Japanese movie vol.2


「安全への逃避」
SAWADA 青森からベトナムへ
ピュリツァー賞カメラマン沢田教一の生と死


監督 / 五十嵐匠
製作 / 小泉修吉
撮影 / 堀田泰寛
音楽 / 寺嶋民哉
録音 / 中山隆匡
出演 / 沢田サタ、ケイト・エェップ、根津甚八、森篤夫 他
1997年


カメラマン沢田教一はベトナム戦争の報道写真「安全への逃避」でピュリツァー賞を受賞、内戦のカンボジアで撃たれ、1970年に亡くなった。家族や友人のインタヴューを通して沢田教一の一生をふりかえるドキュメンタリー映画。私は彼のことを知らなかった。ピュリツァー賞を知っていても内容や事情に詳しくなかった。一枚の写真から彼の被写体に対する敬意と真摯な態度が見える。写真には何も言えなくなる必死さ、無念さ、やりきれなさがある。死に物狂いでいい写真を撮ろうとした。なんとなく、の写真が流行ることもある。それはそれでいい写真もあるけれど、同じ青い空を写した写真は、決定的に違う。


ツィゴイネルワイゼン
ツィゴイネルワイゼン

監督 / 鈴木清順
脚本 / 田中陽造
製作 / 荒戸源次郎
撮影 / 永塚一栄
音楽 / 河内紀
美術 / 木村威夫
出演 / 原田芳雄、大楠道代、藤田敏八、麿赤児、大谷直子、玉川伊佐男、樹木希林 他
1980年


内田百聞「サラサーテの盤」原作。百聞の世界を映像化した忘れがたいインパクトを残した映画。ストーリー云々というより、効果音や雰囲気、現実と幻想の曖昧さ、不条理さは抜群。屈折した映像の美しさ。後にも先にもツィゴイネルワイゼンのような作品はめずらしいのかもしれない。わけはわからないのに飽きない面白さの理由は言葉で表現できない。タイトルは「ツィゴイネルワイゼン」の蓄音盤に作曲家サラサーテの声が入っているということからきているが、それが何だったのか謎は明かされない。映画を見終わったあと、現実と直面するのに少し時間がいったほど強烈に自分のなかの何かがズレた。


ユリイカ
ユリイカ

監督・脚本 / 青山真治
製作 / 塩原徹(電通)、長瀬文男(IMAGICA)、仙頭武則(サンセントシネマワークス)、滝島優行(東京テアトル)
撮影 / 田村正毅
音楽 / 山田勲生、青山真治
美術 / 清水剛
出演 / 役所広司、宮崎あおい、宮崎将、斉藤陽一郎、国生さゆり 他
2000年


第53回カンヌ国際映画祭"国際批評家連盟賞""エキュメニック賞"受賞作品。北九州を舞台に過去と葛藤する人々の再生を描く物語。3時間37分の長い映画。国生さゆりが役所広司に言う「私の為に生きとったよ」という別れの言葉は印象的。国生さゆりの存在感に驚く。外の世界は必ずしも心地よい場所ではない。他者と生きていくこと。現実を受け止めがたい状況において、自分の位置する場所をどこに求めるか。ここは出発だと思えばそこからはじめればいいのかもしれない。フィルムの最後、セピア色の映像がカラーに変わる瞬間の現実の世界。これはあまりに分かりやすい手法で目新しくもなく、もっと違うなにかが出来たような気がしたのに少しがっかりした。ラストは宮崎アニメのような爽快感を出そうとしたのかそんな感じで、宮崎アニメは好きだけれど、これもがっかりの要因。


now printing!
変形作品第5番-レンブラントの主題による変形解体と再構成-

監督 / 黒坂圭太
1986年


17世紀オランダの画家レンブラントの絵画を、分解し再構成する作品。黒坂圭太と近い作品を制作したのは石田尚志『フーガの技法』(2001)。ともに画家である両者はアナログな手法によって、世界を作り出す。『変形作品第5番』はものすごいスピード感で膨張と収縮を繰り返し、隙をあたえない。鼓動、振動、ぶれやズレ。黒坂圭太の内的なものを感じることが出来る。


now printing!
生態系9−流沙蝕

監督 / 小池照男
1993年


顕微鏡撮影、望遠鏡撮影の鉄のさびの映像がフィルムに何万枚と貼り付けられ、スタン・ブラッケージ『Mothlight』(1963)関連の流れを思い出させる。無機質なものが次第に何か形ある意味あるものに見え、しかし冷静で重厚感のある映像。ブラッケージから音が聞こえると言った彼らしく、観念が感情を呼び起こし、メッセージを感じる作品。


光・しずく
光・しずく

監督 / 能登勝
1998年


能登勝の作品をはじめて見た時の印象として、映像の色合いだった。緑の色、青の色、実験映画を多少でも知っていると、あ、この色、と目にとまる。好きな作品がふと頭の中をよぎる。能登勝は思いがけずふと私を虜にした。彼の作品の上映は念入りで、映写機の状態云々によって色合いの指定が入る。そのくらい色に執着をみせる能登勝は、ブラッケージの映画を見た時、涙が止まらなかったと言う。小池照男曰く「彼がいちばんブラッケージを理解しているんじゃないかな」と。


フーガの技法
フーガの技法

監督 / 石田尚志
2001年 / 愛知芸術文化センター


バロック音楽のJ・S・バッハの同題曲をモチーフとし、石田尚志独自の厳密な音楽解析に基づいた映像化の試み。抽象図形の運動。楽曲に基づいて製作された映像作品は多くあり、私が一番に思い出したのはアレクサンダー・アレクセイエフ&クレア・パーカー『三つの主題』(1980)だったのだが、他には久里洋二『G線上の悲劇』(1969)やビル・ヴィオラ『Desert』(1994)など、1920年代から良質な作品が数多い。石田尚志の本作品は、コラージュではなく、またパソコンや機械での作画ではなく、自分で手書きしたものをアニメーション化して、それがよく分かり、アレクセイエフに近い良さを感じた。


アートマン
アートマン

監督 / 松本俊夫
1975年


11分の作品。映画前史に登場する動くおもちゃ、フェナキストコープの復原版。動作を18コマに分割して、一周するとワンパターンが完結するエンドレス状アニメーション。松本俊夫の作品を見たのはこれがはじめてで、1975年の時点でこのような試みをしていたという事実、ヨーロッパ実験映画からアメリカ実験映画に傾倒していった映像作家は、排他的でそれ以外のものを削り取って痩せていく純粋さよりも、雑多でエネルギーを持ち強靭さをそなえた作品を作りたかったのだろうと思った。


女は二度生まれる
女は二度生まれる

監督 / 川島雄三
脚本 / 井出俊郎、川島雄三
原作 / 富田常雄
撮影 / 村井博
美術 / 井上章
音楽 / 池野成
出演 / 若尾文子、藤巻潤、フランキー堺、山村聡、山茶花究、山岡久乃、倉田マユミ 他
1961年 / 日活


川島監督の大映デビュー作。若尾文子の頭のてっぺんからつまさきまで艶かしい芸者・こえん役はすばらしい。美しいが軽い女ゆえにいまいちしあわせをつかむことが出来ないこえんだけれど、最後にいままで見せなかった微妙な笑顔が印象的で何かをふっきったかのような、そのほんの少し希望が見えるような演出が私は好きだと思った。そんなラストにふと我にかえる気がした。


好色一代男
好色一代男

監督 / 増村保造
製作 / 永田雅一
脚本 / 白坂依志夫
原作 / 井原西鶴
撮影 / 村井博
美術 / 西岡善信
音楽 / 塚原哲夫
出演 / 市川雷蔵、若尾文子、中村玉緒、船越英二、水谷良重、近藤美恵子、浦路洋子 他
1961年 / 日活


世之介はお調子者。けれどすべての女に対する思いは「女はかわいそうなんや。女の喜ぶことをしてやりたい」と、どんな男にも負けないくらい懐が深い。明るく調子よく、能天気な世之介を演じるのは市川雷蔵。かけあいのテンポはいいし色気があって、なんてステキでなんていい男。金の亡者であるよりも、女に使う方が金は生きるんや、と声高に言う世之介はアホかもしれないけれど、金にしがみつき生涯倹約して死んだ両親よりもよほど人間味があった。世之介となら死んでもいいと思った。久しぶりに見た日本映画がものすごく面白くて感動した作品。


月曜日のユカ
月曜日のユカ

監督 / 中平康
脚本 / 斎藤耕一、倉本聰
原作 / 安川実
撮影 / 山崎善弘
美術 / 大鶴泰弘
音楽 / 黛敏郎
出演 / 加賀まりこ、北林谷栄、加藤武、ウィリアム・バッソン、中尾彬、波多野憲 他
1964年 / 日活


中平康の映像はモダンで面白い。日本映画とは思えないほどスタイリッシュで飽きない。若干20歳の加賀まりこが演じたユカ。少女のようなオンナのような、魅力的で純粋で単純で、男を喜ばせるのが最大の喜びで、誰とでも寝るけれどキスはダメ。会話の中で「我々の夢のような女性だな」と男性がコメントするけれど、どこまでの男性にとってこういう女性が受け入れられるのかは謎。ただ女性から見て、ユカのしなやかな体つき、大きな瞳、黒の下着姿で猫のように男の横に寝ること、愛されること、愛すること、ウソを言わない、それで十分で、頭が悪いオンナだとは決して思わない。オンナはオンナの武器がある。ユカはそれに無自覚だっただけ。


不射之射
不射之射
Archer without a Bow


監督・脚本 / 川本喜八郎
原作 / 中島敦「名人伝」
美術 / 趙鴻、劉焔星
アニメーション / 車彗、川本喜八郎、峰岸裕和 他
撮影 / 喬元正、田村実
日本語ナレーション / 橋爪功
1988年 / 中国(上海美術映画製作所)


製作国は違うけれど、分かりにくいので日本映画のカテゴリ。春秋戦国時代、趙の国の紀昌は天下一の弓の名人を目指し、師に習い、仙人に習うために山にこもり、ついに弓を取らない弓の名人になって山から降りてくる。本作品は川本喜八郎監督が、中国で制作することを熱望した作品だそうで、単身上海スタジオを訪れ、中国の人形アニメー夕ーを育成しながら制作にあたったという。川本喜八郎の世界らしからぬ表現が多々あって、それはスタッフの意見か中国の意見か分からないけれど、ユーモアが散りばめられている。


ギ・装置M
ギ・装置M

監督 / 伊藤高志
出演 / 森村泰昌
1996年


『七年目の浮気』のマリリン・モンローに扮した森村泰昌が出演するサイレント映像。横浜美術館「森村泰昌展 美に至る病・女優になった私」で公開。枠の感じられる作品を作る伊藤高志は、私は好きだと思う。有名なスカートがまくれ上がるシーンが何度も何度も映し出される。しかしスカートの下に見えるのは何もつけていない男性性器。虚飾やセックス、そこに感じるものはあらゆるごたくを並べても映像に勝ることはない。サイレントは絶大な効果。


ZONE
ZONE

監督 / 伊藤高志
音響 / 稲垣貴士
1995年


白い木枠の中にある写真達。白い部屋。首のない男が椅子に座っている。木枠の中の写真は一瞬の動きを留めたものではなく、枠の中だけで動き出す。写真という私たちの観念は本当だろうか。映像は淡々とした、それでいて猛烈なスピードを映し出す。光の撮り方はなんの新鮮さもないのに、不気味に感じられ、美しく、不思議と印象に残るフリッカー映像。男の手の不確実さがなんとも言い難く、良い。


ワンダフルライフ
ワンダフルライフ

監督・脚本 / 是枝裕和
製作 / 佐藤志保、秋枝正幸
音楽 / 笠松泰洋
撮影 / 山崎裕
出演 / ARATA、小田エリカ、寺島進、内藤剛志、谷啓、伊勢谷勇介、山口美也子 他
1998年


やさしい童話みたいにゆっくりしたテンポの映画。見なきゃ見ないでかまわないし、人におすすめするほどでもない映画なんだろうと思う。けれど、それでもこういうファンタジーにはやっぱり弱くて、心穏やかになれるやさしい映画で、私は好き。ほとんどドキュメンタリー。どんなに演技上手でも、ホンモノの想い出を語る人達とくらべるととても滑稽に思えた。主役ARATAのはかなさがたまらない。誰かの人生のいちばんの想い出に -それが他愛のない出来事だったりして-、そのなかに自分が入っていること、それはすごくステキなことで、すごくスバラシイことで、すごくシアワセなことで、すごくウレシイこと。私はどんな場面を選ぶだろう。誰かの想い出のなかに、私は存在するだろうか。


タイムレスメロディ
タイムレスメロディ

監督・脚本 / 奥原浩志
製作 / 矢内廣
プロデューサー / 仙頭武則、森本英利
音楽 / 青柳拓次
撮影 / 福本淳
美術 / 林千奈
編集 / 奥原浩志、仙頭武則
出演 / 青柳拓次、市川実日子、近藤太郎、余貴美子、若松武史、木場勝己 他
1999年


PFF第9回スカラシップ作品の奥原浩志監督デビュー作品。時間のズレた3つの話からなる映画。時間からすると真ん中にある"スクラッチ"という話が最初。出てくる登場人物達のあいまいさ−どちらでもない、どちらでもいい、という感覚−に、私は共感した。何をしたいとか、何をしなければ、という感情はこの映画には出てこない。余計な説明も一切ない。自分の居場所があって、そこが気持ちよくて、一歩踏み出す勇気はないけれど、ずっとこのまま。寡黙ともいえる主人公達の不器用さ。人と交わるって事は、自分の調子を少し狂わされるんだ。青柳拓次も市川実日子も近藤太郎もその演技のヘタさ加減のなかの、素顔が見える一瞬の表情が印象的。仙頭武則を見直した。


どこまでもいこう
どこまでもいこう

監督・脚本 / 塩田明彦
製作 / 堀越謙三、松田広子
音楽 / 岸野雄一
撮影 / 鈴木一博
録音 / 臼井勝
美術 / 磯見俊裕
編集 / 筒井武文
出演 / 鈴木雄作、水野真吾、芳賀優里亜、鈴木優也、能登絵梨菜、小貫華子、安藤奏 他
1999年


リアルな子供達の描写。"リアル"が子供にかかってるのではなくて描写が(狙っているとしても)すごくリアルだと思った。ヘンに抑揚をつけて芝居する子役じゃなくて、自然な動きが出来る子役。友人の野村くんの突然の死。軽口をたたく他の友人に無言で身体を押し倒す。小学生の男の子の、口には出さない心の声が聞こえた。子供の世界の、彼らだけの大きな事件。喧嘩やいたずら、恋のはじめのカタチ。音楽『史上最大の作戦』がかわいらしくアレンジされているのもいい。樋口泰人も出演。音楽には岸野雄一。協力という名目で青山真治と佐藤公美の名前も。j-movie。第一作『月光の囁き』とは違う、塩田明彦の魅力を発見。いい映画だと思う。


月光の囁き
月光の囁き

監督・脚本 / 塩田明彦
原作 / 喜国雅彦
脚本 / 西山洋一
音楽 / 本多信介
撮影 / 小松原茂
出演 / 水橋研二、つぐみ、草野康太、井上晴美、真梨邑ケイ 他
1999年


塩田明彦デビュー作品。十代の高校生達。同じ部活の拓也と紗月は好きあってつき合うが、拓也の紗月への異常な執着さをみせる。拓也は言う。「知らない紗月を見て、傷ついたり悲しかったりするかもしれないけれど、それでも僕は知らない紗月を見れるのがうれしい」と。紗月は先輩と自分のセックスを拓也に見せながら、自分の知らない感情に辿り着く。Sに目覚めていく紗月役はつぐみのハマり役。ただのラブストーリーを見るならこういう話の方が好き。映画的ではないかもしれないけれど、ドラマ+という感じで面白い。根ほり葉ほり聞きたい事があっても耳や口をふさぐのは強さでも優しさでもなく、弱さ。見たくないものを拒絶するのは、逃避。けれどその反対が強さでも誠実さでもない。どれが正しいわけでもどれが悪いわけでもない。"愛はコンビニでも買えるけれど もう少し探そうよ"って。ね。


千と千尋の神隠し
千と千尋の神隠し

監督・原作・脚本 / 宮崎駿
製作総指揮 / 徳間康快
音楽 / 久石譲
作画監督 / 安藤雅司
美術監督 / 武重洋二
プロデューサー / 鈴木敏夫
製作 / スタジオジブリ
声の出演 / 柊瑠美、内藤剛志、沢口靖子、夏木マリ、入野自由、菅原文太 他
2001年


人間の世界のすぐそばにある、けれど人間の世界ではない世界。名前を忘れると本当の世界に帰れなくなってしまう。私は誰か。名前がある。名前によって私たちは物を識別したり判断したり理解する。あらゆるものに名前があって、名前にはある種の術がかけられている。名前がなくなったとき、私たちはどうなるのか。一人っ子で都会育ちでわがままに育ったであろう千尋は、誰も知らない不思議な世界で次第に成長していく。強くなっていく少女の姿を宮崎駿は上手に描く。


忍者武芸帳
忍者武芸帳

監督 / 大島渚
製作 / 中島正幸、山口卓治
製作・脚本 / 大島渚
原作 / 白土三平
脚本 / 佐々木守
撮影 / 高田昭
音楽 / 林光
声の出演 / 小沢昭一、山本圭、小山明子、佐藤慶、松本典子、福田善之 他
1967年


白土三平の長編劇画『忍者武芸帳』を大島渚が静止画でアニメ化。室町、戦国と怒濤の時代に生きる影一族の謎。白土三平の漫画の太い線はこちらへ向かってくる激しさがあり、迫力があり、時代があり、重みがある。人が死ぬ。ただ刀で切られるのではない、手足はちぎれ、顔は真っ二つ。黒いベタが鮮血に見えてくる。頭部も手足もちぎれた男の身体が枯れ木にひっかかっている姿、身ごもった明美が殺されるシーン、蛍火が手足を切られ朦朧としそれでも敵から逃げるシーン、影丸の凄惨な処刑シーンが衝撃的。影一族の壊滅。"破れても人々は目的に向かい 多くの人が平等になる日までたたかうのだ"。


Calligraphiti
カリグラフィティ
Calligraphiti / Calligraphiti


アニメーション / 古川タク
音楽 / ピエール・バルー
1982年


カリグラフ(フィルムに直接絵を描いていく技法)を発明したのはかのノーマン・マクラレン。この作品は油性ペンで直接描いて反転させたものだけれど、ノーマン・マクラレンのオマージュともいえる作品。驚くべきは音楽に採用したPierre Barouh(ピエール・バルー)。曲は"L'autre Rive"(向こう岸)。マクラレン、古川タク、ピエール・バルーという名前が繋がるとは予想しなかった。


The Bird / L'oiseau

The Bird / L'oiseau


アニメーション / 古川タク、リンククレクション、大竹伸一、三善和彦、塚田洋子
音楽 / 藤沢道雄
色彩 / 前野幸子、古屋和斎
1985年


なんともいえない三味線の音にのって現れる赤と青の鳥のような物体。男はその物体についていき、つかまえようとするがつかまえられない。人は美しかったり奇妙だったりするものを、どうしてつかまえようとするのか。どうしてつかまえ、手にとろうとするのか。藤沢道雄の音楽がすごい。


Sleepy
スリーピー
Sleepy / Sleepy


アニメーション / 古川タク、湯川高光
音楽・音響 / 長谷川龍
1980年


まさおくん家の二階にはきょうりゅうが住んでいるんだ。なまえはスリーピー。スリーピーはとってもなまけものでいつも寝てばっかりいるんだ。でもね、すっごくかっこよかったおはなしがあるんだ。かっこよかったおはなし、ききたい? 古川タクの珍しい子供向け作品。ものすごくかわいらしくていい話。絵本も出版されている。


Speed / Vitesse
スピード
Speed / Vitesse


アニメーション / 古川タク、湯川高光
音楽 / 山崎宏
特殊効果 / 八巻磐
製作 / 岡部冬彦
1980年


ホンダの依頼で製作した作品。1980年の毎日映画コンクール大藤賞受賞作品。芸術、食料、乗り物、と文明の進化を一瞬で表現。ロケットが月に突き刺さるシーンは『月世界旅行』(ジョルジュ・メリエス/1902/フランス)から。坂本龍一の曲"Das Neue Japanische Elektronische Volkslied"を使用。月がばらまく綺麗な色の点が印象的。現在の心境だとMark Eley&Wakako Kishimotoを思い出す配色。曲はアレでも映像は古くないんだ、全然。


Comics / Comiques
コミックス
Comics / Comiques


アニメーション / 古川タク、湯川高光
音楽 / 山崎宏
撮影 / 長嶋哲夫
1979年


1975年あたりの古川タクはアヌシーで賞をとっている(『驚き盤』1975年)とはいえ、私にはあまりピンとくるものではなかった。しかし1978年あたりからまた復活する。真っ赤な空に海の動きのような青い岩群。上には線香花火のような人。一体何を象徴するのか。相変わらず山崎宏がいい。


Motion Lumine / Jeu de lumiere
モーション・ルミネ
Motion Lumine / Jeu de lumiere


アニメーション / 古川タク、東山かほる、高橋和子
音楽 / 山崎宏、クセナキス
1978年


光の動きとあわせて動く色とりどりの光。とても近代的な感じのする作品。音楽にはイアニス・クセナキス。あ、分かってこの音を使ってるんだと思った。山崎宏の音楽はいつも良いけれど、そういう下地があるんだと思った。何人のクセナキスファンがこの作品を見た事があるだろう。若干ひっかかりに乏しい映像かもしれないけれど、音楽好きならかなりいける。


Nice to see you / Enchante
ナイス・トゥ・スィー・ユー
Nice to see you / Enchante


アニメーション / 古川タク、東山かほる
1975年


緑と黒の点しか現れない抽象アニメ。サイレント。海外の有名アニメ作家の作品のような機械的な絵、計算されつくされた黄金比の図形とは異なり、とても人間的なフリーハンドで書かれた点。サイケデリックともちょっと違う。それがとても古川タクらしくて、久里洋二から少し離れたかなと思わせる。


Head Spoon / Tete Cuiller
ヘッド・スプーン
Head Spoon / Tete Cuiller


アニメーション / 古川タク
音楽 / 西岡たかし
1972年


頭をスプーンで叩かれたような感覚のショート・コミック集。これはかなり面白い。最初から流れる高音の持続音が好き。地面に水をやる、すると水をやっていた男の体毛(眉毛、髭、胸毛、陰毛)がもしゃもしゃ伸びてくる。ワニが現れる、ワニの緑の部分と白いお腹の部分が別れて、それは男女のセックスシーンに変わる。ほんの少し視点を変える、それはとても愉快な人生になるという事かもしれない。


NewYork Trip / Voyage a NewYork
ニューヨーク・トリップ
NewYork Trip / Voyage a NewYork


アニメーション / 古川タク
音楽 / 三保敬太郎、山崎宏
1970年


ニューヨークのカルチャーをモチーフにしたコラージュ・アニメ。色んなイメージが楽しい。原色がサイケにチカチカするシーンや、集合写真の人の顔が全部赤色で塗られていく様など。音楽もアニメ音楽をコラージュしていたりしてちょっと格好いい。


Oxed-Man / Homme de Boeuf
牛頭
Oxed-Man / Homme de Boeuf


アニメーション / 古川タク
音楽 / 一柳慧
1968年


久里実験工房に在籍していた古川タク。久里洋二の作品より多少ストーリー性があるように思われるけれど、まさに久里洋二の弟子的作品。音楽が一柳慧なせいもあるかもしれない、久里洋二『部屋 The Room』(1967)と同じ音が使われる箇所もある。でも私はこういう感じ好き。