公開質問状
2004年12月9日

〒561−8585
豊中市服部寿町5−92−1
  日刊スポーツ新聞社大阪本社
日刊スポーツ編集部 御中

〒530−0056
大阪市北区兎我野町5−12 梅田グリーンビル
大谷昭宏事務所内
大 谷 昭 宏 様

東京都千代田区麹町4丁目7番地8
地引第2ビル407号
リンク総合法律事務所気付
NGO-AMI
TEL 03-3515-6681
FAX 03-3515-6681

NGO-AMI代表理事 兼光ダニエル真 (翻訳家)
同         理事 はやぶさ真吾   (漫画家)
同         理事 鎌 倉 圭 悟    (マンガ家)
同         理事 一 敷 錦      (構成作家)
同         理事 山 田 一 人    (マンガ家)
同         理事 山 口 貴 士    (弁護士)※
同         理事 要 友 紀 子    (大学非常勤講師)
同         理事 八 的 暁      (マンガ家)

上記NGO-AMI及び各理事(山口本人を除く)を代理して

弁護士 山 口 貴 士

※ 電話連絡などは担当理事/山口貴士宛でお願いいたします。


大谷昭宏様

「大谷昭宏フラッシュアップ」平成16年11月23日掲載分についての公開質問状


前略

 私どもは、NGO-AMIと申す団体です。マンガを中心に、アニメ、ゲームなどの 表現規制などについて社会に対して活動を行っております。 2001年に横浜で開催された「第2回子どもの商業的性的搾取に反対する世界会議」において、 エクパットジャパン関西ユース主催のワークショップに参画したことを契機に、活動をしております。
 マンガ家を主なメンバーとし、編集者、研究者、批評家などで構成されております。 別添に私どもの紹介資料をつけております。よろしければご覧になってください。

 さて、日刊スポーツ・大阪エリア版「大谷昭宏フラッシュアップ」平成16年11月23日掲載において、 大谷昭宏様はコラム記事「対話も感情もない「萌え」のむなしさ」を書かれておられましたが、 かかる記事はたいへん問題のあるものと感じ、不快感をお伝えするとともに、不明な点や大谷様の 真意などについて質問をさせていただくべく、お手紙申し上げました。
 なお、本状の内容は公開とさせていただきます。
 今回の大谷様の記事等の持つ問題が、フィギュアなどを愛好する人々の利害を大きく超え、 ジャーナリズムのありよう自体が問われる性質のものであるのがその理由です。 よって、本状につきましては、一般の雑誌メディア、ウェブサイト等への掲載を通じ、 大谷氏からのご返答、ご反応を含め、広く周知し世の審判を受けたいと考えております。 具体的には、私どものウェブサイトのほか、「放送レポート」誌、「月刊 創」誌などの 媒体を考えております。

 大谷様の記事は、過日、奈良市で起こった少女誘拐殺人事件について、犯人がまだ分かっていない 時点で、犯人像について想像をし、その趣味嗜好にまで言及したものです。そこで大谷様は、 「フィギュア萌え族」なる新語を用いられ、「フィギュア」や「萌え」といった趣味と、 今回の犯罪の手口を結びつけて論じておられます。
 たとえば、犯人が被害者を誘拐して時間をおかずに殺害したことを「解剖結果から誘拐直後に殺害 しているということは、犯人は一刻も早く少女をモノを言わないフィギュアにしたかったことは間違いない」 と断じておられます。未知の犯人の内面について、なぜかくも「間違いない」と断じられるのか、 たいへん不可解です。

 また、同記事中の「フィギュア」趣味や、パソコンゲームの描写も出鱈目です。
 大谷様は克明に「パソコンの中に出てくる美少女たちとだけ架空の恋愛をして行くというのだ。 そこにある特徴は人間の対話と感情をまったく拒絶しているということである。 少女に無垢であってほしいのなら「キスしたい」という呼びかけに「ワタシ、男の人とキスしたことがないから、 どうしていいのかわからない」と答えさせ、その答えに満足するのだ」とお書きになっていますが、 このようなパソコンゲーム(いわゆる「エロゲー」や「ギャルゲー」)は、皆無であると断言できます。 システム上、このような形式で個々のユーザーの気持ちに合わせて応答させることは不可能だからです。 この一点だけでも、実状とは大きく乖離しております。また、文章上のレトリックとしても到底、 成立しているものとはいえません。

 つまり、現時点では、大谷様の記事は全て想像に基づくものと考えるのが最も妥当な解釈と言わざるを得ません。 しかし、想像であるかどうかは措くとしても、こうした記事が広く流布されることで、特定の趣味嗜好を持つ人々が あたかも「犯罪予備軍」であるかのような誤った認識を多くの人々に与えるものであることは明白です。

 また、事件の解決を見ない現時点でのこうした「想像」は、いたずらに事件を扇情的に扱う効果も持ち、 愛するお子さんを失ったご遺族の感情を考えても、非常に問題のあるものです。つまり、いずれの意味においても、 弱い立場の者を傷つけ、人権を蹂躙する、まさに「言葉の暴力」というべきものです。

 大谷様は、かつて「週刊現代 2004年7月3日号」にて、 メディアが事件の「原因」をことさらに探し求め、犯罪を犯した者が読んだり、見聞きしたものや家庭環境などに事件の要因を求める風潮に 警鐘を鳴らされておられましたね。「日刊スポーツ」をはじめとした今回の事件についての大谷様の主張は、まさに大谷様自身が批判された ものそのもののように思えます。これはダブルスタンダードではないのでしょうか。

 先にも記しましたとおり、私どもは、今回の大谷様の記事、発言などは「ジャーナリスト」として、たいへんに問題が あるだけでなく、誰にとっても利益をもたらさないものと考えております。
 なぜ、大谷様のような立派なキャリアをお持ちの方が、自分の評価を大きく減じるようなことをなさるのか、 いぶかしく思っております。また、これが単純な無知に基づくものであり、適切な情報が得られた結果、 ただちに是正されるものであることを切に願うものです。
 私たちは、一方的な糾弾を望みません。大谷様とも、適切な方法で対話をすることが可能であると考えております。 私どもは、大谷様と同様に「対話」も可能であれば、「感情」のレベルでの共感も持ちうる関係にあると信じております。


 そこで、「対話」に向け、質問を用意いたしました。不躾なものも含まれておりますが、お答えくだされば幸いです。
 私どもとしては、「フィギュア萌え族」なる「新語」については不快感を強く持ち、また現在の社会を描写する語としても、 あまり適当なものではないと考えていますが、以下、大谷様の文章に言及する必要から、やむを得ずこの語を使用いたしております。


  1. 現状では大谷様のいわれる「フィギュア萌え族」が何を指すものか不明瞭です。大谷様のいわれる「フィギュア萌え族」の 定義とは何ですか。具体的に「どんな人々」のことを指しますか。年齢集団、社会的な立場などの内容でお答えください。

  2. 「フィギュア萌え族」を「脱人間的」「没人間的」とされた論拠を示してください。具体的にどのような観察、 どのような資料に基づくものであるかを示していただければ幸いです。

  3. 犯人逮捕前であるにもかかわらず、「犯人はこうした趣味を持っているだろう」と連想させる文章やコメントの発表により、 警察の捜査に予断を与えるリスクに関しては、どの程度お考えになりましたか。また、そうしたリスクをおしてまで、 今回の事件と「フィギュア萌え族」とを関連させることに、どのような意義があるとお考えでしょうか。 できるだけ具体的にお聞かせください。

  4. 大谷様のいわれる「フィギュア萌え族」の記述は、実際に「フィギュア」を愛好したり、キャラクターに「萌えたり」している 人々の現状とはまったくかけ離れています。そうした意見はすでにご覧になっておられますか。また、それについてはどのような ご意見をお持ちですか。

  5. 本年のヴェネツィア・ビエンナーレ建築展おいて、日本館の展示テーマが「おたく」であり、「萌え」も大きく扱われ、 図録には「フィギュア」がつけられていました。たとえば、このように、すでに「犯罪」とではなく「日本」や「文化」「芸術」 と「萌え」が結びつけられいるという現状はご存じでしたか。ご存じの場合は、いつ、お知りになりましたか。

  6. 前項とも関連しますが、現在、フィギュアは小規模のマーケットで消費されるものではなく、広く一般に親しまれるものと なっております。製品の生産と配給は国際的貿易を中核としており、市場も日本のみならず世界中に広がっています。 また、土偶、埴輪、こけしなど日本でも脈々とミニチュアになった人間の化身を愛玩する文化があります。 このように、産業としても、歴史的にも広がりを持つものと考えられますが、今回の「フィギュア萌え族」批判に際しては、 このような広がり・文脈はどの程度、考慮されましたか。また、考慮されなかったという場合、いかなる論拠で「フィギュア萌え族」と、 これらの文脈とを切り離すことが可能となりますか。具体的にお答えください。

  7. 犯人逮捕前であるにもかかわらず、「犯人像」を想像し、さらにそれを人々の耳目を引く形でアピールすることが、 ご遺族にとってどのような意味を持つかはお考えになりましたか。また、その意味するところをお教えください。

 以上、七項目です。
 先にも記しましたとおり、本質問状は公開とさせていただきます。本状が大谷様のもとに届いたことを確認した時点で、 まずは私どものウェブサイトにて公開いたします。URLは、http://www.picnic.to/~ami/です。よろしくご確認ください。
 なお、私どものサイトには、先述した「横浜会議」以降の、私どもの取り組みなども記しております。こちらもぜひご覧下さい。

 お忙しいとは存じますが、ご返答の期限は、本状の到着後一週間以内とさせていただきます。 万が一、何のリアクションもいただけない場合は、私どもには返答をする必要すらないと大谷様が判断されたものと 受け止めさせていただきます。
 また、ここで用意した質問に留まらず、大谷様の意見などをお聞かせいただくことも歓迎いたしております。 つまり、上記の質問にお答えいただくことが、対話の第一歩と考えてはいますが、それは決して大谷様の自由なご意見を 封じるものではありません。念のため、そのことは申し上げておきます。なお、ご返答は書面にてお願いいたします。
 もし、一週間以内にご返答が難しいようでしたらご一報ください。そのときには、相談させていただきます。

 それでは、誠意あるご返答を期待しております。また、今回のことを契機に、大谷様と私どもとの間に実りある「対話」が はじまることを切に願っております。繰り返しますが、現時点では、大谷様を糾弾する意図はございません。 まずは、大谷様の真意を確かめさせていただきたく存じます。

 末文ではありますが、被害者のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い事件の解決を祈念いたします。


NGO-AMI一同

公開日 2004年12月27日



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