foreign movie vol.18


It's_a_Free World
この自由な世界で new!!
It's a Free World...


監督:ケン・ローチ
製作:レベッカ・オブライエン
製作総指揮:ウルリッヒ・フェルスベルク
脚本:ポール・ラヴァーティ
撮影:ナイジェル・ウィロウビー
プロダクションデザイン:ファーガス・クレッグ
衣装デザイン:キャロル・K・ミラー
編集:ジョナサン・モリス
音楽:ジョージ・フェントン
出演:カーストン・ウェアリング、ジュリエット・エリス、レズワフ・ジュリック、ジョー・シフリート、コリン・コフリン 他
2007年 / イギリス、イタリア、ドイツ、スペイン


ひさしぶりに見た社会派ケン・ローチは重かった。良いか悪いかと言われると、それはすばらしく良いです。視線がするどすぎる。でも重い。イギリスの労働環境、移民問題、シングルマザー問題、良かれともがけばもがくほど悪い方向に進んでいくのが見ていてつらい。


La vie d'Adele
アデル、ブルーは熱い色
La vie d'Adele


監督:アブデラティフ・ケシシュ
原作:ジュリー・マロ『ブルーは熱い色』(DU BOOKS刊)
脚本:アブデラティフ・ケシシュ、ガーリア・ラクロワ
撮影:ソフィアン・エル・ファニ
編集:カミーユ・トゥブキス、アルベルティーヌ・ラステラ
出演:アデル・エグザルコプロス、レア・セドゥ、サリム・ケシュシュ、モナ・ヴァルラヴェン、ジェレミー・ラウールト、アルマ・ホドロフスキー 他
2013年 / フランス


カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したニュースを知ったときから見たかった映画(映画館には足を運べず)。レズビアンに目覚めた主人公アデルの愛と人生の物語。3時間という長尺なれど、3時間が長く感じられないくらいの充実したすばらしい映画でした。

刺激のない高校生活を送るアデルをどうしようもなく引き付けた美術学校に通うエマ。エマ演じるレア・セドゥがハマり役。青色の髪で知的にサルトルの実存主義を語る姿、投げかけられる視線、レズビアンでなくとも魅力的すぎる彼女に釘づけ(多くの女子はこういう知的ボーイッシュな女子が好きだと思う/この配役の時点で女子受けが非常によい映画だと思う)。恋に落ち、次第に距離が縮まる一瞬一瞬がうつくしい。涙がこぼれるくらいきれい。人生に偶然はないのよ。


O Gebo e a Sombra
家族の灯り
O Gebo e a Sombra


監督:マノエル・ド・オリヴェイラ
製作:ルイス・ウルバーノ、サンドロ・アギラル、マルティーヌ・ドゥ・クレルモン=トネール
原作戯曲:ラウル・ブランダン
脚本:マノエル・ド・オリヴェイラ 撮影:レナート・ベルタ
編集:ヴァレリー・ロワズルー
出演:マイケル・ロンズデール、クラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モロー、レオノール・シルヴェイラ、リカルド・トレパ、ルイス・ミゲル・シントラ 他
2012年 / ポルトガル、フランス


最高です。最高に好き。すべてが好き。ブログトップにも記載してある通りオリヴェイラ『世界の始まりへの旅』(1997)が大好きで大好きでオリヴェイラ作品をいろいろ観たけど、『家族の灯り』もまたすばらしい作品。映画とは理解するしないを超越した芸術であるということをつきつけます。

観ている間はほんとうに豊潤で至福の時間を過ごしている感覚。贅沢で濃厚な会話劇。贅沢といえばクラウディア・カルディナーレ、ジャンヌ・モロー、いつものレオノール・シルヴェイラという女優陣が同じ画面にいることも贅沢。失踪した息子に年老いた夫婦、残された嫁。"穴ぐら"のような小さな家で交わされる家族の絆と愛の数々。父が決断するラストが絶妙でしびれすぎ。


Utomlyonnye solntsem
太陽に灼かれて
Utomlyonnye solntsem


監督:ニキータ・ミハルコフ
製作:レオニド・ヴェレシュチャギン、ジャン=ルイ・ピエール、ウラジミール・セドフ
脚本:ニキータ・ミハルコフ、ルスタム・イブラギムベコフ
撮影:ヴィレン・カルタ
音楽:エドゥアルド・アルテミエフ
出演:オレグ・メンシコフ、インゲボルガ・ダクネイト、ナージャ・ミハルコフ、ニキータ・ミハルコフ、アンドレ・オウマンスキー 他
1994年 / ロシア、フランス


1930年代ソ連の最高指導者スターリンによる政治弾圧・大粛清の時代。画面に映る壮大で美しい大地。とてもロシア的な映画。

上流階級の人々の田園風景でのほのぼのとした情景の前半と、家族が引き裂かれ破滅へ向かう怒涛の後半のストーリーの対比がすばらしいです。監督の娘ナージャの子どもらしい愛らしさは悲惨さを浮き立たせこの作品に大きなインパクトを与えます。時代に翻弄される人々の苦悩。スターリンが大きく印刷された空に浮かび上がる気球の垂幕の演出もうまい。


Dans la maison
危険なプロット
Dans la maison


監督:フランソワ・オゾン
製作:エリック・アルトメイヤー、ニコラス・アルトメイヤー
原作戯曲:フアン・マヨルガ
脚本:フランソワ・オゾン
撮影:ジェローム・アルメーラ
美術:アルノー・ドゥ・モレロン
衣装:パスカリーヌ・シャヴァンヌ
編集:ロール・ガルデット
音楽:フィリップ・ロンビ
出演:ファブリス・ルキーニ、クリスティン・スコット・トーマス、エマニュエル・セニエ、エルンスト・ウンハウアー、ドゥニ・メノーシェ 他
2012年 / フランス


現役の映画監督のなかではかなり好きなフランソワ・オゾンのサスペンスドラマ『危険なプロット』、おもしろいです。オゾンがアレン好きなのがよくわかる。グロテスクさやナンセンスさから少々遠ざかってもオゾンの匂いがちゃんとする作品。

おもしろさの要素の大きなひとつに16歳の高校生、制服姿のエルンスト・ウンハウアーの線の細い美少年ぶり。ヴィスコンティ『ベニスに死す』のビョルン・アンドレセンかと思うようなちょっと冷たく見上げる目線、ゆるんだネクタイと第二ボタンまではずしたシャツで窓際で静かに執筆する姿に老若男女関係なく完全にロックオン。男の裸体を撮らせるならオゾンしかいないくらいの勢い。オゾンの愛情たっぷりに撮られたエルンスト・ウンハウアーの魅力をぜひ見て体感してほしい、とめずらしく誰かに伝えたい気分。

「フランソワ・オゾン」というフィルターがかかってることは認めつつ、背徳感のあるストーリーがスリリングで楽しいです。


Holy Motors
ホーリー・モーターズ
Holy Motors


監督:レオス・カラックス
製作:マルティーヌ・マリニャック、モーリス・タンシャン
脚本:レオス・カラックス
撮影:カロリーヌ・シャンプティエ、イヴ・カペ
出演:ドニ・ラヴァン、エディット・スコブ、エヴァ・メンデス、カイリー・ミノーグ、エリーズ・ロモー、ミシェル・ピッコリ、レオス・カラックス 他
2012年 / フランス、ドイツ


長編としては『ポーラX』以来13年ぶりというレオス・カラックスの作品。『ポーラX』が2000年以前の作品だったとは時の流れを感じます……

この『ホーリー・モーターズ』を観て、レオス・カラックスはやっぱりすごかった。エティエンヌ=ジュール・マレーの連続写真の挿入にしびれ、ゴジラのテーマソングと共に怪人メルドがまた現れて個人的に盛り上がったり(オムニバス映画「TOKYO!」はカラックスだけじゃなくて、ミシェル・ゴンドリーもポン・ジュノもよく覚えてる)、演じること、生きること、終着するのは「行為の美しさ」。

ひさしぶりにおもしろい映画を見た気がしました。カラックスの過去作品をまた見直したい。


La Graine et le mulet
クスクス粒の秘密
La Graine et le mulet


監督:アブデラティフ・ケシシュ
製作:クロード・ベリ
製作総指揮:ピエール・グルンステイン
脚本:アブデラティフ・ケシシュ
撮影:ルボーミール・バックチェフ
編集:ガーリア・ラクロワ、カミーユ・トゥブキス
出演:アビブ・ブファーレ、アフシア・エルジ、ファリダ・ベンケタシュ、アリス・ユーリ、アティカ・カラウイ 他
2007年 / フランス


『アデル、ブルーは熱い色』を見てみたくて、そのアブデラティフ・ケシシュ監督の2007年の作品。これが思いがけずすばらしい作品!

『アデル、ブルーは熱い色』も3時間という長尺らしいんだけど、こちらも2時間半という大作。フランス南部の港町を舞台に、アラブ系移民一家を描いた作品。クスクスが売りの船上レストランを開くという目的に向かって物語は進んでいくものの、もはやドキュメンタリーのような生身の圧倒される怒涛の会話、体温をも感じる質感、熱気、カメラの焦点の合わせ方、これが練り込んだ脚本ならこれまたすごい。リムを演じたアフシア・エルジも15kg増量しての役作り、この役作りがあったおかげであの痛々しくも艶やかなベリーダンスを印象付け、監督も小津安二郎に影響を受けたというし、やっぱり細部まで練り込まれて作られた限りなくリアリティを追求した映画なんだろうと思います。

すぱっと切れるようなラストもこの長さがあってこそ。すごい。


阿飛正傅/Days of Being Wild
欲望の翼
阿飛正傅/Days of Being Wild


監督:ウォン・カーウァイ
製作:ローヴァー・タン
製作総指揮:アラン・タン
脚本:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイル
美術:ウィリアム・チャン
出演:レスリー・チャン、カリーナ・ラウ、マギー・チャン、ジャッキー・チュン、トニー・レオン、アンディ・ラウ 他
1990年 / 香港


見たような気がしてたけど、いままで見たことのないウォン・カーウァイの作品。そして間違いなくウォン・カーウァイの最高傑作。約25年前の香港映画でこのクオリティはすばらしい。画面から感じる亜熱帯の香港の湿度、階段をかけあがるクリストファー・ドイルのカメラワークの格好良さ、挿入される音楽のセンス、断続的に繋がる青春群像のストーリー、当時アイドルだった香港豪華キャストを見るおもしろさ、好みです。


Babette's Feast
バベットの晩餐会
Babette's Feast


監督:ガブリエル・アクセル
原作:カレン・ブリクセン
脚本:ガブリエル・アクセル
撮影:ヘニング・クリスチャンセン
音楽:ペア・ヌアゴー
出演:ステファーヌ・オードラン、ビルギッテ・フェダースピール、ボディル・キュア、ビビ・アンデショーン 他
1987年 / デンマーク


いつか見ようと思いつつなかなか見れなかった映画。

舞台は19世紀後半のデンマークの小さな漁村。フランス革命を逃れて寒村の牧師の娘姉妹の家ににやってきたバベットが年月を経たある日、牧師の生誕100周年を祝う一夜限りの晩餐会を開催します。簡素な暮らしをする村人には分からない、将軍しか知らないバベットの料理(芸術)の真実の価値と意味。バベットが最後まで召使には見えなかったのは。

怒涛のラストが思ったよりも痛快なドラマ性のあるストーリーかつ深い意図のある映画でおもしろかったです。


Amour
愛、アムール
Amour


監督:ミヒャエル・ハネケ
製作:マルガレート・メネゴス、シュテファン・アルント、ファイト・ハイドゥシュカ、ミヒャエル・カッツ
製作総指揮:マルガレート・メネゴス、ウーヴェ・ショット、ミヒャエル・カッツ
脚本:ミヒャエル・ハネケ
撮影:ダリウス・コンジ
美術:ジャン=ヴァンサン・ピュゾ
衣装:カトリーヌ・ルテリエ
編集:モニカ・ヴィッリ、ナディン・ミュズ
出演:ジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペール、アレクサンドル・タロー、ウィリアム・シメル、ラモン・アジーレ 他
2012年 / フランス、ドイツ、オーストリア


老いることと死ぬことと愛すること、老老介護という問題についてミヒャエル・ハネケが取り組んだ作品。ミヒャエル・ハネケらしい説明もなく観客をふっと置いていく演出がこの作品では泣けます。

リアリティを描くんではなく、あくまで美しいから死に向かう一点が強調されます。ほぼ完全室内の密室撮影。エマニュエル・リヴァの演じる痴呆認知症が進んでいく老人の姿は、『恍惚の人』(豊田四郎/1973)の迫真で壮絶な姿を見せた森繁久彌レベルではないけど、違うベクトルで迫真でした。

ミヒャエル・ハネケが救われる幻想のラストを描いたのが意外。


Cache
隠された記憶
Cache


監督:ミヒャエル・ハネケ
製作:ファイト・ハイドゥシュカ
製作総指揮:マルガレート・メネゴス、ミヒャエル・カッツ
脚本:ミヒャエル・ハネケ
撮影:クリスティアン・ベルガー
 他
2005年 / フランス、オーストリア、ドイツ、イタリア


フランスとアルジェリアの歴史的過去や人種差別的な問題が下地となったミヒャエル・ハネケの”犯人探しではない”サスペンス映画。静寂の使い方が上手な監督。

少年の頃に犯した罪と対峙する主人公。悪戯と恐怖。持続する緊張感。そこで「ハネケの映画」だからと身構えるのをふと忘れるとあのシーンがあって本当にああいうシーンを入れるタイミングが巧みすぎる。緊張感ゆえに長回しのシーンを凝視して、何かを見つけようとする心理が働くのだけどたいした鍵はほとんど見つからないという挑発的な映画で、インパクトという点では『ピアニスト』に負けず劣らず大きな印象を残します。うまいな、すごい。


Un ete brulant
灼熱の肌
Un ete brulant


監督:フィリップ・ガレル
脚本:フィリップ・ガレル、マルク・ショロデンコ、カロリーヌ・ドゥリュアス=ガレル 撮影:ウィリー・クラン
音楽:ジョン・ケイル
出演:モニカ・ベルッチ、ルイ・ガレル、モーリス・ガレル、セリーヌ・サレット、ジェローム・ロバール 他
2011年 / フランス、イタリア、スイス


もはや貫録というか圧巻のモニカ・ベルッチを年上女優妻に、裕福な年下画家夫はルイ・ガレル。このふたりの愛と嫉妬に巻き込まれる友人の恋人たち。

娼婦のようだと言われたダンスシーンは豊満な肉体とともに官能的でモニカ・ベルッチの存在感は言わずもがなという感じだけど、ルイ・ガレルも愛に生きるタイプに見えるので案外ふたりの密度や距離感は悪くなかったです。愛と死、虚と実は紙一重。この作品は出演者たちのささいな表情や動きがものすごくリアルで、カラーであることの色彩への気の配り方も、あらゆるショットも、すべてが映画でなければ成立しない映画だったことに感動。ガレルの映画はやっぱりすごい。

最後に出てくるおじいちゃんはルイ・ガレルの本物のおじいちゃんモーリス・ガレル(若かりし頃はトリュフォー『柔らかい肌』なんかにも出演/記憶はないなー)。音楽がジョン・ケイルで、それはガレルっぽい!と思ったら『愛の誕生』(1993)もジョン・ケイルでした。

最近の作品だと少し前に見た『愛の残像』(2008)のほうが分かりやすかったけど、今回はさらに入り混じる大人の映画でした。


La frontiere de l'aube
愛の残像
La frontiere de l'aube


監督 : フィリップ・ガレル
製作 : エドワール・ヴァイル、コンチータ・アイロルディ
脚本 : マルク・ショロデンコ、アルレット・ラングマン、フィリップ・ガレル
撮影 : ウィリアム・ルプシャンスキー
出演 : ルイ・ガレル、ローラ・スメット、クレマンティーヌ・ポワダッツ 他
2008年 / フランス


フィリップ・ガレルの映画を久しぶりに観賞。はかない静かなモノクロームの恋愛映画は健在。フランソワ演じるルイ・ガレルはフィリップ・ガレルの息子だそうです。ルイ・ガレルもローラ・スメットもフランスの匂いが強烈。男は白シャツ、ベッドシーツは完全に白。モノクロ映画対応の演出だとしてもクラクラします。うちのベッドシーツも明日から真っ白にしたい。

上目遣いで現れる鏡に映る死んだはずのキャロル(ローラ・スメット)の姿のシーンは完全にホラー映画でわりと異質に感じられました。しかし愛とかセックスとか孤独とか夢とか現実とか運命だとか、愛のはじまりや終わり、その繊細さを画面に映すのはフィリップ・ガレルはとても上手。


Ray Harryhausen: Special Effects Titan
レイ・ハリーハウゼン 特殊効果の巨人
Ray Harryhausen: Special Effects Titan


監督 : ジル・パンソ
製作 : アレクサンドル・ポンセ
脚本 : ジル・パンソ
音楽 : アレクサンドル・ポンセ
出演 : レイ・ハリーハウゼン、ピーター・ジャクソン、ジェームズ・キャメロン、スティーヴン・スピルバーグ、ティム・バートン、ギレルモ・デル・トロ、ジョン・ラセタ、ニック・パーク 他
2011年 / フランス


今年5月に亡くなったレイ・ハリーハウゼンの愛すべきキュートなダイナメーション、ストップモーションアニメのドキュメンタリー。ハリーハウゼン自らが作品の説明をし、スピルバーグやティム・バートン、ニック・パークが彼の作品について語る構成。テスト映像も多く、実写とストップモーションアニメの合成の方法や実際のクリーチャーなんかを紹介していたり、90歳の誕生日パーティーの映像、ハリーハウゼンの映画を見たことがある人ならかなり楽しいと思います。

ハリーハウゼンの映画は『世紀の謎 空飛ぶ円盤地球を襲撃す』『地球へ2千万マイル』『シンバッド七回目の航海』『ガリバーの大冒険』『アルゴ探険隊の大冒険』『シンドバッド 虎の目大冒険』『恐竜100万年』『タイタンの戦い』あたりを見ているけど、どれもクリーチャーが印象深くてほんとに楽しいファンタジー。

このドキュメンタリーで初期の作品として『おとぎ話シリーズ』が紹介されていたのが最大の収穫。『マザーグース物語』『赤ずきんちゃん』『ヘンゼルとグレーテル』『ラプンツェル姫のお話』『ミダス王のお話』という子供向け作品を自主制作してるそうです。youtubeで簡単に見れるというすばらしさ。


Prezit svuj zivot (teorie a praxe)
サヴァイヴィング ライフ -夢は第二の人生-
Prezit svuj zivot (teorie a praxe)


監督 : ヤン・シュヴァンクマイエル
脚本 : ヤン・シュヴァンクマイエル
出演 : ヴァーツラフ・ヘルシュ、クラーラ・イソヴァー、ズザナ・クロネロヴァー、エミーリア・ドシェコヴァー、ダニエラ・バケロヴァー 他
2010年 / チェコ


久しぶりに見たシュヴァンクマイエル、本作品は実写と写真を組み合わせたカットアウトアニメ。性的なメタファー、食べ物のグロさ、おじいちゃんになっても衰えない”シュヴァンクマイエルのアニメーション”に感動を覚えました。さすが巨匠。長編のせいかナンセンスさはそこそこできちんとストーリーもオチもあります。

アートアニメーションでありながらエンタメ性も備えた高クオリティな映画。やっぱりシュヴァンクマイエルはすごかったと言いたい。


Du Cote D'Orouet
オルエットの方へ
Du Cote D'Orouet


監督 : ジャック・ロジエ
脚本 : ジャック・ロジエ
撮影 : コラン・ムニエ
出演 : ベルナール・メネズ、ダニエル・クロワジ、フランソワーズ・ゲガン、キャロリーヌ・カルティエ 他
1970年 / フランス


「アデュー・フィリピーヌ」を見て「オルエットの方へ」を見るとこれは女の子の数が2人から3人に増えただけでほとんど同じ映画。海辺のバカンス、とりとめのない話にバカ騒ぎ。ジャック・ロジエの何が上手かといえば、なんてことのない時間、けれどかけがえのない(と思える)時間の切り取り方。終わりはないような錯覚。

物語はほとんど単調で驚くほど何も発信せず、彼女たちの意味のない会話が延々と続いたり(この映画はまた特別長くて160分超)、こういう映画は大人になりきらないと案外難しいよなーと思います。渦中にいるとなかなかこのキラキラ具合いが感じにくいよね。特別美人でもないしスタイルもさほどよくない3人というのがリアリティを増幅させます。「オルエットの方へ」を見ると「アデュー・フィリピーヌ」の良さをまた再認識。


Adieu Philippine
アデュー・フィリピーヌ
Adieu Philippine


監督 / ジャック・ロジエ
脚本 / ジャック・ロジエ、ミシェル・オグロール
撮影 / ルネ・マテラン
出演 / ジャン=クロード・エミニ、ステファニア・サバティーニ、イヴェリーヌ・セリー、ヴィットリオ・カプリオーリ、ダニエル・デシャン 他
1962年 / フランス、イタリア


ジャック・ロジエは短編ドキュメンタリー『バルドー/ゴダール』(1963)を見たことがあるのみで、長編映画初体験。ゴダールやロメールとほぼ同世代、そしてゴダールやトリュフォーが称賛するヌーヴェルヴァーグの伝説的な映画監督。しかも寡作。

兵役前の青年と2人の女の子が過ごすひと夏のバカンス。たったそれだけのシンプルな物語。『アデュー・フィリピーヌ』というのはフィリピン人のことではなくてゲームの名前で、朝起きて先に「アデュー・フィリピーヌ!」と言ったほうが勝ち。2人の女の子がベッドの上で「アデュー・フィリピーヌ!」と笑いあっているキュートなシーンが印象的。

遊んでる間はあーだこーだともめるわりに徴兵された彼をあっさりとバイバイと見送るのもいいなー。それぞれがなんてことのないキャラでストーリーに埋没してるけど、全体的には雰囲気勝負でなかなかのヌーヴェルヴァーグ初期作。


La Piel que Habito
私が、生きる肌
La Piel que Habito


監督 / ペドロ・アルモドバル
製作 / アグスティン・アルモドバル、エステル・ガルシア
原作 / ティエリ・ジョンケ
『私が、生きる肌』/『蜘蛛の微笑』(早川書房刊)
脚本 / ペドロ・アルモドバル、アグスティン・アルモドバル
撮影 / ホセ・ルイス・アルカイネ
美術 / アンチョン・ゴメス
編集 / ホセ・サルセド
音楽 / アルベルト・イグレシアス
出演 / アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス、ジャン・コルネット、ロベルト・アラモ 他
2011年 / スペイン


愛と狂気と復讐のサスペンス。

人工皮膚の権威である天才形成外科医にアントニオ・バンデラス。現在から過去にさかのぼり、また現在へ戻るという構成。狂気の果ての愛情の描き方のアルモドバルのうまさ。ゴルチエによるボディスーツの造形の美しさ。

B級映画にもなりそうなストーリーなのにアルモドバルの手にかかると美しいと錯覚する愛の多重構造の映画になってしまうということにくらくらします。すごい!


36 vues du pic Saint-Loup
ジェーン・バーキンのサーカス・ストーリー
36 vues du pic Saint-Loup


監督 / ジャック・リヴェット
製作 / マルティーヌ・マリニャック、モーリス・タンシャン
脚本 / ジャック・リヴェット、パスカル・ボニゼール、クリスティーヌ・ローラン、セルジオ・カステリット、シレル・アミテ
撮影 / イリナ・ルブチャンスキー
美術 / マニュ・ド・ショヴィニ
編集 / ニコール・ルブチャンスキー
音楽 / ピエール・アリオ
出演 / ジェーン・バーキン、セルジオ・カステリット、アンドレ・マルコン、ジャック・ボナフェ、ジュリー=マリー・パルマンティエ 他
2009年 / フランス、イタリア


ジャック・リヴェット、実はそれほど見れてないうえに印象もそんなになく、アンナ・カリーナの『修道女』も見てるのにうろおぼえレベル。

この歳になってようやく分かる/分かった気になる映画もたくさんあるけど、この作品も分かるとは言い難い、結果的に難解ということになるのかもしれない大人の愛がテーマ。ストーリーそのものは難解ではありません。ヌーヴェルヴァーグ人らしいふいにはじまる劇中劇、または出演者がカメラに向かって話し出す、こういう演出はいかにも!で楽しく感じます。

空に浮かぶ丸い月と小さなサーカスの円形のテントと舞台。道化たちの寸劇では丸い皿が次々に割れ、最終的にはすべて割れてしまいます。違和感による小さな小さな亀裂、ムチで裂かれる新聞紙によって完全に解き放たれます。

老いても巨匠ジャック・リヴェット。一筋縄ではいかないひねくれ加減。


Jodaeiye Nader az Simin
別離
Jodaeiye Nader az Simin


監督 / アスガー・ファルハディ
製作 / アスガー・ファルハディ
脚本 / アスガー・ファルハディ
撮影 / マームード・カラリ
出演 / レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト、サリナ・ファルハディ 他
2011年 / イラン


ベルリン国際映画祭で金熊賞を含む3冠、アカデミー外国語映画賞にも受賞した作品。

とはいえなんとなく見たんだけど、これが予想外に高レベル作品でした。緊張感の持続が上手い。現代のイラン社会のリアルな様々な格差が浮き彫りにされ、日常生活からふいにサスペンスタッチにもっていく脚本も上手い。聡明な少女が最後に出す決断がなんだったのか余韻が残ります。

イランといえばずいぶん前からキアロスタミやマフマルバフ、マジッド・マジディくらいしか知らなかったけど、当たり前ながら時代は変わって新しい風が吹いているんだなーと思うとわくわくします。


Hideaway
ムースの隠遁
Hideaway


監督 / フランソワ・オゾン
脚本 / フランソワ・オゾン、マチュー・イッポー
音楽 / ルイ=ロナン・ショワジー
出演 / イザベル・カレ
ルイ=ロナン・ショワジー、メルヴィル・プポー、クレール・ヴェルネ、ジャン=ピエール・アンドレアーニ 他
2009年 / フランス


ひさしぶりのオゾンが見れてうれしい。オゾンの常識にとらわれないすれすれの自由さが好き。人間の描き方が好き。

裕福なカップルのルイ(メルヴィル・プポー)と恋人ムース(イザベル・カレ)。ある日ドラッグの過剰摂取でルイが亡くなってしまうんだけど、ムースは彼の子を身籠っていた。メルヴィル・プポーが出てきて即死んでしまう役なので出演はごくわずか(画像はメルヴィル・プポーとイザベル・カレ)。そこで出てくるのがルイの弟役のルイ=ロナン・ショワジー。

ルイ=ロナン・ショワジーがまたメルヴィル・プポーに通じるオゾンが好きそうなヨーロッパ系イケメン。(そりゃもうかっこいいけど)路線狭すぎる!ちょっと調べてみたらミュージシャンらしく映画初出演。あと、イザベル・カレがどう見ても本物の妊婦のお腹で、それも確認してみたらやっぱり撮影当時本物の妊婦で、本物の妊婦だったからオゾンが起用した模様。

妊娠発覚時にはドラッグ中毒だったわけで、酒は飲むわナンパ相手についていくわ見てるだけではムースがお腹の子どものことをどう思っているのかよく分からないんだけど、ムースが村に買い物に出かけたときに持ち歩いていたのはBONTONのエコバッグ。たぶんショップで買ったら商品入れてくれるような感じの。ロゴは分かりやすいけどちいさいし一瞬。でもこの一瞬でたぶん十分。はたしてそれがオゾンの意図したものだったかどうかは分からないけど、私は勝手にムースの気持ちを想像してラストもなんとなく納得できたような。その一瞬で勝手にオゾンすごいと感動までしてしまったよ。ゲイなのも関係してるのか女性には描けない女性の心理描写が上手。

でも一瞬映るBONTONのエコバッグを見て男性がそこまで想像可能かどうかわりと疑問。子持ち以外も分かるのか疑問。フランスならありなのかなー


I Clowns
フェリーニの道化師
I Clowns


監督 / フェデリコ・フェリーニ
製作 / エリオ・スカルダマーリャ
脚本 / フェデリコ・フェリーニ、ベルナルディーノ・ザッポーニ
撮影 / ダリオ・ディ・パルマ
音楽 / ニーノ・ロータ
出演 / フェデリコ・フェリーニ、アニタ・エクバーグ、ピエール・エテックス、ジョセフィン・チャップリン 他
1970年 / イタリア


タイトルの「クラウン」とはサーカスなどに登場するおどけ役のコメディアンのこと(ピエロはクラウンの一種)。失われた道化師の時代を回顧するドキュメンタリーのような作品。

フェリーニのサーカスやクラウンへの愛情と幻想とがぱんぱんにつまった魅惑的なまぎれもない芸術作品。芸術作品なのに娯楽作品でもあり、完全にフェリーニ。クラウンたちの白塗りの顔はなぜだか哀愁に満ちていて、クラウンたち自体は得体のしれないふわふわした不安さえも感じるのに、不思議に魅力的。

『8 1/2』のような圧巻の狂騒シーンはほんとにフェリーニ趣味ですてき。狂騒が終わるラストも泣ける。


Le Gamin au velo
少年と自転車
Tanztraume


監督 / ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
製作 / ジャン=ピエール・ダルデン、リュック・ダルデンヌ、ドゥニ・フロイ
製作総指揮 / デルフィーヌ・トムソン
脚本 / ジャン=ピエール・ダルデンヌ、リュック・ダルデンヌ
撮影 / アラン・マルコァン
美術 / イゴール・ガブリエル
編集 / マリー=エレーヌ・ドゾ
出演 / セシル・ドゥ・フランス、トマス・ドレ、ジェレミー・レニエ、ファブリツィオ・ロンジョーネ 他
2010年 / ドイツ


心の葛藤を言葉少なに描くダルデンヌ兄弟の作品は期待を裏切らない。

父親に捨てられ拒絶された少年が偶然出会った女性によって心を回復させていくという物語。里親となった女性の少年への「許し」の瞬間が映画の最高潮で胸に迫ります。ばっさり切るラスト、余韻が残るラストがダルデンヌ兄弟。好きだなー。