平本アキラ


アゴなしゲンとオレ物語

アゴなしゲンとオレ物語  軽トラ一台の零細会社「アゴなし運送」を経営するゲンさんは齢三十二。
 全身を剛毛で覆われた彼の、荒んだ生活をアゴなし運送のバイト「オレ」ことケンジが観察するというのがこの作品の基本スタイル。
 とにかくゲンは最低の男。考えなし、見栄っ張り、スケベ、下ネタ好き、弱いものイジメ好き。常に邪悪な欲望を漲らせている。
 ほとんどすべての目論見が成功しないから罪は少ないのだけれども。
 おまけに説教好き。だが、彼があらゆる機会を捉えて語りたがるありきたりの人生哲学は、焦点が完全にズレていて説得力は、全く、ない。
 そして無能で、情けない。ゴツい外見は見かけ倒しそのものだし、救い難く頭が悪い。
 運送屋の仕事がないからといって河原で石を積んでは無意味に運んでみたり、いい歳して自作のラジオ番組を吹き込んでみたり……。

 そんなわけで、たしかにゲンは徹底的にダメ人間なのだが、どんなにダメなオヤジであっても完全に憎んだり嫌ったりすることはなかなかできないもの。
 ちょっとした優しさに触れて感涙にむせぶゲンの姿はなかなかいじらしい。
 ケンジがいつまでも「アゴなし運送」を辞めないのはもちろん作劇上の方便に違いなかろう。しかし、嫌い、反発しながらも、ゲンと共に生きていく彼を見ていると、世界はぎりぎりの愛情と思いやりで支えられているのかもしれない、と思えてくる。
 そのせいもあってか、しょうもない生活描写は多いわりに寂寥とした印象はほとんどなく、読後はかなり爽やかだ。ゲン以外の登場人物もあからさま変人揃いで、非現実的なギャグが多いせいかもしれない。
 もっとも最近のエピソードでは生活描写はほとんどなくなり、ゲンさんはほとんど化け物みたいだけれども。

 表紙からも分かる、陰毛のように曲がりくねるたよりない描線も、ナスティかつクレイジーな題材にぴったりフィット。
 女性用の水着とエプロンだけを身につけてゲロを吐くゲンさんの姿など、最高にイカス。

既刊4巻
講談社
シリーズ:ヤンマガKC
判型:B6
ISBN初版発行本体価格
4-06-336791-6 C9979 \505E1999/03/05\505
4-06-336809-2 C9979 \505E1999/06/04\505
4-06-336844-0 C9979 \505E1999/12/06\505
4-06-336870-X C9979 \505E2000/05/08\505


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