OHPトップ > オスマントップ > 2007年12月の日記より
このページは、「OHPの日記から、その月に読んだ単行本の中でオススメのものをピックアップする」というコーナーです。文章の中身は、すべて日記からのコピー&ぺーストです。加筆・改稿等は原則として行っていません。
なお、ここで取り上げる単行本は「その月の日記で取り上げたもの」です。「その月に発売されたもの」ではありません。だから古い本でも入ってくることがあります。ピックアップした単行本は多少分類してますが、これはあくまでページを見やすくするための便宜上の分類です。かなり適当に割り振ってますのであんまり気にしないでください。あとシリーズものの途中の巻は、取り上げないことが多いです。
▼強くオススメ
【単行本】「キャノン先生トばしすぎ」 ゴージャス宝田 オークス A5 [Amzn]
12月発売の単行本の中では、個人的に最も単行本化を待ち望んでいた作品。とにかくもう、いろいろな部分が実に濃い。キャラも、エロも、キャラ同士の愛情、エロ漫画への愛情……もろもろ。すでにおた☆スケのレビューでけっこう詳しめに書いたけど、やはりこちらでも強くオススメしておきます。
お話のほうは、30歳だが遅筆で寡作で泣かず飛ばずだった零細エロ漫画家・ルンペン貧太が、超売れっ子エロ漫画家・巨砲キャノン先生と出会うところから始まる。キャノン先生はものすごいエロエロな漫画を描くくせに、その正体は実は12歳の小学生女子。なぜか初対面で貧太のことが気に入ったキャノン先生は、彼を専属アシスタントに指名し、そこから二人の愛欲の日々が始まる。
ってなわけで、30男と少女のめくるめくラブラブエロが展開されていくわけだけど、まずそのテンション、密度がものすごい。尋常じゃなくエロに興味がありまくるキャノン先生は、スイッチが入るや否や、貧太に迫りまくり、エッチが始まると機関銃のごとく隠語を連発。プレイ内容も口あり尻ありまんこあり。強烈な勢いで貧太の精液を貪るキャノン先生のお姿は、まさに小さな淫獣といった風情。あまりにも勢いが猛烈なのでヌケるかっていうと個人的には微妙なラインなんだけど、とにかくベチョベチョズルズルなエロシーンはやたらめったら濃くて圧倒される。
そんなことをやりつつも、物語後半は漫画家漫画としてアツく燃え上がっていく。この後半の展開はエロ漫画好きなら涙せずにはいられない。キャノン先生との愛欲生活に溺れて、自分が自分のエロ漫画を描くことを忘れていたことに気づいた貧太は、編集部に頼み込んでページをもらう。でもできない。原稿が進まない。そんな状況でのたうちまわり、編集者に最後通告をされた貧太は、改めて自分がいかにエロ漫画を好きだったかに気づく。
このあたりの展開はとにかくドラマチック。貧太が、自分がエロ漫画に目覚めたきっかけを語るシーンは何度読んでも泣けてくる。自分もエロ漫画読み始めてもう20年超だけに、こういうことを真っ正面からいわれると、いろんな想い出が去来しちゃってたまらない。そしてキャノン先生の回想や、クライマックスの怒涛の執筆シーンなど、感動的なシーンの連発で、最終盤はもう魂が震えっぱなし。セリフの一つ一つがビシビシ響く。とにかく貧太とキャノン先生の「エロが好き!」「エロ漫画が好き!!」という想いに胸を打たれる。あと二人の愛情ストーリーとしても、非常に甘く濃密な物語に仕上がっているのが素晴らしい。
上記のおた☆スケのレビューでは、ネタバレになるかと思ってあえてこのあたりのシーンからの図版引用は避けた。やっぱり単行本で実際に読んでみて、一つ一つのセリフのアツさ、ドラマの盛り上がりを楽しんでほしい。ゴージャス宝田は実にアツいエロ漫画を描く人だけど、この作品はそれがかなり極まってる。個人的には2007年に出たエロ漫画の中ではベスト評価。濃すぎて読むのに体力いるし、クセは強いし、実用に向くかといわれると人を選ぶかなとは思うけれども、それを押してでもオススメする。
なお、単行本初回限定版には巨砲キャノン先生、ルンペン貧太らが描く、「コミックヒロイン」の特別付録号が付属。さらに海乃みるく、鉄鋼院ラセンのほか、シノ、弐駆男、金平守人、唄飛鳥、東雲龍、のぎまこと、四万十曜太、香月りお、あ〜る・こがも登場。付録までやたらと濃い1冊となっている。
【単行本】「ささめきこと」1巻 いけだたかし メディアファクトリー B6 [bk1][Amzn]
女子高生たちの、かわいくもあり切なくもある物語。主人公である村雨純夏は、同級生であり、親友でもある風間汐に、女の子同士ながらずっと恋している。風間さんのほうも女の子を好きになる女子だったのだが、彼女は「カワイイ」といわれるタイプの女子が好きなので、優等生で「カッコイイ」と呼ばれるタイプの純夏は恋愛対象ではなく、純夏の想いにもまったく気づいていない。純夏は親友という関係を崩したくないので、風間さんに想いを伝えることはできず、風間さんが他の娘に気を取られるのを切なく見つめるばかりだった……。
このように始まる学園ドラマなのだが、1話めはとても切ない。好きで好きでたまらない相手に、「友達」としか見てもらえない純夏の気持ちが丁寧に描かれていて、胸がキュッと締めつけられる。センチメンタルで、透明感のある物語に心動かされる。この話は読切での掲載だったこともあって、純夏の恋心を描いた作品のキモとでもいうべき部分については、この第1話にギュッと集約されている。
再登場となった2話、毎号連載となった3話あたりからは、だいぶお話のトーンは明るくなっていて、その周辺の女子(および男子)も一緒になって楽しいスクールライフが展開されていく。これもまたドタバタ感があって楽しい。そして、純夏の片想いを描いた切ないシーンも要所要所で差し挟まれて、甘酸っぱい味をプラスしてくれる。華やかであり甘くもあり切なくもある。そして気持ち良く読める一作。
【単行本】「深夜食堂」1巻 安倍夜郎 小学館 A5 [bk1][Amzn]
渋味があってすごく面白いです。営業時間は深夜0時から朝7時まで。メニューは数種類しかなくて、あとは客が適当に注文して、店主が作れる料理であればなんでも出す。そんな気ままで飾らない定食屋さんで繰り広げられる人間ドラマを描いていく。
出てくる料理は別にさほどうまそうなもんでもない。着色料たっぷりの真っ赤っ赤ナウインナーだとか、一晩置いたカレーだとか、猫まんまだとか、まさに常食といったものばかり。でもなんか見ているとすごく食いたくなってくる。各話ごとにメインとなる登場人物は違うんだけど、お客さんたちがめいめい好きなものをすごくうまそうに食ってる様子を見ると、食欲が刺激されてしまう。そこらへんにありそうなものばっかりだけになおさら。
また繰り広げられる物語もこれまた良い。飄々とした語り口で展開されるドラマは、ときに人情味たっぷりに、ときにジョークを効かせたりとさまざま。あまりベタベタしすぎることはないけど、ほろっとさせたり、ニヤリとさせたり。力加減が本当に絶妙。あと食堂の店主の語り口もいいんですよね。独特のリズムがある。
ものすごく枯れた作風の持ち主で、「この人何年漫画描いてたんだ?」と思わせる熟練の味。でも実はこれが初単行本で、デビューも2004年の小学館新人コミック大賞受賞作の「山本耳かき店」とキャリア自体は短い。とはいえたしか作者自身は四十超えてるとかだったかな。若いモンには出せない、深い味わいのある作品。
【単行本】「巨娘」1巻 木村紺 講談社 B6 [bk1][Amzn]
すごくパワフルで楽しいです。背がやたらデカくてパワフル、何から何までビッグな女・ジョーさんのハチャメチャな生活ぶりを描いていくギャグ漫画。仕事である焼鳥屋の店長はブルドーザーのような勢いでバリバリこなし、気に入らねえ奴は殴る蹴る、気に入った男はベッドで搾り取る。そんな激しすぎるジョーさんの豪快極まる行動がとにかく面白すぎで、痛快でもある。乱暴極まりないけどスジは一本ビシッと通ってて、いい加減なヤツには容赦なし。その行動を見ているのは非常にキモチイイ。
あとジョーさん以外のサブキャラも愉快。ジョーさんの手下である店員のトオル(女)もジョーさんに負けず劣らず強力だし、バカなポン子、おしとやかなようで意外と抜け目のないサチもいいキャラ。さらに面白いのが、ジョーさんの弟の彼女の兄であり、ジョーさんの恋人となったお兄ちゃん。男とは思えない可憐な容姿の持ち主で、非常によわっちいんだけど、何の間違いかジョーさんに一目惚れして恋人に。そのかわいらしい姿にジョーさんが欲情し、野獣化して迫る様子は実に楽しい。おにいちゃんのほうも絶倫なジョーさんにつき合えるくらいだから、なかなか優秀なタネの持ち主なのかもしれぬ。
前作の「神戸在住」はしずしずとした作品だったのに、それとは真逆な感じのハッちゃけた作品。コマ割とかペンタッチとかはそんなに変わらないのに、こんなにガラッと違う印象の作品を描いてくるとは。木村紺恐るべし。
【単行本】「僕の小規模な生活」1巻 福満しげゆき 講談社 B6 [bk1][Amzn]
「僕の小規模な失敗」の続編ともいうべき作品で、モーニングで連載されたモノ。マイナー漫画家の生活を、とても赤裸々に描いているのが特徴で非常に興味深い。「僕の小規模な失敗」は、福満しげゆき自身の学生時代から漫画家デビュー、結婚などが描かれているけれども、この作品では彼がエロマンガを持ち込んだりして失敗し続けているあたりからスタート。福満漫画ではおなじみ、妻の人は最初の時点では働いてたけど、途中で仕事をやめてしまい、いよいよ福満しげゆきは漫画家としてちゃんとやっていかなければならなくなる。
で、その後、モーニングでも仕事をやるようになり、アクションからも声がかかる……とボチボチ芽吹きそうになるのだが、このあたりの展開がこの巻のクライマックス。モーニングでの連載が決まらない間に、アクションからも連載の話が舞い込み、それを知った講談社が「他社で連載を持つな」と激怒。どっちも断りがたいという状況に追い込まれた福満しげゆきの、ストレスフルな状況が、「ここまで描いちゃっていいの?」といった感じの生々しさで描かれていてたいへんに刺激的。
でもまあ福満しげゆきの絵柄はリアルタッチとかじゃなくて、どこか飄々としたちょいかわいげもある絵なんで、あんまりシリアスになりすぎることもなく、なんだかつるっと読んでいける。漫画のキャラとしての福満しげゆきも面白いし、基本的に笑い顔の妻の人のキャラもなんだか楽しいものがある。パッと見地味だけど、意外と大胆な感じもする独特の振る舞い、作風がどうにも心地いい。
【単行本】「ブラッドハーレーの馬車」 沙村広明 太田出版 B6 [bk1][Amzn]
少女残酷物語。舞台は近代の西欧風のどこか。孤児院から見た目の美しい少女を選び、ブラッドハーレーという貴族の家の養女、そして歌劇団の女優としてスカウトするため各地を巡回する「ブラッドハーレーの馬車」。少女たちはこの馬車に乗って、孤児院から出ていく日を夢見ていたのだが、少女たちの大部分はブラッドハーレー家に向かうことはなかった。彼女たちの連れられていく先は、暗くて高い塀の中。そして待ち受ける運命は、このうえなく無情で残酷で非人間的なものだった……。
いちおうネタバレを避けるため、これ以上の具体的な内容は抑えめにしておくけれども、虐待とか凌辱とかが心底ダメって人はたぶん読まないほうが無難です。少女たちのたどる運命は実に悲惨で痛々しい。沙村広明は光彩書房から以前出ていた「激しくて変」とかで無残絵をいろいろ描いているけど、ああいう世界が展開されます。大人たちの身勝手な理屈によって、可憐な少女たちが壊されていく様子には、胸が塞がれるものがある。あと、これは好みの分かれるところではあろうけれども、悲惨な運命に遭う少女たちの姿にエロスを感じる人もいるだろう。
しかしその悲惨さがお話にすごい緊張感をもたらしているのも確か。物語内の空気は常にピンと張り詰めていて、悲劇的な物語が読む者の心にひしひしと迫ってくる。ラストまで読むと、なんともいえないもの悲しさと、深い感慨が押し寄せる。すごくヘヴィーで確かな読みごたえのある一作となっている。
ところで自分は雑誌掲載時にこの作品は読んでいたんだけど、改めて単行本で読み返してみると、自分が抱いていたイメージほどには直接的なシーンは多くなかった。描写の残虐さでいえば、むしろ「無限の住人」の拷問とかのシーンのほうが直接的ではあるかもしれない。ただ非道な目に遭わされるのが、年端も行かぬ可憐な少女ということもあって、むしろこっちのほうが悲惨に感じてしまうのは確か。初回のインパクトがとても強いので、以降のお話ではそれを想起させるだけでも十分な効果が与えられている。このあたりは演出の力だな、と思う。
【単行本】「ヤンキーフィギュア」1巻 ミッチェル田中 秋田書店 新書判 [bk1][Amzn]
ケンカムチャ強のヤンキー娘・桜井さくらが、ある日突然、黒猫の魔力(?)により小さくなってしまう。そしてそこに居合わせたフィギュア好きのイジメられっ子・山下筆児と同居生活を送ることになるのだった……というところから始まるドタバタコメディ。さくらは筆児以外の人間に触られると身体が硬直し、本当のフィギュアみたいになってしまう。それで毎回ピンチに陥るが……というのが基本パターン。
で、これはけっこう面白いです。まあ毎回さくらの服が脱げちゃったりといったお色気展開もあるんだけど、基本的には元気の良いハチャメチャアクションが展開されて、なかなか勢いがある。あと、さくらが筆児を後ろからどつくことで身体を動かして喧嘩に加勢するとか、力づくな展開も面白い。筆児とさくらの間に、じょじょに信頼関係が芽生えていく様子も微笑ましいものがある。ツンデレというほどデレデレはしないんだけど、なんだかほのぼのとした味もあって、楽しく読んでいける。どこか垢抜けなくて憎めない味があって、好きな作品です。
▼一般
【単行本】「けんこう仮面」 唐沢なをき+唐沢よしこ 小学館 A5 [bk1][Amzn]
普段忙しい生活を送っているギャグ漫画家・唐沢なをきが、疲弊した身体をどうにかするため、さまざまな健康法にチャレンジしてみるというルポ漫画。実践している健康は、赤パンツ健康法、プチ断食、お灸などさまざま。この手の「やってみよう」的作品はほかにもいろいろあるわけだが、そこは唐沢なをきだけあって、ただ「やりましたー。効きましたー。効きませんでしたー」などといった漫画にはしない。ちゃんと各健康法がらみの話題で、ひねったりひねらなかったりなギャグを展開していて面白い。ギャグの部分を膨らましすぎちゃって、実際の体験の部分は1コマだけみたいなのもあるが、そこは奥さんの唐沢よしこがコラムでフォローを入れてるので大丈夫。
紹介されてる健康法の中では、個人的にはコーヒーを使った腸洗浄が興味あり。要するに尻の穴にコーヒーを注ぎ込んで、ぶばーっと出して腸の中をキレイにしちゃおうって奴です。あと唐沢なをきらしいなあと思ったのは、電磁波遮断ネタ。まあこれは実際に単行本で読んでいただいたほうがいいでしょう。それと唐沢なをきが胆石除去手術をやったときのレポートなんかも面白かった。唐沢なをきは大好きな作家さんなので、そんなこんなでバリバリ健康になっていただいて、もりもり面白い漫画を末永く描き続けてほしいものだなあなどと思います。
【単行本】「町でうわさの天狗の子」1巻 岩本ナオ 小学館 新書判 [bk1][Amzn]
天狗と人間のハーフで、人間界の学校に通っている女の子・秋姫が主役の学園ストーリー。秋姫は天狗の子といっても、現在は力が強いことを除いてはごく普通の思春期女子。同じ学校のタケル君という少年に片想いをしているほか、幼なじみで天狗修行中の少年・瞬には天狗としての意識の欠如を叱られたりする日々。まあそんな周囲の人たちとともに、彼女の日常は進行していく。
岩本ナオのスッキリとしていながら暖かみとかわいげのある作風は、この作品でも威力を発揮していて、秋姫たちの学園生活はとても微笑ましく描けている。タケルくんにトキメキまくる秋姫はなかなかかわいいし、秋姫の世話を焼く瞬の様子にもなんだかほのぼのさせられる。お話も絵柄も軽やかさがあって楽しい。お話のほうは秋姫の恋がどうなっていくかはまだ分からず。タケルくんもちょっと食わせものな感じはする。まあとりあえずかわいい物語なので、これからも楽しみ。
【単行本】「デイドリームネイション」1巻 kashmir メディアファクトリー A5 [bk1][Amzn]
こちらはコミックアライブで連載中の作品。変わり者揃いの漫研を舞台にしたお話。主人公格のめがねっ娘・小岩井さんは比較的マトモだが、そのおともだちの夏穂は奇抜な行動の多い変人。さらに部室にはカエルの守り神みたいなのが、人間型に変身してたむろしており、漫研の先輩連中もヘンな人ばかり。別に何かすげーことやるってわけではないんだけど、その日常はしょうもなくて見ていてとても楽しい。こちらは「○本の住人」と違って、普通のストーリー漫画形式のコマ割なので、大きめなコマもけっこうあり、kashmirのサラサラ気持ち良い触感の絵も十二分に生きている。気負わずに出てくるオタネタにも思わず笑ってしまう。やっぱこの人、絵といいネタ選びといい調理の仕方といい、すごくセンスいいなーと感心させられる。
【単行本】「あいらぶ日和」1巻 アキタコウ 小学館 B6 [bk1][Amzn]
漫画家をやってる彼女のあいちゃん(24)と、探偵やってる彼氏のコウヘイ(21)。二人のラブラブ同棲生活をほのぼの描いていく物語。とにかく二人はずっとイチャイチャしてて、その様子を微笑ましく観察していくというのがこの作品のキモ。まあ大きな動きとかはないけど、ほどほどに楽しい感じはあります。なんとなくコウヘイのほうがちまちましすぎてて、ちょいとイラッと来たりはしますが。
【単行本】「Danza」 オノ・ナツメ 講談社 B6 [bk1:通常版/限定版][Amzn]
モーニング2連載の、1話完結オムニバスシリーズ。6本の作品が収録されているが、いずれも男2人の絆、信頼関係を描いた物語となっている。それは父子だったり、職場の同僚だったり、兄弟だったり。だいたいどの話も、自然に物語を進めていって、その中でお互いを認め合う関係性を描いていってたいへん心地がいい。まあオノ・ナツメは同性愛モノも描く人だけど、「Danza」については「親愛の情」って感じのレベルかな。恋愛とは行かないけれども、確かな暖かさがあり、しみじみとした後味のいいお話が揃っている。お話を美しくまとめる鮮やかさには、いつものことながら感心させられる。あとオノ・ナツメの画風は、頭身高いバージョンと低いバージョンがあるけど、今回は低いバージョン。絵柄の持つ暖かみが、作品を気持ちイイものにしてくれてるってところもあるかと思います。
【単行本】「探偵綺譚 石黒正数短編集」 石黒正数 徳間書店 B6 [bk1][Amzn]
石黒正数はいろんなところで短編描いてるなあ……としみじみさせられる1冊。「探偵綺譚」「スイッチ」「14歳 性の相談室」「気の抜けたビールで…」「カラクリ」「血の連判状」「スペースレンジャー・ゴーファイブ」「修学旅行」「薄暗い穴の底から」「南国ピクシー」「南国番長」を収録。
収録作品の中では、「探偵綺譚」が現在やってる「それでも町は廻っている」のプロトタイプな作品。主役も嵐山歩鳥で、今ほどこなれてはいないもののしょうもない味わいのある作品にはなっている。あとは、少女と木製からくり人形である祖父の物語である「カラクリ」あたりが個人的には好きかな。基本は読切ギャグもので、なかなか才気ばしった作品をいろいろ描いている。まあ正直、才気が先行しちゃって滑り気味の作品もあるにはあるけれど、どの作品も着想はユニークで、作者のポテンシャルは感じさせてくれる。
【単行本】「空想科学X」1巻 saxyun メディアワークス A5 [bk1][Amzn]
ヘンで役に立たないものばかり作る博士と、その助手の女の子・コトちゃんのコント形式で続いていく4コマ漫画。爆笑するって感じではないけど、トボけた味わいはあってじんわり面白いといった感じ。まあ何よりsaxyunのきっちりまとまりのいいかわいい絵柄が魅力。この作品の良さの大きな部分はそこにある。
【単行本】「吉田戦車の漫かき道」 吉田戦車 エンターブレイン A5 [bk1][Amzn]
吉田戦車がさまざまなところで描き、これまで単行本未収録だったこまごました作品を集めた単行本。コミックビーム掲載の「宇宙巨人アムンゼン」から、パロディ系作品、Tシャツのイラストなどなど、掲載されている作品はとても多彩。自分は「一番好きな漫画家は誰か」といわれたら「吉田」と答えるくらい、吉田戦車作品が好きなので、こうやって今まで読めてなかった作品をこまごま入れてくれたのはすんごくうれしい。また、一つ一つの作品が独特のとぼけた味があって、読んでいて楽しい。文字ページでの語りも、飄々としているけどどっしり落ち着いてもいる吉田文体が素晴らしいし。やっぱりしみじみ好きだなあ。
【単行本】「GIRL FRIENDS −ガールフレンズ−」1巻 森永みるく 双葉社 B6 [bk1][Amzn]
なかなかええ感じで百合百合した作品。本好きな真面目少女・まりは、地味な性格もあってクラスではあまり目立たず、友達も少なかった。しかし、オシャレ好きで快活な女の子・あっこが声をかけてきたのをきっかけに彼女と友達になる。あっこは、オシャレや遊びなど、それまでまりが知らなかった楽しいことをいろいろ教えてくれて、まりもだんだん彼女のことが大好きになっていく。
森永みるくの絵柄は甘くてかわいらしく、女の子たちがわきわき賑やかにお話とかしている様子は、見ていてたいへん華やか。プリクラ交換したり、一緒に買い物行ったり、ファーストフード店でダベったりといった模様がいかにも微笑ましい。でもそんな楽しさの中に、切なさも織り込んでいってるのが良いです。
まりはどんどんあっこへの依存心を高め、それはやがて恋愛感情的なものにまで高まっていく。しかしあっこのほうの気持ちは、まりのほうからはちょっとはかり難く、そのギャップにまりは思い悩む。その乙女心が甘く切なく描かれているのがいい具合。今後、あっこのほうもまりと同じ気持ちになるのか、それともあくまで友達として接し続けるのか。先が気になるところです。
【単行本】「はるいちばん」 萩尾ノブト 白泉社 B6 [bk1][Amzn]
主人公・一実は、医大に合格して上京し、遠い親戚の家に居候することに。そこで美人4姉妹と一緒に暮らすことになるのだが、姉妹はそれぞれ未来のお医者さんである一実に、亡父の残した病院を継がせようと過剰なサービスをしてくる。ていうかまあ、キスやらフェラやら手コキやら本番やら……という感じ。そんなうれしすぎる状況に主人公が流されていく様子を面白おかしく描いたコメディ。
同じく萩尾ノブトの「ユリア100式」は、本番はしないでずっと寸止めだが、この作品ではちゃんと出すとこまで行く。その分、「ユリア100式」のほうがギャグ度は高く、「はるいちばん」のほうがエロ漫画っぽさは強いかなという印象。まあでもカラッと明るいコミカルな作風自体は良作で共通しており、エロたっぷりのハーレムコメディとして、こっちも楽しく読める。女の子も4人いて毎回華やかだし。
▼エロ漫画
【単行本】「みさお MY LOVE」 おりもとみまな コアマガジン A5 [Amzn]
最近この人すごく面白いなーと思います。とにかくオバカ系のエロ漫画がどんどんノリノリになってきた。この単行本には「みさおMY LOVE」シリーズ4本と、「ふたちゅ♥」シリーズ4本、「牧場の朝」「沖縄物語」が収録されているんだけど、「みさお MY LOVE」と「ふたちゅ♥」シリーズがとくに素晴らしい。
「みさお MY LOVE」は、病気の治療のため薬を飲んでいるんだけど、その副作用でエロエロになってしまう少女・みさおをめぐるドタバタギャグ。彼女の性欲を鎮めるため、体力の衰えた父親が、町内No.1のロリコンである主人公の元にみさおを送り込むところからお話はスタート。その後の展開はエロをむちゃくちゃ濃厚にやりつつ、どんどんバカ方面にエスカレート。とくに最終話は、事故の衝撃でロリコンでなくなった主人公のロリ心を蘇らせるため、みさおに片思いしている少年が女装して彼に迫り、あまつさえフェラチオまで敢行るというぶっ飛んだ展開を見せており、かなりインパクトがある。
あと「ふたちゅ♥」シリーズもイイ。ふたなり少女が主人公なんだけど、最初は友達にいいようにいじられてよがってるだけだった彼女が、バイクのタンクに装着したオナホールなどの経験を経て、変態さんとして成長していく様子が面白い。とくに、射精距離を競う「オチンピック」とかいうものを妄想しながら、絶叫実況オナニーするシーンとか最高。
ちなみにエロのほうもけっこう良い。目がとてもキラキラしたキャラは、お肌のほうもつやつやぷりぷり。それが盛大に体液を振りまきつつ、我を忘れてすごい勢いでエッチに耽る様子は、ビジュアル的にはすごく派手で見映えがする。とはいえギャグが強い作品の常として、そっちに気をとられて実用性が落ちてしまいがちなことろはあるけれども……。まあ何はともあれ、エネルギッシュで笑えるのでオススメ。
【単行本】「パノラマ」 みかん(R) コアマガジン A5 [Amzn]
独特の細い線で、少女たちを艶めかしく描くみかん(R)。やはりこの人の作品は独自の味があって、読むと「すごいな」と思わされるものがある。基本的には少女系ロリ(幼女ではない、という意味)がメインだが、リアルではないけど生々しさのある線、そしてそこから醸し出されるエロスは濃密。女の子たちはパッと見「すごい美少女」って感じではなく、そこらへんにいるかもというレベルの子が多い。そんな素材のかわいさやエロさを浮き彫りにしていく作風は、最近ではとくに珍しい。
お話についてはどれも少女の葛藤が細やかに描かれていて、どれも読みごたえがある。以前はかなり苦いものが多かったけど、最近は恋愛の甘みを描いたものも増えてきつつある。どこか切なげな味は含まれるものの、例えば「ないしょのひみつ」や「萌芽のしらべ」の締めはラブラブだったりする。まあ全般に苦めな作品が多いのは確かだけど、以前ほど激苦ってわけでもないので、間口は少しだけ拡がったのでは。
とはいえ、男の前髪が直線だったり、70年代調の髪型してたりするうっとうしいキャラが多い点は変わらないけど、そこは作者のこだわりの部分なんでしょう。あと「ひとりごと」なんかは女の子の目がいつもと違ってコミカルなタッチだけど、その分、男キャラのほうが今どきYMOの面々だったりして、独特なセンスの遊びもやっている。時代の要請とすり合わせつつも、自身のこだわりもなんとか残そうとする作者の葛藤みたいなものも感じさせる。
こういう生な匂いを感じさせるエロスを描く人は貴重な存在。作品の発表ぺースはけして早いほうではないし、活動範囲も限られてしまうだろうけど、今後もコンスタントに作品を発表し続けていっていただきたい。
【単行本】「となりのおんなのこ」 馴染しん コアマガジン A5 [Amzn]
こんなものまで出してくるとは……という初単行本。古くは1997年、一番新しいのでも2004年とようやくのお蔵出しとなった。しかし古いとはいえ、その絵は今見ても十分にキュート。独特の柔らかいタッチの絵柄はやはりかわい。鼻を描くのを省略し、柔らかくもすっきりスタイリッシュな画風だが、独自の艶めかしさも漂わせていて、なんとも良い雰囲気。
まあ作品が描かれた当時は、まだ局部の描き込みとかをゴリゴリやる時代でもなかったので、そこらへんが実用性に直結しちゃう人にとっては物足りない部分もあるかもしれない。ただ実用性目当てで読むタイプの作品でもないと思うし、キュートなロリ娘たちを愛でたい人はやはり読んでみてほしい。ほんのりした甘さ、切なさのあるお話作りは、今読んでも新鮮なものがあるし。
【単行本】「お乳屋本舗」 八十八良 ワニマガジン社 A5 [Amzn]
最近快楽天とかBEASTとかで活躍するようになった八十八良の初単行本。初めてなんだけどかなり達者です。ペンタッチが確かだし、肉体描写もボリューム感があってけっこうエロっちく、実用面も十分。キャラ造形も独自の味はある。個人的にはなだらかなラインを描く鼻のラインと、色気のあるまなざしが印象的。
お話面でもきっちりまとまったものを描いてくる。そして幅もある。「また×また」は猫又娘がヒロインのドタバタコメディ、「しんくろないず」は双子兄弟×双子姉妹の二重奏エロス、「メランコリック・デイ」ではセンチメンタルな恋愛ストーリーを展開し、「北川さんの事情」「超能力部隊Z −覚醒編−」ではぶっとびギャグも見せる。そして「TEENS×TEARS」はビターな陵辱展開もあり。ギャグ、ラブコメ、陵辱とこなし、基本的に巨乳系なんでロリこそないものの学生、人妻、妹系などヒロインも多彩。芸達者な描き手だと思う。とはいえ、やっぱり目立つのはタイトルにもあるとおり乳かなー。ぶるんぶるん重たげに揺れてて、巨乳好きにはたまらない。
お話的には「メランコリック・デイ」が個人的には良かった。幼なじみの男の子と姉妹のお話で、男の子は妹のほうとつき合うことになるが、本当に好き合っているのは姉のほう。そんな二人を見つめる姉の心うちを中心に描いた物語は、切ないムードが漂っていて印象に残る。まあカラッと明るくエッチな作品についても良く出来てますけどね。
【単行本】「いもうとD.S.」 綾乃れな マックス A5 [Amzn]
ふよふよ柔らかそうなお肉の描写が印象的な綾乃れなの新刊。「ナヨっちい美少年を年上のおねえさんが搾り取る」って感じの作品のイメージが強い人だけど、タイトルどおりいもうとモノもわりとちょくちょく描いてくる。でもまあ基本的なテイスト自体は姉モノとあんまり変わらないかな。描線自体はシンプルだけ、すごくぷりぷり柔らかそうな質感のある肉体を使ったエッチシーンは、ソフトな感じでありながらもけっこうエロい。お話も基本的にラブラブで甘ったるいので、安心して読めます。
【単行本】「奥さまは生徒会長」 中田ゆみ 実業之日本社 B6 [bk1][Amzn]
生徒会長と副会長のラブラブエッチストーリー。毅然とした態度と有能な仕事っぷり、生徒間の恋愛・セックスも解禁するフランクさ、そしてカワイイ容姿で生徒たちの信頼を一身に集める有能生徒会長・若菜羽衣。副会長の和泉隼斗は突っ走りがちな彼女をいつもサポートしていたのだが、ある日突然、羽衣が隼斗の家に押しかけ女房としてやってきて、二人のラブラブライフが始まっていく。
てなわけで、かわいい生徒会長さんとちょっとぶきっちょな副会長の甘ったるい同棲生活が描かれていくのがこの作品。学校では凜としてるけど、基本的にはちんまりした感じの生徒会長がとにかくキュート。彼女が副会長と二人きりになるとメロメロと甘えてくる様子がなんともかわいらしい。エッチシーンもとにかく甘ったるい。そのアツアツぶり、バカップルさ加減がとても楽しい。作者コメントによると「1本丸々ラブラブものって初めて描いた」とのことだけど、そういわれてみればそうでしたっけか。絵柄的にも最近とみに丸っこさが増して、よりかわいくなってると思います。
【単行本】「苺の花嫁」 水島空彦 少年画報社 B6 [bk1][Amzn]
会社内の秘密倶楽部「クラブストロベリー」によって肉奴隷とされ、すべてのことを諦めるようになっていたOL・古賀さんが、そのことを知らず彼女に恋した新入社員・西田くんによって、再び微笑みを取り戻すまでを描いた物語。まあ正直なところ、「そんなクラブがあるなんてどんな会社だよ」とか思ったりしないでもないけれど、お話としてはかなりエロチックで読ませる。
古賀さんはかなりグラマラスな美人さんで、西田の向ける好意にじょじょに心を開いていくのだが、その間もクラブストロベリーの面々は彼女を何かにつけて犯す。その過程は寝取られ感(正確には違うんだけど)がバリバリあって、その手のネタが好きな人にはかなりグッとくる。心は西田に向かいながら、調教済みな身体は男たちの行為に応えてしまう。そんな様子がエロっちいのですな。古賀さんのデッカくて柔らかそうなおっぱいもなかなかにおいしそうでエロ心をくすぐる。あとお話としてきっちりラブラブで終わってくれる点にはホッとさせられます。、
【単行本】「いとしのみゆ先生」 いーむす・アキ ワニマガジン社 A5 [Amzn]
つやつやつるつるした肌の質感が特徴的な女体を駆使した、華やかなエロを描くいーむす・アキの初単行本。てか正直これが初って感じはあんまりしないですね。
お話のほうは、学生である主人公と、ちびっこ女教師の甘〜いラブラブストーリー。大人なのに146cmとちびっちゃくて幼児体型、たいへんかわいいルックスで学校中の人気を集める人気者・みゆ先生は、実は主人公である男子生徒・まことの幼なじみであり恋人なのだ……という設定。この二人が日々エッチを重ねて、愛を紡いでいくというのが大筋。
みゆ先生はロリフェイスで微乳なので、基本的にはロリ風味。エロシーンは汁気たっぷりで激しくやっててけっこうエロい。また巨乳キャラとのエッチもあり。みゆ先生の妹・なおは、この作品の中では目立つ巨乳キャラ。みゆ先生同様まことのことを好いていたが、フラれる形となったなおは自暴自棄となり、行きずりの男たちに身を任せる。このあたりはおおむね甘いラブラブエッチがベースのお話の中では、ちょっと浮いてる感じがなきにしもあらずだが、描写そのものの実用度では、このあたりの複数人プレイのあたりが寝取られっぽさもあり一番グッときた。
まあそんなことはありつつも、ラストはめでたしめでたしでラブラブに締めくくる。華やか鮮やか、たいへん安定してるし、エロ度も萌え度も十分で、しっかりうまいです。