吉田戦車

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「戦え!軍人くん」

全2巻 スコラ

 今となってはけっこう懐かしめな感じの作品。このころの吉田戦車は、現在の「分かる人だけ分かればいい」という感じの作品と比べて、わりとギャグがストレート。その分、間口は広い。この単行本では軍人の吉田(表紙に描かれている目のつり上がった男)が一応主人公の戦場モノ(というかなんというか)、「戦え!軍人くん」を中心に4コマやちょっとした短編を集めている。「戦え!軍人くん」では、「いじめてくん」の原型も登場する。現在では新刊書店で手に入れるのは困難だが、古本屋ではわりとよく見かけるので入手はそんなに難しくないと思う。

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第1巻

「軍人くん」1巻
  • シリーズ:SC DELUXE バーバーSC 42
  • 初版発行:89/01/02
  • ISBN:ISBN4-88275-042-2 C0379
  • 価格:740円(1991年1月現在)
  • 判型:B6変形・4色カラー含む

  • 収録
    「戦え!軍人くん」
    「お嬢様とテニス」
    「戦え井森美幸!」
    「はるかなり東京ドーム」
    「永遠のわかめ酒」
    「甘えんじゃねえよ」
第2巻

「軍人くん」2巻
  • シリーズ:SC DELUXE バーガーSC 84
  • 初版発行:90/02/16
  • ISBN:ISBN4-7961-4028-4 C0379
  • 価格:740円(1991年5月現在)
  • 判型:B6変形・4色カラー含む

  • 収録
    「戦え!軍人くん」
    「戦火の恋人」
    「戦え!学生さん」
    「甘えんじゃねえよ」


「甘えんじゃねぇよ!」

「甘えんじゃねぇよ!」 全1巻 スコラ

 「戦え!軍人くん」に収録されていた4コマ漫画「甘えんじゃねぇよ!」を抜粋したもの。「甘えんじゃねぇよ!」の中心となるキャラクターはみっちゃんという少女とそのおかあさんである「みっちゃんのママ」、そしてその家族だ。最初のうちはみっちゃん家族が連載内で占める割合はそんなに高くなかった(せいぜい1回につき4コマ1本分)のだが、だんだん占有率が高くなり、最後はすっかり主役の座を奪っていた。
 とくにみっちゃんのママは、吉田戦車的「無敵のヒロイン」であり、彼は以後、これ以上に無敵なキャラクターを描けていないと自ら語っている。ウソをつくのが死ぬほど好きで、娘であるみっちゃんをだますためなら金に糸目はつけない超のつくひねくれ者がみっちゃんのママだ。そのウソをつくことへの異常なまでのこだわりが実に面白いのである。
 基本的には「戦え!軍人くん」収録分と同じだが、「軍人くん」に未収録だった作品もちょっとだけ(「いんけいさん」の話とか)収録されていたりするので、ファンの人は買わなくちゃならないところがくやしい。

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「いじめてくん」

「いじめてくん」 全1巻 スコラ

「戦え!軍人くん」で登場した、「ついいじめたくなってしまう容姿をしており、イジメがある一点に達すると爆発する爆弾」である、「いじめてくん」が主人公。最初のころはいじめてくんは「人にいじめられて」爆発を繰り返していたが、回を経るに従って爆発することも少なくなり、いじめられても爆発を我慢したりと、人間的(爆弾的?)成長を遂げていく。笑い転げるというよりも、しみじみと読むタイプ。
 この単行本でお勧めはなんといっても「鉄の村松」。子供ができないので、鉄でできたロボットである「村松」を子供代わりにして一緒に暮らしていた婦人に、ついに念願の子供ができる。子供と村松の両方を養うほどの財力がない彼女は、いじめてくんに村松破壊を依頼する。それまで村松は、危ないからという理由でいじめてくんと遊ぶのを止められていたが、その日は「遊んでもいい」という許可が出る。いじめてくんの「いじめを呼ぶ雰囲気」に誘われて、彼をいじめてしまう村松。爆発の臨界点までなかなか達しないいじめてくんは、村松を馬鹿にして挑発するような歌を歌う。爆発に巻き込まれて壊れた村松を見て泣くいじめてくんの姿を見ていると、こちらも泣けてくる。しんみりとしたいい話である。

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