Japanese movie vol.6


にごりえ
にごりえ

監督 / 今井正
原作 / 樋口一葉
脚本 / 水木洋子、井手俊郎
撮影 / 中尾駿一郎
出演 / 淡島千景、久我美子、丹阿弥谷津子、山村聡、芥川比呂志、仲谷昇、田村秋 他
1953年 / 松竹


当時「東京物語」(2位)「雨月物語」(3位)を抑えて、キネ旬のベストテン1位になった作品。1953年てすごい日本映画豊作の年。樋口一葉の短編小説「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」3編からなるオムニバス映画。成瀬巳喜男もそうだけど、女性主観で女性視線の映画をなぜこんなにも男性監督が上手に撮るのか本当に不思議。今井正は美人好みなのか、3編それぞれの主役をはる丹阿弥谷津子、淡島千景、久我美子みんながきれいどころで、はずしがひとりもいない。明治女性のやむにやまれない押し殺した感情や葛藤を上手に演出ししてること、当時の女性の地位や扱いなんかを見てるのも面白いし、樋口一葉の原作自体が面白いんだろうけどそれを丁寧に描く今井正がやっぱり上手で、映画ていいなーと改めて思うほどいい作品だった。


裸の島
裸の島

監督 / 新藤兼人
製作 / 松浦英策、新藤兼人
脚本 / 新藤兼人
撮影 / 黒田清巳
美術 / 新藤兼人
音楽 / 林光
出演 / 殿山泰司、乙羽信子、田中伸二、堀本正紀 他
1960年


この映画を勝手にずっとブレッソンみたいな映画だと思っていたのだけど、それとはまた違う摩訶不思議な映画。摩訶不思議なのに不思議でなくなる瞬間があってそこから引き込まれる。瀬戸内海の孤島で生きる一家。作物のための水がないため、黙々と水を運ぶ両親。サイレントではないのに"台詞が一切ない"という不思議さ、音はあるのにしゃべらない、でもそれが見ていくと不思議でなくなってくる。厳しいけれど日々の地味な単調な労働、自然との戦い、そういう美徳が見ていてなんと美しいことだろうと思った。大事な水をこぼした乙羽信子を殿山泰司が張り倒すシーン、長男を亡くして作物をめちゃくちゃに荒らして嗚咽する乙羽信子、それを張り倒さずにじっと見つめる殿山泰司。単調であるなかの、このやりとりのシーンが素晴らしかった。


恍惚の人
恍惚の人

監督 / 豊田四郎
製作 / 佐藤一郎、市川喜一
原作 / 有吉佐和子『恍惚の人』
脚本 / 松山善三
撮影 / 岡崎宏三
美術 / 小島基司
編集 / 山地早智子
音楽 / 佐藤勝
助監督 / 鈴木一男
出演 / 森繁久彌、高峰秀子、田村高廣、乙羽信子、篠ヒロコ、伊藤高、市川泉 他
1973年 / 東宝


同じ豊田四郎『夫婦善哉』(1955)や川島雄三『暖簾』(1958)あたりの森繁久彌が最高に好きなので、正直森繁久彌がどんな役でもおもしろく感じてしまう。59歳で84歳の老人を演じた森繁久彌はさすが。私たぶん岡崎宏三撮影の映画を見たのこの作品がはじめてかも。たしかに雨の中追いかけるカメラの動きやぼやけた景色はおもしろく思った。


煙突の見える場所
煙突の見える場所

監督 / 五所平之助
製作 / 内山義重
原作 / 椎名麟三
脚色 / 小国英雄
撮影 / 三浦光雄
美術 / 下河原友雄
音楽 / 芥川也寸志
助監督 / 三輪彰
出演 / 上原謙、田中絹代、芥川比呂志、高峰秀子、関千恵子、田中春男、花井蘭子 他
1953年 / 新東宝


見る場所によって3本にも4本にも見える、通称「お化け煙突」(1926-1964年に千住火力発電所にあった4本の煙突)がある北千住が舞台。情けない(でも心は優しい)夫をやらせたらピカ一の上原謙と田中絹代の夫婦役、強い現代女性の象徴を演じる高峰秀子、この設定だけでもわくわくする。田中絹代はおばさん感がぬぐえない(危険日や安全日をカレンダーに書いてるのはちょっと……)けどマジぽさが上手。赤ちゃんあやしに疲れてるのがリアル。あばら屋に住むがさがさした感じ、赤ん坊をみんなで看病するシーン、なんだかいいなー。曖昧な表現になってしまうんだけど、なんだかすごくいい映画。巨匠。


無法松の一生
無法松の一生

監督 / 稲垣浩
製作 / 田中友幸
原作 / 岩下俊作
脚色 / 伊丹万作、稲垣浩
撮影 / 山田一夫
美術 / 植田寛
編集 / 黒岩義民
音楽 / 團伊玖磨
出演 / 三船敏郎、高峰秀子、芥川比呂志、飯田蝶子、笠智衆、田中春男、多々良純、中村伸郎 他
1958年 / 東宝


稲垣浩監督が二度映画した『無法松の一生』。1度目は1943年、松五郎役は阪東妻三郎。この作品は2度目の作品にあたり、カラーで松五郎役は三船敏郎。さらにヴェネチア国際映画祭で金獅子賞受賞作品。さらに村山新治監督と三隅研次監督の『無法松の一生』もあるんだけど、私が見たのはこの作品だけ。そもそも高峰秀子が良子夫人で出演しているからという理由で見てみたんだけど、三船敏郎演じる粗雑で人情深い松五郎という人物が見ていくうちにほんとに愛嬌たっぷりで素直でかわいらしく思えて不思議なくらい好きになったのは驚き。時間の経過を示唆する人力車の車輪がまわるシーンは松本俊夫『銀輪』(1956)を彷彿とさせる意外な前衛映像。クライマックスの祇園太鼓のシーンは、回を重ねるごとに感動を呼ぶ名シーンだと思いました。

しかし阪東妻三郎主演の作品は撮影が宮川一夫!こっちもぜひ見たいわー。


二十四の瞳
二十四の瞳

監督 / 木下恵介
製作 / 桑田良太郎
原作 / 壺井栄
脚本 / 木下恵介
撮影 / 楠田浩之
音楽 / 木下忠司
出演 / 高峰秀子、天本英世、夏川静江、笠智衆、浦辺粂子、明石潮、高橋豊子 他
1954年 / 松竹


戦争のシーンは皆無という反戦映画であり、戦前から戦後という時代を見事に描いた木下惠介の傑作。高峰秀子が泣くたびに私も泣けるという、涙なしには見られない映画。生きることの辛さ、子どもたちの素直で純朴な思い、優しさや喜び、様々な交差する思い、子どもたちが大石先生を訪ねて連なって歩く姿のかわいいこと、泣き虫な大石先生の温かさ、小豆島の美しい自然、なんともこれは見事な映画。


スイートリトルライズ
スイートリトルライズ

監督 / 矢崎仁司
製作 / 葉山正人
プロデューサー / 宮崎大、田辺順子
エグゼクティブプロデューサー / 泉英次
原作 / 江國香織
脚本 / 狗飼恭子
撮影 / 石井勲
美術 / 高橋泰代
出演 / 中谷美紀、大森南朋、池脇千鶴、小林十市、大島優子、安藤サクラ、黒川芽以 他
2009年


ひさしぶりの矢崎仁司に心を奪われる。中谷美紀の狂気をはらんだ美しさと、大森南朋のダメななかにあるやさしさと、池脇千鶴の女ウケしないムカつく女役のうまさ(あと小林十市のバレエダンサー的肉体の堪能)。それぞれが二度とはない毎日のあやうい日常のなかに絶妙な配置で、ぐらぐらしつつも均衡を保って、壁があってウソがあって、守るべきものがある。草食系夫婦の物語。


危いことなら銭になる
危いことなら銭になる

監督 / 中平康
企画 / 久保圭之介
原作 / 都筑道夫「紙の罠」
脚本 / 池田一朗、山崎忠昭
撮影 / 姫田真佐久
美術 / 大鶴泰弘
音楽 / 伊部晴美
出演 / 宍戸錠、長門裕之、草薙幸二郎、浅丘ルリ子、左卜全、武智豊子、浜田寅彦、山田禅二、郷えい治、野呂圭介 他
1962年 / 日活


中平康のアクションコメディ。日活アクションの第一弾だそう。中平康てこういうのも撮れちゃうんだね、冒頭のお札が舞う図も「危(やば)いことなら銭になる!」という声の挿入もいい。宍戸錠も長門裕之もいいなー。長門裕之のコメディ出演作をはじめて見たけど長門裕之も多才な人だと感心。こういうのもいいなあ!と思わせるわくわくして楽しいコメディ。


砂の上の植物群
砂の上の植物群

監督 / 中平康
企画 / 坂上静翁
原作 / 吉行淳之介
脚本 / 池田一朗、中平康、加藤彰
撮影 / 山崎善弘
美術 / 大鶴泰弘
編集 / 辻井正則
音楽 / 黛敏郎
出演 / 仲谷昇、島崎雪子、稲野和子、西尾三枝子、信欽三、小池朝雄、高橋昌也、福田公子 他
1964年 / 日活


吉行淳之介原作の小説を映画化。中平康は『月曜日のユカ』(1964)くらいしか見てないけど、なんかこれすごい。モノクロにカラーを挿し込むパートカラーという方法を用いてパウル・クレーの抽象画を挟み込み、出演者全員が肉体的なエロさを感じさせ、女優の顔の執拗なアップ、いまの日本映画にはない時代的な力強さがにじみ出ている挑戦的な映像が散りばめられた映画。すごい。他の作品も見たい。


瀬戸内少年野球団
瀬戸内少年野球団

監督 / 篠田正浩
製作 / 原正人
プロデューサー / 飯泉征吉、山下健一郎
原作 / 阿久悠
脚本 / 田村孟
撮影 / 宮川一夫
美術 / 西岡善信
編集 / 山地早智子
音楽 / 池辺晋一郎
助監督 / 永井正夫
出演 / 夏目雅子、郷ひろみ、伊丹十三、岩下志麻、山内圭哉、佐倉しおり、大森嘉之、大滝秀治 、加藤治子、渡辺謙 他
1984年


敗戦直後の淡路島の国民学校。いろんなエピソードがてんこもりの2時間20分超。敗戦後という暗さはなく明るく爽快な作品で、夏目雅子も子役たちの元気さもいいなー。夏目雅子演じる女性らしい芯の強さを持った駒子先生がすごくいい。有名な作品なわりに見ようと思ったきっかけは撮影が宮川一夫だと知ってから。正直宮川一夫だなーと思うシーンは分からなかったけれど、金比羅さんのシーンは良かったし涙を流す夏目雅子のアップもきれいだった。ただタイトルのわりに野球に焦点があってないような?


人情紙風船
人情紙風船

監督 / 山中貞雄
製作 / 武山政信
原作 / 河竹黙阿弥
脚本 / 三村伸太郎
撮影 / 三村明
編集 / 岩下広一
音楽 / 太田忠
出演 / 中村翫右衛門、河原崎長十郎、山岸しづ江、霧立のぼる、瀬川菊之丞、橘小三郎、市川笑太郎、助高屋助蔵、市川莚司 他
1937年 / 東宝


日中戦争の任地で28歳で病死した山中貞雄の遺作。有名なのに山中貞雄の映画をフルで見たのは初めて。70年以上前なのを感じさせないクオリティ完成度の高さ、さらにまだ27歳の時に撮った作品てすごすぎる。長屋の人々を中心とした、コミカルなのに哀しく切ないお話。役者の生き生きとしたお芝居の上手さにも驚いたけど、それぞれのショットがなんてキレイだろうと思った。印象に残る構図。時代による抑制もあっただろう時代に、抜群の感性でとびきりの作品を作った山中貞雄。貧乏長屋に住む市井の人々を見ていたら、何十年後に作られた山田洋次『たそがれ清兵衛』も是枝裕和『花よりもなほ』も、あー原点はここなんだなーと思って感慨深くなる。憎めない小悪党の髪結新三は杉浦日向子の『とんでもねえ野郎』の桃園彦次郎みたいだなーと思ったり、人間は昔からずっと同じような事で泣いて笑って悩んで悲しむんだね。最後に新三が悪党に囲まれるシーンは何とも言えず心に深く残る。

黒澤明をはじめいろんな人が憧れていた山中貞雄が生きて映画を撮り続けていたら、たしかにもっとすごい作品が生み出されていたかもしれないよね。


おとうと
おとうと

監督 / 市川崑
製作 / 永田雅一
企画 / 藤井浩明
原作 / 幸田文
脚本 / 水木洋子
撮影 / 宮川一夫
美術 / 下河原友雄
編集 / 中静達治
音楽 / 芥川也寸志
助監督 / 中村倍也
出演 / 岸恵子、川口浩、田中絹代、森雅之、仲谷昇、浜村純、岸田今日子、土方孝哉 他
1960年 / 大映


ニュープリント銀残し版で観賞。姉に岸恵子、弟に川口浩、継母が田中絹代で父が森雅之。キャストがすごいなー。冒頭の雨のシーンが印象的で、それだけでこの映画が生きてる感じがする。すさまじく陰湿な家庭のなかでみんなの橋渡しをするちゃきちゃきした岸恵子もいいけど(女学生には見えないけど)、意地の悪い継母を演じる田中絹代はやっぱり上手。ほんとに憎憎しいわー。銀残しという方法を用いた宮川一夫の映像の陰影も心に残る。前衛。ラストの岸恵子の行動はまさに原作を書いた幸田文という人そのもののような気がした。上手。


秋日和
秋日和

監督 / 小津安二郎
製作 / 山内静夫
原作 / 里見ク
脚本 / 野田高梧、小津安二郎
撮影 / 厚田雄春
美術 / 浜田辰雄
衣裳 / 杉山利和
編集 / 浜村義康
音楽 / 斎藤高順
出演 / 原節子、司葉子、岡田茉莉子、佐田啓二、佐分利信、沢村貞子、桑野みゆき、島津雅彦、笠智衆 他
1960年 / 松竹


小津映画で原節子が初めて母親役を演じた作品。嫁入り前の娘(司葉子)の嫁入り話に気をもむ母の役なんだけど、『晩春』(1949)の父(笠智衆)と娘(原節子)の話と設定は違えど似てる話。母娘の映画のせいか、じんわり深く心に染み入ってしまい、司葉子じゃなく原節子に感情移入してホロリとした。小津映画も、関係ないけどやまだ紫も作品に触れる時期て大事だねー。20くらいのときに見たら司葉子に感情移入したかな、つまんない映画だと思ったかな。小津映画は見た作品についてはどれも好きだけど、この『秋日和』のように"感傷的に泣ける"作品は少ないので、かなり女性寄りな作品だと思う。旅先での母娘の会話が感傷の頂点。「しあわせになってね」様々な想いを含んだ母から娘への言葉。ラストのアパートにひとり残された原節子の表情。うまいなー、やわらかい雰囲気の優しい母親を演じた原節子が上手。いわゆる小津映画ファンはあまり好きじゃないのかもしれないけど私は好き。


浮草
浮草

監督 / 小津安二郎
製作 / 永田雅一
企画 / 松山英夫
脚本 / 野田高梧、小津安二郎
撮影 / 宮川一夫
美術 / 下河原友雄
編集 / 鈴木東陽
音楽 / 斎藤高順
助監督 / 中村倍也
出演 / 中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、野添ひとみ、笠智衆 他
1959年 / 大映


小津安二郎と宮川一夫が組んだ唯一の映画で、俳優は中村鴈治郎に京マチ子、若尾文子に杉村春子、聞いてるだけでわくわくしてくるような映画。こういうわくわく感は本当に楽しい。ただ少し前に「映画カメラマン 宮川一夫〜没後10年 世界がみとめた映像の技〜」という番組を見ていて、この映画について語りに語られていたため前情報ありまくりで正直あまり新鮮な気持ちで見られなかったのが残念。宮川一夫と組んだこの映画が俯瞰のショットが多く小津の映画らしくないこと、『夜の河』を彷彿とさせる赤の使い方、ほとんどのシーンで画面のどこかに赤があること、土砂降りの雨のシーンがめずらしいこと。見たら気づくようなことをあえて事前に知ってしまったことで面白さが半減してしまった気がする。小津映画のなかでは上位ではないけれど、あーでもほんとに中村鴈治郎も京マチ子も杉村春子もすばらしい、絶妙すぎる。


闇の子供たち
闇の子供たち

監督 / 阪本順治
製作 / 気賀純夫、大里洋吉
プロデューサー / 椎井友紀子
エグゼクティブプロデューサー / 遠谷信幸
企画 / 中沢敏明
原作 / 梁石日『闇の子供たち』(幻冬舎文庫刊)
撮影 / 笠松則通
美術 / 原田満生
編集 / 蛭田智子
音楽 / 岩代太郎
主題歌 / 桑田佳祐『現代東京奇譚』
照明 / 杉本崇
録音 / 志満順一
助監督 / 小野寺昭洋
出演 / 江口洋介、宮崎あおい、妻夫木聡、プラパドン・スワンバーン、プライマー・ラッチャタ、豊原功補、鈴木砂羽 他
2008年


タイでの幼児売春、人身売買、臓器売買という闇の世界にいる子供たちにスポットをあてたヘビーな作品。子どもがいる身としては買春され外国人に好き勝手にされたちいさな子どもの涙や、エイズで苦しむ子どもの姿があんまり痛々しすぎて衝撃。タイの子役たちの演技がズキンと胸にきます。いろんな気持ちでいっぱいになるのに言葉にすると単なる感情論だったりして、結局撮ってるほうも見てるほうも何の解決も生まないもどかしさ。自分探しのアホ女から一皮向けた女を演じた宮崎あおいが非常に上手でした。ラストのラストでえーなにそれー的な腑に落ちない点もたくさんあって、なんでNGOじゃなく警官に発砲?とってつけたような江口洋介のそのトラウマて!とか、エンディングが桑田佳祐でなんだかすごい違和感だよーとか、いろいろあるんだけどそれまでの経緯はとてもよかったです。


実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程(みち)

監督 / 若松孝二
製作 / 若松孝二
プロデューサー / 尾崎宗子、大友麻子
企画 / 若松孝二
原作 / 掛川正幸
脚本 / 若松孝二、掛川正幸、大友麻子
撮影 / 辻智彦、戸田義久
美術 / 伊藤ゲン
音楽 / ジム・オルーク
ナレーション / 原田芳雄
出演 / 坂井真紀、ARATA、並木愛枝、地曵豪、伴杏里、大西信満、中泉英雄、伊達建士、日下部千太郎、椋田涼 他
2007年


連合赤軍の若者たちが彼らの目線でどのような過程や葛藤を経てあさま山荘事件へと至ったのかを描く3時間を超える大作映画。中盤のリンチ殺人周辺が精神的にも視覚的にもホラーで怖すぎる。若松孝二て『処女ゲバゲバ』(1969)や『ゆけゆけ二度目の処女』(1969)のピンク映画を昔見たことあるくらいで、正直内容はあんまり覚えない。この1970年代前後という時代は若松孝二にとって自我形成期というか最も自身に影響を及ぼした時代だったのかな。もう画面からあふれ出る「若松孝二の情熱」がすごすぎて映画全体を覆う恐ろしい緊迫感にビビってしまう。内容については結局その細分化された主義がどういう違いなのか把握できず学生闘争の先に何があったのか私には見えてこず、ビビって見てるせいでこの映画が良かったかどうかの判別が自分でよく分からないんだけど、インパクトはかなり大きくて怖すぎて泣ける映画は久しぶりに見た気がした。
京大の塩見のなんぼなんでも〜みたいなへんな関西弁が気になったり、遠山美枝子役の坂井真紀の渾身の熱演にぎゃーとなったり、加藤三兄弟の一番下の弟、どこかで見たことある……あっ!『奈緒子』!みたいなちょっと映画から抜けることで冷静さを取り戻したりして、なんかへんに力が入って肩が凝った映画で、エンドロールの「音楽:ジム・オルーク」を見てここだけなんかふと純粋におもしろかった。


簪(かんざし)
簪(かんざし)

監督 / 清水宏
原作 / 井伏鱒二
脚色 / 清水宏
撮影 / 猪飼助太郎
美術 / 本木勇
編集 / 浜村義康
音楽 / 浅井挙曄
出演 / 田中絹代、川崎弘子、藤達雄、笠智衆、日守新一、三村秀子、河原侃二、横山準、大塚正義 他
1941年 / 松竹


温泉地が舞台の『按摩と女』とよく似た作品だけど、こちらの作品のほうがいろんな方向から語り口があるのでバラエティに富んでいるというか案外話が複雑に絡んでいて楽しめた。宿で仲良くなった客が時期がきてどんどん帰っていくのに対して戻る場所のない田中絹代が寂しげなのがなんとも印象的。『風の子供たち』の笠智衆は気づかなかったけど、今回は納村という役で出てるというので見てたら若い!お父さんおじいちゃん役の印象が強すぎてこんな若い笠智衆にびっくり。


風の中の子供
風の中の子供

監督 / 清水宏
原作 / 坪田譲治
脚色 / 斎藤良輔
撮影 / 斎藤正夫
セット / 江坂実、岩井三郎
音楽 / 伊藤宣二
出演 / 河村黎吉、吉川満子、葉山正雄、爆弾小僧(横山準)、坂本武、岡村文子、末松孝行、長船タヅコ、突貫小僧 他
1937年 / 松竹


子供を画面に捉えたときのローアングルのカメラは小津安二郎のよう。あと小津安二郎もやってる、玄関の門や戸枠を画面に入れて枠が入るなかで人物を動かす撮り方は大好き。話の中心となる素朴で心優しい兄弟がたまらない。笠智衆が警官役で登場していたらしいのだけど見てる最中はわからなかったなー。預けられた叔父さんの家から戻ってきてしまったやんちゃな弟・三平が困ってる母親に向かって「ボク叔父さんのうちに行ったほうがいい?行かないほうがいい?」と聞いた後、「……ボクやっぱり叔父さんのうち行くね……」という健気な台詞、弟が叔父さんの家に預けられたあと兄・善太がひとりでかくれんぼするシーンに涙しそうに。子供たちが夏休みにちょっとだけ成長したこと、家族に平和が戻ったこと。平和な日常のなかのちょっとした事件、というスタンスの映画が好きなのと(小津安二郎は清水宏よりだいぶささやかな事件)、監督の清水宏は子供が好きだったことがよく分かる作品で、こんな映画いまはないよねーと思いながら見た。いい映画。


有りがたうさん
有りがたうさん

監督 / 清水宏
原作 / 川端康成
脚色 / 清水宏
撮影 / 青木勇
編曲 / 篠田謹治
音楽指揮 / 堀内敬三
音響効果 / 斎藤六三郎
出演 / 上原謙、桑野通子、築地まゆみ、二葉かほる、仲英之助、石山隆嗣、河村黎吉、忍節子 他
1936年 / 松竹


川端康成原作、舞台は伊豆。上原謙演じる"有りがたうさん"は舗装されていない峠道を走るバスのイケメン運転手。道行く人がバスに道を譲ってくれるたびに「有りがたう!」と声をかけるので"有りがたうさん"と呼ばれている。道行く女の子はみんな有りがたうさんが好き。モテ男らしく全員平等に下心なくやさしく接するイケメン上原謙。しかし成瀬巳喜男なんかを見てたりするとこの善良すぎる上原謙が逆にうそっぽい気がしてきてしまう……。小津や成瀬はどちらも両性的で女性的なのに較べて清水宏は男性的な作品。だから優劣あるわけじゃなくて、私はやっぱり前者のほうがパンチがあって好きかなーと思ってしまった。ロケ映像はすてきだし、こんなのんびりとしてあたたかいロードムービーもあっていいと思うけど、個人的に心に入り込んでくるものが少なかった映画。たぶん2本見たくらいでは「清水宏の映画」にはまれてないせい。


按摩と女
按摩と女

監督 / 清水宏
脚本 / 清水宏
撮影 / 斎藤正夫
美術 / 江坂実
音楽 / 伊藤宣二
出演 / 高峰三枝子、徳大寺伸、日守新一、爆弾小僧、佐分利信、坂本武、春日英子 他
1938年 / 松竹


徳さんと福さんという按摩2人がおしゃべりしながら山道を歩く冒頭のシーンから楽しい映画。1938年の作品でこんなロケをしてたんだなあ……。70年前の作品ということに驚く映像美。ラスト近くの雨の中たたずむ高峰三枝子がものすごくきれい。人々の豊かな心情があたたかくたくましくあっけらかんと爽やかに描かれている。清水宏は同い年で同じ松竹でデビューした小津安二郎と親友だったとか、溝口健二の信頼もあつかったとか、そういう情報も楽しいなー。


荷車の歌
荷車の歌

監督 / 山本薩夫
製作 / 中山亘、立野三郎
原作 / 山代巴
脚本 / 依田義賢
撮影 / 前田実
美術 / 久保一郎
音楽 / 林光
出演 / 望月優子、三国連太郎、左幸子、水戸光子、利根はる恵、左時枝、西村晃 他
1959年 / 新東宝


明治大正昭和の時代を生きる農村の女セキを中心にしたド根性の労働者女一代記。ぎゅうと詰め込まれた濃すぎる内容で見応えたっぷり。見終わったあとには大作を見た充実感に溢れる。望月優子も三国連太郎も壮年期から老人まですばらしく演じ、前半は幼い我が子を思う母の気持ち、幼い子が母を思う気持ちに泣き、後半はあまりに早い時代の移り変わり翻弄されながらも家族が家族を思う気持ちに泣き、家族の連帯、憎しみの連鎖をたちきること、どんな生き方をするか、単なる優良な労働者映画ではなくて、人間の底にある感情と活力が沸き上がる映画。オト代の娘時代を演じた女の子が成人してからの娘を演じた女優さんとよく似てるなーと思ったら女の子の名前は左時枝、女優さんは左幸子、つまり姉妹(幸子が長女、時枝が五女)。似てるはず!この当時の左幸子が市川実日子に似ている!


浪華悲歌
浪華悲歌

監督 / 溝口健二
原作 / 溝口健二
脚色 / 依田義賢
台詞 / 藤原忠
撮影 / 三木稔
衣裳 / 小笹庄治郎
編集 / 板根田鶴子
音楽 / 松竹音楽部
人形指導 / 桐竹紋十郎
助監督 / 高木孝一、鴻嶺利光、坂本明、坂田信吉
出演 / 山田五十鈴、浅香新八郎、進藤英太郎、田村邦男、原健作、橘光造、志村喬 他
1936年 / 松竹


山田五十鈴演じるアヤ子のお金に振り回され男にも不遇な悲しい人生。いったん落ちても引き上げる典型的なタイプの物語ではなく、守りたいものを守ろうとする自分の想いとは裏腹に身内を含めたダメな男たちに不幸にされ、不遇はさらなる不遇を呼ぶ、落としてからさらに落とすリアリズム。冷たい視線は溝口ぽいけどこの当時の溝口はまだ物語にそれほど緻密さはない気がする。山田五十鈴の和装洋装を見ていて、当時の和装は髷も結うまさに「和装」、洋装も気品ある映画女優のようなモダンガールらしい「洋装」で、それぞれ面白い。大阪を舞台にしているため関西弁や町並み、そごうで化粧品売り場を見たり文楽を観る場面(演目は『野崎村』だそう)を見ながら、ここはあのあたりかな、と推測して見るのも楽しい。


女系家族
女系家族

監督 / 三隅研次
製作 / 永田雅一
企画 / 土井逸雄、財前定生
原作 / 山崎豊子
脚本 / 依田義賢
撮影 / 宮川一夫
美術 / 内藤昭
編集 / 菅沼完二
音楽 / 斎藤一郎
助監督 / 友枝稔議
出演 / 若尾文子、高田美和、鳳八千代、京マチ子、田宮二郎、中村鴈治郎、浪花千栄子、北林谷栄 他
1963年 / 大映


山崎豊子原作の大阪船場にある老舗商店を舞台にした遺産相続物語。出演が京マチ子、中村鴈治郎、浪花千栄子、若尾文子で監督が三隅研次に脚本は依田義賢、さらに撮影は宮川一夫。見る前からわくわくしたけど、誰もかれもが金金金の強欲でえげつないいやらしーい話で面白すぎる!中村雁治郎 vs 浪花千栄子てすごすぎる。設定の細かさ(矢島商店所有の借家が西区北堀江6丁目と都島区東野田町とか、妾の自宅が住吉区○×町など)が山崎豊子らしく楽しい。大阪船場という特殊な空間を船場言葉でリアルに再現させていて、『細雪』好きとしてはまた違う系統として楽しい。ぎゃふんと言わせるラストが痛快で水戸黄門様のよう。映像も衣装も美しいけど微妙に下品さが漂うのも完璧。


夜の河
夜の河

監督 / 吉村公三郎
製作 / 永田雅一
企画 / 原田光夫、高椋廸夫
原作 / 沢野久雄
脚本 / 田中澄江
撮影 / 宮川一夫
美術 / 内藤昭
音楽 / 池野成
出演 / 山本富士子、小野道子、阿井美千子、市川和子、川崎敬三、上原謙 他
1956年


田中徳三が助監督で撮影が宮川一夫というのに興味を持って見たのだけど、それ以上に作品自体が良く面白かった。妻子持ちの上原謙に妙齢の山本富士子が恋してしまうのだけど、上原謙の(役の上での)ダメさはやはりすばらしいし山本富士子のいやらしさもすばらしい。京都を舞台にしているので京の町並みや風俗、大阪心斎橋の風景など、当時の様子もまた楽しい。山本富士子の着ている着物もまたすばらしく美しく見とれるほど。要所要所に「赤」を出してくるその使い方がモダン。メロドラマなのにまったく下品にならずメロドラマ以上の物語がある。


ゆれる
ゆれる

監督 / 西川美和
製作 / 川城和実、重延浩、八木ケ谷昭次
プロデューサー / 熊谷喜一
企画 / 是枝裕和、安田匡裕
原案 / 西川美和
脚本 / 西川美和
撮影 / 高瀬比呂志
美術 / 三ツ松けいこ
編集 / 宮島竜治
音楽 / カリフラワーズ
出演 / オダギリジョー、香川照之、伊武雅刀、新井浩文、真木よう子、木村祐一、ピエール瀧 他
2006年


オダギリジョーも香川照之も真木よう子もいい。オダギリジョーのキスの仕方がエロすぎる。一瞬だけだけどオダギリジョーと真木よう子のベッドシーンも湿度高めのエロでなかなかよかった。香川照之は細かい部分も本当になにをやらせても上手。ほかにも新井浩文とかいい俳優さん集めているので見ていて楽しい。この作品のオダギリジョー(前半部分)がオダギリ出演作品史上最高に格好良い。西川美和てビッグネームな映画人的センスではなく、観客が近い所くらいにいるように感じるくらいのほどよいセンスの持ち主で、音楽とか服とか私生活もおしゃれなんだろうなー(想像)と思うような監督で好感度が高い。おもしろい映画。


東京暮色
東京暮色

監督 / 小津安二郎
企画 / 山内静夫
脚本 / 野田高梧、小津安二郎
撮影 / 厚田雄春
美術 / 浜田辰雄
衣裳 / 長島勇治
編集 / 浜村義康
音楽 / 斎藤高順
出演 / 原節子、有馬稲子、笠智衆、山田五十鈴、高橋貞二、田浦正巳、杉村春子、山村聡 他
1957 / 松竹大船


小津安二郎の明朗な軽やかさがない作品。笠智衆と原節子、それだけでうれしくなってしまうのだけどもっと洒脱で明るい作品のほうが好み。小津安二郎のいつもと路線とは違う野心作なのかもしれないけれど私が小津安二郎に求めているのは諦めや陰鬱さではない。小津安二郎の小津安二郎らしい作品が好きだと『東京暮色』の良さを見つけるのは難しい。有馬稲子が堕胎をして傷心を負い帰宅したときに姉の幼い子どもを見て思わず涙するシーンの一連の流れはなんとなく小津ぽくない(そもそも幼い子どもたちを置いて家を出た母、という設定自体がめずらしい)。時間の流れは小津安二郎だけれど、あまり素敵とはいいがたい、しかし味のある当時の東京の路地の風景とモノクロ、暗いストーリー、そのストーリーになんだかちぐはぐな音楽。もしかしたらいかにも当時の東京を象徴しているのかもしれないけれど、当の東京の人はどう思ってるだろうと思った。


サッド ヴァケイション
サッド ヴァケイション

監督 / 青山真治
プロデューサー / 甲斐真樹
原作 / 青山真治
脚本 / 青山真治
撮影 / たむらまさき
美術 / 清水剛
編集 / 大重裕二
音楽 / 長嶌寛幸
出演 / 浅野忠信、石田えり、宮崎あおい、板谷由夏、オダギリジョー、光石研、斉藤陽一郎、辻香緒里、高良健吾 他
2006年


『Helpless』は未見。『EUREKA ユリイカ』は正直それほどはっきり覚えてなくて見た本作品は"北九州サーガ"の総集編(わざわざ"北九州サーガ"と大げさな言葉でくくる必要がよく分からないけど)。青山真治はマザコン? 一種達観したようなひとりで生きていけるタイプの器の大きな女性(母親、妊娠した恋人、宮崎あおい扮する田村梢)をあまりにも美化して(押し付けて)描いてるような気がしてこの映画はあまり好きになれない。はっきり覚えてなくとも『EUREKA ユリイカ』のほうが面白かった。『Helpless』の方に話がかたよってるのだと思うけど、自己陶酔しすぎ?


崖の上のポニョ
崖の上のポニョ

監督 / 宮崎駿
プロデューサー / 鈴木敏夫
原作 / 宮崎駿
脚本 / 宮崎駿
美術監督 / 吉田昇
編集 / 瀬山武司
音楽 / 久石譲
色彩設計 / 保田道世
制作 / スタジオジブリ
声の出演 / 山口智子、長嶋一茂、天海祐希、所ジョージ、土井洋輝、奈良柚莉愛 他
2008年 / 東宝


すばらしい。ナウシカもトトロもいろいろいろいろ宮崎駿のすべてがつまってる。宮崎駿ベスト版的映画。涙こらえっぱなし。