即物的で物語や情緒的感情がはぎとられ、ダイレクトに接触する。『騎手・女・蛾(The Horseman,the Woman,and the Moth)』につながる作品。『騎手・女・蛾』と違うのは二重焼き付けをしたり、フィルムに色を直接塗ったり傷をつけたりせず、シンプルに蝶や草花をフィルムに貼り付け、立て続けに映像化する。『騎手・女・蛾』の感動をもう一度思い出した。
空に浮かび上がる木々の枝。遊園地の明かり。光の動きがあまりに美しく、涙が出る。『夜への期待』と訳すのは厳密には誤訳。この作品はブラッケージのスタイルにおけるひとつの分岐点。日常の視覚世界を粉砕し、新しいヴィジョンを打ちたてようとし、当時の実験映画の観客が拒絶反応を示したそうだ。後の『DOG STAR MAN』の原点ともいえる作品。