Japanese movie vol.8


彼岸花
彼岸花 new!!

監督:小津安二郎
製作:山内静夫
原作:里見とん
脚本:野田高梧、小津安二郎
撮影:厚田雄春
美術:浜田辰雄
衣裳:長島勇治
編集:浜村義康
音楽:斎藤高順
出演:佐分利信、田中絹代、有馬稲子、久我美子、佐田啓二、高橋貞二、桑野みゆき、笠智衆、浪花千栄子 他
1958年


娘の結婚を案じる父とその娘の関係を描く小津安二郎映画はなんのタイトルがどんな話だったか混乱しがちだけど、見ればどれもおもしろいしどれも好き。『彼岸花』見てなかったかな、と思ったら見たことのある作品でした。そういうことが多々ある小津映画だけど、結局また最後まで見てしまいます。

佐分利信、中村伸郎、北龍二の3人がなじみの店で話す会話がおもしろい。男が強いと女が生まれ、女が強いと男が生まれるというと言う話から、俺は見かけ倒しなんだとつぶやき、一姫二太郎と言うが新婚当時は男が強いと言う事かね?なんて笑いが起こったり。小津安二郎初のカラー映画ゆえに、考えられた配色と構成が美しく、せっかちな京都弁のかけあいをする浪花千栄子と山本富士子の楽しいこと。


全身小説家
全身小説家 new!!

監督:原一男
製作:小林佐智子
撮影:原一男
編集:鍋島惇
音楽:関口孝
助監督:小林明、福岡孝治、真島洋一
出演:井上光晴、井上郁子、埴谷雄高、瀬戸内寂聴 他
1994年


小説家井上光晴の最期の5年間を追ったドキュメンタリー。137分というわりと長尺な作品。原一男に惹かれて観たものの、井上光晴の小説を読んだことがなく井上光晴という人物をはじめて知りました。なかなかのインパクト。本が積み上げられダイニングテーブルには本だのソースだのごたごたに置かれてそこで食事する風景は虚構をまとった井上光晴のリアルでおもしろかったです。坂口安吾の汚部屋ほどではなくても、ハイレッド・センターの高松次郎のドキュメンタリーで高松次郎の自宅を見たときくらいの衝撃がありました。しかし井上光晴モテるわーコアな文学系男子のモテ。島田雅彦が「ワンランク上のモテは女が自分から身をひいていく」と言ってたけど、そんな言葉を思い出したくらい死ぬまでモテたひとです。おじいちゃんなのに元カノだらけの「井上光晴を囲む飲み会」開催されすぎ。

文学の講義をする様子、埴谷雄高や瀬戸内寂聴の証言や交友している映像、自分史の虚構があきらかにされ、現実の自分をもフィクションを作り上げていた事実。癌の手術でお腹を裂く手術がモロすぎて、こんな映像よく撮れたなーと感心。井上光晴のお葬式で瀬戸内寂聴が「セックス抜きでの友情云々」と涙ながらに話すのにたまげました。お葬式でも寂聴節。


The Boy and The Beast
バケモノの子

監督:細田守
製作:中山良夫、齋藤佑佳、井上伸一郎、市川南、柏木登、中村理一郎、薮下維也、熊谷宜和
企画:スタジオ地図
エグゼクティブプロデューサー:門屋大輔、高橋望
プロデューサー:齋藤優一郎、伊藤卓哉、千葉淳、川村元気、和気澄賢
声の出演:役所広司、宮崎あおい、染谷将太、広瀬すず 他
2015年


前情報なしで見たけど熊徹=役所広司がすごい。熊徹がしゃべるたびに荒れた役所広司を思い出します。細田守ゆえリアルとファンタジーの交差が上手。成長過程の描きかたも、美しくて繊細な感情表現もうまい。上映時間の半分くらい涙してた気がします。子どもたちは笑ってるシーンがあって、親は泣いてるシーンがあって、全体的にすばらしい作品。

男子親が見たらもっと泣けるかもしれない。メルヴィルの『白鯨』が引用されているけど、きちんと知っていたらもっと楽しめるかもしれない。


ぼんち
ぼんち

監督:市川崑
製作:永田雅一
企画:辻久一
原作:山崎豊子
脚本:和田夏十、市川崑
撮影:宮川一夫
美術:西岡善信
編集:西田重雄
音楽:芥川也寸志
助監督:池広一夫
出演:市川雷蔵、若尾文子、中村玉緒、草笛光子、越路吹雪、山田五十鈴、船越英二、、毛利菊枝、北林谷栄 他
1960年


市川崑は『細雪』(1983)のイメージが絶大で(犬神家とかよりも)『鍵』(1959)とかこういうテイストの映画は見る前から期待。原作山崎豊子、撮影は宮川一夫、ぼんちには市川雷蔵で、落語家春団子に中村雁治郎、脇を固める女優陣は若尾文子に山田五十鈴に京マチ子、おもしろくないわけがないよねという、こういうわくわく感だいすき。

大阪船場の足袋問屋のぼんち喜久治(市川雷蔵)の激動の昭和を生き抜く半生記。船場のしきたりに女たちのしたたかさ。大阪出身で船場言葉を話す市川雷蔵いいなー若い頃の森繁久彌がダントツにだいすきだけど、また違うベクトルで市川雷蔵がいい。ちょくちょく市川雷蔵の映画を見てると、雷蔵祭が定期的に開催されるのがよくわかる。若尾文子もなんというキュートさ。山田五十鈴も京マチ子もこの芸達者ぶり。宮川一夫の撮る屋根瓦の美しさにマイッタ。

ひとつ、喜久治の祖母きのが敷居をわざわざ踏んで部屋に入るシーンがあるんだけど、あれがどういう意味なのか分からなかったのが心残り。


鍵


監督:市川崑
製作:永田雅一
企画:藤井浩明
原作:谷崎潤一郎
脚本:長谷部慶治、和田夏十、市川崑
撮影:宮川一夫
美術:下河原友雄
編集:中静達治
音楽:芥川也寸志
助監督:中村倍也
出演:中村鴈治郎、京マチ子、仲代達矢、叶順子、北林谷栄 他
1959年


原作谷崎潤一郎、撮影宮川一夫というだけでアガる映画。本編も相当におもしろかった、原作『鍵』が断然読みたくなる良映画でした。冒頭のストップモーションがかっこよすぎる。

妻を満足させるために性欲を保ち続けようとする初老の中村鴈治郎、妻である爬虫類のような京マチ子の心理戦。直接的なシーンはないものの、エロで官能的(そして少なからず変態)、しかし文学。びっこの夫とをリンクさせる、勝手口に入ってきた子猫が足を引きずっているのを見て「この猫、びっこや、早うあっち行け」とつまみ出す京マチ子の表情が秀逸。

見事に「文学」に昇華させているのはスタッフと出演者たちの力量。


萌の朱雀
萌の朱雀

監督:河瀬直美
プロデューサー:仙頭武則、小林広司
脚本:河瀬直美
撮影:田村正毅
美術:吉田悦子
編集:掛須秀一
音楽:茂野雅道
助監督:萩生田宏治
出演:國村隼、尾野真千子、和泉幸子、柴田浩太郎、神村泰代、向平和文、山口沙弥加 他
1997年


『萌の朱雀』は学生の頃見たきりで当時は当然尾野真千子を知らずにいたのでほぼ記憶なし。映画自体も奈良の山奥での話、としかぼんやりすぎるほどしか覚えておらず、『火垂』(2000)と同時期に見て『萌の朱雀』のほうが好みかなと思った記憶があります。

奈良の山奥にある過疎が進むちいさな村。朝の台所の風景や、居間の戸を開け放って見える紀伊の山々。複雑な家族構成のなかの大黒柱であった父の自殺により崩壊していく家族。ドキュメンタリーにも似た手法でひとつの家族を静かに撮り、距離感を持って静かに見つめます。泣ける。

ほとんどはじめて見る感じであらためて見たけど、これは好きだなー。このストーリーの不明瞭さや聞き取りづらい台詞含めて当時27歳の河瀬直美のスピリットはかなり好み。いまごろになって言うけど、27歳でこれはしびれる。さすがタルコフスキー好き(と当時公言していたような)。妻を演じていた神村泰代の顔が後半はベルイマンの映画に出てくる女性の顔とだぶって、これはこれで勝手に狙ってるやろという気分になって楽しくなります。


初春狸御殿
初春狸御殿

監督:木村惠吾
製作:三浦信夫
企画:山崎昭郎
脚本:木村惠吾
撮影:今井ひろし
美術:上里義三、西岡善信
音楽:吉田正
出演:市川雷蔵、若尾文子、勝新太郎、中村玉緒、中村鴈治郎、水谷良重 他
1959年/大映


市川雷蔵に若尾文子に、勝新太郎、中村鴈治郎、中村玉緒、水谷良重などなど豪華メンバーによるオールセットのミュージカル時代劇。本作はシリーズ第7弾かつ初のカラー作品。

狸御殿シリーズ、オリジナルを見たことがなくて、チャン・ツィイー×オダギリジョーの鈴木清順リメイク『オペレッタ狸御殿』(2004)を前に見たことがあったのみ。『オペレッタ狸御殿』もなかなかインパクトのある映画だったけど、ぼんやり見始めたこの『初春狸御殿』の衝撃はすごかった。市川雷蔵軽いな!しかし俳優陣が超豪華で(みんな狸で)見てて楽しいし歌唱力抜群。勝新とともに歌い踊る河童(細すぎないのがいい)の斬新すぎるエロ衣装。市川雷蔵と若尾文子のエアー羽子板に羽の扇子をひらひらと艶めかしい衣装に身をつつみ踊る女性の横には和田弘とマヒナスターズ。なにこれ超おもしろい。アヴァンギャルドな意欲作でこの内容のなさっぷりがすばらしい。


陸軍
陸軍

監督:木下恵介
原作:火野葦平
脚色:池田忠雄
撮影:武富善男
美術:本木勇
出演:笠智衆、田中絹代、三津田健、星野和正、杉村春子、上原謙、東野英治郎 他
1944年


木下惠介監督4作目。太平洋戦争の3周年記念映画として、軍部の意向により製作された国策映画。

幕末から明治の日清・日露戦争、太平洋戦争と、父子三代にわたる陸軍との関わり合いを描いています。木下惠介とはいえ国策映画が色濃くて、正直退屈な80分を過ごすとラストにすごいものが待ち受けていてました。

出征する息子を見送らず、家で家事をこなす田中絹代。ふと座り込み、「一、軍人は忠節を尽くすを本分とすべし……」と軍人勅諭の聖訓五箇条を遠い目をして唱える彼女をカメラはひたすらアップで捉えます。そして思い立ったように息子のいる兵隊の列に向かって走りだします。旗をふる群衆にかこまれ、笑顔で出征する息子を必死に追いかけ、涙をふきながら言葉をかけ、最後には転んでしまい、そのあと静かに静かに手を合わせて祈る田中絹代の渾身の名演。国策映画調から一気に転換して完全に木下惠介の映画になった瞬間の高揚感、ラスト10分の木下惠介の底力がとんでもなくてすばらしかったです。


新宿泥棒日記
新宿泥棒日記

監督:大島渚
製作:中島正幸
脚本:田村孟、佐々木守、足立正生、大島渚
撮影:吉岡康弘、仙元誠三
美術:戸田重昌
編集:大島渚
出演:横尾忠則、横山リエ、田辺茂一、高橋鐡、佐藤慶、渡辺文雄、戸浦六宏、唐十郎、麿赤兒 他
1969年 / ATG


1960年代末の新宿。機動隊と衝突する映像が挟まれたりセミドキュメンタリーで描いたゴダールでアングラな大島渚作品。

脚本には田村孟や佐々木守それに足立正生、主演は横尾忠則(若かりし横尾忠則が思いがけずタイプ!)、状況劇場の唐十郎、麿赤兒といった当時のカルチャーを凝縮したような豪華な面々。新宿紀伊國屋書店でジャン・ジュネ『泥棒日記』からはじまる万引きは、ヘンリー・ミラー、萩原朔太郎、吉本隆明、富岡多恵子等々。俳優をする横尾忠則をはじめて見た気がするんだけど、横尾忠則の醸すリアリティはすごくよかった。ヒロイン横山リエもエロくて美しいすてきな女優さん。

大島渚おもしろいです。


息子
息子

監督:山田洋次
製作総指揮:大谷信義
プロデューサー:中川滋弘、深澤宏
原作:椎名誠『倉庫作業員』
脚本:山田洋次、朝間義隆
撮影:高羽哲夫
美術:出川三男
編集:石井巌
音楽:松村禎三
出演:三國連太郎、永瀬正敏、和久井映見、田中隆三、原田美枝子、浅田美代子 他
1991年


『東京家族』(2013)で小津の『東京物語』(1953)がだいすきなのはよく分かったけど作品自体がどうかといえば不朽の名作『東京物語』以上の作品ができるわけではないのになぜ現代劇で不完全なコピーをしようと思ったのかなぞな作品でした。『家族』(1970)を撮る山田洋次が私の山田洋次像。

で、この『息子』はといえば椎名誠『倉庫作業員』という原作を基にしているものの(原作は未見)、これは山田洋次の描く『東京物語』でした。田舎と都会で別々に暮らす父と子どもたち。すれ違う親子関係を描き、出来のいい長男家族より不出来で心配ばかりかける一番下の息子の結婚報告に心躍る父親。

三國連太郎は最高だなーと再認識。父親としての優しさや厳格さや、みながいなくなった居間に幻想を見る寂しさ、不出来な息子の恋人に言葉や所作のひとつひとつに泣ける。だいすき。『ションベン・ライダー』(1983)の面影のある若かりし頃の永瀬正敏もいいです。


儀式
儀式

監督:大島渚
製作:葛井欣士郎、山口卓治
脚本:田村孟、佐々木守、大島渚
撮影:成島東一郎
美術:戸田重昌
編集:浦岡敬一
音楽:武満徹
出演:河原崎健三、賀来敦子、佐藤慶、乙羽信子、小山明子、小松方正、渡辺文雄 他
1971年 / ATG


地方の旧家、無節操で強烈な存在感を持っていた祖父を中心に複雑な血縁関係の桜田一族。とにかく誰が誰の子どもか兄弟か甥か姪か映画の内容のみでは最後まで分からず。

戦後昭和のどろどろした時代感とそれを盛り上げる武満徹の音楽。熱気が漂うほどの肉感的な男性女性。淡い恋心を描いていた年上の女性が日本刀で串刺しになり、飛び散る血しぶき。少しずつ狂った人々。時代がこういう映画を作らせていたのか、そもそもATGのカラーなのか大島渚のやりたい放題なのか、しかし全裸で死んでいる輝道のカットが美しくて感動的で衝撃的です。


少年
少年

監督 / 大島渚
製作 / 中島正幸、山口卓治
脚本 / 田村孟
撮影 / 吉岡康弘、仙元誠三
美術 / 戸田重昌
編集 / 白木末子
音楽 / 林光
出演 / 渡辺文雄、小山明子、阿部哲夫、木下剛志 他
1969年 / ATG


実際にあった当たり屋一家をモデルにしたロードムービー。大島渚の松竹ヌーヴェルヴァーグ。

前衛音楽、モノクロとカラーの切り替え、巨大な日の丸の旗による赤の挿入、父親のクズ加減、暴力要素がそんなにない代わりに少年の孤独や当たり屋の仕事への葛藤という心理描写に重点を置き、アングラから遠く離れてしまった私にはこの60年代低予算ATGの匂いに満たされてとてもおもしろかったです。低予算とはいえ映像も美しく、絶妙な匙加減の眼差しで撮られたこの映画のすばらしさ。

チビを演じた木下剛志という男の子(この作品で2歳か3歳)は続いて山田洋次『家族』(1970)に出演していて、全国縦断しかもこの2本のロードムービーに出ていたというすごい子役。『家族』もかなり泥臭くておもしろい作品です。


かぐや姫の物語
かぐや姫の物語

監督 / 高畑勲
製作 / 氏家齋一郎
企画 / 鈴木敏夫
プロデューサー / 西村義明
原案 / 高畑勲
脚本 / 高畑勲、坂口理子
作画監督 / 小西賢一
動画検査 / 野上麻衣子
美術 / 男鹿和雄
声の出演 / 朝倉あき、高良健吾、地井武男、宮本信子、高畑淳子、田畑智子、立川志の輔、上川隆也 他
2013年


『竹取物語』を原作とした高畑勲によるアニメーション映画。

いま生きている人生、この世界はすばらしい。奪われる恐怖と悲しみと苦しみ。余白のある美しいタッチの絵が動き、そして勢いのある疾走シーン。地井武男が声をあてる翁が愚かで憎めない愛らしさ。途中から幻想的なSFとなり、空を舞い青い地球を振り返ります。

『風たちぬ』より好み。泣けました。


夢売るふたり
夢売るふたり

監督 / 西川美和
製作 / 大下聡、齋藤敬、豊島雅郎、平尾隆弘、服部洋、油谷昇、山田美千代、喜多埜裕明、藤本俊介
企画 / 佐々木史朗、川城和実、弘中謙、遊佐和彦
プロデューサー / 松田広子、押田興将、西川朝子、藤門浩之、吉田佳代
企画協力 / 是枝裕和
原案 / 西川美和
脚本 / 西川美和
撮影 / 柳島克己
美術 / 三ツ松けいこ
衣裳 / 小林身和子
編集 / 宮島竜治
音楽 / モアリズム
出演 / 松たか子、阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、安藤玉恵、江原由夏、木村多江 他
2012年


松たか子阿部サダヲ夫婦が人生をやり直すために協力して結婚詐欺をする話。女の計算高さしたたかさ狡猾さ、男の流されやすく浅はかにも偽善に走る心情の描写がすばらしいです。話の作りこみはうまいし子ども以外の役者がみんなうまい。松たか子が秀逸。田中麗奈も鈴木砂羽もよくて西川美和の映画に出てくると一定以上に好きになる女優さん多いです(『ゆれる』を見て真木よう子を好きになるとか)。引き出し方がすごく上手な監督。香川照之のチョイ役などキャスティングも豪華。個人的には相当いい映画です。おもしろかった。

阿部サダヲ演じる貫也の人間関系の構築の仕方はすごい。あっという間に親しくなってでも基本相手にのめりこまず関係をあっさり完全終了できるその対人スキル、見てるだけで爽快にも似た気持ちになれます。西川美和の映画なら見たい、と思わせるのは何かと考えると、オリジナル脚本がおもしろいのと必ず印象に残るおもしろシーンがあるのとカット割がすごいかっこよくて正面からとらえる登場人物の表情がものすごくよいことかなと思います。


東京ゴッドファーザーズ
東京ゴッドファーザーズ

監督 / 今敏
アニメーション制作 / マッドハウス
演出 / 古屋勝悟
企画 / 丸山正雄
プロデューサー / 小林信一、滝山雅夫
制作プロデューサー / 豊田智紀
原作 / 今敏
脚本 / 今敏、信本敬子
キャラクターデザイン / 今敏、小西賢一
作画監督 / 小西賢一
美術監督 / 池信孝
色彩設計 / 橋本賢
撮影監督 / 須貝克俊
音響監督 / 三間雅文
音楽 / 鈴木慶一
声の出演 / 江守徹、梅垣義明、岡本綾、飯塚昭三、加藤精三、石丸博也 他
2003年


『パプリカ』(2006)『PERFECT BLUE パーフェクト ブルー』(1998)『千年女優』(2001)の順番で今敏4作品目。見た作品すべてに言えるのは、映像や人物の動きやりとりの細かさリアル感。実写かと思うシーンも多々。クオリティ高し!

クリスマスの夜に見つけた捨てられた赤ちゃんの親探しにホームレス3人が奮闘するキレがあってスピード感あふれるファンタジーアニメ。すべてがうまくまとまって大団円。このしあわせ感はあらためて年末に見たくなります。

エンドロールに流れるムーンライダースの替え歌も秀逸。


豚と軍艦
豚と軍艦

監督 / 今村昌平
企画 / 大塚和
脚本 / 山内久
撮影 / 姫田真佐久
美術 / 中村公彦
音楽 / 黛敏郎
出演 / 長門裕之、吉村実子、三島雅夫、小沢昭一、丹波哲郎、山内明、加藤武、殿山泰司 他
1961年 / 日活


主演の長門裕之と恋人役吉村実子のジャケットがかっこよすぎる『豚と軍艦』。

九州の炭鉱で働いていた父親が亡くなって極貧生活を送る4人兄弟を描いた『にあんちゃん』(1959)の次に撮った作品(これも長門裕之主演)。この作品は前作とだいぶ方向を変えて、米軍基地の街・横須賀を舞台にケチなチンピラたちを描いてます。

長門裕之はいつもの(というか当時の)長門裕之なんだけど、当時高校生だった野性味感じる美人の吉村実子(吉村真理の妹/柔道の松本薫にもちょっと似ている)の顔がインパクトあってなかなか好き。銃を乱射してひと騒動おこした長門裕之が便器に頭をつっこんで死んだあと、ひとりさっそうと街を出る吉村実子。いいラスト。

最初から最後まで画面から活力を感じる映画。


家族ゲーム
家族ゲーム new!!

監督 / 森田芳光
製作 / 佐々木志郎、岡田裕、佐々木史朗
製作補 / 桜井潤一
企画 / 多賀祥介、山田耕大
原作 / 本間洋平『家族ゲーム』
脚本 / 森田芳光
撮影 / 前田米造
美術 / 中沢克巳
編集 / 川島章正
助監督 / 金子修介
出演 / 松田優作、伊丹十三、由紀さおり、宮川一朗太、辻田順一、松金よね子、岡本かおり 他
1983年 / ATG


高校受験を控えるデキの悪い中学3年生の茂之。茂之のところに家庭教師として派遣された三流大学生の松田優作。まるで舞台を見ているような映画構成。半熟目玉焼きをじゅるじゅるすする伊丹十三お父さんの生々しい音は冒頭でわしづかみ。BGMが排除され、物音だけがデフォルメされ大きく鳴り響き、音楽が聞こえないのに音楽を聴くシーンにしびれます。そして松田優作が船に乗って登場。

何がおもしろいかというとあらゆるものを誇張して描き、ものすごい舞台的で映画的であること。受験合格のお祝いパーティーに松田優作が食卓をむちゃくちゃにして家族全員を殴り倒し、いつも小脇にかかえている植物図鑑を持って帰っていきます。シニカルなのにコミカル。完成度の高い映画でちょっとおどろきました。


Dersu Uzala
デルス・ウザーラ
Dersu Uzala



監督 / 黒澤明
製作 / ニコライ・シゾフ、松江陽一
原作 / ウラジミール・アルセーニェフ
脚本 / 黒澤明、ユーリー・ナギービン
撮影 / 中井朝一、ユーリー・ガントマン、フョードル・ドブロヌラーボフ
音楽: イサーク・シュワルツ
出演: ユーリー・サローミン、マクシム・ムンズク、スベトラーナ・ダニエルチェンコ、シュメイクル・チョクモロフ、ピャートコフ、プロハノフ、ウラディミール・ブルラコフ 他
1975年 / ソ連


黒澤映画で161分の叙事詩ということで気合がいるかと思ったけれど、これがテンポよく進み、ロシア文学好きらしく、実に男らしく力強く面白くいい映画でした。

広大なシベリアの大地とその厳しい冬。その森に住む漁師デルス・ウザーラと地誌探検隊の隊長との心の通い、友情。厳しい自然と共存し知恵で生き抜く姿を、3年というロケ期間でこれでもかー!と映し出します。壮大!カッコイイ!

カピタン、カピタン(=Capitan)と呼ぶデルスがかわいく、そしてカピタンがかっこよすぎる。


お日柄もよく ご愁傷様
お日柄もよく ご愁傷様

監督 / 和泉聖治
製作 / 小田信吾、大谷晴通、中村比呂司
プロデューサ / 吉田由二、青島武、堀義貴
企画 / 元村武
脚本 / 布勢博一
撮影 / 鈴木耕一
美術 / 古谷良和
編集 / 福田憲二
音楽 / 毛利蔵人
助監督 / 佐々部清
出演 / 橋爪功、吉行和子、布施博、伊藤かずえ、新山千春、根岸季、野村祐人、古尾谷雅人 他
1996年


橋爪功も吉行和子もいいなー

旦那の浮気疑惑で臨月の長女が戻ってきて、仲人役で出席予定の結婚式当日におじいちゃんが亡くなりお葬式、自分のリストラ、次女の彼氏とのグアム旅行騒動、次から次から大変続きなのに、最後はほんわかしあわせ気分。

生死が身近なこういう家族ドラマはいいな。しかし1996年作品ではなく80年代の映画のようなのが不思議。


大人の見る絵本 生れてはみたけれど
大人の見る絵本 生れてはみたけれど

監督 / 小津安二郎
原案 / ゼェームス・槇(小津安二郎)
脚色 / 伏見晁
潤色 / 燻屋鯨兵衛
撮影 / 茂原英朗
衣裳 / 斎藤紅
編集 / 茂原英朗
出演 / 斎藤達雄、吉川満子、菅原秀雄、突貫小僧、坂本武、早見照代、加藤清一、小藤田正一 他
1932年 / 松竹


小津安二郎サイレント期の作品。これが戦後の『お早う』に続くのかなーと思う子どもの世界と大人の世界。些細で微細な日常の一遍。1932年というと昭和7年。戦前の男の子たちの原っぱで遊ぶ様子も見てておもしろいです。兄弟役の菅原秀雄、突貫小僧がこれまたいい。「うちのお父ちゃんがいちばん偉い」合戦のほほえましいこと。斎藤達雄お父ちゃんと吉川満子お母ちゃんの兄弟の寝顔を見るやさしい表情に涙腺がゆるみます。

いいなーサイレントでもトーキーでも小津はいいなー。画面を通過する電車がまた小津らしい。ストーリーのあるサイレント映画でこんな風に沁みる映画ははじめて見た気がします。


ションベン・ライダー
ションベン・ライダー

監督 / 相米慎二
製作 / 多賀英典
プロデューサー / 伊地智啓
原案 / レナード・シュレイダー
脚本 / 西岡琢也、チエコ・シュレイダー
撮影 / 田村正毅、伊藤昭裕
美術 / 横尾嘉良
編集 / 鈴木晄
音楽 / 星勝
照明 / 熊谷秀夫
出演 / 藤竜也、河合美智子、永瀬正敏、坂上忍、鈴木吉和、原日出子、桑名将大、木之元亮 他
1983年 / 松竹


見てみたかった相米慎二作品のひとつ。

目の前で誘拐されたいじめっ子のデブナガを全国各地を行脚しながら少年少女3人組が救い出すという、後半にいくほどはちゃめちゃな展開になっていくストーリー。3人組の河合美智子、永瀬正敏、坂上忍が若い!ロングショット長回しの多用で人物の顔の区別もつきにくく、後半服を取り換えっこしてさらに混乱する。意図はあるようなないような。

丸太のシーンやみんながどんどん川に飛び込んでいくシーン、永瀬正敏が自転車の滑走から車に飛び移るシーンのなんてアクション映画さながら。早朝の海辺で河合美智子がおそらく初潮を迎えるんだけど、初潮を迎えたあとの始末はいったいどうしたのか不思議。そういった微妙にどうしてるの?的なシーンが多いのはご愛嬌かしら。

歌やダンスも『台風クラブ』系列の作品だけど、残念ながらこの2年後に制作される『台風クラブ』には及ばず。ちょっと尺長すぎの感もあるけど、今なら作れないだろうと思われる80年代テイストはわりとおもしろかったです。


魚影の群れ
魚影の群れ

監督 / 相米慎二
製作 / 織田明、中川完治、宮島秀司
原作 / 吉村昭『魚影の群れ』
脚本 / 田中陽造
撮影 / 長沼六男
美術 / 横尾嘉良
編集 / 山地早智子
音楽 / 三枝成章
照明 / 熊谷秀夫
出演 / 緒形拳、夏目雅子、十朱幸代、佐藤浩市、矢崎滋、三遊亭円楽、工藤栄一、レオナルド熊 他
1983年 / 松竹


タイトルから見てとれるように骨太で男らしい直球勝負の相米慎二作品。

下北半島・津軽海峡を渡るマグロを釣るベテラン漁師に緒形拳、その娘に夏目雅子。3割くらいは聞き取れないなまりの強い方言で、台詞の聞き取りやすさを度外視してるところに好感。緒形拳、夏目雅子をはじめとする俳優陣の渾身の演技。リアルすぎるほどナチュラルに演技しているシーンが多々あって感動ものです。

初期の作品らしくワンシーンワンカットの長回しの多用で、この作品の緊張感が伝わって効果絶大。クレーン移動での長回しはガタガタゆらゆらしてる画面が船の上のよう。異様に長い濡れ場は必要かどうか微妙なところだけど、マグロを釣りあげる壮絶さは迫力!そして釣り糸が頭に絡まって血しぶきをあげる佐藤浩市は背筋が凍りつくほどのホラー。

当時25歳の夏目雅子はもちろん美しく、でもそれ以上に演技派として目に焼き付きます。夏目雅子作品は『瀬戸内少年野球団』『時代屋の女房』ぐらいしか見たことないけど、いい女優さんだったんだなー。この2年後に白血病で亡くなったのはとても残念。


あ、春
あ、春

監督 / 相米慎二
製作 / 中川滋弘
プロデューサー / 榎望、矢島孝
原作 / 村上政彦
脚色 / 中島丈博
撮影 / 長沼六男
美術 / 小川富美男
編集 / 奥原好幸
音楽 / 大友良英
出演 / 佐藤浩市、斉藤由貴、富司純子、藤村志保、山崎努、余貴美子、原知佐子 他
1998年 / 松竹


相米慎二の描くホームドラマ。家族の再生モノといえば娘の視点から見た「お引っ越し」がすごくいいけど、こちらは老いた親を持つ息子からの視点。相米慎二が肺癌で亡くなるたった3年前に撮ったと思うと感慨深い映画です。この映画って大友良英が音楽を担当してるけど、なんとなく相米慎二が選んだ人という気もします。

息を引き取った山崎務のお腹の上でひよこがかえるというエピソード、こういうのがほんとにいい。せつなさとほのぼのが入り混じるという不思議な気持ちになるステキな船の上のラスト。相米慎司はまとめ方が上手。ラストで毎回ぐっとさせられる。


東京上空いらっしゃいませ
東京上空いらっしゃいませ

監督 / 相米慎二
プロデューサー / 海野義幸、安田匡裕
企画 / 宮坂進
脚本 / 榎祐平
撮影 / 稲垣涌三
美術 / 小川富美夫
編集 / 北沢良雄
音楽 / 村田陽一、小笠原みゆき
音楽プロデューサー / 安室克也
主題歌 / 井上陽水「帰れない二人」
照明 / 熊谷秀夫
録音 / 野中英敏
助監督 / 細野辰興 出演 / 牧瀬里穂、笑福亭鶴瓶、中井貴一、毬谷友子、三浦友和、谷啓 他
1990年 / 松竹


牧瀬里穂主演&デビュー作品。若さはじける元気いっぱいの牧瀬里穂のファンタジーなアイドル映画(80年代要素がまだまだ残る1990年でありバブル絶頂期)。破綻してても疑問を感じさせない相米ワールド。当時の牧瀬里穂がちょっと多部未華子に似てます。

アルバイト先のハンバーガー屋でハンバーガーを作る牧瀬里穂を長回しで撮ったショットが好き。メタメタのハンバーガーを大学生らしき男性たちに差し出し「私の自信作です!」「おいしいんです!」と満面の笑みで言う牧瀬里穂はほんとーにかわいい。このかわいさは見とくべき。ラスト近くのダンスシーンより断然このハンバーガーシーンのほうが好き。

ラストでトロンボーンを買うとき牧瀬里穂似の女の子とすれ違う中井貴一の表情、ラストカットの静止画の微妙なブレ具合がものすごくいいです。特撮のありえないショボさもむしろ好感。


台風クラブ
台風クラブ

監督 / 相米慎二
製作 / 宮坂進
プロデューサー / 山本勉
企画 / 宮坂進
脚本 / 加藤裕司
撮影 / 伊藤昭裕
美術 / 池谷仙克
編集 / 冨田功
音楽 / 三枝成章
助監督 / 榎戸耕史
出演 / 三上祐一、紅林茂、松永敏行、工藤夕貴、大西結花、会沢朋子、天童龍子 他
1985年 / 東宝


相米慎二いいなー!まさに思春期映画の傑作および金字塔。タイトルだけ知ってて初めて観ました。工藤夕貴がかわいい。挿入歌のバービーボーイスもいい。

台風の接近とともに気持ちが高ぶり中学校に閉じ込められた少年少女たちの異様なお祭り騒ぎ状態。尾美としのりが出てきた瞬間、大林宣彦の『転校生』も思い出したりしてあの尾道の雰囲気、この雰囲気とまぜこぜに。暴風雨のなか裸で踊り狂う少年少女を長回しで撮るシーンなんて最高。はっきりしない対象へのいらだちや不満、子どもと大人の狭間で揺れる感情を発散。一歩手前の無邪気さがたまらない。ラストの『犬神家の一族』パロディの示唆することを考え中。

絶妙な角度から思春期を捉えた作品。