foreign movie vol.13


Marie Antoinette
マリー・アントワネット
Marie Antoinette


監督 / ソフィア・コッポラ
脚本 / ソフィア・コッポラ
製作 / ソフィア・コッポラ、ロス・カッツ
共同製作 / カラム・グリーン
製作総指揮 / フランシス・フォード・コッポラ、ポール・ラッサム、フレッド・ルース、マシュー・トルマック
音楽監修 / ブライアン・レイツェル
出演 / キルステン・ダンスト、ジェイソン・シュワルツマン、リップ・トーン、ジュディ・デイヴィス、アーシア・アルジェント、マリアンヌ・フェイスフル、ローズ・バーン、モリー・シャノン 他
2006年 / アメリカ


普通の女の子として描かれた王妃マリー・アントワネット。フランス語だったらもっとよかったのにと少し残念。幼い頃夢中で本を読んだ感覚を思い出す。ピンクや水色のパステルカラーの華やかな部屋やドレスや髪飾り、豪華な朝食に素敵なお庭、食べきれないくらいの綺麗なお菓子、夜会にダンスにふかふかのフリル付きベッド。キルスティン・ダンスト=マリー・アントワネットがものすごくかわいくて、ペットのパグも愛らしく、キュートなフリンジやバラのモチーフをあしらったマノロ・ブラニクの心躍る靴たち、少々遠のいていた少女心に一気に火をつける映画。たいがいの男の人のつまんない批評は一切読まなくていい。


Les Parapluies de Cherbourg
シェルブールの雨傘
Les Parapluies de Cherbourg


監督 / ジャック・ドゥミ
製作 / マグ・ボダール
脚本 / ジャック・ドゥミ
撮影 / ジャン・ラビエ
作詞 / ノーマン・ギンベル
音楽 / ミシェル・ルグラン
出演 / カトリーヌ・ドヌーヴ、ニーノ・カステルヌオーヴォ、マルク・ミシェル、エレン・ファルナー、アンヌ・ヴェルノン 他
1963年 / フランス


アルジェ戦争によって引き裂かれるジュヌヴィエーブとギイの悲しい恋の物語。全編歌で通すミュージカルで普通の台詞から歌になるということのない徹底さ(ただ後から知った情報によるとカトリーヌ・ドヌーヴを含めほとんどすべてが吹き替えらしく、多少興ざめ)。ストーリー云々よりもその画面の中の色彩の楽しさや歌の軽快さ、若かりしカトリーヌ・ドヌーヴは本当にかわいくて衣装もすてき。(悲恋ものだけど)楽しいミュージカル映画を見ることはそれだけで幸福な気分。


La Citta Delle Donne
女の都
La Citta Delle Donne


監督 / フェデリコ・フェリーニ
製作 / フランコ・ロッセリーニ
原作 / ブルネッロ・ロンディ
脚本 / ベルナルディーノ・ザッポーニ、フェデリコ・フェリーニ
撮影 / ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽 / ルイス・バカロフ
出演 / マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・ブルクナル、エットレ・マンニ、ドミニク・ラブリエ 他
1980年 / イタリア、フランス


久しぶりに見たフェリーニで"フェリーニの映画"を思い出した。『8 1/2』ほどではないかもしれないけれど、夢物語のような妄想の世界で過度なフェミニズムやレズビアン、セックス、男性のシンボルをモチーフにした装飾品、ごちゃごちゃと入り乱れる幻想物語はまさにフェリーニ。ほぼ全裸の踊り子たちとマストロヤンニが楽しく踊るシーンがなぜかキッチュに見える他のシーンの過剰具合。主演のエロ親父役、マルチェロ・マストロヤンニの翻弄されっぷりが滑稽で楽しい。フェリーニの映画らしい映画。


Nouvelle Vague
ヌーヴェルヴァーグ
Nouvelle Vague


監督 / ジャン=リュック・ゴダール
製作 / アラン・サルド
脚本 / ジャン=リュック・ゴダール
撮影 / ウィリアム・ルブチャンスキー
出演 / アラン・ドロン、ドミツィアーナ・ジョルダーノ、ロラン・アムステュツ、ラファエル・デルパール 他
1990年 / フランス、スイス


20歳前後の大学生くらいならまだしもそろそろ"雰囲気"や"色使い"で「ゴダール好き!」ていうのももうイタい。しかし何度見ても様々な文献や映画から自在に引用された言葉の数々は正直相変わらずわからないものが圧倒的。だけどそれぞれの粒子がコラージュされ再構築されていく一瞬、映像や音楽の束の間の享受はなんと魅力的。めずらしくサントラCDを持っているくらいこの作品の音楽は素晴らしく、さらにCDにおさめられているのは1時間半の映画のすべての音をそのまま丸ごとCD化というもの。スイス・レマン湖畔の邸宅。庭師の詩的な独り言。色彩を際立たせる光。すべて夏草の深い緑に浮かび上がり、秋の輝きと結びつくのは春が開花する前の冬の廃墟。過去と現在と同じ波を感じる。希望にあふれたラスト。


Vaghe stelle dell'orsa
熊座の淡き星影
Vaghe stelle dell'orsa


監督 / ルキノ・ヴィスコンティ
製作 / フランコ・クリスタルディ
原案 / スーゾ・チェッキ・ダミーコ、エンリコ・メディオーリ、ルキノ・ヴィスコンティ
脚本 / スーゾ・チェッキ・ダミーコ、エンリコ・メディオーリ、ルキノ・ヴィスコンティ
撮影 / アルマンド・ナンヌッツィ
音楽 / セザール・フランク
美術 / マリオ・ガルブリア
出演 / クラウディア・カルディナーレ、ジャン・ソレル、マイケル・クレイグ、レンツォ・リッチ、マリー・ベル 他
1965年 / イタリア


ギリシャ悲劇のエレクトラとオレステスの伝説を下敷にしているということだけど残念ながらその伝説を知らないまま観賞。舞台になっているイタリアの都市の建物や風景の美しさは圧巻。甘美で官能の貴族階級の世界の没落を描く私のイメージするヴィスコンティ作品。消えてしまう瞬間の禁断のきらめき。主演クラウディア・カルディナーレの美人ではあるけれど憂いのある表情がなんともいえない。


Ossessione
郵便配達は二度ベルを鳴らす
Ossessione


監督 / ルキノ・ヴィスコンティ
原作 / ジェームズ・M・ケイン
脚本 / ルキノ・ヴィスコンティ、マリオ・アリカータ、ジュゼッペ・デ・サンティス、ジャンニ・プッチーニ、アントニオ・ピエトランジェリ
撮影 / アルド・トンティ、ドメニコ・スカラ
音楽 / ジュゼッペ・デ・サンティス
出演 / マッシモ・ジロッティ、クララ・カラマーイ、フアン・デ・ランダ、エリオ・マルクッツオ 他
1942年 / イタリア


ヴィスコンティの長編処女作。アメリカのサスペンス小説をイタリアを舞台に差し替えた作品で、上流階級社会ではなく田舎の庶民を描いているのが少し意外。たとえばパゾリーニやロッセリーニのネオ・レアリスモと呼ばれる映画群の雰囲気を少し思い出したりする(パゾリーニやロッセリーニほど痛烈な感じではなくもっと俗物的なんだけど、というかヴィスコンティが真の貧困を描けるのか疑問)。ジーノとジョヴァンナの目と目で通じ合い剛速球の燃え上がる男女関係の早さや、逞しいわりに女のことが頭から離れないジーノのへたれ具合にイタリア人の愛に生きる姿を垣間見たような気がする。


Ludwig
ルートヴィヒ
Ludwig


監督 / ルキノ・ヴィスコンティ
製作総指揮 / ロバート・ゴードン・エドワーズ
脚本 / ルキノ・ヴィスコンティ、エンリコ・メディオーリ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ
撮影 / アルマンド・ナンヌッツィ
音楽 / フランコ・マンニーノ
出演 / ヘルムート・バーガー、ロミー・シュナイダー、トレヴァー・ハワード、シルヴァーナ・マンガーノ 他
1972年 / イタリア、西ドイツ、フランス


完全復元版の240分という大作。バイエルン国王ルードヴィヒ2世の18歳の即位から40歳で謎の溺死をするまでの生涯を描いたすばらしく壮大な作品。芸術を愛しワーグナーを愛しそのワーグナーに国費をむしり取られ同性愛に耽り国政には見向きもせず国家の存続を危うくし精神病と診断され退位に追い込まれるという国王役のヘルムート・バーガーが美しすぎる。俗物に描かれ続ける作曲家ワーグナーの音楽は人物とはうってかわって美しいという対比。ノイシュヴァンシュタイン城も撮影に使われた、ヴィスコンティにしか撮れないと思わせるありえないくらいの細部まで豪華絢爛で(庶民すぎて想像の域を超えないけど)完璧な王族貴族のセット。長くて重い240分が王の孤独をより一層引き立たせるような気がした。


Lady and the Tramp
わんわん物語
Lady and the Tramp


監督 / ハミルトン・ラスク、クライド・ジェロニミ、ウィルフレッド・ジャクソン
製作 / ウォルト・ディズニー、アードマン・ペナー
原作 / ウォード・グリーン
脚本 / アードマン・ペナー、ジョー・リナルディ、ラルフ・ライト、ドナルド・ダグラ ディ
音楽 / オリヴァー・ウォレス
作詞・作曲 / ペギー・リー、ソニー・バーク
1955年 / アメリカ


ファミリー向けディズニーアニメーション。アメリカン・コッカー・スパニエルの女の子レディを主人公にしたディズニーオリジナルの原作で、長編アニメーション映画初のシネマスコープ作品。レディとトランプが一緒にミートボール入りのスパゲッティを食べる有名なシーン、なんてラブリー&キュートなラブシーン。ミートボールをたくさん入れて同じようなスパゲッティが食べたくなる。


L'Enfant
ある子供
L'Enfant


監督 / ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
製作総指揮 / オリヴィエ・ブロンカール
製作 / ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ、デニス・フレイド
脚本 / ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
撮影 / アラン・マルコァン
編集 / マリー・エレーヌ=ドゾ
出演 / ジェレミー・レニエ、デボラ・フランソワ、ジェレミー・スガール 他
2005年 / ベルギー、フランス


いびつな心の成長、身体が大人なのに対して心の未成熟さ、あるひとつの歪んだ無知な生き方、そいういうリアルな人間の成長を撮らせたらダルデンヌ兄弟の右に出るものはいないくらいの上手さ。完全にフィクションなのにそう感じさせないのがダルデンヌ兄弟のスタイル。だいたいどの作品もほとんど効果音やBGMはないのだけど、その沈黙が上手くストーリーと共鳴しあう。


Hori,Ma Panenko
火事だよ!カワイ子ちゃん
Hori,Ma Panenko


監督・原案・脚本 / ミロス・フォアマン
原案・脚本・助監督 / イヴァン・パセル
原案・脚本 / ヤロスラフ・パポウシェク
撮影 / ミロスラフ・オンジーチェク
出演 / ヤン・ヴォストゥルチル、ヨゼフ・シェバーネク、ヨゼフ・コルプ、フランチシェク・スビェト、ヨゼフ・ヴァルノハ 他
1967年 / チェコスロバキア、イタリア


チェコ在住の映画人たちがフランスのヌーヴェルヴァーグに影響されたのがチェコヌーヴェルヴァーグ。『猫に裁かれる人たち(Az Prijde Kocour)』(ヴォイチェフ・ヤスニー/1964/チェコスロヴァキア)に続く意味不明度の高いチェコヌーヴェルヴァーグ作品。無駄に力んでいて楽しい映画。おしゃれと言われればおしゃれなような気がしてくる不思議な魅力。


Cul-de-sac
袋小路
Cul-de-sac


監督 / ロマン・ポランスキー
脚本 / ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラッシュ
撮影 / ギル・テイラー
音楽 / クリストファー・コメダ
出演 / ドナルド・プレザンス、フランソワーズ・ドルレアック、ライオネル・スタンダー、ジャクリーン・ビセット、ジャック・マッゴーラン 他
1965年 / イギリス


古城に住む中年の男と若い女の夫婦。そこは満潮時には外部からの進入を許さないまったく閉じた世界になる孤島。閉じた世界での二人の(理想の)奇妙な生活に介入者がやってくる。人間の精神的限界、半狂乱になった男、 幼いポランスキーはユダヤ人の母親をアウシュビッツの収容所で亡くしているらしく、そういった心の傷は作品に投影されているのかも。若い女役のフランソワーズ・ドルレアックはカトリーヌ・ドヌーブの姉。『反撥』と同様、ゆがんだ狂気と精神世界がモノクロ映像でさらに活きる。


Repulsion
反撥
Repulsion


監督 / ロマン・ポランスキー
脚本 / ジーン・グトウスキー、ロマン・ポランスキー、ジェラール・ブラッシュ
撮影 / ギルバート・テイラー
音楽 / チコ・ハミルトン
出演 / カトリーヌ・ドヌーヴ、イヴォンヌ・フルノー、ジョン・フレイザー、イアン・ヘンドリー、パトリック・ワイマーク 他
1964年 / イギリス


若くてウブで感じやすい少女を演じる美しいカトリーヌ・ドヌーブ。精神的に破壊されていくひとりの少女の様子を当時22歳のカトリーヌ・ドヌーブが演じることで幻想がさらに幻想を生み一層混乱をきたすような感覚に陥る。殺人のあとに赤い口紅をべったり塗って薄笑いを浮かべてベットに横たわるシーンがいい。腐ったウサギの肉や壁の亀裂、ゆがんだ部屋、性的な嫌悪、狂気が部屋中に充満する。説明のないストイックな演出はとても好み。


Noz W Wodzie
水の中のナイフ
Noz W Wodzie


監督 / ロマン・ポランスキー
脚本 / ロマン・ポランスキー、イエジー・スコリモフスキー、ヤクブ・ゴールドベルク
撮影 / イエジー・リップマン
音楽 / クリシトフ・コメダ
出演 / レオン・ニェムチック、ヨランタ・ウメッカ、ジグムント・マラノウッツ 他
1962年 / ポーランド


当時28歳のポランスキーが祖国ポーランドに残した唯一の長編処女作品。見ている間、ベルイマンの『ペルソナ』や『不良少女モニカ』なんかの映画を思い出した。登場人物は倦怠期の夫婦と行きずりの若い男の3人。ベルイマンを持ち出すのは褒めすぎなのかもしれないけれど、そのくらい絵になるシーンが多かった。ヨットの上という隔絶された空間のなかでの3人の微妙な気持ちの揺らぎ。28歳でこんな映画を撮ってしまえるのがすごい。


Um Film Falado
永遠の語らい
Um Film Falado


監督・脚本・台詞 / マノエル・ド・オリヴェイラ
制作 / パウロ・ブランコ
美術 / ゼ・ブランコ
衣装 / イザベル・ブランコ
撮影 / エマニュエル・マシュエル
出演 / カトリーヌ・ドヌーヴ、ジョン・マルコヴィッチ、ステファニア・サンドレッリ、イレーネ・パパス、レオノール・シルヴェイラ 他
2003年 / ポルトガル、フランス、イタリア


父の待つボンベイへ向かいながら人間の歴史を辿る母娘の航海。ポルトガルのベレンの塔、ギリシャのアクロポリスの丘、エジプトのピラミッドなどで歴史学者の母は娘の質問に神話や伝説の物語を語る。カトリーヌ・ドヌーヴ、イレーネ・パパス、ステファニア・サンドレッリ、ジョン・マルコヴィッチが各自の言葉、フランス語、イタリア語、ギリシャ語、英語で恋愛や文明についての会話をするシーンが面白い。オリヴェイラのリズム感や映像の贅沢な感覚が大好きだと再確認する。強烈なラストの衝撃の余韻が残る。


Seasons
四季
Seasons


監督 / イワン・イワノフ=ワノー
助監督 / ユーリー・ノルシュテイン
1969年 / ソビエト


チャイコフスキーの「四季」をモチーフにした約10分の作品。ノルシュテインが助監督として参加。壊れてしまいそうな美しい小さな幻想の世界。こういうアニメが大好き。


Oci Ciornie
黒い瞳
Oci Ciornie


監督 / ニキータ・ミハルコフ
製作 / シルヴィア・ダミーコ、ベンディコ・カルロ・クッキ
原作 / アントン・チェーホフ
脚本 / アレクサンドル・アダバシャン、スーゾ・チェッキ・ダミーコ
脚色 / ニキータ・ミハルコフ
撮影 / フランコ・ディ・ジャコモ
音楽 / フランシス・レイ
美術 / マリオ・ガルブリア、アレクサンドル・アダバシャン
編集 / エンツォ・メニコーニ
出演 / マルチェロ・マストロヤンニ、シルヴァーナ・マンガーノ、マルト・ケラー、エ レナ・ソフォーノワ、ピナ・チェイ、フセヴォロド・ラリオーノフ 他
1987年 / イタリア


ミハルコフがイタリアに招かれて撮った作品。ミハルコフの映す風景はとても好みだし、主演のマルチェロ・マストロヤンニは相変わらず大好きで、調子に乗ったマストロヤンニもかわいくて仕方がない。話が無駄に行き交う感や唐突な展開はマストロヤンニのどっちつかずの夢見心地の心境そのまま。全員白の衣装をまとったイタリアの湯治場でのシーン、自宅の広大な庭の真ん中で椅子に座るマストロヤンニ、物悲しいイタリアの子守唄、まとまらない断片の人生は美しい。


Cremaster
クレマスター1〜5
Cremaster 1-5


脚本・監督 / マシュー・バーニー
制作 / バーバラ・グラッドストーン、マシュー・バーニー
撮影 / ペーター・シュトリートマン
音楽 / ジョナサン・ベプラー
出演 / マシュー・バーニー、リチャード・セラ(彫刻家)、エミー・マランス 他
※『クレマスター4』のみ制作 / アルタンジェル、カルティエ財団、バーバラ・グラッドストーン
プロデューサー / マシュー・バーニー、ジェームズ・リングウッド
1994-2002年 / アメリカ


豪華絢爛、お金のかけ方は半端じゃない大作アート映画。セクシャリティや歴史、神話など様々な分野の要素を取り入れた物語は大半は理解しにくい。正直『クレマスター1』が一番まとまりのある面白い作品。アメリカンなアートて感じが全体を包んでいる気がした。世界各地を駆け巡り、世界遺産紀行を彷彿とさせるすばらしい絶景(景色はすごいけど・・・)、昆虫の生態を映し出すCCD拡大カメラを彷彿とさせるマシュー・バーニーの脱出劇など、なんか不思議な映像も多々。ゲイリー・ギルモアもハリー・フーディニーもよく知らないためオマージュといわれてもピンとこない。ところでマシュー・バーニーはフット・ボールの特待生だっただけあってロッククライミングですいすいのぼっていったり、元モデルなだけあって男前。それなりにそれぞれ楽しめる作品。


Gloria
グロリア
Gloria


監督 / ジョン・カサヴェテス
製作 / サム・ショウ、スティーヴン・F・ケステン
脚本 / ジョン・カサヴェテス
撮影 / フレッド・シュラー
音楽 / ビル・コンティ
出演 / ジーナ・ローランズ、ジョン・アダムス、バック・ヘンリー、ジュリー・カーメ ン 他
1980年 / アメリカ


ヴェネチア国際映画で金獅子賞受賞作。オープニングから粋なカサヴェテスのハードボイルド映画。ニューヨークの街並みの空気感と雑然とした雰囲気の中で、マフィアに拳銃をブッ放つ、ド迫力の熟女ジーナ・ローランズがしびれるほどかっこいい。シンプルなストーリーで大女優ジーナ・ローランズがやるからこそかっこよさが引き立つ。ジーナ・ローランズが演じたのは単なるタフで機転の利く女でなく、もっと根本的な「グロリアという女」。後半単調なのが残念。


La Mala Educacion
バッド・エデュケーション
La Mala Educacion


監督 / ペドロ・アルモドバル
製作 / ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル
製作総指揮 / エステル・ガルシア
脚本 / ペドロ・アルモドバル
撮影 / ホセ・ルイス・アルカイネ
音楽 / アルベルト・イグレシアス
出演 / ガエル・ガルシア・ベルナル、フェレ・マルティネス、ハビエル・カマラ、ルイス・オマール 他
2004年 / スペイン


1980年、マドリッド。フランコ政権下の神学校で親友でもあり初恋の相手でもあった映画監督エンリケを訪ねるイグナシオと名乗る青年。アルモドバルの半自伝作品であり、露骨な同性愛シーンが多数。ストーリーが入り組んでいて一瞬理解が遅れるような感覚、様々な緊張感、場面場面で印象に残る色使い、アルモドバルの緻密で完成度の高いこういう展開はとても面白い。


Pepe Le Moko
望郷
Pepe Le Moko


監督 / ジュリアン・デュヴィヴィエ
製作 / レイモン・アキム、ロベール・アキム
脚本 / ジュリアン・デュヴィヴィエ、アンリ・ジャンソン
原作 / ロジェ・アシェルベ
撮影 / ジュール・クルージェ、マルク・フォサール
美術 / ジャック・クロース
音楽 / ヴァンサン・スコット
出演 / ジャン・ギャバン、ミレーユ・バラン、リーヌ・ノロ 他
1937年 / フランス


ドラマ性の高い作品。迷宮のような街カスバの街並みが面白い。そこに逃げ込んだ強盗犯ペペ・ル・モコ。カスバに住む女たちの歌。美しい女に見たパリへの郷愁。望郷。早歩きに港に向うぺぺの効果。汽笛。叫び声。海を渡ることが難しかった時代だからこその強い想い。ジャン・ギャバンの男前ぶりもさることながら、ミレーユ・バランの繊細で線の細い美しさがあまりに可憐。


Un Homme et Une Femme
男と女
Un Homme et Une Femme


監督・製作 / クロード・ルルーシュ
脚本 / ピエール・ユイッテルヘーベン、クロード・ルルーシュ
撮影 / クロード・ルルーシュ、パトリス・プージェ
編集 / クロード・バロア
音楽 / フランシス・レイ
出演 / アヌーク・エーメ、ジャン=ルイ・トランティニャン、ピエール・バルー、ヴァレリー・ラグランジェ 他
1966年 / フランス


男と女の恋に落ちる過程。カラーやモノクロ、セピア色を効果的に取り入れた映像(経費節約のためだったと言われるけれど確信的に思える)。フランシス・レイの気の抜けるような音楽。ダバダバダ。アヌーク・エーメの亡き夫役ピエール・バルーが非常においしい役どころで出演。「ボサ・ノヴァ・サラヴァ」を陽気に歌うピエール・バルーを思い出すアヌーク・エーメの気持ちは分からなくもない。フランスの港町ドービル、木製の桟橋、赤いマスタング、冷たい空気や雨や風と対比する恋心、サン・ラザール駅。すべてがずるいほど雰囲気勝ち。


Y Tu Mama Tambien
天国の口、終りの楽園。
Y Tu Mama Tambien


監督 / アルフォンソ・キュアロン
製作 / アルフォンソ・キュアロン、ホルヘ・ベルガラ
製作総指揮 / デヴィッド・リンド、エイミー・カウフマン、セルヒオ・アゲーロ
脚本 / アルフォンソ・キュアロン、カルロス・キュアロン
撮影 / エマニュエル・ルベツキ
出演 / ガエル・ガルシア・ベルナル、ディエゴ・ルナ、マリベル・ヴェルドゥ、フアン・カルロス・レモリーナ、アナ・ロペス・メルカード、マリア・アウラ 他
2001年 / メキシコ


ガエル・ガルシア・ベルナルを堪能したくて見はじめた映画。単なるイケメン俳優にとどまらない体当たり演技に加え自然体の演技に感動。『トラベリング・ウィズ・ゲバラ』(2004)より相当好き。セックスのことしか頭にない少年2人と人妻。セックスした人数を聞きあうとか車の中の下ネタトーク、そういうセックスに関する世界が少年2人のすべての世界で、でもリアルな若者像なような気がする。若さと情熱に身をまかせた奔放さの青春の終わりと人生の終わりの交差。メキシコ的空気だけを見ても楽しい。


Babes in Toyland
おもちゃの王国
Babes in Toyland


監督 / ジャック・ドノヒュー
原作 / ヴィクター・ハーバート、グレン・マクドノウ
脚本 / ジョー・リナルディ、ウォード・キンボール、ローウェル・S・ハウリー
撮影 / エドワード・コールマン
SFX / ユースタス・ライセット、ロバート・A・マッティ
音楽 / ジョージ・ブランス
出演:レイ・ボルジャー、トミー・サンズ、アネット、ヘンリー・カルヴィン、ジーン・シェルドン 他
1961年 / アメリカ


ディズニーの子供向けミュージカル・ファンタジー。カラフルなおとぎの世界での冒頭のダンスシーンが楽しい。多くの特撮が取り入れられ、おもちゃの軍隊が特撮で動くのはわくわくする。おとぎ話やミュージカルは基本的に好きなのでストーリーの弱さは気にならないけど、途中がどうにも停滞気味。子供と一緒に見るときっとハッピーな映画。


Presque Rien avec Luc Ferrari
ほとんど何もない―リュック・フェラーリと共に
Presque Rien avec Luc Ferrari


監督 / ジャクリーヌ・コー、オリヴィエ・パスカル
出演:リュック・フェラーリ、エリス・キャロン 他
2005年 / フランス


全編フランス語の字幕なし。フェラーリの親友、音楽学者のジャクリーヌ・コーと共同監督した『ほとんど何もない』。インスタレーション作家としてのフェラーリに触れる。


LUC FERRARI - portrait d'un realiste abstrait
リュック・フェラーリ ある抽象的リアリストの肖像
LUC FERRARI - portrait d'un realiste abstrait


制作・構成・編集 / 宮岡秀行
撮影 / アンダース・エドストローム
撮影(音楽シーン) / 西原多朱
音響 / 黒川博光(てんこもり)、宮岡秀行
音楽 / リュック・フェラーリ "Les ProtoRythmiques"  リュック・フェラーリ(CD)、エリックM(エレクトロニクス) 出演 / リュック・フェラーリ、ブリュンヒルト=マイヤー・フェラーリ、エリックM 他
2005年 / フランス


リュック・フェラーリのパリでの日常と音楽風景を撮ったホームムービー作品。奥さんにあたってみたり、友人の前でおどけた姿も見せるフェラーリの姿は意外だけれど愛らしい。自然音から抽象音に移行する音、エリックMとのDJバトル、なんていい音を作る人だろう。


Things You Can Tell Just by Looking at Her
彼女を見ればわかること
Things You Can Tell Just by Looking at Her


監督・脚本 / ロドリゴ・ガルシア
製作総指揮 / エリー・サマハ、アンドリュー・スティーヴンス
製作 / ジョン・アヴネット
撮影 / エマニュエル・ルベスキ
音楽 / エドワード・シェアマー
編集 / エイミー・ダドルストン
美術 / ジェリー・フレミング
出演 / グレン・クロース、ホリー・ハンター、キャシー・ベイカー、キャメロン・ディアス 他
1999年 / アメリカ


有名女優がこぞって出演を望んだ女性ドラマオムニバスのインディペンデント作品。作品自体が地味なのも、観客の想像にゆだねるような根底にある感情の広がりも、面白くて好み。抑圧や自制の下に隠れた大きな欲望や感情が見え隠れする女性たち。グレン・クロースの話も、ホリー・ハンターの話も、キャメロン・ディアスの話も良い。


From Here to Eternity
地上より永遠に
From Here to Eternity


監督 / フレッド・ジンネマン
製作 / バディ・アドラー
脚本 / ダニエル・タラダッシュ
原作 / ジェームズ・ジョーンズ
撮影 / バーネット・ガフィ
美術 / ケイリー・オデル
音楽 / ジョージ・ダニング
衣装 / ジャン・ルイ
出演 / バート・ランカスター、モンゴメリー・クリフト、デボラ・カー、フランク・シナト、ドナ・リード 他
1953年 / アメリカ


第二次世界大戦直前の1941年のハワイ・スコフィールド兵営。軍隊での過酷な厳しさ、個人と階級制度、友情、そして恋。兵営の中でギターを片手にさりげなく始まるブルースや兵士のトランペットの即興がいい。『地上より永遠に』は初めて見たのだけど、もっと恋愛至上主義映画だと思ってた。良くも悪くもアメリカンな映画。