SABE

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■作家名:SABE(さべ)
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▼更新情報
2003/05/02……「阿佐谷腐れ酢学園

 SABE作品の魅力は、なんといってもキャラクターのブチ切れっぷりにある。血走った目、思いもよらぬ行動および言動。何をしでかすかまったく分からない意外性で、常に読む者を驚かせてくれる。それでいて、作品全体としてはある意味ほのぼのとしている。いろいろ読者をぶん回し、最後には気持ち良くスポーンと放り投げてくれる。「地獄組の女」なんかはその醍醐味を、思う存分に味わえる作品となっている。自暴自棄な感じでもあり、不思議とバランスがとれているようでもあり。本当になんというか、ちょっとほかにはいないタイプの珍しい才能だ。


「地獄組の女」 全4巻(各巻990円) 久保書店 

1巻
1巻
ISBN4-7659-0561-6 C0979
[bk1][Amzn]
2巻
2巻
ISBN4-7659-0562-4 C0979
[bk1][Amzn]
3巻
3巻
ISBN4-7659-0563-2 C0979
[bk1][Amzn]
4巻
4巻
ISBN4-7659-0564-0 C0979
[bk1][Amzn]
 ワニマガジン・ヤングヒップにて長期連載された「地獄組の女」が、ついに単行本化された。連載時は「いずれ単行本になるだろう」という安心感から、けっこう飛ばし飛ばしに読んでいたのだが、その後いつまで経っても単行本化されず、ちゃんと読んでなかったことを悔やんだりもした。連載終了からかなり間が開いていただけにもうスッカリ諦めていたのだが、2000年になって一挙4冊。で、まとめて読むとこれがもうやたら面白い。これがずーっと眠ったままになっていたかと思うと、ついワニマガジンに恨み言の一つも垂れたくなるというもの。そして久保書店にはお礼の一つもいいたくなるというもの。

 さて物語のほうだが、舞台は1990年台後半の日本。世界制服を企む天国組と悪の結社である地獄組の闘いの歴史というかまあそんな感じのお話。それまで遊び人ではあったけどおおむね平凡な女子だった星野まよみが、物語のメインとしてお話は進行。彼女は地獄組にさらわれ、肉体を改造され、怪人バニー女として生きていくことになる。んでもって、その後急激に荒んでいったバニー女はセックスと殺戮のみを生きがいとするおそろしく即物的な怪人となり、いろいろ暴れまくる。そりゃもう徹底的に。それにこれまた怪人のブタ女様や天国組の刺客ピコット様やらがからんできてすったもんだ。さらに、バニー女は大天使ミカちゃんにさんざんに負けた後、今度は女子高生スパイ宇野もえみに改造されたりして、そこに超能力少年やら何やらがからんできて……という具合。

 この作品の面白さは何かといわれると、やっぱり物語展開にあるんだろう。バニー女を筆頭として、キャラクターの思考の煮詰まりっぷり、キレた表情、投げ遣りな行動などなどももちろん面白いのだが、そういうものを折り込みながらなんかいろいろ紆余曲折、七転八倒、その他もろもろ恐ろしいほどにゴロゴロと転げ回る物語に圧倒されてしまう。しかも物語の進みっぷりは、実に面倒くさそうだ。

 SABEキャラ特有のブチ切れた刹那的な思考がその中で、止める者もいないままにうろうろと徘徊し続け、何がなんだか、もうどうでもいい境地へと読者を導いていく。おそらくそのときどきの短期的なビジョンのみに従って描き進められていったのであろう物語は、抜群なテキトー感と投げ遣り感が漂っていて、得もいわれぬテイストを醸し出している。それが40話も続いちゃって、最後のほうなんか実にたまらんものとなっている。なんていうか地図を持たずに酔っ払い運転で日本一周しちゃったみたいな感じ。あらぬ方向に行っているようで、意外とお話としてはバランスが奇跡的にとれてしまっているようにさえ思えてしまうところが不思議だ。

 それにしてもこのお話は読んでいて、すごく気持ちがいい。バニー女たちのどうしようもなくノーフューチャーな割り切りっぷりとか。ラストの放り投げっぷりとかもあれまーって感じでやたらと痛快。40話の間、読んでいるほうは先の予測なんざ全然つかず、ただただぶん回され続けるのみ。スゲエっすよ、まったく。


「阿佐谷腐れ酢学園」 ワニマガジン A5 [bk1][Amzn]

「阿佐谷腐れ酢学園」 出版社:ワニマガジン
シリーズ:ワニマガジンコミックススペシャル
初版発行:2003/05/01
ISBN:ISBN4-89829-481-2 C0979
価格:本体857円+税
判型:A5

 精神鑑定で「終わってる」と出た者だけが入学できる学校「阿佐谷腐れ酢学園」! そこに集まった終わった生徒たちが繰り広げる、どうしようもない日常を描いてくアブノーマル学園モノ。登場人物はヤクザの娘のブルマちゃん、その影武者としてヒットマンに狙われるブルマちゃんの盾として入学させられた日陰ちゃん、ウンコもりもりしまくりなウンコ太郎、校内に大量に生息しているペンギンを虐殺しまくっているペンギン虐待女……と、出てくるキャラは当然ヘンなのばっかり。

 いちおう主役はブルマちゃんと書いてあるのだが、彼女にコンプレックスを抱きつつ愛さずにはいられない日陰ちゃんが物語の中心人物といっていい。ブルマちゃんにイジメられたり、彼女に対する征服欲に目覚めたり、アナルの快感に酔いしれたりと日陰ちゃんの人生は波瀾万丈。でも全体としてはまったりしているような気もする。そのほかのキャラではブルマを愛し、いつもフード付きの服を着込んでおり変態的な趣向の持ち主でもあるフード女もいい味を出している。閉じた世界の中で怪しい奴らが怪しいなりに、平和に蠢いている。そんな様子を見てニヤリとしたり脱力したり爆笑したりする作品。下らなくて大好き。
(2003/04/12)


「串やきP」 メディアファクトリー A5

「串やきP」  コミックフラッパー(メディアファクトリー)掲載作品。

 新たな安住の地を求めて、家族の待つ北極を離れ、海へ出ようとしたオオウミガラス。だが海は甘くなく、シャチに追われた彼は、ほうほうのていで日本のどことも知れぬ岸辺に流れ着く。その後、アワビ密猟帰りのあやしい人間の女に囚われたオオウミガラスは、羽の部分にペンギンの剥製の羽を装着され、「変なペンギン」として生きていけといわれる。オオウミガラスとしてのアイデンティティを失い、家族のもとへは帰れない。失意の彼は、やがて動物好きな兄妹に拾われ、「串P」という名前をつけられペンギンとして暮らしていくようになる……。

 とか書いちゃうとタダのかわいそうなペンギンの話みたいなんだけどね。これがまたやっぱりフツーのお話に終わらるわきゃないのがSABEってもんで。オオウミガラスとして生きることができなくなった串Pは、生きていくうえでの目標を失い、ただ闘うことのみに生きがいを見出す者へと変貌していく。んでもって、付近のペットたちを植えつけられた羽で斬殺する、破壊者となっていくのだ。デパートの屋上のオーストラリア展で日本に連れられてきたカンガルーとの息を飲む凄絶なバトル。なんとまあ、これがどうやら動物格闘モノとして進んでいってしまうのだ。

 この作品において特筆すべきは串Pの目。いかにもペンギンでございといったかわいらしさはなく、光を失い常に血を求めてギョロギョロしている。ペットのくせにこれだけテンパッてるっていうのはかなりな迫力だ。それから最初に出てきた密猟女。これもかなり動物に対して歪んだ感情を抱いているようで、串Pが戦闘マシンとして目覚めていくのをうれしそうに見つめる目つきはかなりヤバい。ちなみに串Pの飼い主である兄妹もそれぞれにヘンで、とくに兄のテンションの高さはかなり異様である。

 これ書いている時点ではまだ1巻段階なのだが、これからどんなふうに串Pは闘っていくのか、そして異様な世界を見せてくれるのか。とても楽しみである。

……とかいってたら、メディアファクトリーがいつまで経っても3巻を出してくれません。どこか出してください。

ISBN初版年月日価格購入
1ISBN4-88991-767-5 C99792000/12/01762円+税[bk1][Amzn]
2ISBN4-88991-799-3 C99792001/09/30762円+税[bk1][Amzn]


「BEAUTIFUL MONEY」 全1巻 ワニマガジン B6 [Amzn]

「BEAUTIFUL MONEY」表紙 シリーズ:ワニマガジン・コミックス357
初版発行:1998/08/01
ISBN:ISBN4-89829-357-3 C9979
価格:800円(本体762円。1998年08月現在)

 4コマ漫画を中心とする作品集。一編ごとのページ数が少ないため、「若尻傑作選」掲載作品ほどの、破壊力ある作品はないものの、ひねくれたギャグは健在。目が血走ってて底意地の悪いキャラクターたち、アナーキーな展開、ツボをつくギャグはヒット率高し。
 俺としては、フード(食い物ではなくかぶるほう)に異様な愛着を持ち、フードを愛し、フードに生きる「フード女」のシリーズがかなり好き。あと表紙カバーをめくると如実に分かる、徹底的なペンギン虐待ぶりもかっちょいいぞ。3ページの掌編ではあるが「アウトドアへの道」はかなりナイス。「アウトドアー!」と叫びながら、人間をやめてアウトドア生活を送る人間の集団がスゲえパワフルで狂っててステキだ。
 柱にW社社長の「売れない単行本は出さない」とのお言葉があるが、この単行本が売れれば「地獄組の女」とか単行本未収録の短編なんかが入った単行本も出るやもしれぬ(注:後に「地獄組の女」も単行本化された)。そんなわけでみんな買え買え。

▼収録
 「ふとんの王国」
 「ビューティフルマネー」


「BLOOMER 1999」 全1巻 ワニマガジン [bk1][Amzn]

「BLOOMER 1999」 出版社:ワニマガジン
シリーズ:ワニマガジンコミックススペシャル
初版発行:1999/10/01
ISBN:ISBN4-89829-457-X C0979
価格:本体857円+税
判型:A5

 ワニマガジンからは2冊めの単行本。「ブルマー1999」「ブリード」「ブルマー2001」「みんなのおにいさん」「玉突き女」は近年の作品で、残りはけっこう前のもの。というわけで絵柄もけっこう違う。

 この作品集で一番うれしかったのは、「スキーに行ったらね」が収録されたこと。不気味にひねくれた感じの男が運転手を務めるバスでスキー宿に向かった女の子。スキーと温泉と、地酒とフィリピンダンサー目当てだった彼女は、その宿でアヤシイ体験をする。布団ひきの女性はフィリピンからやってきたニホンジンカワダの現地妻。さらに客一人に対して一人付けられる外国人労働者。温泉に出没して女性を犯す虫のような姿のアメリカ人。実はSABEの作品を俺が初めて意識したのはこのあたりで、繰り広げられるあまりに異様な世界に圧倒された覚えがあった。今読み返してみてもかなりキレた作品である。

 近作もなかなかいい出来のものが揃っている。印象に残った作品を軽く紹介していこう。

 まずは表題作でもある「ブルマー1999」と「ブルマー2001」。ジャッキー・チェン、ブルース・リー似の兄弟の物語。舞台は1999年7月に壊滅的打撃を受けた地球。ブルース・リー似の兄は、女の子が全員ブルマーを着用した理想郷を日本に作り上げるべく奮闘し、いつしか「ら王」と呼ばれる支配者になっていた。兄弟ともにブルマー好きでありながら、兄はブルマーを来た女の子とヤるのが好きで、弟はブルマーを着てとんだり跳ねたりしている自然な姿の娘たちを愛する。このブルマーに異様な情熱を燃やしながら、主義の面でイマイチ噛み合わない兄弟の姿を、どうしようもなく下らないノリで描き出す。たいへんに馬鹿馬鹿しくて笑える。

「ブリード」はSABEには珍しく、シリアスな物語。将来に対する不安が遺伝にまで作用し、性的に不完全な人間しか産まれなくなった時代。この時代の人間は、成人になっても少年少女のようなやせっぽちな姿のまま。そんな中、一組のカップルが子供を作ろうと決心するが、その交配作業は男を完全に廃人化してしまうようなものであった。子供を作ることによって自分の生きる意味を確かめようとしたがために衰えていった彼の姿は、哀しくそしてどこか安らかでもある。作品の後味は寂寥感に満ちつつも、希望もわずかだけ残される。SABEはギャグだけでなく、こういう心に染みるセンシティブな作品も描くのだなあと感心した一作。

 SABEにしてはだいぶSEXシーンが多くエロチックな「みんなのお兄さん」や、そのほかの作品もキレたギャグが安心して読めるレベルで作用していて面白い。SABEファンだけでなく買って損のない一冊。

▼収録作品
「ブルマー1999」
「ブリード」
「ブルマー2001」
「みんなのお兄さん」
「玉突き女」
「田舎の体育祭」
「スキーに行ったらね」
「みんなのアイドルまゆ子ちゃん」
「カミソリの玲」
「寒い夏」


若尻傑作選(上) 「君にやりたいほうだい」 全1巻 久保書店 [Amzn]

「キミにやりたいほうだい」表紙 シリーズ:ワールドコミックススペシャル
初版発行:1996/06/25
ISBN:ISBN4-7659-0471-7 C0979
価格:860円(1996年6月現在)
判型:A5
印刷:モノクロのみ

 ここらへんからがSABEの本領発揮、というか俺が読みたかったあたり。この「キミにやりたいほうだい」と「友達のいもうと」は、「若尻傑作選」というタイトルから分かるかもしれないが、ヤングヒップに掲載された作品を集めた短編集だ。どの作品もSABEならではの独特の視点から見たひねくれた作品群。登場人物(とくに主役)の目がイっちゃってて、実にいい。
 イカれまくった作品ばかりで、すんげえ面白いのだ。

 で、上巻の「キミにやりたいほうだい」で、俺が一番好きなのはなんといっても「裏切りの七子」。人を裏切ることに至上の快楽を見いだす女、七子がその欲望を充たすため、いったん親友を作っておいてさんざん友情を深めた後、一気に裏切るというストーリー。効果的に人を裏切るためならどんなこともいとわないという、そのねじくれた負のエネルギー、そして七子の血走った眼。すごく面白い。
 「養子になりたい」も病んでいてステキな作品だ。ほかほか弁当屋のおばさんに、なぜか惹かれていく大学生。ちゃんとした同年齢の彼女がいるにもかかわらず。その愛が次第次第に募っていき、おばさんに愛の告白をする。「おかーさんになってくれませんか」と……。
 「すばらしき土建の男」も笑える。肉体労働者として土建業に従事する彼とその彼女が、死ぬほどセックスしまくるという話。夕方から朝まで10回も20回もぶっ通しでやるというパワフルなお話。

 「若尻傑作選」に収められた短編は、どれも短いながら、その中に異常で過剰な世界がみっちりと詰め込まれている。たった16ページ程度で読者を圧倒し去る、鮮やかな筋立て、描写、演出にはなみなみならぬものを感じる。

▼収録 ……( )内初出
「ときめきのレズビアンスター」(ヤングヒップ92年1月号)
「君にやりたいほうだい」(ヤングヒップ92年12月号)
「ビデオを撮って売りに行こう」(ヤングヒップ94年3月号)
「新・九州紀行」(ヤングヒップ93年2月号)
「すばらしき土建の男」(ヤングヒップ92年5月号)
「大家の娘ですが……」(ヤングヒップ93年9月号)
「裏切りの七子」(ヤングヒップ94年1月号)
「養子になりたい」(ヤングヒップ93年10月号)
「永遠の命」(ヤングヒップ93年5月号)
「楽しい金持ち一家」(ヤングヒップ91年1月号)

若尻傑作選(下) 「友達のいもうと」 全1巻 久保書店 [Amzn]

「友達のいもうと」表紙 シリーズ:ワールドコミックススペシャル
初版発行:1996/07/25
ISBN:ISBN4-7659-0475-X C0979
価格:860円(1996年6月現在)
判型:A5

 「友達のいもうと」で俺が一番気に入ってるのは、表題作の「友達のいもうと」。「友達の妹」という存在がすごく好きな男の物語。ここでいう「友達の妹」というのは、具体的な人間を指すのではなく、「友達」というポジションにある人間の「妹」というキャラクターを指す。要するに「友達の妹」で(なおかつかわいく)ありさえすれば、なんでもいいのだ。「姉」だとダメなのである。
 このどうしようもないこだわりのため、わざわざ友人を作り、その妹にいい印象を持たれるようイメージ作りもする。「君にやりたいほうだい」収録の「裏切りの七子」もそうだが、ちょっと常軌を逸した目標のために周到に準備を行う、並々ならぬ努力がねじくれてていいのだ。

 また、「どチャリマー」も面白い。財産を一切持たず、チャリに乗ってさまよい、女をコマしてねぐらおよび食料、金などを得る、プロの自転車コマシ屋チャリダーの物語。主人公のチャリダーからして、いい女を見かけると「いいケツだあッ。スパンキングしたのちにアリの門渡りをいじりたおしてやりたいぜえ!!」と叫ぶ、そのアナーキーな展開がたまらない。

 そのほかの作品も皆秀作揃い。すごく面白いので「若尻傑作選」は買いだ。

▼収録 ……( )内初出
「アベックと老人と海」(ヤングヒップ92年9月号)
「春なんです」(ヤングヒップ93年4月号)
「宇宙から降りてきた男」(ヤングヒップ93年11月号)
「あしたのドラゴン」(ヤングヒップ93年12月号)
「友達のいもうと」(ヤングヒップ93年1月号)
「どチャリマー」(ヤングヒップ93年7月号)
「幽霊とわたし」(ヤングヒップ93年8月号)
「アタッチメントでGO!!」(ヤングヒップ92年7月号)
「ぼくらの老後はハッピー」(ヤングヒップ93年6月号)


「あばよMY♥BABYぶっちぎり」 全1巻 久保書店 [eS!BOOKS]

「あばよMY BABYぶっちぎり」 シリーズ:ワールドコミックススペシャル
初版発行:1993/08/15
ISBN:ISBN4-7659-0383-4 C0079
価格:876円(1989年07月現在)
判型:A5

 この単行本に収録されている「SABE様のアリガタイ御言葉」において、「キミがいるからボクがいる」のことを初単行本といっているが、実際は「天使たちの午後II」が初である。きっと「天使たちの午後II」は忘れたい過去なのだろう。
 「キミがいるからボクがいる」のところでも書いたが、この本の半分くらいは再録である。内容の異同についてはそっちのページを参照のこと。

 まずは再録作品から。とくに面白いのは「いやらしい上司キャプテン内堀 マイナス30度への挑戦」。タイトルからしてヘンな作品であることはうかがいしれるだろう。レストランのウエイトレスが、いやらしい上司であるところのキャプテン内堀によってマイナス30度の冷凍庫に閉じ込められて、いやらしいことをされそうになるのだが、そこに現れたのがゲイのウォッシャー・ガジ。ちんちん丸出しの内堀に興奮したガジは、内堀に襲いかかる。というもの。とくにラストの1ページはすごい破壊力あり。そのほか「ブルマの男 一八くん」「言語道断!!アナルの神 高砂奇平太」もパワフルでいける。
 新たに収録された作品はわりとフツーのエロ漫画。絵は現在のモノにだいぶ近づいている。

▼収録
タイトル初出
エッチなことがしたい91年2月アクションカメラ4月号
抱いてよ先輩90年9月アクションカメラ11月号
SABE様のアリガタイお言葉描き下ろし
悪夢の一夜91年4月アクションカメラ6月号
言語道断!!アナルの神 高砂奇平太88年9月バナナスペシャルNo.1
いやらしい上司キャプテン内堀 マイナス30度への挑戦88年1月同人誌・コミックムニムニ創廃刊号
凌辱鬼89年2月コミックマーマレード Vol.1
ブルマの男一八くん88年2月バナナスペシャルNo.1
ぼくの天使89年10月キミがいるからボクがいる
THE CAPTIVE88年12月秘密の花園Vol.1


「キミがいるからボクがいる」 全1巻 白夜書房 A5 [Amzn]

「キミがいるからボクがいる」表紙 初版発行:1989/12/05
ISBN:ISBN4-89367-162-6 C0079
価格:1030円(1989年12月現在)
判型:A5

 SABE初のオリジナル作品の単行本。後に久保書店から発行される「あばよMY・BABYぶっちぎり」にて、ほとんどの作品が再録されているのでそちらを持っている人は買わなくてもいいだろう。

 「あばよ〜」に再録されなかったのは
・「ねぶり狂四郎・満月殺法」
・「発情期・犬」
・「わがままっこともたかくん」
の3作品。

 逆に「あばよ〜」に収録されていて、こっちに入ってないのは
・「エッチな事がしたい」
・「SABE様のアリガタイ御言葉」
・「抱いてよ先輩」
・「悪夢の一夜」
となっている。

 「あばよ〜」に再録された分についてはそっちで書くとして、ここでは再録されなかった3作について。  「わがままっこともたかくん」は、外見幼児で実は22歳の主人公が起きるなり妻に「おーくーち、おーくーち」といってフェラチオをねだる話。なんかの漫画(たぶん南Q太)でこのシーンのパロディがたしかあった。「ねぶり狂四郎・満月殺法」はねぶり狂四郎と名乗る変人が、「発情期・犬」は犬が、それぞれ女の子をやりまくるという話。「ねぶり〜」のほうがいっちゃってる感じで今のテイストに近い。

▼収録
タイトル初出
ぼくの天使89年10月単行本用描きおろし
言語道断!!アナルの神 高砂奇平太88年9月バナナスペシャルNo.1
わがままっこともたかくん88年2月パンプキンNo.23
ブルマの男一八くん88年2月バナナスペシャルNo.1
THE CAPTIVE88年12月秘密の花園Vol.1
凌辱鬼89年2月コミックマーマレード Vol.1
ねぶり狂四郎・満月殺法88年8月同人誌・NARCOTIC・3
発情期・犬88年1月同人誌・ぽん
いやらしい上司キャプテン内堀 マイナス30度への挑戦88年1月同人誌・コミックムニムニ創廃刊号


「初体験白書」 久保書店 [bk1][Amzn:旧版上/旧版下

 アクションカメラなどに掲載された初体験モノの短編を集めた作品集。タイトルはいかにもな感じだが、このあたりから、登場人物の目の光がまともでない、現在のSABEらしい話が増えてくる。もちろん、「初体験白書」というタイトルどおりの普通の初体験モノも収録されている。
 上巻では「美少女と野獣」が面白い。パンチパーマで目が血走ってて極悪非道な先生を慕う女子高生の話。先生の表情が実に素晴らしく、目は血走っててどこ見てるか分からない。能條純一の「哭きの竜」に出てくるチンピラをさらに凶悪にしたみたいな、血管浮きまくりの表情が実にいい。
 下巻では「修羅の夫妻龍(しゅらのめおとりゅう)」が最高。死ぬほどギャンブルが好きな姉が、妹の彼氏でこれまたギャンブル狂の男と意気投合し、結ばれる。そして、「修羅の夫妻龍」として競馬、パチンコなどに耽溺して生きていくという話。この二人のノーフューチャーな、ギャンブルに狂った目の光には尋常ならざるものがある。
 そのほかの作品は、ホラーっぽいもの、ドタバタコメディ、シンプルなラブストーリーなどけっこう多彩。どの話もそれなりに読ませてくるあたり、SABEの実力を感じる。

98/10/24追加情報
 もともとは上下巻で出ていたこの単行本だが、1998年10月発売になった新版では判型ばB6と小さくなり、2冊だったものが1冊にまとめられている。収録タイトルは旧版の16作品に「悪夢の一夜」「抱いてよ先輩」「エッチな事がしたい」の3作品(いずれも「あばよMY BABYぶっちぎり」に収録されている)をプラスしたもの。旧版と「あばよMY BABYぶっちぎり」を持っている人は買う必要はないだろうが、これから入手しようと思っている人は新版のほうが手に入りやすいはずだ。

「初体験白書」新版 ▼新版
シリーズ:ワールドコミックスMAX
初版発行:1998/11/25
ISBN:ISBN4-7659-2322-3 C0979
価格:930円(本体:886円)
判型:B6
印刷:モノクロのみ
収録:旧版収録作品+「悪夢の一夜」「抱いてよ先輩」「エッチな事がしたい」

▼旧版

▽上巻
「初体験白書」上巻 シリーズ:ワールドコミックススペシャル
初版発行:1992/10/10
ISBN:ISBN4-7659-0342-7 C0079
価格:850円(1992年10月現在)
判型:A5
印刷:モノクロのみ
収録作品:
「夢のごほうび」(アクションカメラ90年9月号)
「夏の海の青い思い出」(アクションカメラ90年10月号)
「あきらめるんじゃないよ」(アクションカメラ90年12月号)
「美少女と野獣」(アクションカメラ91年1月号)
「特別な日は大変だ」(アクションカメラ91年2月号)
「この切ない想いを…」(アクションカメラ91年3月号)
「白銀の春」(アクションカメラ91年5月号)
「恋の回転レシーブ」(ヤングヒップ90年5月号)

▽下巻
「初体験白書」下巻 シリーズ:ワールドコミックススペシャル
初版発行:1992/10/10
ISBN:ISBN4-7659-0343-5 C0079
価格:850円(1992年10月現在)
判型:A5
収録:
「エッチな家庭教師」(アクションカメラ91年7月号)
「修羅の夫妻龍」(アクションカメラ91年8月号)
「初めてのとき」(アクションカメラ91年9月号)
「隣がうるさいの」(アクションカメラ91年10月号)
「ふたりで行こう」(アクションカメラ91年11月号)
「こんなのってないわ」(アクションカメラ91年12月号)
「素直になれなくて」(アクションカメラ増刊「女のコ探検隊」第1集)
「不良少女のうた」(アクションカメラ増刊「女のコ探検隊」第2集)


「天使たちの午後II」 全1巻 白夜書房 A5 [Amzn]

初版発行:1989/12/20
ISBN:ISBN4-89367-129-4 C0079
価格:876円(1989年07月現在)

 SABEの初単行本だがはっきりいって駄作。現在のアニメ絵系美少女ゲームのハシリとなった「天使たちの午後」第2作めのコミック化という、いかにもベタベタな仕事でSABEならではのオリジナリティはカケラもない。ゲームの「天使たちの午後II」が好きだった、という人以外は読む必要まったくなし。今となっては手に入れるのは難しいと思うが、探してまで買うことはないだろう。たとえ古本屋で見つけたとしても 、SABEを極めたくてどうしても全単行本を集めたいという人のみ買えばいいんじゃないだろうか。

▼収録
天使たちの午後II−美奈子−土曜日編