foreign movie vol.17


Jodaeiye Nader az Simin
ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー new!!
36 vues du pic Saint-Loup


監督 / ジャック・リヴェット
製作 / マルティーヌ・マリニャック、モーリス・タンシャン
脚本 / ジャック・リヴェット、パスカル・ボニゼール、クリスティーヌ・ローラン、セルジオ・カステリット、シレル・アミテ
撮影 / イリナ・ルブチャンスキー
美術 / マニュ・ド・ショヴィニ
編集 / ニコール・ルブチャンスキー
音楽 / ピエール・アリオ
出演 / ジェーン・バーキン、セルジオ・カステリット、アンドレ・マルコン、ジャック・ボナフェ、ジュリー=マリー・パルマンティエ 他
2009年 / フランス、イタリア


ジャック・リヴェット、実はそれほど見れてないうえに印象もそんなになく、アンナ・カリーナの『修道女』も見てるのにうろおぼえレベル。

この歳になってようやく分かる/分かった気になる映画もたくさんあるけど、この作品も分かるとは言い難い、結果的に難解ということになるのかもしれない大人の愛がテーマ。ストーリーそのものは難解ではありません。ヌーヴェルヴァーグ人らしいふいにはじまる劇中劇、または出演者がカメラに向かって話し出す、こういう演出はいかにも!で楽しく感じます。

空に浮かぶ丸い月と小さなサーカスの円形のテントと舞台。道化たちの寸劇では丸い皿が次々に割れ、最終的にはすべて割れてしまいます。違和感による小さな小さな亀裂、ムチで裂かれる新聞紙によって完全に解き放たれます。

老いても巨匠ジャック・リヴェット。一筋縄ではいかないひねくれ加減。


Jodaeiye Nader az Simin
別離
Jodaeiye Nader az Simin


監督 / アスガー・ファルハディ
製作 / アスガー・ファルハディ
脚本 / アスガー・ファルハディ
撮影 / マームード・カラリ
出演 / レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハディ 他
2011年 / イラン


ベルリン国際映画祭で金熊賞を含む3冠、アカデミー外国語映画賞にも受賞した作品。

とはいえなんとなく見たんだけど、これが予想外に高レベル作品でした。緊張感の持続が上手い。現代のイラン社会のリアルな様々な格差が浮き彫りにされ、日常生活からふいにサスペンスタッチにもっていく脚本も上手い。聡明な少女が最後に出す決断がなんだったのか余韻が残ります。

イランといえばずいぶん前からキアロスタミやマフマルバフ、マジッド・マジディくらいしか知らなかったけど、当たり前ながら時代は変わって新しい風が吹いているんだなーと思うとわくわくします。


Hideaway
ムースの隠遁
Hideaway


監督 / フランソワ・オゾン
脚本 / フランソワ・オゾン、マチュー・イッポー
音楽 / ルイ=ロナン・ショワジー
出演 / イザベル・カレ
ルイ=ロナン・ショワジー、メルヴィル・プポー、クレール・ヴェルネ、ジャン=ピエール・アンドレアーニ 他
2009年 / フランス


ひさしぶりのオゾンが見れてうれしい。オゾンの常識にとらわれないすれすれの自由さが好き。人間の描き方が好き。

裕福なカップルのルイ(メルヴィル・プポー)と恋人ムース(イザベル・カレ)。ある日ドラッグの過剰摂取でルイが亡くなってしまうんだけど、ムースは彼の子を身籠っていた。メルヴィル・プポーが出てきて即死んでしまう役なので出演はごくわずか(画像はメルヴィル・プポーとイザベル・カレ)。そこで出てくるのがルイの弟役のルイ=ロナン・ショワジー。

ルイ=ロナン・ショワジーがまたメルヴィル・プポーに通じるオゾンが好きそうなヨーロッパ系イケメン。(そりゃもうかっこいいけど)路線狭すぎる!ちょっと調べてみたらミュージシャンらしく映画初出演。あと、イザベル・カレがどう見ても本物の妊婦のお腹で、それも確認してみたらやっぱり撮影当時本物の妊婦で、本物の妊婦だったからオゾンが起用した模様。

妊娠発覚時にはドラッグ中毒だったわけで、酒は飲むわナンパ相手についていくわ見てるだけではムースがお腹の子どものことをどう思っているのかよく分からないんだけど、ムースが村に買い物に出かけたときに持ち歩いていたのはBONTONのエコバッグ。たぶんショップで買ったら商品入れてくれるような感じの。ロゴは分かりやすいけどちいさいし一瞬。でもこの一瞬でたぶん十分。はたしてそれがオゾンの意図したものだったかどうかは分からないけど、私は勝手にムースの気持ちを想像してラストもなんとなく納得できたような。その一瞬で勝手にオゾンすごいと感動までしてしまったよ。ゲイなのも関係してるのか女性には描けない女性の心理描写が上手。

でも一瞬映るBONTONのエコバッグを見て男性がそこまで想像可能かどうかわりと疑問。子持ち以外も分かるのか疑問。フランスならありなのかなー


I Clowns
フェリーニの道化師
I Clowns


監督 / フェデリコ・フェリーニ
製作 / エリオ・スカルダマーリャ
脚本 / フェデリコ・フェリーニ、ベルナルディーノ・ザッポーニ
撮影 / ダリオ・ディ・パルマ
音楽 / ニーノ・ロータ
出演 / フェデリコ・フェリーニ、アニタ・エクバーグ、ピエール・エテックス、ジョセフィン・チャップリン 他
1970年 / イタリア


タイトルの「クラウン」とはサーカスなどに登場するおどけ役のコメディアンのこと(ピエロはクラウンの一種)。失われた道化師の時代を回顧するドキュメンタリーのような作品。

フェリーニのサーカスやクラウンへの愛情と幻想とがぱんぱんにつまった魅惑的なまぎれもない芸術作品。芸術作品なのに娯楽作品でもあり、完全にフェリーニ。クラウンたちの白塗りの顔はなぜだか哀愁に満ちていて、クラウンたち自体は得体のしれないふわふわした不安さえも感じるのに、不思議に魅力的。

『8 1/2』のような圧巻の狂騒シーンはほんとにフェリーニ趣味ですてき。狂騒が終わるラストも泣ける。


Le Gamin au velo
少年と自転車
Tanztraume


監督 / ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
製作 / ジャン=ピエール・ダルデン、リュック・ダルデンヌ、ドゥニ・フロイ
製作総指揮 / デルフィーヌ・トムソン
脚本 / ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
撮影 / アラン・マルコァン
美術 / イゴール・ガブリエル
編集 / マリー=エレーヌ・ドゾ
出演 / セシル・ドゥ・フランス、トマス・ドレ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ 他
2010年 / ドイツ


心の葛藤を言葉少なに描くダルデンヌ兄弟の作品は期待を裏切らない。

父親に捨てられ拒絶された少年が偶然出会った女性によって心を回復させていくという物語。里親となった女性の少年への「許し」の瞬間が映画の最高潮で胸に迫ります。ばっさり切るラスト、余韻が残るラストがダルデンヌ兄弟。好きだなー。


Tanztraume
ピナ・バウシュ 夢の教室
Tanztraume


監督 / アン・リンセル
撮影監督 / ライナー・ホフマン 出演 / ピナ・バウシュ 他
2010年 / ドイツ


ダンス経験もなく、いろんな個性や家庭環境を持った40人の少年少女たちが、ピナ・バウシュの「コンタクトホーフ」を10ヶ月間の特訓で上演するまでのドキュメンタリー。

まだあどけない10代の男の子女の子たちがピナのダンスでどんどん成長していくのがわかるのがすばらしい。自分を解放することによって広がる世界。観てる間ずっと涙がでそうだったのは、邦題にもある「夢の教室」の「夢」の部分を、ピナの意思とピナの世界を受け継ぐ往年のダンサーふたりが真剣勝負で彼らに伝えてること。そして彼らの舞台がほんとうに夢になること。ピナのなんてすてきな女性なこと!

「ミスはいいのよ。努力が大切」というピナの言葉はピナが言うからこそ泣ける。


Le Voyage dans la Lune
月世界旅行 カラー復刻版 new!!
Le Voyage dans la Lune


監督 / ジョルジュ・メリエス
出演 / ジョルジュ・メリエス、ジュアンヌ・ダルシー、ブリエット・ベルノン 他
1902年 / フランス


映画史上初のSFと呼ばれるサイレント作品。誰もが見たことがある月の顔にロケットが突き刺さってるワンシーン。白黒版はいつか見たことがあったけど、カラー版(カラーといってもフィルムに直接着色するというカラー)ははじめて。1993年にカラーフィルムが発見、修復され2011年にリバイバル上映。

ひさしぶりに見たけど、わくわくして美しくて楽しい映画。しかもカラー!フランスのエレクトロ・デュオAIRが全編に音楽をつけているんだけど、思いがけず新鮮でおしゃれな月世界旅行が見られておもしろかったです。サイレント映画にありがちなピアノの独奏をつけたりしない!


The Spy in Black
スパイ
The Spy in Black


監督 / マイケル・パウエル
製作 / アーヴィング・アッシャー
原案 / J・ストーラー・クルーストン
脚本 / エメリック・プレスバーガー
撮影 / バーナード・ブラウン
音楽 / ミクロス・ローザ
出演 / コンラート・ファイト、ヴァレリー・ホブソン、セバスチャン・ショウ、マリウス・ゴーリング、ジューン・デュプレ 他
1939年 / イギリス


監督マイケル・パウエル、脚本エメリック・プレスバーガーという観賞前から心躍る映画。共同監督ではないものの、大好きな『赤い靴』(1948)や『ホフマン物語』(1951)を撮ったマイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー!

タイトル通りスパイモノで舞台は第二次大戦中のイギリスとドイツ。ハルト艦長を演じたコンラート・ファイトは、ドイツのサイレント映画『カリガリ博士』でチェザーレ役だったとあとから知ったけどこれは言われないと分からないよねー。というわけでドイツ人俳優のためドイツ人としての主役。時代的にもプロパガンダ映画かと思いきや、そもそもドイツ人からの視点だしサスペンス色のほうが強いしテンポもよくラストも見事。さすがだわー。


Vaghe stelle dell'orsa
熊座の淡き星影
Vaghe stelle dell'orsa


監督 / ルキノ・ヴィスコンティ
製作 / フランコ・クリスタルディ
脚本 / ルキノ・ヴィスコンティ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、エンリコ・メディオーリ
撮影 / アルマンド・ナンヌッツィ
出演 / クラウディア・カルディナーレ、ジャン・ソレル、マイケル・クレイグ、マリー・ベル、レンツォ・リッチ 他
1965年 / イタリア


ヴィスコンティの豪華絢爛と退廃的さ、崇高すぎる完璧なヴィスコンティ的美学趣味で固められた貴族文化あふれる近親相姦がテーマの芸術作品。なんというかもう凡人とは素地が違う。「熊座の美しき星たちよ、わたしは思いもしなかった」というジャコモ・レオパルデイの詩の一節から取ったというタイトルもセンスいい。

上流階級のパーティからBMWでイタリアにある郊外の古い街に向かうアメリカ人夫とイタリア人妻。そのイタリア人の妻にクラウディア・カルディナーレ。高名な父親を崇拝し深い愛情で結びついている弟との再会。敬遠されている元ピアニストの母親。厚塗りの真っ白い顔でピアノを弾く姿は狂気そのもの。

モノクロの画質は悪いものの、そのため陰影がかなり深くクラウディア・カルディナーレが美しくも恐ろしくも映り、豊満な肉体がなんともエロくていいです。ヴィスコンティにしては尺が短く(100分)見やすい作品。


La Matricaria
女性上位時代
La Matricaria


監督 / パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ
脚本 / パオロ・フェラーリ
オッタヴィオ・ジェンマ
撮影 / アルフィオ・コンチーニ
音楽 / アルマンド・トロヴァヨーリ
出演 / カトリーヌ・スパーク、ジャン=ルイ・トランティニャン、ガブリエ ル・フェルゼッティ 他
1968年 / イタリア


ブリトニー・スピアーズに似ているカトリーヌ・スパークの脱ぎっぷりの見事な映 画。若い未亡人カトリーヌ・スパーク演じるミミが夫の愛人たちと密会する隠し部 屋を見つけて、いろんな男とのセックスに興じるというストーリー。

実にバカバカしくてすばらしい映画。カトリーヌ・スパークはかわいいとかセク シーというよりもなんとなく犬ぽくて愛嬌があり、こんなおバカな映画を当たり役 とばかりに堂々と脱いで脱いで脱いで演技してるのがさらにかわいい。演出も隅々 までヘンで好感が持てます。


Merci pour le chocolat
甘い罠
Merci pour le chocolat


監督 / クロード・シャブロル
製作 / マラン・カルミッツ
原作 / シャーロット・アームストロング『見えない蜘蛛の巣』
脚本 / カロリーヌ・エリアシェフ、クロード・シャブロル
撮影 / レナート・ベルタ
衣装 / エリザベット・タヴェルニエ
編集 / モニーク・ファルドゥリ
音楽 / マチュー・シャブロル
出演 / イザベル・ユペール、ジャック・デュトロン、アナ・ムグラリス、ブリジッ ト・カティヨン、ミシェル・ロバン、ロドルフ・ポリー 他
2000年 / フランス


原作タイトルが『見えない蜘蛛の巣』、映画の原題が『Merci pour le chocolat』。この2つのタイトルがキーワード。

有名なピアニスト・アンドレ(ジャック・デュトロン)の後妻であるチョコレート会社の社長・ミカ(イザベル・ユペール)、研究所の所長を務める母親の娘でありピアニストの卵・ジャンヌ(アナ・ムグラリス)。ジャンヌの出生の秘密話から派生するサスペンス。ココアをわざとこぼすミカを見て不審に思ったジャンヌによって、一家の秘密が次第に明らかに。コンクールの指導をするためにアンドレとジャンヌが繰り返し演奏する、リストの「葬送曲」が物語を包み込みます。

蜘蛛の巣の蜘蛛のように相手を仕留めるのはミカ。どこか影のあるミカが思い描く"しあわせ"は、ミカが守ろうとすればするほど絡み合って自分を追い詰めてしまいます。イザベル・ユペールの、顎を微妙に上げて見つめる何を考えているのか分からない顔がいい。絡み合った糸を完全にはほどかないラストはシャブロルらしくてたまらないです。

後で知った情報だけど、ミカ(イザベル・ユペール)がギヨームに渡したビデオはフリッツ・ラング『扉の影の秘密』とジャン・ルノワール『十字路の夜』とのこと。わざわざこの2本をシャブロルが選んだということは、この映画と密接に内容が絡んでるということ。ルノワールは好きだけどこの作品は知らなかった。どちらも未見なので見てみたいなー。


L'interview
インタビュー
L'interview


監督 / グザヴィエ・ジャノリ
出演 / マチュー・アマルリック、ジャン=マリー・ウィンリング、フィリップ・ポレ=ヴィラール 他
1998年 / フランス


どストライクの俳優さん、マチュー・アマルリック。彼を見るためにこのカンヌ国際映画祭短編部門受賞作品『インタビュー』を観賞。

ハリウッドの伝説的な女優エヴァ・ガードナーの信者のようなファンである記者(マチュー)。なんとか独占インタビューにこじつけたものの、事態は思うようにはいかず、という内容。上手にまとまっている短編で、マチューがエヴァオタクとして同僚に熱心に話すシーンなんかはとてもかわいい。好きすぎて生まれてはじめて本気で胸毛をセクシーだと思わせたマチュー。


Love Streams
ラヴ・ストリームス
Love Streams


監督 / ジョン・カサヴェテス
製作 / メナハム・ゴーラン、ヨーラン・グローバス
原作 / テッド・アレン
脚本 / テッド・アレン、ジョン・カサヴェテス
撮影 / アル・ルーバン
音楽 / ボー・ハーウッド
出演 / ジーナ・ローランズ、ジョン・カサヴェテス、ダイアン・アボット、リサ・マーサ・ブルイット、シーモア・カッセル、マーガレット・アボット 他
1983年 / アメリカ


"愛"を描いた映画で、これ以上のものがあったかどうか思い出せない。絶え間ない"愛"の流れ、狂気すれすれの"愛"を描く、強烈な個性とパワーと同時にとんでもなく胸が痛くてとめどない悲しさを伴うすごい映画。

愛を求めるほど孤独になっていくジーナ・ローランズの壊れていく様は圧巻。離婚した夫と娘のデビーを笑わせようとするサラ(ジーナ・ローランズ)のはしゃぎ様が痛々しくて悲しい。この物語全体を包んでいるのは純粋すぎる愛によって増幅される辛いほどの痛々しさ。ジーナ・ローランズとジョン・カサヴェテス姉弟の精神状態同様、物語も一見破綻しているようかの自由さ。どこに転がっていくか分からない。

カサヴェテスの映画に触れると湧き上がる感情がありすぎて、涙が出てくるよ。大人になればなるほどカサヴェテスの映画のすごさを実感。


La Fille coupe'e en deux
引き裂かれた女
La Fille coupe'e en deux


監督 / クロード・シャブロル
製作 / パトリック・ゴドー
製作総指揮 / フランソワーズ・ガルフレ
脚本 / セシル・メストル
撮影 / エドゥアルド・セラ
美術 / フランソワーズブノワ=フレスコ
衣装 / ミク・シュミナル
編集 / モニーク・ファルドゥリ
音楽 / マチュー・シャブロル
出演 / リュディヴィーヌ・サニエ、ブノワ・マジメル、フランソワ・ベルレアン、マチルダ・メイ、カロリーヌ・シオル、マリー・ビュネル 他
2007年 / フランス


お天気キャスターのガブリエルと初老の売れっ子作家と資産家の御曹司との三角関係。この関係を客観的に描くのがとても上手でありふれた話にしない。波乱に満ちた瞬間が終わっても人生は淡々と続いていく。マジシャンの助手になって舞台上でこっそり泣くガブリエル。ラストがいい。シャブロルの終わり方は大人で気持ちがいい。


La Fleur du mal
悪の華
La Fleur du mal


監督 / クロード・シャブロル
製作 / マラン・カルミッツ
脚本 / クロード・シャブロル、カロリーヌ・エリアシェフ、ルイーズ・L・ランブリシュ
撮影 / エドゥアルド・セラ
編集 / モニーク・ファルドゥリ
音楽 / マチュー・シャブロル
出演 / ナタリー・バイ、ブノワ・マジメル、シュザンヌ・フロン、ベルナール・ル・コク、メラニー・ドゥーテ、トマ・シャブロル、カロリーヌ・バエル 他
2003年 / フランス


ゆっくりゆっくりと長回しで撮っていく冒頭のシーンからもうすでにシャブロル最高だと思わせるこのセンス。もう圧倒的にすごい。言葉の選び方や匂い、どこをとっても無駄なカットはなく、これが映画だと再確認するようなすばらしい作品。

ブルジョア一家の繰り返す近親相姦の歴史と過去と現在。「時間は存在しない。ただ"今"が永遠に続くだけ」。ラストがこれまたシャブロルの終着点でしびれてしまいます。


孩子王
子供たちの王様
孩子王


監督 / チェン・カイコー
製作 / マオ・ユイウェン
原作 / アー・チョン
脚本 / チェン・カイコー、ワン・チー
撮影 / クー・チャンウェイ
音楽 / チュイ・シャオソン
出演 / シェ・ユアン、ヤン・シュエウェン、チャン・ツァイメン、ラー・カン、陳昭華 他
2010年 / フランス


ロングショットが絵画のように美しくドラマ的にもおもしろく、間違いなくレベルの高い作品。

貧しい農村で労働をしている"やせっぽち"というあだ名の男が中学校の国語教師として任命されて学校に赴く。中国で1966年から10年間続いた文化大革命(権力闘争)の時代。やせっぽちが生徒のワンフーに「辞書を書き写すな」と言って去ったこと、野焼きと呼ばれる山を焼き尽くすこのシーンがラストにあり、これが文化大革命を皮肉る映像であったと気づいたのは残念ながらこの映画を観た後。

政治的な批判を前面に押し出さず詩的にまとめて後味のよい作品。


Deux de la Vague
ふたりのヌーヴェルヴァーグ ゴダールとトリュフォー
Deux de la Vague


監督 / エマニュエル・ローラン
製作 / エマニュエル・ローラン 脚本 / アントワーヌ・ドゥ・ベック
出演 / イジルド・ル・ベスコ、フランソワ・トリュフォー(アーカイヴ映像)、ジャン=リュック・ゴダール(アーカイヴ映像)、ジャン=ピエール・レオ(アーカイヴ映像)
2010年 / フランス


フランソワ・トリュフォー『大人は判ってくれない』から50周年になるのを記念して製作。フランソワ・トリュフォーと、ジャン=リュック・ゴダールというヌーヴェルヴァーグの二大巨匠を追ったドキュメンタリー。ふたりの友情から決裂までを描きます。

『大人は判ってくれない』のジャン=ピエール・レオーのオーディション風景の映像、ゴダールのフリッツ・ラングへのインタビュー映像が見れるのは貴重。『大人は判ってくれない』『勝手にしやがれ』のクローズアップのもととなった、ベルイマンのハリエット・アンデルセンのクローズアップを重ねて見せる分かりやすさや、特にゴダールの映画を切り取りで見られるというちょっと楽しい気分になれる映画。

観終わったあと、切り取りでは見たりないゴダールの映画をまた見たくなります。


Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives
ブンミおじさんの森
Uncle Boonmee Who Can Recall His Past Lives


監督 / アピチャッポン・ウィーラセタクン
脚本 / アピチャッポン・ウィーラセタクン
撮影 / サヨムプー・ムックディープロム
出演 / タナパット・サイサイマー、ジェンチラー・ポンパス、サックダー・ケァウブアディー、ナッタカーン・アパイウォン
2010年 / イギリス、タイ、フランス、ドイツ、スペイン


カンヌでパルムドールを受賞した作品。ほのぼのとしたタイトルからは想像しにく い、仏教観や政治や文化的要素をファンタジーで昇華した映画。ティム・バートン も絶賛し、蓮實重彦が蓮實重彦2010年度ベスト10のひとつに挙げた作品なだけあっ てこの映画の分かりにくさはなかなか。

見終わってしばらくして思うのは冒頭の薄暗い森の中をさまよう水牛がすべての キーワードになっていたのかな、ということ。幽霊やサルの精霊となった息子と普 通に食卓で会話したり、ジェンの前世であるかのような王女が水面に写る自分の若 く美しい姿を見て嫉妬し滝壺に住むナマズとセックスしたり、さらにはブンミが死 を迎えるのも森の中。つまり森では夢や死や現実の世界が混同しています。その対 比として描かれるジェンの都会的な生活感。あらゆるものが森に包まれ同化するこ とを摩訶不思議な演出、多数ある長回しで表現しています。

しかしジェンと僧侶という職業をドライにとらえる息子とふたりで買い物にでかけ るラストはショックと言っても過言ではないほど衝撃的で悩むシーン。肉体と意識 のズレ?どう解釈していいのかずっと私のなかでもやもやしてます。

意表をつかれるという点ではかなりおもしろい映画。


Pina
Pina/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち
Pina


監督 / ヴィム・ヴェンダース
製作 / ヴィム・ヴェンダース、ジャン=ピエロ・リンゲル
脚本 / ヴィム・ヴェンダース
撮影 / エレーヌ・ルヴァール
編集 / トニ・フロッシュハマー
振付 / ピナ・バウシュ
音楽 / トム・ハンライヒ
出演 / ピナ・バウシュ 他
2011年 / ドイツ、フランス、イギリス


2009年に他界した舞踊家ピナ・バウシュ。そのピナ・バウシュが芸術監督を務めた ヴッパタール舞踊団の「カフェ・ミュラー」「春の祭典」「フルムーン」「コンタ クトホーフ」の4つの舞台を軸に様々なロケーションでダンサーたちが踊ります。エ レベーター、小川、工場、高架の下、モノレールの中。大きな岩や大量の水、砂を 持ち込んだ舞台装置もおもしろい。"強くてはかない"ピナ・バウシュの踊りは痛々 しいくらい感情豊かで美しすぎて、この美しさを目の当たりにしていることに涙が 出ます。生の舞台にはかなわないだろうけど、3D映像でしか見られない角度やその 3Dとダンサーの踊りがかみ合ったときの臨場感や息遣いはすばらしく感動的。

コンテンポラリーダンスのおもしろさを十分に引き出している傑作かつ快作!


Potiche
しあわせの雨傘
Potiche


監督 / フランソワ・オゾン
製作 / エリック・アルトメイヤー、ニコラス・アルトメイヤー
原作 / ピエール・バリエ、ジャン=ピエール・グレディ
脚本 / フランソワ・オゾン
撮影 / ヨリック・ル・ソー
美術 / カーチャ・ヴィシュコフ
衣装 / パスカリーヌ・シャヴァンヌ
編集 / ロール・ガルデット
音楽 / フィリップ・ロンビ
出演 / カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェラール・ドパルデュー、ファブリス・ルキーニ、カリン・ヴィアール、ジュディット・ゴドレーシュ 他
2010年 / フランス


女性賛歌の痛快なコメディ。楽しい!カトリーヌ・トヌーブ主演の「雨傘」といったら当然「シェルブールの雨傘」へのオマージュなんだろうトヌーブけど、いまいち「シェルブールの雨傘」の全貌が思い出せない私……。しかしトヌーブの若々しさとお人形みたいな美しさは印象的。そんなドヌーブのオバサン体型はなんだかすごく愛らしいんだけど(これで70歳手前なんだから素敵!)、ジェラール・ドパルデューのまん丸体型にびっくり。コートのなかに何か仕込んでるのかと思った!いろんなものを内包したオゾンのコメディはアクが強くて惹かれる。

そうそう息子ローランの役の男の子が「クリミナル・ラヴァーズ」のジェレミー・レニエ。ダルデンヌ兄弟「ある子供」で子どもを売ったのもジェレミー・レニエ。なかなかの芸達者だわー。


Le temps qui reste
ぼくを葬る(おくる)
Le temps qui reste


監督 / フランソワ・オゾン
製作 / オリヴィエ・デルボス、マルク・ミソニエ
脚本 / フランソワ・オゾン
撮影 / ジャンヌ・ラポワリー
プロダクションデザイン / カーチャ・ヴィシュコフ
衣装デザイン / パスカリーヌ・シャヴァンヌ
編集 / モニカ・コールマン
出演 / メルヴィル・プポー、ジャンヌ・モロー、ヴァレリア・ブルーニ・テデスキ、ダニエル・デュヴァル、マリー・リヴィエール、クリスチャン・センゲワルト 他
2005年 / フランス


メルヴィル・プポー主演。おばあちゃん役でジャンヌ・モローも出演しています。「生きるとは」ということにストレートに焦点を置いた、気持ちのいい余韻の残る作品。

余命3ヶ月。ゲイであるがゆえに授かることはなかった小さな命を偶然にもこの世に残し、フォトグラファーでありながらかたくなに撮れなかった姉と姉の子どもの光景を素直にカメラに残し、不器用で内気な主人公の最後の「生き方」。少年の頃の自分、姉の子ども、自分が不妊夫婦に授けた子、「死」と直面したときに生きることに純粋で前向きな"子ども"の存在が救いになる。『ふたりの5つの分かれ路』でも感じたような、ちいさなエピソードが重なって重なって胸に迫る、オゾンのいいところがよく出てる作品。


Ricky
Ricky リッキー
Ricky


監督 / フランソワ・オゾン
製作 / クローディー・オサー、クリス・ボルズリ
原作 / ローズ・トレメイン
脚本 / フランソワ・オゾン、エマニュエル・ベルンエイム
撮影 / ジャンヌ・ラポワリー
美術 / カーチャ・ヴィシュコフ
衣装 / パスカリーヌ・シャヴァンヌ
音楽 / フィリップ・ロンビ
出演 / アレクサンドラ・ラミー、セルジ・ロペス、メリュジーヌ・マヤンス、アルチュール・ペイレ、アンドレ・ウィルム 他
2009年 / フランス、イタリア


翼の生えた赤ちゃんが誕生した家族が翻弄しながら絆を深めるという、一見ハートフルなドラマ。フランソワ・オゾンを知らないと最初から最後までなんじゃこりゃ的な映画なんだと思うけど、しっかりオゾンテイストになったこの家族ドラマ、不思議でおもしろく浄化。オゾン自身がダルデンヌ兄弟の『ロゼッタ』を引き合いに出してるように、そういう雰囲気を彷彿とさせます。

たびたび娘のリザの視点で描かれる情景が痛々しかったり胸がしめつけらたり、このリアル感がたまらない。バイクで迎えに来る母親を夜になってもじっと待っているリザ。頼れるのは母親だけ。突然の母親の恋人。リッキーを守ろうとする姉らしさ。微妙な心の距離の描き方がとても上手。そんな巧みな心理描写を映し出しながら、空をぱたぱたうれしそうに飛ぶ赤ちゃんリッキーの姿の愛らしくも可笑しさ。「翼の生えた赤ちゃん=エンジェル」というオチのに少々釈然としない想いが残ったりするのだけどやっぱりオゾンはおもしろくて好き。単なるファンタジーではなく母親の強さや弱さ、けれどとんでもなく大きな母性を描いています。


SOMEWHERE
SOMEWHERE
SOMEWHERE


監督 / ソフィア・コッポラ
製作 / G・マック・ブラウン、ロマン・コッポラ、ソフィア・コッポラ
製作総指揮 / フランシス・フォード・コッポラ、ポール・ラッサム、フレッド・ルース
脚本 / ソフィア・コッポラ
撮影 / ハリス・サヴィデス
出演 / スティーヴン・ドーフ、エル・ファニング、クリス・ポンティアス、ララ・スロートマン、クリスティーナ・シャノン 他
2010年 / アメリカ


スティーヴン・ドーフもいいしエル・ファニングもいい。父親だったり娘だったり第三者になったりいろんな視点になってあらゆる場面で泣ける。父親と娘の間に存在する完全で永遠の愛情、娘と向き合うダメだけど愛おしい父親。空虚さや孤独さを示すジョニーのフェラーリ。ソフィア・コッポラ抜群のセンスで、エル・ファニングが最高にかわいい。はにかんだ笑顔も、泣いてくしゃくしゃになった顔も、ソフィア・コッポラの目で撮る女の子はものすごくかわいくなる。ものすごく趣味がいい。すがすがしくすばらしいラストにまた涙


Fanny och Alexander
ファニーとアレクサンデル
Fanny och Alexander


監督 / イングマール・ベルイマン
製作 / ヨルン・ドンナー
脚本 / イングマール・ベルイマン
撮影 / スヴェン・ニクヴィスト
音楽 / ダニエル・ベル
出演 / グン・ヴォールグレーン、エヴァ・フレーリング、アラン・エドワール、ハリエット・アンデルセン、アンナ・ベルイマン、レナ・オリン、クリスティナ・ショリン 他
1982年 / スウェーデン、フランス、西ドイツ


311分の大作。ブルジョワであるエクダール家の、1907年のクリスマスから2年間を描いた群像劇。ベルイマンであるけれど、分かりやすい構成とストーリーで娯楽色も強い。しかしぎりぎりの緊張感にもっていく力も感動的にベルイマン。ぞくぞくしてベルイマン5時間は楽しすぎます。生活の細部にわたる絢爛豪華な描写は美しく重厚で、ベルイマンの視線を通した「顔」アップの精神性人間性の圧倒的な強さは、素晴らしすぎて泣けます。ベルイマンが好きすぎてたぶんベルイマンの映画以上に好きな映画は今後ないんじゃないかと思うくらい、何度も書くけど素晴らしい作品。余韻も楽しい。


Rece do gory
手を挙げろ!
Rece do gory


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
撮影 / ヴィトルド・ソボチンスキ
出演 / イエジー・スコリモフスキ、ヨアンナ・シュチェルビツ、タデウシュ・ウォムニッキ、アダム・ハヌシュキェヴィッチ、ボグミウ・コビェラ 他
1967-1985年 / ポーランド


『身分証明書』『不戦勝』『バリエラ』と順番に見ていって一番イッちゃってる映画。1967年に公開禁止となり、1981年に新たに撮り足された映画。不条理というかカルト。断片的すぎてわざと無意味にしてるようなもはやスコリモフスキにしかわからない世界。抑圧された欲求不満をぶつけたようなヘンな政治批判映画。前の三作のほうが映画としてはまとまって完成度が高いと思うけどこちらはもうほとんどコラージュと幻想の世界。それはそれでおもしろいんだけど。


Barrier
バリエラ
Barrier


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
撮影 / ヤン・ラスコフスキ
音楽 / クシシュトフ・コメダ
出演 / ヨアンナ・シュチェルビツ、ヤン・ノヴィツキ、タデウシュ・ウォムニッキ、マリア・マリツカ、ズヂジワフ・マクラキェヴィチ 他
1966年 / ポーランド


モノクロのアヴァンギャルド映画。スコリモフスキの作品は1作品ごとにものすごい勢いで先をゆくので驚きと同時に意表をつかれておもしろい。ただ工夫に工夫を重ねてるのはわかるんだけど、凝らしすぎてて逆にカルトぽくなってかっこよさからは離れた感じ。60年代の映画『バリエラ(Barrier)』とは「障壁」という意味で、今の時代にあてはめてもおかしくない世代のギャップを描いた作品。アヴァンギャルドといえども恋愛とか世代のギャップとかどの時代も人は同じような普遍なことで悩んでるんだねー


Walkower
不戦勝
Walkower


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
音楽 / アンジェイ・トゥシャコフスキ
出演 / アレクサンドラ・ザビエルシャンカ、イエジー・スコリモフスキ、クシシュトフ・ハミュツ、エルジュビェタ・チジェフスカ、フランチェシカ・ピィエッカ、アンジェイ・ヘルデル 他
1965年 / ポーランド


『身分証明書』の続編。『身分証明書』よりも計算されて洗練されたカメラワークが印象的。荒削りだった『身分証明書』のほうがインパクトが強かったけど、本作のほうが細部まで細かく構成されて完成度が高いです。アンジェイとテレサが歩いてるシーンで「鶏を殺して」とお願いしにくる女、切り絵の押し売り等、別のシーンでは彼らの後ろで子どもたちが処刑ごっこをしているという、シュールな長回しのカットがおもしろい。再度見たくなる映画とはこういうスタンスの映画だなと思う。


Rysopis
身分証明書
Rysopis


監督 / イエジー・スコリモフスキ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ
撮影 / ヴィトルト・ミツキェヴィッチ
音楽 / クシシュトフ・サドフスキ
出演 / エルジュビェタ・チジェフスカ、イエジー・スコリモフスキ、アンジェイ・ジャルネツキ、タデウシュ・ミンツ 他
1964年 / ポーランド


スコリモフスキが映画学校の卒業制作として監督・脚本・主演をした長編デビュー作。荒い質感の映画で、曇ってるのか晴れてるのか分からないくらいの光の加減がおもしろいです。青年の浮遊感や不安定さ、それを示唆する会話のセレクトが上手。おもしろいな、ほんとヌーベルヴァーグみたいな映画。


Giulietta degli spiriti
魂のジュリエッタ
Giulietta degli spiriti


監督 / フェデリコ・フェリーニ
製作 / アルベルト・リッツォーリ
脚本 / エンニオ・フライアーノ、フェデリコ・フェリーニ、トゥリオ・ピネッリ、ブルネッロ・ロンディ
撮影 / ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
音楽 / ニーノ・ロータ
出演 / ジュリエッタ・マシーナ、サンドラ・ミーロ、マリオ・ピスー、シルヴァ・コシナ、ヴァレンティナ・コルテーゼ、カテリーナ・ボラット、フレデリック・レデブール 他
1964年 / イタリア、フランス


ジュリエッタ・マシーナ主演、フェリーニ初の長編カラー。ごく普通の主婦の垣間見る妖しく幻想的な、神々や神秘に対する思想の洪水の夢世界。いまとは感覚の違うカラー作品、カラーという効果を最大限に引き出した絶大なインパクトの強い色彩と豪華なセットに魅惑的な衣装にうっとり。ひさしぶりにフェリーニ見たけどフェリーニのこの妖艶さ豪華さ映画とはかくなるものという姿勢にくらくら。この堂々たる狂った感覚だいすき。

ジュリエッタ・マシーナを見るといつも田中絹代を思い出すんだけど、そんな美人ではなくかわいい系でスタンスが似ているせいかな。溝口映画の田中絹代、フェリーニ映画のジュリエッタ・マシーナ、みたく、どちらも監督とセットなせいかな。


Los abrazos rotos
抱擁のかけら
Los abrazos rotos


監督 / ペドロ・アルモドバル
製作 / エステル・ガルシア
製作総指揮 / アグスティン・アルモドバル
脚本 / ペドロ・アルモドバル
撮影 / ロドリゴ・プリエト
美術 / アンチョン・ゴメス
衣装 / ソニア・グランデ
編集 / ホセ・サルセド
音楽 / アルベルト・イグレシアス
出演 / ペネロペ・クルス、ルイス・オマール、ブランカ・ポルティージョ、ホセ・ルイス・ゴメス、ルーベン・オチャンディアーノ、タマル・ノバス ディエゴ、アンヘラ・モリーナ 他
2009年 / スペイン


アルモドバルの愛憎劇は深みがあって視覚的にも本当におもしろい。歳を重ねるにつれアルモドバルの映画がどんどんおもしろくなる。そしてアルモドバル映画のペネロペ・クルスは美しくてかわいくて大好き。この人すごい。ペネロペ・クルスを中心として、そのまわりの壊れたさまざまな愛を再構築していく様子。バラバラだったものがそれぞれの壁を乗り越えまとまっていく描写のうまさ。ラストの絶妙さ。見終わったときに自分でもよく分からない感情が溢れ出て不思議な感覚におそわれ涙が出そうだった。


Maradona by Kusturica
マラドーナ
Maradona by Kusturica


監督 / エミール・クストリッツァ
脚本 / エミール・クストリッツァ
出演 / ディエゴ・マラドーナ 他
2008年 / スペイン、フランス


サッカーはぜんぜん詳しくなくて、マラドーナは知っててもマラドーナのすごさなんて分かってない。でもクストリッツァの撮ったマラドーナのドキュメンタリーなんて聞いただけでわくわく。2005年から撮影されその間にマラドーナが死にそうになったりしてようやく2007年に完成した作品。Wカップでの世紀のゴールが繰り返し流され、身体には彫られたカストロやゲバラ、カストロのためなら死ねると言い、ブッシュを批判し、民衆からの熱狂的な支持、コカイン中毒になったり、アルゼンチンの英雄であり革命家でありひとりの人間として強さも弱さもある正直で愛すべき人物。

しかしマラドーナを神として崇拝するマラドーナ教の人々の様子も盲目的でおもしろい。結婚式までしちゃう!調べてみたら、マラドーナ教の洗礼は吊るされたサッカーボールを左手で叩くとか、マラドーナの誕生日の10月30日には「神の手」教会でクリスマスがあり、集まった人達は「メリー・マラドーナ!」と言い合うんだそう。

マラドーナのドキュメンタリーとしては後にも先にもきっとこれがナンバーワン。


That Lady in Ermine
あのアーミン毛皮の貴婦人
That Lady in Ermine


監督 / エルンスト・ルビッチ、オットー・プレミンジャー
製作 / エルンスト・ルビッチ
脚本 / サムソン・ラファエルソン
撮影 / レオン・シャムロイ
音楽 / アルフレッド・ニューマン
出演 / ベティ・グレイブル、ダグラス・フェアバンクス・ジュニア、シーザー・ロメロ、ウォルター・エイベル、レジナルド・ガーディナー 他
1948年 / アメリカ


エルンスト・ルビッチの作品だというのでチェックしてたものの、製作半ばで持病の心臓発作で倒れたルビッチを(後に『悲しみよこんにちは』(1957)を監督する)弟子のオットー・プレミンジャーが引き継いで大部分撮ってるほとんどオットー・プレミンジャーの作品。しかしこの色彩感覚に意気揚々としたミュージカル、美しくて楽しい映画は時代を経ても色褪せない。ちなみにアーミンは英語で"Ermine"、フランス語で"Hermine"。オコジョのこと。アーミンの毛皮は高級品。ほとんどルビッチの作品じゃないけど、こういう映画を見るともっともっと映画が好きになる。


Cztery noce z Anna
アンナと過ごした4日間
Cztery noce z Anna


監督 / イエジー・スコリモフスキ
製作 / イエジー・スコリモフスキ
製作総指揮 / エヴァ・ピャスコフスカ、フィリップ・レイ
脚本 / イエジー・スコリモフスキ、エヴァ・ピャスコフスカ
撮影 / アダム・シコラ
音楽 / ミハウ・ロレンツ
出演 / アルトゥール・ステランコ、キンガ・プレイス、イエジー・フェドロヴィチ、バルバラ・コウォジェイスカ 他
2008年 / ポーランド、フランス


時間軸や男の性質がしばらくわからない。寒々として寂しげな街並み。牛の死体が流れてくる川。台詞は極力少ない。不器用でこんな愛情表現しかできないひとりの中年男の悲喜劇。夜な夜なアンナの部屋に忍び込み、とれかけたボタンを付け直したり塗りかけのペディキュアを塗ってあげようとしたり、完全に変質行為なのに必死で気の弱い男を見ていると不思議に切なく哀しい。そして当然のことだけど、この愛は成就しない。この愛情表現がもしかしたら刑務所にいたときの男の頭のなかのしあわせな体験(もしくは悪い夢?)だったのかもしれないとも思わせる不完全さがなんともいえない余韻。


Cristovao Colombo o Enigma
コロンブス 永遠の海
Cristovao Colombo o Enigma


監督 / マノエル・デ・オリヴェイラ
製作 / フランソワ・ダルテマール
製作総指揮 / ジャック・アレックス
原案 / マヌエル・ルシアーノ・ダ・シルヴァ、シルヴィア・ジョルジュ・ダ・シルヴァ
脚本 / マノエル・デ・オリヴェイラ
撮影 / サビーヌ・ランスラン
美術 / クリスティアン・マルティ
衣装 / アデライド・マリア・トレパ
編集 / ヴァレリー・ロワズルー
出演 / リカルド・トレパ、レオノール・バルダック、マノエル・デ・オリヴェイラ、マリア・イザベル・デ・オリヴェイラ、レオノール・シルヴェイラ、ルイス・ミゲル・シントラ 他
2007年 / ポルトガル、フランス


新大陸発見のコロンブスの出生の謎を解く旅。レオノール・シルヴェイラ、ルイス・ミゲル・シンドラをはじめとするおなじみのオリヴェイラメンバーと監督本人と妻のマリア・イザベルが出演。オリヴェイラ自身は今年102歳、撮影&出演当時98歳という驚くべきバイタリティ。現在活躍する監督の誰も太刀打ちできない驚くべき映像センス。海も空も街もオリヴェイラの映画は感動的に圧倒的。シルヴィアと結婚式をあげたポルトの教会のなんと美しいこと。「人生は難しい」という台詞はオリヴェイラの何かの映画にも出てきた気がするけど、オリヴェイラとマリア・イザベルふたりがほほえましく並んでいる姿を見ると幾多の人生の山を乗り越えてきた何物にも変えられない結びつきを感じる。しかし結婚70周年てすごい!