かく過ぎていくが、福助を狙う謎の集団の出現により、その生活はしだいに脅かされていくことになる。

 伊藤静の作画は、絵的にはまだこなれてない部分もあるんだけど、描写自体は非常に丁寧。物語もしっかり作り上げられており、ひとりぼっちだけど頑張って生きる千晶、彼女を支えようとする福助の暖かい気持ちが伝わってくる。途中千晶と福助は、福助を狙う集団によって危地に陥るが、非常にハラハラさせられる。またラストも気持ち良い締めくくりとなっていて、しみじみと心打たれるものがあった。いくぶん地味ながらも、お話をちゃんと作り、キャラも大切にしていることがうかがえて好感が持てた。1巻となってるってことは、続きもあるのかな? あるとしたらそちらにも期待したい。

【単行本】「ふぁにぃみゅうじあむ」1巻 伯林 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 「しゅーまっは」の伯林の最新作だが、これは本領発揮という感じで面白かった。「世界一怪しい」と悪名高い博物館にやってきた女の子・田中由佳が、300億円するとかいう展示物を壊してしまったせいで、そこで住み込みのバイトをさせられることに。しかしそこにはわけの分からん怪物たちが寄り集まるデンジャラスゾーンで、由佳は毎日生きるか死ぬかのヒドい目に遭わされまくるのだった。

 といった感じのドタバタギャグなんだけど、特筆すべきは登場するモンスターたち。最初は全部ミイラ、巨大土偶、チュパカブラといったモンスター姿で登場するんだけど、一暴れした後はみんなかわいい女の子姿に変身。そして由佳になついてくるけど、しょっちゅう元の姿に戻ったりもする。ちょうど「しゅーまっは」のまはみたいなチビキャラが、わらわら複数いる感じ。かわいい女の子とグロキャラがドタバタ動き回るお話は、たいへん賑やかでとにかく楽しい。あと伯林の描く女の子たちはやっぱりとてもかわいくて、見ててほのぼのさせられる。萌えとグロがごく自然かつ絶妙に溶け合った、とても楽しい一作。

【単行本】「おかめ日和」 入江喜和 講談社 B6 [bk1][Amzn]

 「杯気分!肴姫」とかの入江喜和の最新刊。短気でヘンクツな鍼灸医の旦那と、太くて気のいい主婦のやすこさん。それからじい様、子供たちの御家庭生活をほのぼの描いてクホームドラマ。主役は奥方のやすこさんなんだけど、彼女は本当にいい人すぎる。旦那さんの彼女に対する扱いは相当つっけんどんなんだけど、いつもにこにこ笑顔を絶やすことなく、家族のために頑張る姿は実にかいがいしい。カバのごときど太い体がなんとも頼もしく、慈愛に満ち満ちている。読んでると旦那さんのあまりのワガママぶりにちと腹が立ったりもするんだけど、その分奥さんのいい人ぶりがしみてきたりもする。入江喜和の描くおばさんはチャーミングだなあ。これは惚れる。

【単行本】「邪眼は月輪に飛ぶ」 藤田和日郎 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 藤田和日郎がビッグコミックスピリッツで描いた短期集中連載。その目で見られた者は皆死んでしまう邪眼の持ち主であるフクロウと、彼を撃ち落そうと狙う老猟師たちの対決を描いたアクション漫画。ダイナミックかつしっかりまとまっていて面白い。なぜそのフクロウに見られた者は死んでしまうかについての合理的な説明はされず、一歩間違うと荒唐無稽でハチャメチャになりそうな作品を、力づくで読ませる剛腕ぶりはさすが藤田和日郎。

 藤田和日郎はカッコイイ爺を描くのが好きな作家さんだが、この作品に登場する猟師の鵜平も、不器用で無愛想だが、超絶的な技量と誰にも屈せぬ気高さ、そして男としての優しさを兼ね備えたカッコイイキャラ。鵜平の養女であり、邪な力を祓う力のある輪、フクロウ退治に駆り出された米国軍人といったキャラたちも、それぞれのポリシーをしっかり持っていてアツい。悪役であるフクロウも、狂的で邪悪ながらどこかもの哀しげな雰囲気をたたえていて、これもユニークな存在といえる。

 アクションはとにかく激しく迫力満点に。それと同時に人間の強さ優しさといった魅力もしっかり描き出す。メリハリが効いてるし、1巻でちょうど収まったボリュームもちょうど良い。よくできた一品。

【単行本】「魔法少年マジョーリアン」1巻 石田敦子 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 ナヨナヨしていて女の子にしか見えないほどかわいすぎる少年・イオリと、彼のことをいつもイジメている同級生・マサル。そんな二人がある日ひょんなことからウサギみたいな感じの不思議な生き物によって魔法少女に変身させられ、地球の平和のために戦っていくことを強要されていく。

 そんなわけで「少年なのに魔法少女」という、すごくベタベタな設定に基づいたお話なんだけど、パッと見の派手さとは裏腹に、なかなかどうして読みごたえがある。マサルがイオリをいじめているのは秘められた恋心の裏返し、イオリはイオリで健気なようでいながら何かもやもやしたものを心に抱えている様子。さらにサブキャラでもマサルの姉たちは、ちょっと危なっかしい娘さんが多く、ずっと年下なイオリに恋しちゃったりする娘や、実の姉ながらマサルに執着する娘などがいる。

 最初はちょっとバカっぽい変身美少女モノかと思ったら、お話が進むにつれて、それぞれのキャラの心の歪んだ部分などが浮き彫りに。いつもの石田敦子よりは煩悩丸出しではあるけれど、ダークな部分を真っ向から描いていく作風もやはり健在。なかなかにスリリングで刺激的な作品となっており、今後の展開に期待を持たせる。

【単行本】「暁色の潜伏魔女」1巻 袴田めら 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 わりと百合系な魔法学園モノ。主人公の暁は、魔力があることがバレて、外界とは隔絶された魔法学園に編入させられてしまった少女。暁には名前も顔も知らない姉がおり、彼女が学園にいるらしいと知った彼女は、学園で生活しつつ姉探しも行っていく。というわけで1巻時点での主なストーリーは、学園ほのぼの物語と、姉探しの2本立て。百合についてはむちゃくちゃ濃厚というわけではないけれど、お話のあちこちでその手の雰囲気を出しており、全体的に華やかで微笑ましい。基本的には明るく健全、ほのぼのしたお話なんで、楽しく読んでいけます。

【単行本】「怪物さん」 西川魯介 幻冬舎コミックス B6 [bk1][Amzn]

 妖怪にからまれていやらしいことをされそうになっていた主人公・種村くんが、不思議な先輩女子・立烏帽子さんに助けられて彼女に一目惚れ。でも立烏帽子さんは強い力を持つ、なんだか得体の知れない人で……と続いていくお気楽怪異学園ストーリー。まあそんなわけでこの作品では妖怪がらみの事件がいろいろ起きるんだけど、いずれもエロげな事件ばかりで、襲われるほうもけっこういい想いしてなし崩し的にそれを受け入れちゃったり。西川魯介の絵柄は柔らかくて明るいけどけっこうエッチいので、エロ系のネタが光っている。まあ気楽に読めて、エロや萌えもあり、小ネタも効いている。ラストの〆の部分は話がいきなり大きくなりすぎな感はあるけど、楽しめる一作だと思う。

【単行本】「海街diary1 蝉時雨のやむ頃」 吉田秋生 小学館 B6 [bk1][Amzn]

 父親と母親が出ていって以来、鎌倉の一軒屋で姉妹3人で暮らしていた香田家に、ある日突然父の訃報が届く。しかし子供の頃の記憶しかない3人にとって、父の死はなんとも実感のない、赤の他人のものに思えてしまう。その後いろいろあって、3姉妹の暮らす家に、父が出ていった先でこさえた腹違いの妹も越してくることになり、女の子ばかり4人の生活が始まる。そして、一緒に暮らすうちにだんだん新たな家族の絆が生まれていく。

 まあそんなわけで本作では父親母親不在の姉妹たちの生活が描かれる。劇的といえるような事件は第1話の父の死とその葬儀のみだけど、これがなかなか面白い。整然とした絵柄、キレのいい物語運びで非常に読みやすいし、4姉妹それぞれのキャラも個性的で見てて楽しい。ほのぼのとしてるけどヌルすぎもしないし、スルスル読んでいけて気持ちイイ。「ここがスゴイ!」とはなかなかいいにくいんだけどしっかり面白いです。

【単行本】「かよちゃんの荷物」1巻 雁須磨子 竹書房 A5 [bk1][Amzn]

 これは雁須磨子らしいなあ。なんてゆるいんだろう……。本作の主人公・かよちゃんは30歳を迎えた女子。「必要になることは少ないけどあったら便利そうなモノ」をやたら持ち歩いてしまうので、ついつい荷物が大きくなりがち。お母さん的な性格で良い人なんだけどどうも間が抜けている。そんなかよちゃんの日常をだらだらと描いていく。

 で、「だらだらと」って書いたけど、本当にこれがだらだらしてるんだよね。例えば「かよちゃんが太りましたー」というだけで終わっちゃう回とか、「部屋の掃除しましたー」ってだけの回とか。本当にヤマもなければオチもない。意味は漠然とあるようなないような……。普通だったらちゃっかりネタとかずっこけネタとかで落としそうなお話でも、常に斜め上を行くというか、するりするりと予想をハズしてくる。この締まりのなさ、ゆったり感は本当に独特。それがマイナスに作用せず、無性に楽しかったり気持ち良かったり感じられてしまうのは、雁須磨子にしか出せない味といえましょう。

【単行本】「マイガール」1巻 佐原ミズ 新潮社 B6 [bk1][Amzn]

 23歳の駆け出しサラリーマン・笠間正宗の許に、5年前に別れた彼女・陽子が正宗に内緒で産んで育てた娘・コハルが転がりこんできて、一緒に暮らすようになる。というわけでこの作品では、不器用だけど心優しい青年と、突然できた娘との親子生活をしみじみと描いていく。最初のうちは多少ギクシャクした部分もあった正宗とコハルだが、ともに過ごすうちにだんだん打ち解け、親子としての絆も強まっていく。その様子が優しく暖かく描かれていてしっかり読ませる物語に仕上がっている。コハルちゃんは健気で素直でかわいらしいし、コハルを悲しませないよう一生懸命頑張る正宗も、なかなかの好青年ぶりで好感が持てる。一つ一つのエピソードが丁寧に作られてて、ときにほろっとさせられたりもするいいお話です。

【単行本】「すてんばいみ〜!」1巻 本井広海+本澤友一郎 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]

 都会から転校してきたカワイイけど生意気な女の子・大塚さくらと、地元の体力自慢な少年ショート。二人を中心に展開される小学生友情ストーリーといった感じの物語。さくらはかわいくて優等生で社交的に見えるが、実はけっこう屈折していて、心の中では田舎者な同級生たちを馬鹿にしている節あり。しかしショートはそんなさくらに全力でぶつかっていって、彼女の凍て付いた心を少しずつ変化させていく。

 スクリーントーンを使わず、ペンでガリゴリ描き込んだ感じの作画は、シャープな造形なのに暖かみがあって、独特な雰囲気あり。このコンビの作品は同人誌でも何作か見ていたけど、商業誌で描くときもトーンを使わず、同人時代の絵の風味を殺すことなくそのまま持ってきてる点はちょっと驚き。まあそのおかげで画風的にはちょっとクセがあるんだけど、個人的にはけっこう好みではある。お話のほうもイヤらしいところがなく、ちょいとほろ苦いお話もあるものの、基本的にはまっすぐな友情ストーリーに仕上がってて読後感は良い。この画風を維持したままやっていくのはけっこう厄介かもしれないけど、好きなユニットではあるのでぜひ頑張ってもらいたい。

【単行本】「モナミちゃんねる!」 さそうあきら 双葉社 B6 [bk1][Amzn]

 呑気な家族ものコメディ。小学生のモナミちゃんと、ホラー漫画家の父、お琴の先生をやっている母の3人家族のドタバタしょうもない生活をのんびり描写。まあ他愛ない内容ではあるんだけど、3人の掛け合いが下らなくてけっこうクスリと笑わせてくれる。こういうのやっても問題なくうまいですねえ。さすがの職人芸といったところ。

【単行本】「井上和郎短編集 葵DESTRUCTION!」 井上和郎 小学館 新書判 [bk1][Amzn]

 ゴッツくてメチャ強な息子の父親が、とにかくかわいすぎてもうたまらんのです!……ってな状況で繰り広げられるシリーズ「葵DESTRUCTION!」を中心とした短編集。やはり目玉となっている「葵DESTRUCTION!」は話題になっただけあって面白い。葵パパがやたらカワイイし、見せ方も楽しい。本来はオヤジなはずなのに、その匂い、容姿、チラリなどにいちいちトキめかされてしまう。分かっていても反応せざるを得ない男心をグラグラ弄ぶ、罪な作品といえましょう。葵パパについては、「女の子みたいな存在」としてとらえるのもアリだし、「すげーカワイイショタっ子」と見てもOKでしょう。あとその他短篇「古書店夜光奮戦記」「フルスクラッチ・エイジ」「音禰のないしょ」も、技量的にはまだ至らぬところもある時代のだけれど、それぞれ元気が良くて楽しく読める。

【単行本】「ゴーゴー♪こちら私立華咲探偵事務所。」3〜4巻 渡辺航 新潮社 B6 [bk1:3巻/4巻[Amzn]

 4巻でもって最終巻。ハチャメチャ探偵事務所コメディといった感じの本作だったが、この3〜4巻あたりになってからすごくノリが良くなって面白くなっていただけに、ここで終わらしてしまうのはもったいないなあ……というのが正直なところ。とくに最初はぶっきらぼうなスレンダー美女って感じで登場した華咲所長が、いきなり太ってぷよぷよ化してからの展開は面白かった。所長がぷにぷに太って幼女体型化したことで萌え度がぐーんとアップ。それに伴い、主人公・小金田一と彼が片想い中の女の子・しおりちゃん、そして所長の間で三角関係っぽい状態が構成されてラブコメ的な面白さがアップ。あと途中で探偵事務所のメンツを使って宇宙モノやったりと、ハチャメチャさも増していた。1〜2巻の売上が悪くて続かなかったそうだけど、3〜4巻が好評なようなら2もあるかもしれないとのこと。まあこういう場合は続編はないと思うけど、復活へ一縷の望みを託しつつプッシュしておきます。

【単行本】「アイホシモドキ」1巻 森繁拓真 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 ナヨナヨしてて女の子によく間違えられる男の子・元木くんと、とにかく大ざっぱで男らしすぎる女子・相星さん。性格や行動は実に対照的だが、顔は双子のように瓜二つな二人の学園生活を描いていくというドタバタコメディ。森繁拓真はヤンマガの増刊とかで描いていたころからなかなか面白い作品描く人だなーと思って注目してたけど、これがようやく初単行本となった。

 「アイホシモドキ」については、絵についてはまあパッと見そんなにウマイってほどでもないんだけど、読んでみるとけっこうイケる。まあ萌え度という意味では、最近の週刊少年チャンピオンのきれいどころと比べると弱めなんだけど、その分落ち着いてて雰囲気がイイ。お話が進むにつれてだんだん良いコンビぶりを発揮していく二人の様子が微笑ましかったりする。ツンデレとか帯には書いてあるけど、それよりもむしろ角が丸まってるっていうか、なんかほのぼのしたホッとする味わいがある。派手ではないけどじんわりとした面白みのある作品。

【単行本】「かるた」1巻 竹下けんじろう 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]

 にゅーあきば.comのレビューでも紹介した競技かるた漫画。  格闘ゲームの全国チャンピオンだった少年・太一が、学校でおさななじみ娘の由利子と戯れていたさいに階段で転んでしまい、それに巻き込まれたかるた同好会部員・千歳を骨折させてしまう。太一はそれに責任を感じてかるた同好会に入部希望する。最初は責任感だけだった太一だが、かるたの世界の奥深さや厳しさを知って夢中になり、かるたにハマっていってしまう。

 といったわけで競技かるたをスポ根的に描いていくんだけど、太一が速く札をとるためにオリジナルの必殺技を編み出すとか、札をとるために戦略を考えたりとかいった勝負の面白みもしっかり描いていてなかなかアツい。相手方のほうもけっこう卑怯な手を使ってきたりするんで、それをやっつける太一のカッコ良さも引き立つ。

 また男女混合競技なんで女の子もけっこうよく出てきて、これがわりとかわいかったりする点も良いところ。正直、勝負のボルテージは下げない範囲で、もう少し萌え系描写をあざとくやってもいいくらいかなーという気はしないでもないが、意外と試合のシーンでは男対男の対決が多い。竹下けんじろう自身は案外ガチで競技かるたを描こうとしているんだなという雰囲気もあったりする。ちょいと地味な世界ではあるけれども、けっこう燃える漫画に仕上げて来ており、これからの展開も楽しみにしている。


▼エロ漫画

【単行本】「少女は犬の夢を見る」 栗田勇午 三和出版 A5 [Amzn]

 今や日本を代表する獣姦漫画家となった感のある(というかほかにほとんどいない)、栗田勇午先生の新刊が出て欣喜雀躍。この巻もタイトルどおり、少女と犬の愛とセックスをたっぷりみっちり描いた内容となっている。

 お話のほうは、主人公の和実が愛犬のリュウと散歩中に、クラスメイトのヒカリちゃんと愛犬ミッキーが森の茂みの中で性行為に耽っているところを目撃してしまうところから始まる。それがきっかけとなり、ミッキーは和実に惚れてしまい、彼女との性行為を執拗に求めるようになる。ヒカリはそれに嫉妬し、代わりにリュウを差し出すよう和実に強く迫るが……。

 ここまでが前半のあらすじ。クラスメイトの存在により犬とスルという行為があることを知り、その魅力にとりつかれてしまった和実ちゃん。そして和実によってミッキーの愛を奪われたヒカリちゃんの間で、一匹の犬をめぐる三角関係が展開されていく。これだけでももうものすごく濃いのだが、お話はこれでは終わらない。ミッキーは結局和実と結ばれ、和実とヒカリの間にも友情が成立するのだが、ミッキーを襲った悲劇から束の間の幸福はぼろぼろと崩れていく。そしてミッキーのことが忘れられない和実は自暴自棄となり、以前ヒカリと知り合う前の親友だった少女たちも巻き込んで、ドロドロの愛憎劇が繰り広げられていく。

 本作品でやっぱスゲえなあと思うのは、ただ「犬とヤル」という好奇心的な描写だけに収まらず、そこからグッと少女たちの心理面にまで深く踏み込んでいっているところ。「犬チンポしゅごーい」だけで終わっていたら浅薄な物語になってしまっただろうが、こういうネタをやりつつも、しっかりとした物語を構築しようとしているところが素晴らしい。ラブストーリー、友情ストーリーとしても何気にちゃんとしている。ミッキーと和実が結ばれ、ヒカリちゃんによって祝福されるシーンなどは感動さえした。起伏の激しいストーリー、そしてなんともいえない気持ちにさせられるラストなど、読んでいると心がグラグラ揺さぶられてしまう。

 絵のほうもけっこういいと思うんですよね。栗田勇午のこれまでの作品の中でも、少女の萌え度はかなり高め。ストーリーのまとまり、ボリューム感もある。獣姦というとイロモノ扱いされがちだが、それに止まらない物語に仕上げていたのはすごく立派。フラミンゴRの休刊以降、こういう稀有な作家さんが、自由に才能を発揮できる場所がほとんどなくなってしまったのはすごく残念。作者後書きにも「ボクの役目も、そろそろ終わりかな…。」とか書いてあるけど、いやいやそんなことはなし。むしろ始まったばかりだと思うし、次回作を待っている読者も、数は多くないかもしれないけど確実にいると思う。少なくとも自分は強く待望している。ぜひ今後も、なんらかの形で作品は発表し続けてほしい。

【単行本】「イツかのアノこ」 みなすきぽぷり ジェーシー出版 A5 [Amzn]

 みなすきぽぷり2冊め。ロリ系の作家さんだが、ペンタッチがとても細かくて美しくて魅力的。人物描写についても線に艶があっていいけど、背景描写もしっかりやっているので、作品世界に奥行きが感じられるのも評価したい点。十分に可愛らしい絵柄だが、作品の流れによってセンチメンタルな雰囲気も出せるし、明朗快活なふうにもできる。なかなかの実力派といえる。

 今回の収録作品の中で個人的に印象に残ったのは「大人になるってどういうこと?」。ヒロインのめがねっ娘さんの表情も楽しいが、色付きリップクリームというアイテムで、口紅はつけないけどちょっと背伸びはしてみたいという、微妙な年代の心理を演出しているあたりにグッとくる。「あたしは、こう!!」もイイ。親友女子に同じアパート住まいのお兄ちゃんを紹介したけど、彼への気持ちが抑えられない主人公少女がとてもかわいく描けている。

 このほかビターなお話から、ほの甘いお話まで、ストーリーはそのときどきでトーンが変わるけど、どれもしっかり描きこなすだけの作風の幅広さはある。なおみなすきぽぷりは、現在はCOMIC CROSSで「椎木冊也」名義で活躍中。この単行本にはCROOSS掲載作品も含まれてたけど、単行本はこっちの名義で出すのかな? それとも3冊めから変えてくるんだろうか? まあどっちにしろ買うだろうけど。

【単行本】「ひよこのたまご」 裏次郎 茜新社 A5 [Amzn]

 COMIC LOで最近かなり楽しみにしている裏次郎の初単行本。この人の絵は非常に丁寧でかわいくて良いです。細いスッキリしたペンタッチながら、オシャレになりすぎることもなく、親しみやすさも残した絵を描いてくる。

 この単行本の中では、とくに番外編とおまけ漫画を含めて6本が掲載されている「はらませ!」シリーズがタイヘン良い。妹とヤッているところを親に目撃されて、家を出ていった兄の許へ、その当人である妹が押しかけ女房として転がり込んで来る。そして親に関係を強引に認めさせるべく、毎日赤ちゃん作りに励むのであった……というお話。妹のほうはランドセル年代なのだが、けっこう芯が強くてしっかり者。でも方言は丸出し。年端もいかない少女がばあちゃんしゃべりでエロいことを迫ってくる様子は、なんともいえないほのぼの感を醸し出している。

 あとこの人で良いのは、女の子の表情が豊かなこと。元気な笑顔はもちろんいいけど、恥ずかしがってる表情とか泣き顔も良い。はなみず垂らしてぐちゃぐちゃになってる顔とかも、とても愛らしく描いているのは大したもの。はなみず娘としては「わかば」に出てくるわかばちゃんが良い。あと初期の作品でまだペンタッチは描線太めだが、小学4年生の幼なじみ娘が、母子家庭に押しかけママとしてやってくる「おしかけ!」とかも遊び心がきいてて楽しく読める。

 少女たちのキャラが立っているおかげで、おこさまとやっているけど「性を搾取している」とか殺伐とした雰囲気になることはなく、むしろ明るくほのぼのした感じになっているのが良いところ。絵がわりと細かいので、単行本サイズになるとキャラの顔のサイズが小さくなりすぎてるかなーというコマはあるけれども、線自体は整理されているので見にくいというほどではない。最近のロリ系作家の中では屈指のオススメ度。今後も楽しみな作家さん。

【単行本】「&er Grils」 大孛輝*はな 茜新社 A5 [Amzn]

 端整な絵柄でちょっとロリっぽい少女エロを描く人。作風は基本的に明るめでわりと気楽に読める。ピチピチした華やかさがあってお話面でのまとまりも良い。この作品では、先輩男子と後輩女子のカップル+その女子の妹の3人で展開される「千真と千夏と先輩と」シリーズ3話で前半。あとは学校でおともだち同士の女の子たちの、それぞれのH事情を描いていくシリーズが何話かが中心となっている。いずれのエピソードもわりと楽しくかわいくエッチ。ちとヌルめではあるものの、整っていて、鬼畜的なネタも少ないのでエロ漫画初心者の人にも読みやすいのでは。

 余談だけど、このペンネームの読みは「DAIBOKKI*HANA」。つまり「だいぼっきはな」なんだけど、他人にペンネームで呼ばれるときは「だいぼっきさーん」とかいわれるのかな……。あ、あと単行本タイトルのほうは「アンダーガールズ」と読みます。

【単行本】「やわあね」 綾乃れな 茜新社 A5 [Amzn]

 タイトルどおりとしうえのおねいさん系の作品が多い。ナヨっちくてかわいい少年と、それを甘やかし包み込むようにしてエッチをするおねえさんキャラの組み合わせがメイン。お話のほうもトゲがなくて甘ったるい。マイルドな絵柄ではあるものの、柔らかくてたぷたぷしたボリューム感に包まれるようなエロシーンは、実用度の面でもなかなか。ちんちんもものすごく描き込んでいるというわけではないものの、けっこういい形していてエロさはある。むっちりもっちりした柔らかいおっぱいが好きという人には、十分使えると思う。自分もこういう乳はけっこう好きなんでなかなかよろしうございました。

【単行本】「ポコとワンダフル」 D.P フランス書院 A5 [Amzn]

 たぬき娘・ポコとごしゅじん様のほのぼの&Hライフを描いたシリーズ2冊目。ポコは普段は2頭身な癒し系キャラだが、ときどきグラマラスに変身してごしゅじん様とエッチ。ちびっちゃいときはそのかわいさでほのぼのし、グラマラスバージョンではエロさを楽しむという感じで、一粒で二度おいしい作品。作画もペンタッチが美しくて達者。

 という感じなんだけど、読んでいるとポコがちっちゃいバージョンでいるときのほうが断然楽しいな〜と思う。ぷにぷにした姿は愛らしいし、ちょいとアホっぽい行動も面白い。。大きくなったポコは色っぽいねーちゃんではあり、絵的にはたいへん華やか、エロシーンも描写は濃厚なんだけど、絵がきれいすぎるせいかあんまりエロくは感じないかなーというのはある。まあ作者あとがきにも、ファンから「エロいらね」との声が挙がっているといったことが書いてあるけど、正直なところ自分もわりとそんな感じ。でもエロシーンがあるからこそ、普段のちびポコの存在感が際立っている感じもしなくもないんで、バランスが難しそうな気はします。

【単行本】「猟奇刑事マルサイ」 大越孝太郎 コアマガジン A5 [bk1][Amzn]

 なかなか出なかった単行本だったがようやく。ニャン2倶楽部Zでの連載だったのね。どうりで読んでなかったわけだ。

 お話のほうは、猟奇的な犯罪を操作する特別捜査班「マルサイ」の面々が、驚くような変態的で猟奇的で官能的な事件を目撃していくというもの。いちおうタイトルだと刑事が主人公みたいだけど、これはもう完全に事件の中身を描くほうが主眼。解決されなかったり、そもそも刑事たちはちゃんと捜査してるの?って感じの事件もけっこう多いし。

 で、事件の内容のほうはかなり濃いいです。例えば屍姦愛好家のために、薬で仮死状態になって彼らに輪姦され続ける倒錯性愛者の少女とか。例えば自らの四肢を斬り落とした状態で、セックス漬けの日々を送らんとする女医とか。ゴミ屋敷内に近所の人を拉致監禁して非人間的な生活を強要しつつゴミの分別を徹底的に教え込むオヤジとか。大越孝太郎の作画がすごくシャープで美しく、また生々しさを感じさせるものだけに、その変態行為の数々も読者にググッと迫ってくる。

 やってることは実に濃厚で、サディスティック、マゾヒスティック、パラノイアックその他いろいろ……って感じなんだけど、グロテスクとか怖いというだけでなく、かなり官能的でもある。自分はあまりこういう性癖はないけど(ていうか自覚してないだけかもしれないけど)、それでもいくらか憧れ的なものをかきたてられたりもしなくはない。なかなか刺激的な一冊。


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