植民地
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マンガ
2004/12/15
”徘徊老人”ドン・キホーテ/しりあがり寿/朝日新聞社

 バブル崩壊後の日本に、正義を貫く徘徊老人が現れ、その愚直な行動で現代社会に警鐘を鳴らす、みたいな本。
 セルバンテスの「ドン・キホーテ」は当時の前時代的な思考である騎士道のパロディとして描かれており、ドン・キホーテの側には間抜けさだけが溢れていたような気がする。随分昔に子供向けの読み物で読んだだけなのでよく理解できなかったが。
 この本の徘徊老人はドン・キホーテとは逆に真のヒーローとして描かれている。それが意識して描かれたものかどうかはわからない。時代遅れの主張をする者の代表格としての老人+通常とは異なる行動様式をする者=徘徊老人という流れでキャラクターが設定されただけなのかもかもしれない。
 原典との比較はともかく、バブル以前に日本社会が有していたと思われる美点への郷愁が強く漂う作品だ。徘徊老人が徘徊を始めた理由を明らかにする描き下ろしの後半はかなりの迫力があり、読みごたえがある。でも、語ろうとする内容に比して紙幅が少なすぎるような気はする。『真夜中の弥次さん喜多さん』や『宇宙家族カワゴエ』に比べると遊びがないだけに緩急がつけることができていない。徘徊老人を笑い者にする部分がもっといっぱいあった方がよかったのではないかと思う。
マンガ
2004/12/12
野良人リサイクル/花くまゆうさく/青林工藝舎

 単行本『野良人』+αという内容。+αで既に『野良人』を持っている人にも買っていただこうという根性に嫌な印象。それはそれとして、この作品集に収められている最初期の作品自体はわりと好き。特に都市の中で野生化した人間、という馬鹿馬鹿しい設定に基づいた表題作など。雑誌掲載時も結構よろこんで読んだ記憶がある。
 でも、このあたりの短篇のテイストはもはや今の私の求めるものではない、再読することはきっとないだろう、という作品の質とは関係ない理由により、所有を継続しないこととする。

マンガ
2004/12/05
DOLL/三原ミツカズ/祥伝社

 精巧に人間を模してはいるが心を持たないセクサロイド・DOLLを狂言回しに、DOLLをとりまく人間のドラマを描く連作短篇。ものすごく読みやすい。そして終盤にはしっかりと伏線を回収していって読みごたえのある大きなドラマになる面白さもある。
 大変面白かったが、いつまでも手許に置いておきたいというほどでもない。
 それは私の絵に対する好みの問題に因る。
 流麗ではあるがパターン化されたように思える絵柄には食指が動かない。
 想定された読者にはきっと問題ないのだろうが、ゴスロリな衣装にも抵抗を感じる。 かすれたような、ザラザラゴツゴツするような手触りのする絵がやっぱり好きだ。
マンガ
2004/11/25
 作者初めての短篇集。
 10余年の歳月の間に発表された作品を収録しているのだが、どれも完成されている。
 これはOUTTRACKSとかシングルB面ではなく、本当にマンガの精華だなぁと思う。絵も構図もコマわりもネームも、すべて素晴らしい。
 内容については、これを読んで人生変わる、という人はあんまりいないと思料する。いたとしてもマンガ家になるかマンガ家にならないかという二択の範囲だけだろう。
 それがまた技巧重視という感じで素晴らしいと思う。
 とはいえ私は別にマンガを描く人ではないので話半分に割り引いていただくと有り難い。
 収録作品の中で、「COLOR」は初めて望月峯太郎を意識した作品なので、特に思い出深い。という私の読んだ、

ずっと先の話/望月峯太郎/講談社
マンガ
2004/11/24
 夫が領民に課した酷い税をとりやめさせようとしたレディ・ゴディバ。夫は「おまえが大通りをすっ裸で馬に乗って廻ることができたら願いをかなえる」と答えた。
 美しいレディ・ゴディバは勇気を奮って全裸で馬に跨った。
 良識ある領民はカーテンを閉ざして彼女の犠牲に応えたが、オリはまじまじとその肢体を見つめたんだよう!
 というオリの読む、

教祖タカハシ/ジョージ秋山/ソフトマジック

 心臓病と悪妻に悩むサラリーマン、太田は、怪しげな教義をとなえる教祖タカハシに巡り合う。タカハシのすすめるままに雁の舞を踊り、悪妻の悪行にも感謝しながら生きることにした太田だったが、妻や娘の非道ぶりは全く変わらず、教祖のすすめで作った若い愛人は妊娠し、張ってあった伏線は解消されず、意味不明なまま打ち切りっぽく物語は放り投げられる。ジョージ秋山にはよくあることだが、部分をとってみると面白いが、全体を見るとよくわからない。巻末のインタビューを読むと教祖による救いを描くつもりではなかったかのようでもあるが、なんにせよ破綻している。
 それを受け容れられないという向きには単に腹立たしい作品と思えるかもしれない。
マンガ
2004/11/23
 マイクロドライブが認識できなくなってデータ復旧サービスのご厄介になりたい。
 そしてヘタウマに相当に寛容な私が読む、

千年王国/辛酸なめ子/青林堂

 はマンガというよりはネタ帖みたいな印象。変な人を題材にした短篇が延々と続く。粒は揃っていて、別につまらなくはないが、大ネタはない。
マンガ
2004/11/22
 革命が成功した暁には、是非流通局長の任を賜りたい。
 戦時にあっては勇敢な兵士であることがなにより価値のあることだったが、これからはこの国の経済をいかに順調に成長軌道に載せていくかという手腕が問われる。
 それについて私はかなり自身がある。
 私はむしろ、平時にこそ力を発揮できる人間だと思う。
 限られた資源を最有効に活用するためには、重点産業への配分が必要であると考えている。その任に私はふさわしい。
 そんな私が読む、

beautiful people/三原ミツカズ/祥伝社

 この単行本は短篇集で、フランケンシュタインとか吸血鬼などの化け物を題材にした作品が大部分を占めている。
 達者な作画で、安心して読めるのでストーリーに集中できる。それゆえあっという間に読み終わった。目にも心にもひっかかるところはなかった。
DVD
2004/11/19
ラッパー慕情

 ネットで映画評を読み、観たいと思ったときにはもう上映が終わっていた。
 タイトルうろ覚えで「DJ無宿」だと勝手に思い込んでいた。「DJ無宿」は一宿一飯の恩義をゴイスーなプレイで返す一匹狼のDJが、宿敵大日本DJ連盟や暗躍する黒DJ一味と対決する物語で、きっと面白いが実在しないんじゃないかな。
 それはともかく観た。面白かった。
 亡父の遺したアパートの収入で暮らす母と三人兄弟。兄弟は揃って無職で、意味不明の「でかいプロジェクト」に従事したり、下手糞なマンガ描いたり、草野球とポテチに没頭したりしている。
 そんなボンクラ一家が、それより相当に低いカーストに属するホームレスによって悲惨な運命に落ちていくというストーリー。
 無業者をここまで大きく取り上げた作品は少ないと思う。

 ところどころストーリーに無理があるような気はする。特に兄弟転落のきっかけとなる誤解を生じさせるストーカー女の登場が唐突。次男が誘拐される場面も伏線が足りない。あと、音声が聞き取りにくい。
 と、瑕疵はあるものの、怒濤のラストシーンに押し切られた。
 久しぶりに映画観て笑った。
 兄弟を恐怖のどん底につき落とす暴力オヤジが、根本敬のマンガに出てくる吉田佐吉みたいだなぁ、と思っていたら監督は奥崎謙三主演「神様の愛い奴」を撮った人だったので納得。
 頭の弱い女を演じる宮川ひろみがエロい。
 あと、肛門から腸を引きずり出して中味の排泄物をぶちまける場面で筒井康隆の「問題外科」を思い出した。
マンガ
2004/11/19
地獄大甲子園/漫☆画太郎/集英社

 エリート選手を集めて甲子園を目指す星道高等学校野球部の前に、おそるべき敵が現れた。審判をも畏怖させ、球場を屠殺所と化さしめる外道高校。絶望の淵に野球部の前に、ケンカ野球戦士・十兵衛が現れるッ!!
 のだが、そこは漫☆画太郎。ダラダラズルズルグズグズと、話は全く進まない。
 そのルーズさを楽しむべき作品なのだろう。
マンガ
2004/11/19
ハデー・ヘンドリックス物語/漫☆画太郎/集英社

 ギターを舞台に叩きつけ、観客を殴りつける熱いパフォーマンスがウリのハデヘンの最期を描いた表題作他、肛門感覚に満ち溢れた作品を収録。
 読んだ後になにも残らないスッキリさわやかな感じがいいね。
マンガ
2004/11/19
卑しく下品に/早見純/一水社

 異色エロマンガ短篇集。父子相姦をはじめ、ダークな題材の作品が多いが、思わず笑ってしまうくらいに純粋に相手を求める心を描いた作品もあり。でもどっちも変。
 無職の叔父の姪に対する欲望を綴った「ハメ殺しの記」が気に入った。
 自尊心の異様に強い漫画家が登場するエロ抜きの「一冊二冊惨殺」も面白かった。
マンガ
2004/11/14
水鏡綺譚/近藤ようこ/青林工藝舎

 私は日本の中世もの(例えば芥川龍之介の『地獄変』とか石川淳の『紫苑物語』)が好きだ。近藤ようこの作品を初めて意識したのは多分アクションキャラクター誌に掲載された中世ものの短篇だったが、タイトルも覚えていなかったので、その作品を再び読むに至るまでかなり長い時間を要した。
 その作品は「黄昏の市」で、角川書店版の『水鏡綺譚』下巻に収められている。
 探し当てるまでにかなり大量の近藤ようこ作品を読み、その魅力を味わってはいたが、表題作『水鏡綺譚』は格別に面白く感じられた。
 中世を舞台に狼に育てられた行者のワタルと記憶をなくした美少女の鏡子が、鏡子の家を探して旅をするというお話なのだが、旅の先々で近藤ようこお得意の人間ドラマが展開され、それが超現実的な手段で解決される。かなりの異色作。
 しかし、連載当初は全然人気がなかったらしく、鏡子が家に帰りつくこともなく、「立派な人間になる」というワタルの夢が叶うこともなく中絶した。悲しい予感のする伏線を張られながらも宙ぶらりんの状態にされたまま10年以上経った。
 この度の青林工藝舎版では、描き下ろしの結末が加わった。言うこと無しだ。未完の状態も決して悪くはなかったが、予想以上の素晴らしい結末だった。
 記憶を取り戻し、目に光の宿った鏡子の美しさにほれぼれし、それによって、以前のぼや〜んとした鏡子の可愛らしさにまた惚れ直した。
マンガ
2004/11/14
サイボーグサラリーマン メカ☆アフロくん/花くまゆうさく/マガジンハウス

 タイトルが全てを説明するギャグマンガ。
 アフロヘアのサイボーグが会社勤めをして、そのマシン力で会社の問題を画期的に解決する、というお話。
マンガ
2004/11/14
クールパイン/南Q太/祥伝社

 冷めた感じの主人公が、なんとなく愛のないセックスしたりそんな自分をモノローグで客観視してみたり、時にはパートナーに愛を感じてみたり。
 えらく読みやすいが情交の場面が多すぎて、電車の中で読むにはツラかった。
 描かれているのは私にはあんまり関係ない恋愛至上主義的常識の支配する世界ではあるが、作者はそこからなにかもうちょっと普遍的なものを拾い上げようとしているように思える。単にヤることが目的なのではなくヤることから始まる関係性とか。普通とは順序が逆なところにキモがあるのではないか……、などと考えつつも実際自分にとってはありえないな、と結論。
マンガ
2004/11/07
バラ色ギャング/とま/青林工藝舎

 かなり昔にガロに掲載された作品が突然単行本になった、ようだ。当時ガロを読んでなかったのでそのことには感慨はない。
 日常から非日常へ行ってしまいそれっきり……的な作品が多い。不条理系。
 逆柱いみりあたりに近い系統なのかもしれないけれど、言葉で説明している部分が多いのでそこが不満。せっかくのユニークな絵柄がもったいない。
 東京タワーから川下りだの、老母の排泄物を2キロも歩いて捨てに行くだの、思いつきはいい感じなので余計そう感じる。
マンガ
2004/11/07
景気ばくはつ。/しりあがり寿/エンターブレイン

 経済問題をネタにした脱力ギャグ。
マンガ
2004/11/07
あなたの遺産/あびゅうきょ/幻冬社

 絶版の初期作品集『彼女たちのカンプフグルッペ』(1987年刊)『JET STREAM MISSION』(1995年刊)を併せて収録。前者は初読。短篇集で、戦争を扱ったものではあるが、平和を希求する傾向を感じさせるものが多い。一作ごとに絵柄が変わり、試行錯誤の過程が伺える。表題作の、カケアミで輪郭を浮かび上がらせる感じの絵柄が特に好み。絵は満足だが、ストーリー的にもうひとつな作品が多い。
 『JET STREAM MISSION』の方は長篇。読んだことはあるのだが、すっかり筋を忘れていたので読み通してみた。内容は太平洋戦争の新解釈というか、物凄い大ぼら。これは素晴らしい。絵も重厚でいい感じ。
マンガ
2004/11/03
晴れた日に絶望が見える/あびゅうきょ/幻冬社

 ダメ人間の影男が「装飾された特権的な死」を死ねと誘われつつもそこに至れない、という作品を主に収録。併録されている作品も基調としては同じ。主人公が男でない場合でも名誉ある死(例えば戦死)によってそれまでの人生を肯定しようという思想は変わらない。
 思想的には私は作者のサムライ的死に様至上主義な考えには同調することはできない。
 武士道精神は武士にだけ通用するものであり、武士道云々は多分江戸時代の官僚である武士を能く使うために都合のいい方便だったろう。歴史的な人口の構成比を考えれば、日本人の大半は百姓だったはずだし。
 ただ、描かれているものへの賛否はともかく、丁寧な作画は素晴らしいと思う。バロックだ。
マンガ
2004/11/03
こどものあそび/南Q太/祥伝社

 おそらくは自伝的作品。作者自身について知りたいという人にはひょっとしたら重要な作品かもしれない。
 どのエピソードをとってみてもシングルカットできそうなポップな味わい。客観描写にクールなモノローグを絡めたお馴染みのスタイルはとうに完成されていて、実にスルスルと読めた。完成度は高い。表現として洗練されていると思う。
 しかし私の求めているものではない。
マンガ
2004/10/31
こくう物語/鈴木翁二/青林工藝舎
 江戸末期を舞台にした長篇マンガ。
 楽ではない暮らしの中でも仲むつまじい姉弟を中心として人間失格者の薬屋の語る心にしみる法螺話などを織り交ぜたノスタルジーを感じさせる物語。
 本筋とは明らかに時代を異にするエピソードが挿入されていたり、複雑な構造を持ち、一読即ち理解できるというものではない。その意味を汲み取る気力は私にはなかった。
 それはともかく、この作品には幼年期の自分を現在の自分の目で見直すスイッチが仕掛けられている。
 この物語におけるノスタルジー発生装置を私の人生に置き換えて求めるならば、小学校に上がる前に遊んだお寺近くの山だろうか。蝶など獲った。
読書日記系
2004/09/15
 これは料理の本だ。いろんな料理のレシピが書いてある。ただ、レシピといっても細かな分量はないし、食材についても「これがなければあれで」式に融通をきかせる場面が多い。料理法についても写真でその経過を追うわけではなく、文章で簡単に説明しているだけだ。
 世間に数多流通しているレシピ本とはかなり趣をことにする。
 そもそもこの本を書いた人物の本職は作家であり、料理人ではない。
 彼は幼少の頃から自炊せざるを得ない状況にあり、必要に迫られて料理を覚えたのであるが、そうやって得た家庭料理のノウハウを開陳しているのがこの本なのだ。
 私は吝嗇であるため自炊はかなりする。そして調味料の細かい分量などには全く気を使わない種類の人間であるため、この本のattitudeを強く肯定するものである。料理はそんなに難しいものではない。自炊している、と言うと驚かれることが少なからずあるが、経済的だし好きなものを好みの味付けで食べられるし、いいことばかりだ。
 紹介されたレシピの中では各種臓物の料理に強く興味を惹かれたが、残念ながら近所にこの手の部位を気軽に入手できる店を知らない。
読書日記系
2004/08/27
 殺人事件を題材にしているがミステリーではない。ドキュメントである。
 事件は僅々数十年前に起きたものであるにもかかわらず、誇張されている部分がある。そのため一種伝説めいている。作者はそれを払拭するためにこの本をものした、とあとがきに書いてある。
 私も、その誇張された部分について思い当たる節があり、事実に即した記述を一度は読みたいと思っていたので購入した次第。
 作者の狙いはビシと定まっており、事実と思われる証言等を禁欲的に追っていく。
 この事件は閉鎖的な状況で発生しており、犯人が自殺を遂げていることから関係者の証言の信憑性については疑わしいものがあるのだが、本作では事件の範囲の外の証拠をいくつか採用した。その結果、事件の全容がパノラマ的に浮かび上がってきた感があり、評価に値すると思う。
 事件そのものについては、この時代であれば達成可能な残虐性の高みに登り詰めている稀有な事例であると考える。犯人の内面については、よくわからない。筆者の禁欲的な姿勢がそこに踏み込むことを避けているような印象を受ける。そのことは不快ではない。そこには踏み込まないのだ、という決意が感じられるからだ。
 最終的な印象は、殺された人数は飛び抜けているが、それを許した状況を差し引いて考えると普通に起こり得る事件ではある、ということ。そしてこの事件を理解するには当時の世界の状況を理解しなければならないのだな、ということ。
 とりわけ異常な人物の起こした犯罪とは思えなかった。
読書日記系
2004/08/26
 私は吝嗇なので、本を読むのに借り物で済ますことが多い。これは弟から借りた。シリーズもので、たしか5作目になるはずだ。長い時間をかけて書き続けられている。惰性で読んでいるわけではなく、いつも楽しみに読んでいる。
 この本は分厚い。分厚い本を読むと、読書経験の少ない小僧や小娘は自分が何か大それたことを成し遂げたような気になり、反射として自分が読んだその本が素晴らしいものであるかのように錯覚しがちだ。いい年して、私もその類なのかもしれない。というのはこの分厚い本に肯定的な評価を下すからであり、それが錯覚かもしれないからだ。でも小僧小娘のように自分の読んだ本を他人に勧めたりはしない。読むべき人はすでに読んでいると思うからだ。
 この本は推理小説。人が死んで、探偵がその理由を推理する。
 物語の舞台は数十年前、と書くのもなんだか憚られるちょっとばかり過去。ギリシャ神話を下敷きに、現代でも大きな問題となっている体液を媒介に感染する病を絡めて事件は進む。
 極端な思想に取りつかれた美青年が、その疫病を巻きちらさんとしてせっせと体液の放出に励む、というエピソードに感動などしつつ謎解きを楽しみ、「こりゃちょっと探偵がいろいろ目撃しすぎだな……」と若干ネガティヴな印象を覚えたりなどした。
 殺人事件の解明という点では、この小説はとりわけ優れているとは思えない。私の頭脳が推理小説向けに出来てないのでそのへんの感じ方はおかしいかもしれないが……。
 このシリーズを読み続けているのは、トリックへの興味によるものではない。
 謎解き自体よりも探偵や、彼に対峙する人物の語る蘊蓄。そして探偵自身への興味が尽きないからである。
 探偵は過去に、今ではその意義を疑われている左翼的活動に従事していたことがほのめかされている。
 そうした活動に対する本格的な総括は未だ充分に行われていないと私は考えている。
 明晰な存在であるとして描かれている探偵が、自らを断罪する場面がいずれ描かれるのではないかと期待しているのだ。
 本作と前作において、探偵の仇敵の存在がクローズアップされてきている。相当のニヒリストであることが予想されるその人物と探偵の邂逅が果たされたときその期待が叶うだろうと信じて、次作を楽しみにしている。
マンガについて(作家別五十音順)
作家名
作品
update
相沢トモコ主に読み切り作品1998/06/08
安達哲キラキラ! さくらの唄 他1999/05/09
秋山晟空になる青2000/01/16
五十嵐大介はなしっぱなし1999/05/09
池部ハナ子 (池部ハナコ)他人様の口唇に悪戯して楽し ラヂヲ屋の電波使い1999/06/06
いましろたかしデメキング ハード・コア 他2001/02/10
イワフチヤスナリラウドの怪人1998/03/30
大森しんや鉄の字2001/07/08
小川幸辰エンブリヲ 他2001/07/10
呉世浩水の国のアリラン2001/11/04
小田ひで次拡散 クーの世界2001/04/07
小田原ドラゴンおやすみなさい。2000/03/26
かいともあき裸のふたり 白い少年2000/05/13
加藤伸吉国民クイズ 流浪青年シシオ バカとゴッホ2001/02/10
華倫変カリクラ1998/05/11
河合克夫ブレーメン2001/03/25
キクチヒロノリげだつマン へろみの夏休み 他2000/05/28
木崎ひろすけGOD-GUN世郎 少女ネム
鬼頭莫宏ヴァンデミエールの翼
黒田硫黄大日本天狗党絵詞 他1999/08/07
小池桂一SPINOZA かたじけない G2001/03/17
小池利春星はいつでも屋根の上1998/02/23
古泉智浩ジンバルロック ミルフィユ2001/04/08
サガノヘルマーわんぱくTRIPPER BLACK BRAIN1998/01/12
逆柱いみり象魚 他1999/12/31
澤田賢二鍍乱綺羅威挫婀1998/03/30
三五千波種馬青年こけし 少年犯罪 他2001/05/13
椎名品夫眉白町1998/03/30
白山宣之少年塔 10月のプラネタリウム
すぎむらしんいちサムライダー 超・学校法人スタア學園 他2001/03/17
清田聡染盛はまだか1998/07/06
作家名
作品
update
タイム涼介日直番長1999/05/31
タナカカツキオッス!トン子ちゃん2002/07/18
田中政志FLASH ミス・マーベルの素敵な商売 他2001/06/09
田中ユキストレンジラブ 他1999/05/09
谷弘兒(谷弘児/陰溝蠅兒)薔薇と拳銃 夢幻城殺人事件 他1999/05/09
土田世紀未成年 タックルBEAT他1999/12/31
津野裕子デリシャス 雨宮雪氷 鱗粉薬2001/02/10
友沢ミミヨいもほり
とんぼはうすああ!男泣き塾1998/03/30
仲能健児インドにて 猿王
魚喃キリコblue ハルチン 他1999/12/31
蓮古田二郎しあわせ団地2001/03/17
花輪和一猫谷 水精 コロポックル 刑務所の中 他 2002/10/06
根本敬亀ノ頭のスープ 天然 他2000/04/02
比古地朔弥(渋蔵)けだもののように 他1999/09/13
平井一郎眼力王1998/03/30
平本アキラアゴなしゲンとオレ物語2000/05/13
松井雪子マヨネーズ姫 絶望ハンバーグ工場
松本次郎ウェンディ2000/05/28
間部正志 ノーホシTHEルーザー 他2000/03/26
みぎわパンぱんこちゃんになろうっ ぱんこちゃん 他1999/05/31
三島芳治記録係の最期 原子爆弾ノート 他2004/05/03
水野純子PURE TRANCE 他2001/02/10
三本義治マンガの本1998/03/30
山下ゆたかノイローゼ・ダンシング1999/12/31
山田花子神の悪フザケ 他1998/02/09
山野一四丁目の夕日 混沌大陸パンゲア 他2001/06/03
吉田基已水と銀2001/02/10