foreign movie vol.16


Saraband
サラバンド
Saraband


監督 / イングマール・ベルイマン
製作 / ピア・エーンヴァル
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / レイモンド・ウェンメンロヴ、ペーオー・ラント、ソフィ・ストリッド
美術 / ヨーラン・ワスベリイ
衣裳 / インガー・ペルソン
編集 / シルヴィア・インゲマルソン
出演 / リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ボリエ・アールステット、ユーリア・ダフヴェニウス、グンネル・フレッド 他
2003年 / スウェーデン


89歳で亡くなったイングマール・ベルイマン。85歳の時の最期の作品。『ある結婚の風景』の続編と言われ、マリアンとヨハンが離婚後30年ぶりに再会。リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソンそれぞれが年老い、30年前と同じように顔にクローズアップされると過ぎた年月がありありと浮かび上がる。この作品は男女や夫婦の愛の問い方というより、父と娘の確執や葛藤に注目。このビリビリくる心情のリアルさや人間の本質や根源に迫る描き方はさすがにベルイマン。ヨハンがマリアンに言う台詞が印象深い。「いい夫婦には2つの要素が必要らしい 固い友情と変わらぬ性衝動だ」


Scener ur ett aktenskap
ある結婚の風景<テレビシリーズ版>
Scener ur ett aktenskap


監督 / イングマール・ベルイマン
製作 / ラーシュ=オーヴェ・カールベルイ
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / スヴェン・ニクヴィスト
音楽 / オウェ・スヴェンソン
出演 / リヴ・ウルマン、エルランド・ヨセフソン、ビビ・アンデショーン、ヤン・マルムショ、グンネル・リンドブロム 他
1974年 / スウェーデン


テレビシリーズを再編集して168分にまとめ劇場公開された映画版は見たことがあるけれど、今回見たのはより詳細を極めたそのテレビシリーズ版各50分6話。もう私はベルイマンが好きすぎて愛しすぎて、この張り詰めた緊張感や人間の表情が物語る言葉や会話、緻密な構成がたまらない。しびれる。結婚とは夫婦とは男と女とは愛とは。俗っぽい会話を重ねて重ねて浮き出てくるのは陳腐ではなく神へと通じる真理。またはその逆。リヴ・ウルマンも好きすぎる。


Crin blanc: Le cheval sauvage
白い馬
Crin blanc: Le cheval sauvage


監督 / アルベール・ラモリス
脚本 / アルベール・ラモリス
撮影 / エドモン・セシャン
音楽 / モーリス・ルルー
出演 / アラン・エムリイ、パスカル・ラモリス 他
1952年 / フランス


白い馬を中心にしたモノクロの美しい映画。白い馬と友人になる少年もまた圧巻の美しさ。『赤い風船』に登場する男の子よりも少し成長してる少年で白の似合う繊細な子。『赤い風船』のように解説なしのほうがファンタジー度が増した気がするけれど、それを差し引いてもきれいな作品。


Le Ballon Rouge
赤い風船
Le Ballon Rouge


監督 / アルベール・ラモリス
脚本 / アルベール・ラモリス
撮影 / エドモン・セシャン
音楽 / モーリス・ルルー
出演 / パスカル・ラモリス、シュザンヌ・クルーティエ 他
1956年 / フランス


この映画のパンフレットを持っていたにもかかわらず実は映画は初見。カンヌ映画祭短編グランプリ受賞作品。赤い風船と薄暗いモンマルトルの町並み。どこをとってもポストカードになりそうな、ポエジーで美しいファンタジー作品。フランス映画らしいフランス映画。主演のパスカル・ラモリスという男の子は、アルベール・ラモリス監督の息子。


Ballets Russes
バレエ・リュス 踊る歓び、生きる歓び
Ballets Russes


監督 / ダン・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン
製作 / ロバート・ホーク、ダグラス・ブレア・ターンボー、ダン・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン
脚本 / ダン・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン、セレスト・シェイファー・スナイダー、ゲイリー・ワインバーグ
撮影 / ダン・ゲラー
編集 / ダン・ゲラー、デイナ・ゴールドファイン、ゲイリー・ワインバーグ
音楽 / トッド・ボーケルハイド、デヴィッド・コンテ
ナレーション / マリアン・セルデス
出演 / アレクサンドラ・ダニロワ、アリシア・マルコワ、イリナ・バロノワ、フレデリック・フランクリン 他
2005年 / アメリカ


ニジンスキーを生み出し、セルゲイ・ディアギレフが主催していたバレエ・リュス(ロシア・バレエ団)の歴史ともいえるドキュメンタリー。山岸涼子の「アラベスク」の世界の実写というか本物だよーという感覚がすごくあって興奮。バレエを知らない私ですら名前くらいは聞いたことがある振付家バランシン、マシーン、あと美術や音楽だとマチス、ピカス、ダリ、ラヴェルなんて名前も連なってハイクオリティかつものすごい豪華な顔ぶれで話を聞いてるだけで楽しくなります(話はそれるけどモイラ・シアラー主演『赤い靴』にマシーンが出てたのを知らなかった!)。そしてなんといっても貴重な当時のバレエ映像!なにこれ、すごい。もっといっぱい見たかったー。


Les amours d'Astree et de Celadon
我が至上の愛 〜アストレとセラドン〜
Les amours d'Astree et de Celadon


監督 / エリック・ロメール
製作 / エリック・ロメール、ジャン=ミシェル・レイ、フィリップ・リエジュワ、フランソワーズ・エチュガレー
原作 / オノレ・デュルフェ
脚本 / エリック・ロメール
撮影 / ディアーヌ・バラティエ
衣装 / ピエール=ジャン・ラローク
編集 / マリー・ステファン
音楽 / ジャン=ルイ・ヴァレロ
出演 / アンディ・ジレ、ステファニー・クレイヤンクール、セシル・カッセル、ジョスラン・キヴラン、ヴェロニク・レモン、ロセット 他
2007年 / フランス、イタリア、スペイン


5世紀の緑あふれる美しいフランスを舞台に、羊飼いの少女アストレと青年セラドンの純愛を描いた演劇を見てるような作品。エリック・ロメールの真骨頂であり遺作。とにかく美しくてエロい。小鳥のさえずり、神話、衣装、うっとりするこの恋愛劇。87歳でこんなくらくらする優雅な恋愛映像美の映画を撮れるのはロメールしかいないよね。セラドン役のアンディ・ジレ、エリック・ロメールが好きそうな美形男子。


Fantasia
ファンタジア
Fantasia


アニメーション監督 / ベン・シャープスティーン
動画監督 / ウォード・キンボール
製作 / ウォルト・ディズニー
脚本 / ジョー・グラント、ディック・ヒューマー
音楽 / レオポルド・ストコフスキー、フィラデルフィア交響楽団
音楽監督 / エドワード・H・プラム
1940年 / アメリカ


バッハの『トッカータとフーガ』、チャイコフスキーの『くるみ割り人形』、デュカスの『魔法使いの弟子』、ストラビンスキーの『春の祭典』など8つのクラシック音楽に融合したアニメーション。時代や世代、国境すべてをこえた美しく楽しい想像力の世界。これスクリーンで見れたらすごいだろうなー。『トッカータとフーガ』はオスカー・フィッシンガーぽいなーと思ったけれど、あとでアドヴァイザーとしてフィッシンガーが参加してることを知りました。むしろ当初予定されていた監督はオスカー・フィッシンガーだったらしく、そのままだったらもっとアート性の高い作品になってたんだろうなーて妄想するのも楽しいな。

アレクサンドル・アレクセイエフとクレア・パーカーの『禿山の一夜』は物覚えの悪い私でも相当印象に残るくらい、好みで大好きなめちゃめちゃすごいピンスクリーン・アニメーションだけど、このファンタジアの『禿山の一夜』もまたまったく違う味でおもしろい作品。


Father and Daughter
岸辺のふたり
Father and Daughter


監督 / マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
脚本 / マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット
音楽 / ノルマン・ロジェ、ドゥニ・シャルラン
2000年 / イギリス、オランダ


2001年米国アカデミー賞受賞の短編アニメ作品。たった8分のアニメーションに描かれた「人生」。台詞は一切介在せず、アニメーションのみ。生涯父を思い続け、思い出の道を自転車で走り、岸辺に立つ娘。巡る季節。美しくてすばらしい、涙がこぼれます。


The World
世界
The World


監督 / ジャ・ジャンクー
プロデューサー / 吉田多喜男、市山尚三
エグゼクティブプロデューサー / 森昌行、ヘンガメ・パナヒ、チャウ・キョン
脚本 / ジャ・ジャンクー
撮影 / ユー・リクウァイ
音楽 / リン・チャン
出演 / チャオ・タオ、チェン・タイシェン、ワン・ホンウェイ、ジン・ジュエ、チャン・チョンウェイ、シャン・ワン 他
2004年 / 日本、フランス、中国


ジャ・ジャンクーは『一瞬の夢』(1997/中国、香港)でなんだかすごく不思議に強烈に印象的で、『長江哀歌』(2006/中国)で映画としてすごく良くて、別の作品も見たいと思いつつやっと3作品目。世界の名所を1/10サイズで見られる、北京に実在するテーマパーク「世界公園」で働く若者を中心にした人間模様。近代化しつつある北京と漠然と不安定な若者たち。ちいさな自分のまわりの世界と、それをとりまく大きな世界。きらびやかな世界で仕事をしつつ感じる閉塞感、ふわふわした現実感、希望と絶望、感情の起伏や一瞬を丁寧に切り取り、長回しもこういう演出もジャ・ジャンクーだなーなんてうれしくなりながら観賞。ジャ・ジャンクーほど現代中国の描写が上手な監督はいないのではと本気で思う。主人公タオが余貴美子に似ているのが気になる。正直『長江哀歌』に較べるとちょっと迫るものが薄かったけど背景の違いがそうさせるのかも。


Life Is Miracle
ライフ・イズ・ミラクル
Life Is Miracle

監督 / エミール・クストリッツァ
製作 / エミール・クストリッツァ、マヤ・クストリッツァ、アラン・サルド
製作総指揮 / ピエール・エデルマン、クリスティーヌ・ゴズラン
脚本 / エミール・クストリッツァ、ランコ・ボジッチ
撮影 / ミシェル・アマテュー
音楽 / エミール・クストリッツァ、デヤン・スパラヴァロ
出演 / スラヴコ・スティマチ、ターシャ・ソラック、ヴク・コスティッチ、ヴェスナ・トリヴァリッチ、ニコラ・コジョ 他
2004年 / セルビア=モンテネグロ、フランス


クストリッツァの映画はすごい、完璧にクストリッツァのオリジナルにしてるのがすごい。セルビアの国境に隣接するボスニアのとある村でのお話。てんやわんやで内容てんこもり、突き抜けててぶっ飛んでてストイックとは対極にあるような気がするのに、すべてを見終わるとすべてがクストリッツァに染まったストイックかつ愉快で切なくて感動を呼ぶ素敵な映画。クストリッツァの映画は見終わったあとにもう一度見たくなる。


Azur et Asmar
アズールとアスマール
Azur et Asmar


監督 / ミッシェル・オスロ
製作 / クリストフ・ロシニョン
製作総指揮 / エーヴ・マシュエル
原作 / ミッシェル・オスロ
脚本 / ミッシェル・オスロ
デザイン / ミッシェル・オスロ
音楽 / ガブリエル・ヤレド
声の出演 / シリル・ムラリ、カリム・ムリバ、ヒアム・アッバス、パトリック・ティムシット、ファトマ=ベン・ケリル 他
2006年 / フランス


「キリクと魔女」「プリンス&プリンセス」のミッシェル・オスロ監督作品。これは面白い。切り絵風アニメーションも面白かったけど、本作のこんなに色彩豊かで綺麗で心奪われるCGははじめて見たというくらいアニメーションの新境地を打ち立ててる気がする。人種差別問題というシビアなテーマを取り入れているのだけど(フランス人のアニメーターてこういうの好き?ルネ・ラルーとか)、子どもも楽しい愛と勇気と知恵がたくさんつまった冒険ファンタジーですばらしいアニメーション。


When the Road Bends: Tales of a Gypsy Caravan
ジプシー・キャラバン
When the Road Bends: Tales of a Gypsy Caravan


監督 / ジャスミン・デラル
製作 / ジャスミン・デラル
製作総指揮 / ヴァウター・バレンドレクト、サン・フー・マルサ、マイケル・J・ワーナー
撮影 / アルバート・メイズルス、アラン・ドゥ・アルー
出演 / タラフ・ドゥ・ハイドゥークス、エスマ、ファンファーラ・チョクルリーア、マハラジャ、ジョニー・デップ 他
2006年 / アメリカ


ジプシー(ロマ)音楽のルーツを持つ5つのバンドの北米ツアーに密着した音楽ドキュメンタリー。クストリッツァやガトリフの映画でのロマ音楽くらいしか分からないけれど、ステージやバス移動の映像の合間に挿入されるルーマニアのちいさな村やエスマの47人もの子どもを引き取って育てた話、息子の結婚式の様子などの映像がおもしろかったです。なかでもみんなが嘆き悲しみ、夜通し音楽が鳴りやまない、タラフ・ドゥ・ハイドゥークスの最長老ニコラエの葬儀のシーンは印象強く心に残ります。悲しみも喜びも全部音楽で表現してしまう、素直で力強くて自分のルーツに誇りを持つ愛すべき人柄のロマの人々が魅力的な映画。


Breath
ブレス
Breath


監督 / キム・ギドク
製作 / キム・ギドク
脚本 / キム・ギドク
撮影 / ソン・ジョンム
音楽 / キム・ミョンジョン
出演 / チャン・チェン、チア、ハ・ジョンウ、カン・イニョン、キム・ギドク 他
2007年 / 韓国


閉鎖された世界、不倫にゲイに自殺に死刑、救いのない愛と絶望、嫉妬、あらゆる禁忌にとりまかれた共感と孤独。アタリハズレのあるキム・キドクだけどこのキム・キドクはおもしろい。この奇妙な愛の物語に、共鳴ではなくただただ引き付けられる魅力。


La Stanza del figlio
息子の部屋
La Stanza del figlio


監督 / ナンニ・モレッティ
製作 / アンジェロ・バルバガッロ
原案 / ナンニ・モレッティ
脚本 / ハイドラン・シュリーフ
撮影 / ジュゼッペ・ランチ
衣装 / マリア・リータ・バルベラ
編集 / エズメラルダ・カラブリア
音楽 / ニコラ・ピオヴァーニ
出演 / ナンニ・モレッティ、ラウラ・モランテ、ジャスミン・トリンカ、ジュゼッペ・サンフェリーチェ、シルヴィオ・オルランド 他
2001年 / イタリア


息子の死によって日常の家族の風景が壊れ、しかし再生してゆく姿を描いた映画。ナンニ・モレッティの映画てこんなに見やすい映画だったかなと思うけど、この映画のナンニ・モレッティの視線は、息子の死に際して、あのときああだったら、こうだったら、と後悔し苦悩し日常を暮らす子どもを愛する世界中の父親そのもの。いい映画だと思う。


Exils
愛より強い旅
Exils

監督 / トニー・ガトリフ
製作 / トニー・ガトリフ
脚本 / トニー・ガトリフ
撮影 / セリーヌ・ボゾン
編集 / モニック・ダルトンヌ
音楽 / トニー・ガトリフ、デルフィーヌ・マントゥレ
出演 / ロマン・デュリス、ルブナ・アザバル、レイラ・マクルフ、アビブ・シェック、ズイール・ゼカム 他
2004年 / フランス


ロマン・デュリスのアクの強さとトニー・ガトリフのアクの強さはこの映画を見る限り同じベクトルを向いててすごくいい。パリから、自分のルーツであるアルジェリアを目指すロードムービー。トニー・ガトリフの得意分野で、要所要所でインパクトのある音楽や映像を持ってくるのが上手。それぞれの土地の民俗音楽だと疑わなかった劇中で使われている音楽がトニー・ガトリフオリジナルだと知ってびっくり。主人公たちのしつこいくらいのアップの映像、物語の詳細はあえて表に出ないけど、その表情が悲しい過去や背負ったものの大きさを感じさせる。ラストのスーフィー音楽により次第に人々がトランス状態になる儀式の様子が臨場感あふれすぎてて感動モノの迫力。


Persepolis
ペルセポリス
Persepolis


監督 / マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
製作 / マルク=アントワーヌ・ロベール、ザヴィエ・リゴ
原作 / マルジャン・サトラピ『ペルセポリス』(バジリコ刊)
脚本 / マルジャン・サトラピ、ヴァンサン・パロノー
音楽 / オリヴィエ・ベルネ
声の出演 / キアラ・マストロヤンニ(マルジ)、カトリーヌ・ドヌーヴ(マルジの母)、ダニエル・ダリュー(マルジの祖母)、シモン・アブカリアン、ガブリエル・ロペス、フランソワ・ジェローム 他
2007年 / フランス


少女時代をテヘランで過ごした監督マルジャン・サトラピの自伝アニメーション。主人公マルジをキアラ・マストロヤンニ、マルジの母をカトリーヌ・ドヌーヴという豪華リアル親子が声をあててるのがまた楽しい。抑圧された激動のイラン真っ只中にいた反抗心たっぷりの思春期の少女を通して見るテヘランの市井の様子、イラン人としての少女の留学先での居場所のなさ、戦争や革命をどんなに詳しく描いた実写映画より心をついて切なくなって涙が出ました。日本人には描けないストーリーもアニメーションもものすごく上手。


Porto da minha infancia
わが幼少時代のポルト new!!
Porto da minha infancia

監督 / マノエル・デ・オリヴェイラ
製作 / パウロ・ブランコ
撮影 / エマニュエル・マシュエル
ナレーション / マノエル・デ・オリヴェイラ
出演 / ジョルジ・トレパ、リカルド・トレパ、マリア・デ・メディロス、マノエル・デ・オリヴェイラ 他
2001年 / ポルトガル、フランス


オリヴェイラ監督の故郷ポルト。廃墟となった生家、昔家族で訪れた劇場、クリスタルパレス、初恋、オリヴェイラの少年時代から青年時代を過去と現代の映像と回想シーンで振り返る物語。冒頭のシーンが『夜顔』とかぶるのは意図的。オリヴェイラ少年役は、なんとオリヴェイラ監督の孫だそう。他の監督がそういう起用をしたらちょっとどうかと思うところだけど、オリヴェイラ監督だとすべてが許されます。むしろちょっと感慨深い。難解さも劇の中の劇もオリヴェイラの映し出すポルトガルの風景も心から好き。たまらなくかっこよくて遊びがあって他に類のない映画を撮るオリヴェイラ監督の作品がだいすきです。手が届かないのに恋してるみたいな気持ち。


Nine Lives
美しい人
Nine Lives


監督 / ロドリゴ・ガルシア
製作 / ジュリー・リン
製作総指揮 / アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
脚本 / ロドリゴ・ガルシア
撮影 / ハビエル・ペレス・グロベット
音楽 / エド・シェアマー
出演 / キャシー・ベイカー、エイミー・ブレネマン、エルピディア・カリーロ、グレン・クローズ マギー、スティーヴン・ディレイン、ダコタ・ファニング、ウィリアム・フィクトナー、リサ・ゲイ・ハミルトン、ホリー・ハンター 他
2005年 / アメリカ


『彼女を見ればわかること』のロドリゴ・ガルシア監督作品。9人の様々な境遇の女性の物語。2005年ロカルノ映画祭で、最優秀作品賞、それぞれのエピソードの主役である9人の女優全員に最優秀主演女優賞。たしかにエリピディア・カリーロもロビン・ライト・ペンもリサ・ゲイ・ハミルトンもアマンダ・セイフライドも全員すばらしかった。最初のエリピディア・カリーロの迫真の叫びでつかまれる。"○つのエピソードから構成される"と言われると、思わずあといくつ、と考えてしまいがちだけど、すべてがワンシーンワンカットの緊張感のある演出でふとそんなことを思うこともなく、さらに女優が全員すばらしくていい作品だった。


Milou en Mai
五月のミル
Milou en Mai


監督 / ルイ・マル
脚本 / ルイ・マル、ジャン=クロード・カリエール
撮影 / レナート・ベルタ
音楽 / ステファン・グラッペリ
出演 / ミシェル・ピッコリ、ミュウ=ミュウ、ミシェル・デュショーソワ、ミニク・ブラン、ポーレット・デュボスト、ヴァレリー・ルメルシェ 他
1989年 / フランス


母の葬儀で集まったブルジョワ一家の人々の数日間。意見の一致しない自分本位の人々の様子が楽しい群像劇。ミシェル・ピッコリがとてもいい。美しいラストでうっかり涙が出る。若い頃に較べて角が取れたルイ・マルの作品はシニカルでコミカルでフランス映画ぽい、すてきな作品。


Ascenseur Pour l'Echafaud
死刑台のエレベーター
Ascenseur Pour l'Echafaud


監督 / ルイ・マル
製作 / ジャン・スイリエール
原作 / ノエル・カレフ
脚本 / ロジェ・ニミエ、ルイ・マル
撮影 / アンリ・ドカエ
音楽 / マイルス・デイヴィス
出演 / モーリス・ロネ、ジャンヌ・モロー、ジョルジュ・プージュリー、リノ・ヴァンチュラ、ヨリ・ヴェルタン、ジャン=クロード・ブリアリ、シャルル・デネ 他
1957年 / フランス


アンニュイなジャンヌ・モローとマイルス・デイヴィスの即興トランペットでこんなにぐっとする映画だとは知りませんでした。真っ昼間に上の階のベランダにロープひっかけてよじ登るとかなんかちょっとそれって周りから見えてない?というかわいい疑問点もちらほらあるのだけど偶然が重なって重なって起こる事件の数々、それを一気に解決に持ってゆくスピード感、ストーリーもおもしろかったし、不倫関係だったジュリアンとフロランスが実際の絡みがなくラストに浮かび上がる現像写真で幸せそうなふたりを確認できるという演出がかっこよすぎ。


Le Souffle au Coeur
好奇心
Le Souffle au Coeur


監督 / ルイ・マル
製作 / ヴァンサン・マル、クロード・ネジャール
脚本 / ルイ・マル、クロード・ネジャール
撮影 / リカルド・アロノヴィッチ
音楽 / チャーリー・パーカー
出演 / ブルノワ・フェルレー、レア・マッセリ、ダニエル・ジェラン、マルク・ビノクール、ミシェル・ロンズデール 他
1971年 / フランス、イタリア


ブルジョア家庭の15歳の少年。見た目サエてないしかわいくもないし生意気でこまっしゃくれてるし、でもそれがかえってそばかすだらけで超美人とはいえないけどラテン系の魅力持ちのママに対する近親愛をリアルに感じる要因かも。ジャズの効果音が映画全体をさらに突き抜けたものにしていて、だいたい15歳の男の子がチャーリー・パーカーて、ほかにちょっと較べるものが思いつかないくらいクセのあるかっこいい映画。


Bikur Hatizmoret
迷子の警察音楽隊
Bikur Hatizmoret


監督 / エラン・コリリン
脚本 / エラン・コリリン
撮影 / シャイ・ゴールドマン
プロダクションデザイン / エイタン・レヴィ
衣装デザイン / ドロン・アシュケナジ
音楽 / ハビブ・シェハーデ・ハンナ
出演 / サッソン・ガーベイ、ロニ・エルカベッツ、サーレフ・バクリ、カリファ・ナトゥール 他
2007年 / イスラエル、フランス


カンヌ国際映画祭、東京国際映画祭など世界中の様々な映画祭でいろんな賞を受賞した作品。うっかり迷子になってしまったエジプトのアレキサンドリア警察音楽隊。カウリスマキを思い出すけどカウリスマキと較べると通俗的。リアルなぎこちなさの演出が上手。不器用な人間に垣間見えるやさしさ、ベビーベッドで眠る赤ちゃんを見守る目、トゥフィークが歌うエジプト民謡に涙が出そうに。体育館みたいな空間でのローラースケート・ディスコのシーンがダサおもしろい。ローラースケート・ディスコて本当にイスラエルにあるのかな。


Jardins en automne
ここに幸あり
Jardins en automne


監督 / オタール・イオセリアーニ
製作 / マルティーヌ・マリニャック、モーリス・タンシャン
脚本 / オタール・イオセリアーニ
撮影 / ウィリアム・ルプシャンスキー
美術 / マニュ・ド・ショヴィニ、イヴ・ブロヴェ
衣装 / マイラ・ラマダン・レヴィ
編集 / オタール・イオセリアーニ、エヴァ・レンキュヴィチュ
音楽 / ニコラ・ズラビシュヴィリ
出演 / セヴラン・ブランシェ、ミシェル・ピッコリ、オタール・イオセリアーニ、ジャン・ドゥーシェ、リリ・ラヴィーナ、アルベール・マンディ 他
2006年 / フランス、イタリア、ロシア


イオセリアーニののんびりとした人生賛歌映画。ゆるい気分で見る大人の映画。ちょっとタイクツ?でもそれも気の持ちよう。イオセリアーニの世界に踏み込んでみるとなんだかその世界が心地よい。


Pote tin Kyriaki
日曜はダメよ
Pote tin Kyriaki


監督 / ジュールス・ダッシン
脚本 / ジュールス・ダッシン
撮影 / ジャック・ナットー
音楽 / マノス・ハジダキス
出演 / メリナ・メルクーリ、ジュールス・ダッシン、ジョージ・ファウンダース、ティトス・ヴァンディス、デスポ・ディアマンティドゥ 他
1960年 / ギリシャ


主演のジュールス・ダッシンが製作から監督、脚本、主演までこなしている。娼婦イリヤが楽しそうに一枚一枚服を脱ぎながら下着姿になって海へざぶーん!みんななんで飛び込んでこないの?と言うと水夫たちがあとからあとからざぶんざぶんと海へ飛び込む冒頭からこの映画は楽しそう!と思わせるわくわく感、モノクロなのに地中海の光がまぶしくて陽気なギリシャ人たちが自分の感性を信じて生きている姿を見て元気が出る作品。知識はなくとも楽しく生きていくことをよく知っている人々。そしてみんなで海辺へ行きましたとさ。ジュールス・ダッシンの顔が苦手なことをのぞけば素敵な映画。

イリヤ役のメリナ・メルクーリはこの映画でカンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞して、そのあとなんと政治家に転身てギリシャの文化大臣になったそう。すごいな!


Il Bidone

Il Bidone


監督 / フェデリコ・フェリーニ 製作 / ジュゼッペ・コリッツィ 脚本 / フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッリ 撮影 / オテッロ・マルテッリ 音楽 / ニーノ・ロータ 出演 / ブロデリック・クロフォード、リチャード・ベースハート、フランコ・ファブリッツィ、ジュリエッタ・マシーナ、 ロレッラ・デ・ルーカ 他
1955年 / イタリア、フランス


原題の"Il Bidone"とは"詐欺"のこと。ペテン師の中年男性を中心に描く。ずる賢くお金を騙し取る姿に対して、足の不自由な少女に対して良心の呵責を感じたり、ただ呵責を感じつつお金を盗んだり、「時は戻らないんだ」と元には戻れないと仲間に諭し、人間として完全に悪人になりきれない心のやり場のない主人公。ジュリエッタ・マシーナが意外と端役だったのに驚いたけどそれぞれの人物がきちんと際立っているのが上手。楽しい話ではないけど悲しい結末も含めて人間が大好きで愛のある映画。


Clay Animation by David Ehrlich
Etude、Color Run、Taking Color for a Walk

監督 / David Ehrlich
1994-2002年 / アメリカ


デーヴィット・アーリッヒによる1994-2002年の間に制作されたクレイ・アニメーション3作。『Etude』(1994)『Color Run』(2001)『Taking Color for a Walk』(2002)。おそらくガラスの上に油絵を描いていると思うのだけど、原色の油絵の具がまじりあってぐにょぐにょするアブストラクトでサイケデリックで懐かしーい感じのするトランスアニメーション、1994年製作の『Etude』は音楽が突出してダサいせいでインパクトは絶大。サイケなアニメーションと音楽の混じり合えないアクの強いもの同士の共存がおもしろすぎます。2000年代の作品は音楽に邪魔されることもなくアニメーションと同化しているけど、1994年ほどのトランス感がないような気もする。