foreign movie vol.14


Vredens Dag
怒りの日
Vredens Dag


監督・脚本・編集 / カール・テオドール・ドライヤー
原作 / ハンス・ヴィアス=イェンセン
撮影 / カール・アンデルション
舞台装置 / エリック・オース
音楽 / ポール・シアベック
サウンド / エリック・ラスムッセン
時代考証 / カイ・ウルダル
製作会社 / パレージウム
編集 / エーディト・シュルッセル、アンネ・マリー・ペーターセン
衣装 / リス・フリベアツ、K・サンツ=イェンセン、オルガ・トムセン
出演 / トルキル・ロース、リスベット・モビーン、アンヌ・スビアキア、シグリ・ニーエンタム 他
1943年 / デンマーク


中世に行われた魔女狩りをモチーフにしたノルウェーのとある小さな村の悲しい物語。第二次大戦中に作られた映画で当時ナチがデンマークを占領していた背景があることを考えると反ナチ映画ともとれる。はしごに縛り付けられた老婆を燃え盛る薪の火のなかに突き倒す火あぶりのシーンの迫力は思わず目をそむけたくなるほど。アンネの目が次第に欲や感情に支配されていく変化、表情の変化がおもしろい。最後に魔女の疑いをかけられたアンネが1点を見つめ茫然と涙を流す姿はふと『裁かるるジャンヌ』を思い出す。シンプルなのに人間の根底にあるような感情を突き動かす映画。


Elegiya Zhizni. Rostropovich. Vishnevskaya
ロストロポーヴィチ 人生の祭典
Elegiya Zhizni. Rostropovich. Vishnevskaya


監督 / アレクサンドル・ソクーロフ
製作 / ドミトリー・コンコフ、セルゲイ・イワノフ、ウラジミール・ペルソフ
脚本 / アレクサンドル・ソクーロフ
撮影 / イゴール・ジェルジン、キリール・モショヴィッチ、ミハイル・ゴルブコフ
編集 / セルゲイ・イワノフ
出演 / ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ、ガリーナ・ヴィシネフスカヤ、小澤征爾、クシシュトフ・ペンデレツキ 他
2006年 / ロシア


2007年4月に逝去した世界的なチェリスト、ムスティスラフ・ロストロポービッチをソクーロフが撮ったドキュメンタリー映画。世界各地の王室関係者や政治家に囲まれたロストロポービッチの受勲パーティを淡々と映し出したシーンからはじまる。妻のオペラソプラノ歌手ガリーナ・ヴィスネフスカヤと並んで座り彼らと談笑する様子。小澤征爾とウィーンフィルとのリハーサルの風景、若かりし頃の妻の歌う映像、モスクワのロストロポービッチ夫妻の住まいでのインタビュー。様々な映像が断片的に流れてロストロポービッチそのひととなりが出来上がってゆく。『太陽』や『牡牛座 レーニンの肖像』のソクーロフの見つめ方。


Scener Ur Ett Aktenskap
ある結婚の風景
Scener Ur Ett Aktenskap


監督 / イングマール・ベルイマン
製作 / ラーシュ=オーヴェ・カールベルイ
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / スヴェン・ニクヴィスト
音楽 / オウェ・スヴェンソン
出演 / リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ビビ・アンデショーン、ヤン・マルムショ、グンネル・リンドブロム 他
1974年 / スウェーデン


テレビシリーズを再編集して168分にまとめ劇場公開された映画。リヴ・ウルマン演じる妻とエルランド・ヨセフソン演じる夫。息がつまるほど緊張感あふれる最高に密度の高い夫婦喧嘩。おそらく世界最高の痴話喧嘩。リヴ・ウルマンもエルランド・ヨセフソンもすばらしい。全編ほぼ夫婦の話し合い、出演者もほぼ夫婦のみといっていいくらい。男と女の真実の関係、結婚のあり方、離婚、セックスや人生。非常にクールだけどベルイマンの人間に対する愛と経験がものすごくつまっているように感じる。いまは感覚としてすごい映画だと思う。でも10年後に見ても本当には理解できないのかもと思う映画。


Телец/Taurus
牡牛座―レーニンの肖像
Телец/Taurus


監督 / アレクサンドル・ソクーロフ
製作 / ヴィクトール・セルゲーエフ、才谷遼
製作総指揮 / ウラジミール・ペルソフ
脚本 / ユーリー・アラボフ
撮影 / アレクサンドル・ソクーロフ
美術監督 / ナターリヤ・コチェルギーナ
音楽 / アンドレイ・シグレ
出演 / レオニード・モズゴヴォイ、マリヤ・クズネツォーワ、ナターリヤ・ニクレンコ、レフ・エリセーエフ、セルゲイ・ラジューク 他
2001年 / ロシア、日本


主人公はかつて絶大な権力をほこり歴史を変えた男レーニン。いまは半分ボケてしまい死へ向かいつつある。その生死の境目はくもりガラスを通して見た様な血色の悪いくすんで青白く生気のない顔色で、木々の緑は奇妙に色あせたマットな質感。ねじれた画面や細部の音まで拾う音響もすべてが閉鎖的ででも負のイメージをそれほどさせないファンタジー。ソクーロフの映画はスクリーンサイズで完成されている映画でありその色使いや画面かから聞こえる音すらもスクリーンで見るべきだと思う。


Great Expectations
大いなる遺産
Great Expectations


監督 / デヴィッド・リーン
製作 / ロナルド・ニーム
原作 / チャールズ・ディケンズ
脚本 / ケイ・ウォルシュ、アンソニー・ハヴロック=アラン、デヴィッド・リーン、セシル・マッギヴァーン、ロナルド・ニーム
撮影 / ガイ・グリーン
音楽 / ウォルター・ゴール
出演 / ジョン・ミルズ、ヴァレリー・ホブソン、ジーン・シモンズ、アンソニー・ウェイジャー、バーナード・ミルズ、フランシス・L・サリヴァン 他
1946年 / イギリス


チャールズ・ディケンズ原作。技巧にこだわらない、シンプルで美しい映画らしい映画。モノクロの画面が一層この美しい映画を引き立たせる。丁寧に見せるストーリー、メルヘンなラスト、後味のよい映画。


Tickets
明日へのチケット
Tickets


監督 / エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ケン・ローチ
製作 / カルロ・クレスト=ディナ、ババク・カリミ、ドメニコ・プロカッチ、レベッカ・オブライエン
脚本 / エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ポール・ラヴァーティ
撮影 / ファビオ・オルミ、マームード・カラリ、クリス・メンゲス
美術 / アレッサンドロ・ヴァヌッチ
衣装 / マウリツィオ・バジーレ
音楽 / ジョージ・フェントン
出演 / カルロ・デッレ・ピアーネ、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、シルヴァーナ・ドゥ・サンティス、フィリッポ・トロジャーノ、マーティン・コムストン、ウィリアム・ルアン 他
2005年 / イギリス、イタリア


エルマンノ・オルミ、アッバス・キアロスタミ、ケン・ローチの世界の巨匠3人の共同監督作品。3人の監督がそれぞれが緻密に計算されて絡み合う3つの話を描く。ローマ行きの急行列車に乗った様々な人種や階級の人々。抜群に上手。あらゆる人生、愛すること、喜びと可能性と希望。到着した駅は彼らの第一歩。ラストの爽快さが気持ちいい。


Ae Fond Kiss
やさしくキスをして
Ae Fond Kiss

監督 / ケン・ローチ
製作 / レベッカ・オブライエン
製作総指揮 / ウルリッヒ・フェルスベルク
脚本 / ポール・ラヴァーティ
撮影 / バリー・アクロイド
音楽 / ジョージ・フェントン
出演 / アッタ・ヤクブ、エヴァ・バーシッスル、アーマッド・リアス、シャムシャド・アクタール、シャバナ・バクーシ 他
2004年 / イギリス、ベルギー、ドイツ、イタリア、スペイン


ケン・ローチのなかではかなり見やすい作品。スコットランドのグラスゴー。イスラム文化圏の家族と社会の現実。ラブストーリーなのに物語の中心のテーマは宗教という非常に重い問題を扱っていて、ハッピーエンドなはずなのにこれはハッピーエンドなのかと思案してしまうような作品。劇中恋人の白人女性の愛の押し付けや我の強さが際立ってイライラしてくるのはリアルだからこそ。民族問題や、移民した家族の苦労、様々な大きな壁があって、「愛」を貫く意味や意義は簡単には見つけられない。


The Wind That Shakes the Barley
麦の穂をゆらす風
The Wind That Shakes the Barley


監督 / ケン・ローチ
製作 / レベッカ・オブライエン
製作総指揮 / アンドリュー・ロウ、ナイジェル・トーマス、ウルリッヒ・フェルスベルク、ポール・トリビッツ
脚本 / ポール・ラヴァーティ
撮影 / バリー・アクロイド
美術 / ファーガス・クレッグ
編集 / ジョナサン・モリス
音楽 / ジョージ・フェントン
出演 / キリアン・マーフィ、ポードリック・ディレーニー、リーアム・カニンガム、オーラ・フィッツジェラルド、メアリー・オリオーダン 他
2006年 / イギリス、アイルランド、ドイツ、イタリア、スペイン


肌触りを感じるような質感の映画を撮れるのはケン・ローチの上手さ。1920年代、アイルランド独立戦争とその後の内戦。現実とは、自由とは。希望を持った青年たちの、追い詰めて追い詰められて翻弄された人生の悲劇。ケン・ローチの作品としては開かれた感じのする作品だけど、やはりケン・ローチ。繰り返す残酷な闘争。社会の築かれるリアリティさをドキュメンタリーのように細部までしっかり描く。


The SUN/Solntse
太陽
The SUN/Solntse


監督 / アレクサンドル・ソクーロフ
製作 / イゴール・カレノフ、アンドレイ・シグレ、マルコ・ミュレール
脚本 / ユーリー・アラボフ
プロダクションデザイン / エレナ・ズーコワ
衣装デザイン / リディア・クルコワ
編集 / セルゲイ・イワノフ
音楽 / アンドレイ・シグレ
出演 / イッセー尾形、ロバート・ドーソン、佐野史郎、桃井かおり、つじしんめい、田村泰二郎、ゲオルギイ・ピツケラウリ、守田比呂也、西沢利明 他
2005年 / ロシア、イタリア、フランス、スイス


敗戦前後の昭和天皇にスポットをあてた作品。太陽とは表向きは昭和天皇自身のことを指すけれど、それは日本のことを示唆しているのかもしれないし別のことかもしれない。主演はイッセー尾形。イッセー尾形の演じた薄暗い雰囲気の淡々とした昭和天皇の微妙な表情の揺れや感情のブレがとても上手。ソクーロフの映画にはソクーロフ独特の一種のシンプルさ、ソクーロフの美的感覚、ミニマルさがあって、それがたまらなく好き。


The Cook The Thief His Wife&Her Lover
コックと泥棒、その妻と愛人
The Cook The Thief His Wife&Her Lover


監督 / ピーター・グリーナウェイ
製作 / キース・カサンダー
脚本 / ピーター・グリーナウェイ
撮影 / サッシャ・ヴィエルニ
プロダクションデザイン / ベン・ヴァン・オズ、ヤン・ロールフス
衣装デザイン / ジャン=ポール・ゴルチエ
音楽 / マイケル・ナイマン
出演 / リシャール・ボーランジェ、マイケル・ガンボン、ヘレン・ミレン、アラン・ハワード、ティム・ロス、シアラン・ハインズ、ゲイリー・オルセン 他
1989年 / イギリス、フランス


強烈でグロテスクな色彩と徹底的な残虐な暴力と罵詈雑言。行き着く先のカニバリズム。衣装はジャン=ポール・ゴルチエ。食欲性欲、嫉妬に憎悪でぐちゃぐちゃのどろどろにしたピーター・グリーナウェイ。グリーナウェイの構築された世界はおもしろい。痛さやきわどさのみが浮いてるわけではないので美術芸術の世界。


Bad Guy
悪い男
Bad Guy


監督 / キム・ギドク
脚本 / キム・ギドク
撮影 / ファン・チョリョン
音楽 / パク・ホジュン
出演 / チョ・ジェヒョン、ソ・ウォン、チェ・ドンムン、キム・ユンテ、キム・ジョンヨン 他
2001年 / 韓国


どう切り取ってもキム・キドクの世界になるのがキム・キドクの強み。主人公ハンギ役チョ・ジェヒョンの台詞は一言のみ。ソナ役ソ・ウォンの体当たり演技に好感。結末の解釈を観客にゆだねるけどキム・キドクは決して凡庸にしない底に秘めたパワーを感じる。時々すごいパンチのある映画作るキム・キドクにくらくらする。


Shadows
アメリカの影
Shadows


監督 / ジョン・カサヴェテス
製作 / モーリス・マッケンドリー、シーモア・カッセル
撮影 / エリック・コールマー
音楽 / チャールズ・ミンガス
出演 / レリア・ゴルドーニ、ヒュー・ハード、ベン・カルーザス、アンソニー・レイ、デヴィッド・ポキティロウ 他
1959年 / アメリカ


2度目の観賞の感想。オール・ロケ&即興演出の初監督作品。チャールズ・ミンガスのほぼ即興の演奏もすてき。タイムズ・スクエアを舞台に3人兄妹を中心に繰り広げられる恋やナンパやケンカ、時々ブンガクにアートの日常。インディペンデントが生まれる瞬間の作品。レリアの恋人が兄のヒューと対面したときの一瞬の沈黙の上手さ。リアリティのある登場人物の心情描写と人種差別。やっぱりすごい。


Juliette ou La Clef des Songes
愛人ジュリエット
Juliette ou La Clef des Songes


監督 / マルセル・カルネ
撮影 / アンリ・アルカン
音楽 / ジョセフ・コズマ
出演 / ジェラール・フィリップ、シュザンヌ・クルーティエ、ロジェ・コーシモン、ガブリエル・フォンタン、イヴ・ロベール、エドゥアール・デルモン 他
1950年 / フランス


マンガの王子様みたいなジェラール・フィリップが演じるとおとぎの国のお話度がさらに増す。恋に恋する絵本の世界。白黒なのに色彩を想像できる美しい映像。『ブリガドーン』(ヴィンセント・ミネリ/1954/アメリカ)と話がかぶる(製作年は『ブリガドーン』のが後だけど)。ラストも同じく夢の世界にいる現実的でないかわいらしい理想の女性の元へ舞い戻るのだけど、"男の夢"てそんなもんか?と女側から見ると少々悪態をつきたくなるストーリー。


Cluny Brown
小間使
Cluny Brown


監督 / エルンスト・ルビッチ
製作 / エルンスト・ルビッチ
原作 / マージェリー・シャープ
脚本 / サミュエル・ホッフェンスタイン
撮影 / ジョセフ・ラシェル
音楽 / シリル・モックリッジ、エミール・ニューマン
出演 / シャルル・ボワイエ、ジェニファー・ジョーンズ、ピーター・ローフォード、ヘレン・ウォーカー、レジナルド・ガーディナー、C・オーブリー・スミス、レジナルド・オーウェン、リチャード・ヘイドン 他
1946年 / アメリカ


エルンスト・ルビッチの遺作。軽妙に愉快に女性の奔放さを描く平和で洗練されたロマンティック・コメディ。ジェニファー・ジョーンズのメイド服がとてもキュートで男前のシャルル・ボワイエにうっとり(ジュード・ロウはすごいシャルル・ボワイエ似だと思う)。男女の恋愛をこんなに洒脱に描くエルンスト・ルビッチはやっぱり巨匠。


Woman Under the Influence
こわれゆく女
Woman Under the Influence


監督 / ジョン・カサヴェテス
製作 / サム・ショウ
脚本 / ジョン・カサヴェテス
撮影 / マイク・フェリス、デヴィッド・ノウェル
音楽 / ボー・ハーウッド
出演 / ジーナ・ローランズ、ピーター・フォーク、マシュー・カッセル、マシュー・ラボルトー、クリスティーナ・グリサンティ、ニック・カサヴェテス 他
1974年 / アメリカ


心の病をかかえた妻と夫をはじめとする家族の日常。ジーナ・ローランズを見れば見るほどジーナ・ローランズの迫力と凄さに何度も感動。心の病という一種狂気めいた感情や表情や言動と、妻や母親らしい一面が表裏一体となってリアルさを生む。妻を懸命にささえる夫、無意識に母親をかばう子供たちにも心を打たれる。これはもう演技とは思えない。


Faces
フェイシズ
Faces


監督 / ジョン・カサヴェテス
製作 / モーリス・マッケンドリー
脚本 / ジョン・カサヴェテス
撮影 / アル・ルーバン
音楽 / ジャック・アッカーマン
出演 / ジョン・マーリー、ジーナ・ローランズ、シーモア・カッセル、リン・カーリン、フレッド・ドレイパー、ヴァル・アヴェリー 他
1968年 / アメリカ


ジョン・カサヴェテスのL.A.の自宅を抵当に入れ自宅で半年かけて撮影し編集に3年半かかったという作品。アメリカ中流階級の中年夫婦の14年の結婚生活が音をたてて崩れていく様子。即興とクローズアップが生み出すリアルな表情や緊張感。滑稽な乱痴気騒ぎと空虚なバカ笑い、あがいてもがいて、破綻していく。階段を映した無音のラストが胸を衝く。ものすごいパワーがあって、人間そのものを描いた作品。見事。


Opening Night
オープニング・ナイト
Opening Night


監督 / ジョン・カサヴェテス
製作 / アル・ルーバン
製作総指揮 / サム・ショウ
脚本 / ジョン・カサヴェテス
撮影 / アル・ルーバン
音楽 / ボー・ハーウッド
出演 / ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ベン・ギャザラ、ジョーン・ブロンデル、ゾーラ・ランパート、シーモア・カッセル、ピーター・フォーク 他
1978年 / アメリカ


何しろジーナ・ローランズが抜群。自分の熱烈なファンである少女が死んでしまって以来、幻覚と現実の世界をさまよい、中年として女優として、様々なあいまいなバランスで苦悩し生きる姿を演じるジーナ・ローランズがすばらしい。唯一無二だと思える彼女の演技と迫力。舞台初日の大喝采はそのまま映画の外でも大喝采となる。


The Killing of a Chinese Bookie
チャイニーズ・ブッキーを殺した男
The Killing of a Chinese Bookie


監督 / ジョン・カサヴェテス
製作 / アル・ルーバン
脚本 / ジョン・カサヴェテス
撮影 / フレデリック・エルムズ、マイク・フェリス、アル・ルーバン
音楽 / ボー・ハーウッド
出演 / ベン・ギャザラ、ティモシー・アゴリア・ケリー、シーモア・カッセル、アジジ・ジョハリ、メーダ・ロバーツ、アリス・フリードランド、アル・ルーバン 他
1976年 / アメリカ


カサヴェテスの映画はかっこいい。この作品は見た中では『グロリア』(1980)が近い。かっこいい理由が全体の雰囲気だったりするから説明しづらくて、すべてがカサヴェテスの世界で、かっこいい映画て実は世の中にあまりない気がするからカサヴェテスの映画はやっぱりほんとにかっこいいんだと思う。彼の広い世界と視野とでなんと上等な作品になっているんだろう。小物役のベン・ギャザラもいい。楽しくてわくわくしてクールでしびれる映画。


3 Women
三人の女
3 Women


監督 / ロバート・アルトマン
製作 / ロバート・アルトマン
脚本 / ロバート・アルトマン
撮影 / チャールズ・ロッシャー・Jr
音楽 / ジェラルド・バズビー
出演 / シェリー・デュヴァル、シシー・スペイセク、ジャニス・ルール、ロバート・フォーティエ、ルース・レルソン、ジョン・クロムウェル、パトリシア・レズニック、デニス・クリストファー 他
1977年 / アメリカ


シェリー・デュヴァル(『シャイニング』のウェンディ役)、シシー・スペイセクの二人の存在自体が半分以上物語を作っているといっても過言ではないくらい雰囲気を盛り上げている。奇妙な物語は親切な説明のないまま進行し、精神的に追い詰められるような感覚。死産だった自宅出産のシーンがトラウマになりそうなインパクト。シェリー・デュヴァル&シシー・スペイセクのコンビは相当すごい。


Zoo
動物園
Zoo


監督 / フレデリック・ワイズマン
製作 / フレデリック・ワイズマン
撮影 / ジョン・デイヴィー
1993年 / アメリカ


アメリカでドキュメンタリー映画の第一人者であるフレデリック・ワイズマンによる、マイアミにあるメトロポリタン動物園の様子を撮った真摯なドキュメンタリー。動物園にそのまま入りこんだかのような一歩ひいた目線での映像。決してナレーションを入れて解説したり感動的にしたりするわけでもなく淡々と動物園の日常を描く。死産したサイの子どもの解剖では頭を切り落とし写真を撮り、身体は無造作に2人かかりでトラックへ。半殺しにしたウサギを蛇のエサにした様子、ヤマイヌの去勢手術。動物を見て楽しむ人々の様子以外の、冷淡にも思えるその映像には動物園経営の日常がはっきり映し出されている。


Hiroshima Mon Amour
二十四時間の情事/ヒロシマモナムール
Hiroshima Mon Amour


監督 / アラン・レネ
製作 / サミー・アルフォン、永田雅一
原作 / マルグリット・デュラス
脚本 / マルグリット・デュラス
撮影 / サッシャ・ヴィエルニ、高橋通子
音楽 / ジョヴァンニ・フスコ、ジョルジュ・ドルリュー
出演 / エマニュエル・リヴァ、岡田英次、ベルナール・フレッソン、アナトール・ドーマン 他
1959年 / フランス、日本


マルグリット・デュラスの脚本の世界をそのまま映像化した作品。忘れるという罪悪感に苛まれるエマニュエル・リヴァがそのままデュラスの本の主人公。記憶の忘却、愛すること、過去に立ち止まって美しい生きる屍にはなれない葛藤。彼女が鏡の前で独白自問するシーンにくらくらする。「君はヒロシマで何も見なかった。何も」「私はすべてを見たの。すべてを」岡田英次とエマニュエル・リヴァの台詞には愛していながら決して交われない溝があることを示唆する。


Whisky
ウィスキー
Whisky


監督 / フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール
製作 / フェルナンド・エプスタイン、クリストフ・フリーデル、エルナン・ムサルッピ
脚本 / フアン・パブロ・レベージャ、パブロ・ストール、ゴンサロ・デルガド・ガリアーナ
撮影 / バルバラ・アルバレス
音楽 / ペケーニャ・オルケスタ・レインシデンテス
出演 / アンドレス・パソス、ミレージャ・パスクアル、ホルヘ・ボラーニ、ダニエル・エンドレール、アナ・カッツ、アルフォンソ・トール 他
2004年 / ウルグアイ、アルゼンチン、ドイツ、スペイン


超零細工場で働く寡黙な人々、規則正しい退屈にも思える日常生活、少しぎこちない大人の恋愛と生き方。カウリスマキをもう少しドライにした感じの作品。ウルグアイのまっすぐな道、乾いた空気、黄土色の土と水色の空、はっきりした景色がストーリー対照的で印象的。画面からわざときれた人物の顔や何が書いてあるか見せない手紙。画面の外にこぼれ落ちてるストーリーが想像をかきたてる。監督が31歳というのがちょっと驚き。「ウィスキー」=「はい、チーズ」の意味。


Il ferroviere
鉄道員
Il ferroviere


監督 / ピエトロ・ジェルミ
脚本 / アルフレード・ジャンネッティ、ピエトロ・ジェルミ、ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ
撮影 / レオニーダ・バルボーニ
音楽 / カルロ・ルスティケリ
出演 / ピエトロ・ジェルミ、エドアルド・ネボラ、ルイザ・デラ・ノーチェ、シルヴァ・コシナ、サロ・ウルツィ 他
1956年 / イタリア


ネオリアリズム!庶民の生活、イタリア映画!という感じの映画。喜び、悲しみ、怒り、家族ひとりひとりの人生がつまって狭くも広がりのある内容。監督であるピエトロ・ジェルミ自身が父親役を演じている。メロドラマの枠におさまらない家族の愛、母の愛。


Senso
夏の嵐
Senso


監督 / ルキノ・ヴィスコンティ
製作 / ドメニコ・フォルジェス・ダヴァンツァーティ
脚本 / ルキノ・ヴィスコンティ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、カルロ・アリアネッロ、ジョルジョ・バッサーニ、ジョルジョ・プロスペリ
原作 / カミッロ・ボイト
原案 / ルキノ・ヴィスコンティ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ
撮影 / ロバート・クラスカー、G・R・アルド
美術 / オッタビオ・スコッティ、ジーノ・ブローショ
衣装 / ピエロ・トージ、マルセル・エスコフィエ
出演 / アリダ・ヴァリ、ファーリー・グレンジャー、マッシモ・ジロッティ、マルチェラ・マリアーニ、リーナ・モレッリ、ハインツ・モーク、クリスチャン・マルカン 他
1954年 / イタリア


オーストリア軍が占領している1866年のヴェネチアが舞台。オペラにはじまり中尉と公爵夫人の壮大なメロドラマ愛憎劇。得意の貴族のきらびやかさ・退廃・破滅を描くビスコンティ節にうっとり。苦悩、堕落、嫉妬、侮辱。格調の高い美や理想や幻想を保ちつつ崩れていく様はなんと美しい。恋愛ものならこのくらい心酔した物語でないと。


HATSU-YUME
はつゆめ
HATSU-YUME


監督・撮影 / ビル・ヴィオラ
スチール写真 / キラ・ペロフ
1981年 / アメリカ、日本


ビル・ヴィオラ夫妻が日本に滞在した1980年代の1年半の間に撮影した映像。水面に映り揺れ動く山々、風、雲、大気の流れ、光の残像、影、大なるもの小なるもの、微細な時間の流れ。粒子のレベルで美しい。そうか、『I Do Not Know What It Is I Am Like』(1986)の鷹の目に映る映像はこの映像から繋がるのだと思った。


Mouchette
オール・ザット・ジャズ
All That Jazz


監督 / ボブ・フォッシー
製作 / ロバート・アラン・アーサー
脚本 / ロバート・アラン・アーサー、ボブ・フォッシー
撮影 / ジュゼッペ・ロトゥンノ
音楽 / ラルフ・バーンズ
出演 / ロイ・シャイダー、ジェシカ・ラング、アン・ラインキング、エリザベート・フォルディ、ベン・ヴェリーン、サンダール・バーグマン 他
1979年 / アメリカ


「ショーの始まりだ」と繰り返されるつぶやき。人生をきらびやかなブロードウェイのショーダンスに例える。妄想と幻想の世界でのミュージカルシーン。ダンサーたちの脚線美に当時の粋なミュージック。生きる・死ぬという重いテーマですらいろんな仕掛けでわざと軽妙に語られる。マシュー・バーニーの『クレマスター』シリーズにこの『オール・ザット・ジャズ』へのオマージュが込められていると思われるダンスシーン。その円舞がとてもシュールで好き。人の身体の動きは楽しい。


Mouchette
少女ムシェット
Mouchette


監督 / ロベール・ブレッソン
製作 / アナトール・ドーマン
原作 / ジョルジュ・ベルナノス
脚本 / ロベール・ブレッソン
撮影 / ギスラン・クロケ
音楽 / クラウディオ・モンテヴェルディ、ジャン・ウィエネル
出演 / ナディーヌ・ノルティエ、ポール・エベール、マリア・カルディナール、ジャン=クロード・ギルベール、ジャン・ヴィムネ、マリーヌ・トリシェ 他
1967年 / フランス


アルコール依存で働く気のない父と寝たきりの母、そして赤ん坊の妹と暮らす14歳の少女ムシェット。父親の暴力と貧困生活に加え、普通に暮らす普通の同級生からも孤立し、14歳の幼い少女自身の肉体さえ奪われる。ムシェットの目が常に疑心に満ちているのは周りにあるのは孤独と絶望だけだから。「私、アルセーヌの愛人なの」という言葉に胸が苦しくなる。彼女に救いは?移動遊園地で束の間楽しんだその笑顔が印象的なだけに、ムシェットの選んだ道は心に響く。ストーリーもカメラも誰もムシェット自身について説明や憐れみはなく厳格に純粋に淡々と少女を映し出すブレッソン。『バルタザールどこへ行く』(1964)と同種の悲しみを感じる。ブレッソンの映画はものすごく好き。