foreign movie vol.15


Belle De Jour
昼顔
Belle De Jour


監督 / ルイス・ブニュエル
製作 / レイモン・アキム、ロベール・アキム
脚本 / ルイス・ブニュエル、ジャン=クロード・カリエール
原作 / ジョゼフ・ケッセル
撮影 / サッシャ・ヴィエルニ
美術 / ロベール・クラヴェル
衣装 / イヴ・サンローラン
出演 / カトリーヌ・ドヌーヴ、ジャン・ソレル、ジュヌヴィエーヴ・パージュ、ミシェル・ピコリ、ピエール・クレマンティ、マーシャ・メリル、ベルナール・フレッソン 他
1967年 / フランス


夫はやさしいハンサムな医師。深い愛はあるものの性欲と快楽には結びついていない欲求不満の妻セブリーヌ。幻想と妄想を胸に抱きながら、つい足を運んだ娼婦宿で愛のない肉欲だけの快楽におぼれていく。パリの街並み、馬車などの絵画的な映像に、ピエール・クレマンティの杖のような一種怖さを醸しだすアイテム、屈折し倒錯するセブリーヌの世界にすべてが魅力を与えている。結局すべてが妄想だったということ。余韻も後味も好みの映画。


Stanley
Stanley

監督 / Suzie Templeton
2002年 / イギリス


Suzie Templeton作品2本目。キャベツを愛した男のブラックユーモア。2本見ただけなのにSuzie Templetonは思ったより印象強い。イギリスらしいといえばイギリスらしい先をゆくブラザーズ・クエイみたいな雰囲気もある。


Dog
Dog

監督 / Suzie Templeton
2000年 / イギリス


『Peter and the Wolf』(32分の作品で制作費3億円!)で2007年アカデミー短編アニメ賞、アヌシー・クリスタル(グランプリ)を受賞したSuzie Templetonの作品をはじめて見る。たった5分の短編人形アニメーションなのに内容はとても濃密。暗い画面にワケありげな暗い話。見えないような細部にまで凝ったような作品で監督が女性だとちょっと分からない。


Madame Tutli-Putli
Madame Tutli-Putli

監督 / Chris Lavis&Maciek Szczerbowski
2007年 / カナダ


NFB発、人形アニメーションと実写とCGを駆使して作られた短編作品。本物のような仕草すべても驚きの連続だけれど、目がありえないくらいリアルだと思ったら目は実写だとか。実写部分を人形と合成する為だけに9ヶ月費やしたそうで、その完成度は非常に高いく、コマ撮り(基本)+実写+CGという新しいアニメーションを見た気がする。ストーリーはそれほどだけど、とにかくアニメーション技術がすごい。


Les Enfants du Paradis
ルドルフ 赤鼻のトナカイ
Rudolph,the red-nosed reindeer


監督 / 長島喜三、ラリー・レーマ
製作 / アーサー・ランキン・Jr
原作 / ロバート・メイ
脚本 / ロメオ・ミュラー
声の出演 / バール・アイヴス、ラリー・D・マン、ポール・ソールズ
1964年 / アメリカ


チェブラーシカやミトンに通じるアメリカ発パペットアニメーション。アメリカ発ではあるけれど日本における人形アニメーションの第一人者、日本で最初の人形アニメーションを製作した持永只仁を中心にした日本人スタッフでかためられている。1958年、持永只仁は「ちびくろさんぼのとらたいじ」で第1回バンクーバー国際映画祭・児童映画部門でグランプリを受賞していて当時子供番組の名プロデューサーだったアーサー・ランキン.Jrの目にとまったせい。話はクリスマスタウンで生まれたトナカイのルドルフは生まれつきのピカピカ光る赤い鼻のせいでサンタさんにも見放され(!)みんなからも仲間はずれにされてしまうというところからはじまるのだけど、外見がまわりと違うせいでいじめられるというのはディズニーの「ダンボ」(1941)ほどじゃないにしろ人種差別に通じアメリカらしいといえばアメリカらしいわりと極端な話。歌と同じくルドルフのピカピカする鼻のおかげで暗闇を走ることができたという一見円満なハッピーエンドだけど、自分の周りと違う外見を認めてそれを自らの力で個性として活かすのはこれはなかなかポジティヴすぎてむずかしいこと。アニメーション自体は日本人制作らしくかわいらしいけれど、こういったメッセージ性が妙に浮きだっている気がして少し残念な気がした。(「ダンボ」はつまりはそういう話なので評価が高いのだと思う)


Les Enfants du Paradis
天井桟敷の人々
Les Enfants du Paradis


監督 / マルセル・カルネ
製作 / フレッド・オラン
脚本 / ジャック・プレヴェール
撮影 / ロジェ・ユベール、マルク・フォサール
音楽 / モーリス・ティリエ、ジョセフ・コズマ
出演 / アルレッティ、ジャン=ルイ・バロー、マリア・カザレス、マルセル・エラン、ピエール・ブラッスール 他
1945年 / フランス


19世紀の半ばパリを舞台にした2部構成からなる人々の恋愛絵巻。195分もあるのにこの作品のなかにいるのが心地いい。ガランスが絶世の美女なのがちょっとよく分からないけど、ロマンチックでナイーブなバチストのマイムはすばらしいし、街の雑踏も大衆も人を愛することも憎しみも悲しみも、何より映画自体が美しい映画。


Comedies et proverbs :Pauline a La Plage
海辺のポーリーヌ
Comedies et proverbs :Pauline a La Plage


監督 / エリック・ロメール
製作 / マルガレート・メネゴス
脚本 / エリック・ロメール
撮影 / ネストール・アルメンドロス
音楽 / ジャン=ルイ・ヴァレロ
出演 / アマンダ・ラングレ、アリエル・ドンバール、パスカル・グレゴリー 他
1983年 / フランス


エリック・ロメール‘喜劇と格言劇’シリーズ第3弾。15歳のポーリーヌは年上の従姉とノルマンディの夏を過ごす。大人の恋愛談義にまじったり海辺で知り合った男の子と初体験をしたり、という話なのに決して陳腐にならずフランス的で哲学の香漂うロメールのセンス。きれいで美しい時間の流れ方。


Comédies et proverbs :Le Beau mariage
飛行士の妻
Comedies et proverbs :Le Beau mariage


監督 / エリック・ロメール
製作 / マルガレート・メネゴス
脚本 / エリック・ロメール
撮影 / ベルナール・リュティック
音楽 / ジャン=ルイ・ヴァレロ
出演 / フィリップ・マルロー、マリー・リヴィエール、アンヌ・ロール・ムーリー、マチュー・カリエール、ファブリス・ルキーニ 他
1980年 / フランス


エリック・ロメール‘喜劇と格言劇’シリーズ第1弾。冴えない苦学生フランソワの恋の顛末。ああこれがフランスのエスプリ!と思わせる絶妙な展開。こんな他愛ない話をここまで細かい描写ができることに舌を巻く。恋愛の事細かな、あきらかにどうでもいい会話ややりとりを延々としてるのにそれだけで終わらない(ロメールの映画ならそれで終わってもいいと思うけど)ひねりを効かせてるのがみそ。15歳の女の子がここまで恋愛や女について辛口に語れるのはさすがパリっ娘、と感心するのを通り越して面白い。


Comédies et proverbs :Le Beau mariage
美しき結婚
Comedies et proverbs :Le Beau mariage


監督 / エリック・ロメール
製作 / マルガレート・メネゴス
脚本 / エリック・ロメール
撮影 / ベルナール・リュティック
音楽 / ロナン・ジール、シモン・デジノサン
出演 / ベアトリス・ロマン、アンドレ・デュソリエ、アリエル・ドンバール、フェオドール・アトキン、ユゲット・ファジェ、ヴァンサン・ゴーティエ 他
1981年 / フランス


エリック・ロメール‘喜劇と格言劇’シリーズ第2弾。アンティークショップで働くサビーヌは不倫に嫌気がさしふと結婚しようと心に決める。恋愛妄想を爆走させる強引な女の子のコミカルな作品。専業主婦への憧れや男が外で働き女が家を守るという役割分担の憧れだとか結婚観が日本と似ているため妙に親近感がわく(実際フランスと日本の結婚観が近いのか分からないけど)。パーティでかかる音楽のピコピコ電子音楽が猛烈に時代を感じさせて面白かった。


Comédies et proverbs :Le Rayon vert
緑の光線
Comedies et proverbs :Le Rayon vert


監督 / エリック・ロメール
製作 / マルガレート・メネゴス
脚本 / エリック・ロメール
撮影 / ソフィー・マンティニュー
音楽 / ジャン=ルイ・ヴァレロ
出演 / マリー・リヴィエール、リサ・エレディア、ヴァンサン・ゴーティエ、ベアトリス・ロマン 他
1985年 / フランス


エリック・ロメール‘喜劇と格言劇’シリーズ第5弾。独りぼっちの夏の休暇をなんとかしようとする女性をドキュメンタリーのように追う。フランス人の「ヴァカンスを楽しまなくちゃ」という強迫観念にも似た執着はこの映画を見ているとよく分かる。情緒不安定気味のデルフィーヌの存在感。ジュール・ベルヌの小説「緑の光線」で、光の屈折のせいで日没の瞬間に現れる緑の光線があるといい、その光が見えたものは自分の心と相手の心がはっきりとわかると話し合うおじいさんとおばあさんたちの会話が不思議に印象的。女性同士の会話に女性の心理を繊細に描きだしている、ロメールのこういう映画好き。


三峽好人/Still Life
長江哀歌(エレジー)
三峽好人/Still Life


監督 / ジャ・ジャンクー
脚本 / ジャ・ジャンクー
撮影 / ユー・リクウァイ
音楽 / リン・チャン
出演 / チャオ・タオ、ハン・サンミン、ワン・ホンウェイ、リー・チュウビン、マー・リーチェン、チョウ・リン、ホァン・ヨン 他
2006年 / 中国


2006年ヴェネチア国際映画祭グランプリの金獅子受賞作品。2009年に完成予定の国家をあげての大事業、長江・三峡ダム建設プロジェクト。このダムの街に住む市井の人々の暮らしを見つめた人生ドラマ。解体寸前の建物の退廃的風景と靄のかかる長江の雄大な景色の対比を一貫して見せつける。現代中国の経済成長による大きな大きな変貌は人々の生活に多大な影響を与え、時に家族をばらばらに孤独にさせる。"それでも生きる"という根元的な意味を持つエネルギー溢れる人々の暮らし。ジャ・ジャンクーを見るのは『一瞬の夢』(1997)に続き2作目だけど、すごい。なんて映画を撮る監督だろうと感激する。いまジャ・ジャンクーと同じ38歳くらいの映画監督でこんなにセンスとパワーを持つ監督がいる?ロケット発射するモニュメント(住民の移住を記念して市が建てたものらしい)やビルの解体の唐突なCGに関して賛否両論あるみたいだけど、私は全部ひっくるめてジャ・ジャンクーが好き。意図的な唐突で稚拙なCGがずしんと心に響くのは、水没してなくなった街やかかわる人々の幻想や苦しさ、記憶、あらゆる心情が的確に表されてるからだろうと思う。喧騒と沈黙が同時にあり、逆光で映し出される絵的な画面がとても映画的で美しい。


Flåklypa Grand Prix
ピンチクリフ グランプリ
Flaklypa Grand Prix


監督 / イヴォ・カプリノ
脚本 / クジェル・オークラスト、レモ・カプリノ、クジェル・シバーセン、イヴォ・カプリノ
撮影 / チャールズ・パティ、イヴォ・カプリノ
セット・モデル&テクニカル効果 / ビャーネ・サンデムーセ
音楽 / ベント・ファブリシャス=ビュール
1975年 / ノルウェー


そこまで凝らなくても!というくらい何から何まですべて人形とセットでできあがっている、ノルウェーの人形アニメ(バンドの演奏しているシーンではなんと全ての楽器に対して演奏者の指の動きが正確に反映されているらしい!)。制作にかかったのは5年。ほんわかしてるのにカーレースのスピード感あふれるエンタテインメント作品。乙女向けではなく男の子向けアニメーション。外国ぽいキモかわいいキャラクター(むしろキモいよりなのがおもしろい)、あひるとカササギのハーフというずるがしこそうなソラン・グンナシェンを差し置いて、どんくさいハリネズミのルドビグがいちばんキュート。配色を子ども向けにしていないのが(たとえばイル・テンポ・ギガンテ号の色彩の地味なこと!)北欧や欧州のアニメーションという気がする。ウォレスとグルミットはもしかしてここから生まれたのかな、と思わせる類似設定とほのぼの&スピード感。


Volver
ボルベール<帰郷>
Volver


監督 / ペドロ・アルモドバル
製作 / エステル・ガルシア
製作総指揮 / アグスティン・アルモドバル
脚本 / ペドロ・アルモドバル
撮影 / ホセ・ルイス・アルカイネ
編集 / ホセ・サルセド
音楽 / アルベルト・イグレシアス
出演 / ペネロペ・クルス、カルメン・マウラ、ロラ・ドゥエニャス、ブランカ・ポルティージョ、ヨアンナ・コボ、チュス・ランプレアベ、アントニオ・デ・ラ・トレ 他
2006年 / スペイン


ペネロペ・クルスをはじめとする女性たちが織りなす血と絆と心の葛藤。ペネロペ・クルスがいい。気性の激しさや迷いのない颯爽とした立ち振る舞い、母の強さやたくましさを体現しつつ女として美しいペネロペ・クルスが格好いい。スカートをたくしあげ下着を下げて便座に座って用を足す姿も(こういう女性のトイレシーンを入れてくる監督て昨今多いような)、タンゴを歌う姿も、正面切って涙を流す姿も美しい。ペドロ・アルモドバルの女性主人公作品は、私は自分自身が結婚や出産をしていく度にどんどん好きになる。『オール・アバウト・マイ・マザー』(1998)も『トーク・トゥ・ハー』(2002)もたぶんいま見たらもっと好きになると思う。物語自体にリアリティはないのに鮮烈な色の使い方も上手で女性の本質を描く希有な監督。


Le Bonheur
幸福
Le Bonheur


監督 / アニエス・ヴァルダ
製作 / マグ・ボダール
脚本 / アニエス・ヴァルダ
撮影 / ジャン・ラビエ、クロード・ボーゾレーユ
音楽 / ジャン=ミシェル・デュファイ
出演 / ジャン=クロード・ドルオ、クレール・ドルオ、マリー=フランス・ボワイエ 他
1964年 / フランス


女性監督による女性の視点で撮られる皮肉な「幸福」。夫婦と幼い子ども2人の夢に描いたような森のピクニック。妻を深く愛するよき夫と、同様に夫を深く愛する優しく従順な妻。幼い子どもは2人ともかわいらしく、幸福に満ちた日常。ソフト・フォーカスで映し出す印象派の絵画のようなやわらかい空気感。色彩の多様。所々に挿入される静止画や反復。まるで絵を描いているような感覚の映画。バックにはモーツァルトの明るいクラリネット曲が流れ、説明的なものはなく、すべてを淡々と映す。物語より前面に押し出されたこの映像に感心した。これが映画の醍醐味なんだと思った。ジャン・ルノワール『ピクニック』(1936)のオマージュであり、作品内でテレビに映される映画は同じくルノワールの『草の上の昼食』(1959)。物語映画としてのルノワール好き心もくすぐられる意外な良作品。


Pickpocket
スリ(掏摸)
Pickpocket


監督 / ロベール・ブレッソン
脚本 / ロベール・ブレッソン
撮影 / レオンス=アンリ・ビュレル
音楽 / ジャン・バディスト・リュリ
出演 / ピエール・レマリ、マルタン・ラサール、マリカ・グリーン、ピエール・エテックス 他
1960年 / フランス


窃盗行為(スリ)に焦点をあて、素人を集めてドキュメンタリー仕立てにした映画。ただただその手口をアップで執拗に映し出し、何度も見ているうちにそれが窃盗という犯罪である緊張感から開放され、芸術的ともいえる手口に痛快さを感じるようになる心理。ブレッソンらしく禁欲的で寡黙な映画。シンプルなのにこんなに底が深く、目の前につきつけられるとクラクラする。一気にラストですべてが昇華するのが見事。ブレッソンの撮りたい女優さんはどの人も素敵だけどこの作品に登場するマリカ・グリーンもすごく好き。ブレッソンの女性の趣味はすごくいいと思う。


Sommarnattens leende
夏の夜は三たび微笑む
Sommarnattens leende


監督 / イングマール・ベルイマン
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / グンナール・フィッシェル
音楽 / エリック・ノードグレーン
出演 / グンナール・ビョルンストランド、ウーラ・ヤコブソン、エヴァ・ダールベック、ヤール・キューレ、ビビ・アンデショーン、ハリエット・アンデルセン、ビルギッタ・ヴァルベルイ 他
1955 / スウェーデン


ベルイマン脚本の北欧的なのどかさ漂う恋愛コメディ。ベルイマンはハードでパンチのきいた重い作品の方が断然好きなのだけど、ルノワール『ゲームの規則』に近いと言われるとそんな気もするこの作品はこのジャンル内ではかなり上位。メイド役のハリエット・アンデルセンは『不良少女モニカ』『叫びとささやき』のイメージが先行しててこの軽いノリのエッチなメイド、という役柄が個人的にとてもおもしろかった。デジレーがギターを弾きながら歌うシーンがいいなあ。


Viskningar Och Rop
叫びとささやき
Viskningar Och Rop


監督 / イングマール・ベルイマン
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / スヴェン・ニクヴィスト
出演 / イングリッド・チューリン、ハリエット・アンデルセン、リヴ・ウルマン、カリ・シルヴァン 他
1972年 / スウェーデン


くすんだ朱の色が沈黙と恐怖を最大限に活かす。顔面蒼白、末期がんの次女の断末魔の叫び。時計の音、かすれた呼吸。淡々としたクローズアップが恐ろしいほどの緊張感を生み、そこから湧き出る恐怖が壮絶で悲痛で目をそむけたくなるほど圧倒的。スヴェン・ニクヴィストの撮影とベルイマンのタッグは最強と思える。「"叫び"も"ささやき"もかくして沈黙に帰する」。これ以上もこれ以下もない、他者を寄せ付けないすごすぎる孤高の映画。


Smultronstallet/Wild Strawberries
野いちご
Smultronstallet/Wild Strawberries


監督 / イングマール・ベルイマン
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / グンナール・フィッシェル
音楽 / エリック・ノードグレーン
出演 / ヴィクトル・シェストレム、イングリッド・チューリン、グンナール・ビョルンストランド、ビビ・アンデショーン、グンネル・リンドブロム、マックス・フォン・シドー 他
1957年 / スウェーデン


人との付き合いを拒んで友人を持たなかった老人医師イサク。名誉博士号を受けるため現地まで車で向かう途中に見る白昼夢のようなイサクの人生の回想。老いること、老いても生き続けること、死ぬことへの恐怖、償えない罪を抱え幸福だった過去を思い出すこと、後悔、自責の念。息子の行動に対して強く責任を感じるイサクに胸が苦しくなる。当時のベルイマンは39歳。39歳にしてこういう作品を撮れることが脅威。


Host Sonaten/Autumn Sonata
秋のソナタ
Host Sonaten/Autumn Sonata


監督 / イングマール・ベルイマン
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / スヴェン・ニクヴィスト
出演 / イングリッド・バーグマン、リヴ・ウルマン、レナ・ナイマン、グンナール・ビョルンストランド、エルランド・ヨセフソン 他
1978年 / スウェーデン


イングリッド・バークマン vs リブ・ウルマンという顔ぶれ、そしてとてつもないパワーを感じるベイルマンの組み合わせがたまらない。胸が苦しくなるほどの緊迫感と緊張感。『ある結婚の風景』が最強の夫婦喧嘩だとしたら『秋のソナタ』は最強の親子喧嘩。本音と建前のせめぎあい、愛の欠乏ゆえの欲求不満の爆発。まわらない舌で発する言葉で「ママ!」「来て!」と繰り返すベッドから床に落ちた脳性小児麻痺の妹ヘレーナと母を責めるエヴァと母親のアップ。人の心情の根源を見せるベルイマンのアップはすごい。ひたすら圧倒的ですごい。すれ違い憎しみあう互いに偽善的な母娘は、一体どちらが"かわいそう"だったのか考える。"ありのままの私"とは?


飲食男女/Eat Drink Man Woman
恋人たちの食卓
飲食男女/Eat Drink Man Woman


監督 / アン・リー
製作 / シュー・リーコン
脚本 / アン・リー、ジェームズ・シェイマス、ワン・フイリン
撮影 / ジョン・リン
音楽 / メイダー
出演 / ロン・ション、ヤン・クイメイ、ワン・ユーウェン、シルヴィア・チャン、ウィンストン・チャオ、ン・シンリン 他
1994年 / 台湾


舞台は台北。適齢期の三姉妹と妻に先立たれたその父親。毎週末、中華料理の達人の父親の作る料理を円卓で囲む晩餐会。とにかく料理をするシーンや食べるシーンや多く、食は人生の一部なんだと感じる。そしてどの料理もおいしそう。次女が料理を作りながら「私、手の込んだ料理が好きなの」というセリフが好き。登場人物の人生の転機はあるけれど、とりたてて重大な事件があるわけでもなく、とある一家の生活の一部をきりとった「家族」と「つながり」の映画。家族が離れ離れになるのに「つながり」を感じる、後味のいい作品。


Pushing Hands
推手
Pushing Hands


監督 / アン・リー
製作 / テッド・ホープ、ジェームズ・シェイマス、アン・リー、エミリー・リウ
脚本 / アン・リー、ジェームズ・シェイマス
撮影 / ジョン・リン
音楽 / チュイ・シャオソン
出演 / ラン・シャン、ワン・ボー・チャオ、ワン・ライ、デブ・スナイダー 他
1991年 / 台湾、アメリカ


少し前に見た『ブロークバック・マウンテン』(2005)も昔見た『ウェディング・バンケット』(1993)もいつまでも心に残るようなシーンやエピソードがあるアン・リーの長編デビュー作。言葉の通じない中国人の舅との関係に苦しむアメリカ人妻、というこの作品もちょっと不思議な設定ながらデビュー作とは思えない落ち着いたセンスと質感。言葉少なで静かな映画というだけでない心情的な重さや反対にユーモア、いろんな要素が散りばめられている秀作。


Oliver Twist
オリヴァ・ツイスト
Oliver Twist


監督 / デヴィッド・リーン
原作 / チャールズ・ディケンズ
脚本 / デヴィッド・リーン、スタンリー・ヘインズ
撮影 / ガイ・グリーン
音楽 / アーノルド・バックス、ミュア・マシースン
出演 / アレック・ギネス、ロバート・ニュートン、ジョン・ハワード・デイヴィス、ケイ・ウォルシュ、ハワード・デイヴィース、アンソニー・ニューリー、ダイアナ・ドース、ラルフ・トルーマン 他
1947年 / イギリス


ロマン・ポランスキー版ではなく1947年製作モノクロのデヴィッド・リーン版。嵐のなかずぶ濡れになった女性が救貧院に駆け込み男の子を出産する冒頭のシーンからすでにおもしろい。男たちの脂ぎった顔や女たちの揺れる脂肪、ぎらぎらした貧民街、においを感じさせる陰影の上手な作品。『カリガリ博士』にあるようなドイツ表現主義的な歪んだようなどこかおかしい遠近が狂ったセットや恐怖が迫りくるシーンはとても映画的で好み。壮大な逮捕劇のラストシーンが必要だったかは微妙だけれど名作らしい名作。


Romeo e Giulietta
ロミオとジュリエット
Romeo e Giulietta


監督 / フランコ・ゼフィレッリ
製作 / ジョン・ブラボーン、アンソニー・ハヴロック=アラン
原作 / ウィリアム・シェイクスピア
脚本 / フランコ・ゼフィレッリ、フランコ・ブルサーティ
撮影 / パスクァリーノ・デ・サンティス
音楽 / ニーノ・ロータ
出演 / オリヴィア・ハッセー、レナード・ホワイティング、マイケル・ヨーク、ミロ・オーシャ、ブルース・ロビンソン、ジョン・マケナリー、パット・ヘイウッド 他
1968年 / イギリス、イタリア


シェイクスピア原作の『ロミオとジュリエット』といえばなんといってもフランコ・ゼフィレッリ版のオリヴィア・ハッセー主演作。と「CINEMA APIED」で執筆されていた方がいたなーと思って見てみる。当時15歳のオリヴィア・ハッセーのあどけなさと美しさが同居した顔立ちに叶姉妹ばりの肉体美というアンバランスさがかなりハレンチで思わず見とれる。たった5日間の激しい恋。ハーレクインロマンス。ロミオ(15歳)とジュリエット(13歳)のラブシーンがいやらしすぎ。愛しあう10代のセキララさに思わずどきどきする。オリヴィア・ハッセーとレナード・ホワイティングの美少女美少年があまりにぴったりでさらにシェイクスピアの独特な詩的な台詞を自分の言葉として放つ演技力。たしかに他の『ロミオとジュリエット』を見る気にはなれないかも。


Belle Toujours
夜顔
Belle Toujours


監督 / マノエル・ド・オリヴェイラ
製作 / セルジュ・ラルー
脚本 / マノエル・ド・オリヴェイラ
撮影 / サビーヌ・ランスラン
美術 / クリスティアン・マルティ
衣装 / ミレーナ・カノネロ
出演 / ミシェル・ピッコリ、ビュル・オジエ、リカルド・トレパ、レオノール・バルダック、ジュリア・ブイセル、ローレンス・フォスター、ブノワ・グルレ、イヴ・ブルトン 他
2006年 / ポルトガル、フランス


ルイス・ブニュエル監督、カトリーヌ・ドヌーブ主演『昼顔』の38年後の設定。何も語らないのに表情ですべてをみせるミシェル・ピコリがうますぎ。重要な再会のシーンではふたりの台詞は聞こえない。薄暗いロウソクに灯された部屋での、オリヴェイラの美しすぎる官能的な晩餐の様子。食事の音。箱の中の虫の羽音。ニワトリ。『昼顔』に敬意を払い決して世界を壊すことなく大人の心理描写で『夜顔』を撮ったオリヴェイラ。10歩くらい先をゆくすべての台詞にくらくら。「女という存在は自然が生んだ、最大の謎だ」オリヴェイラはいつまでも現役だと思わせる台詞。パリの風景が出てくるすべての映画を圧巻するパリの風景にうっとりする。