五十嵐大介


はなしっぱなし

はなしっぱなし  ささやかな、とりとめのない、なんの役にも立たないけれどもどうにも魅力的な思いつきを頁に定着させた奇想掌篇集。
 「はなしっぱなし」のタイトル通り、提示されるお話の数々は「だからどうした」「なぜ」という類の質問にはなじまないものばかり。主張も教訓もない。ファンタスティックなアイデアだけが次々とくり出される。
 だからといって、独り善がりな感じはないのは魅力的な一瞬へと読者をまねく演出は十分だからだ。
 見開きや大コマで遺憾なく発揮される確かな画力。写実的な画を描く技術に裏打ちされたデフォルメには不自然さは微塵もない。ゆったりとしたコマ割りは読んでいて疲れないし構図も華麗。描き文字も実に雄弁だ。
 多くは語られないが、余韻が残る。読み終わった後、世界がちょっと違って見えてくる気がする。これまで見えなかったものが見えるような気がする。そんな希有な作品。何度でも末長く楽しめることうけあい。文句なしの名作。

講談社
全3巻
シリーズ:アフタヌーンKCデラックス
判型:A5
ISBN初版発行本体価格
4-06-319620-8 C9979 P600E1995/09/21\583
4-06-319707-7 C9979 P680E1996/06/21\660
4-06-319741-7 C9979 P680E1996/10/23\660

その他の作品

お日様の焼き物

モーニング98年2+3号掲載
 読者プレゼント用のおまけ4Pカラー。
 プレゼントが陶器ということで、焼き物をする神様と少女の出会いを描いた作品。
そらトびタマシイ

アフタヌーン98年5月号掲載
 なんと58P。主人公は踏み殺されたフクロウの雛と、事故死した父親の妄執に取りつかれた少女。
 同じく犬と融合してしまった娘の導きのもと、霊を分離する不思議な儀式が執り行われる。
 ボリュームたっぷりの「はなしっぱなし」。
 父の死の際にも空腹を覚える食欲旺盛な少女の食事の場面が食欲をかきたてる。
熊殺し神盗み太郎の涙

アフタヌーン99年6月号掲載
 熊をも殺す神力を持つ少年太郎は、その怪力のゆえに人を傷つけて人里を追われ、山で暮らすことを余儀なくされた。
 山の中で太郎は、一人の少女に出会う。
 彼女は太郎に優しく接してくれたが、山の神の人身御供とされることが運命づけられていた。
 怪力を発揮して、娘を救い出そうとする太郎だったが、結局は失敗し、自分の力が人々を幸せにしないことを悟る。
 太郎を主人公とした神話的な物語の魅力と、それを落とし話的に包み込むアイデアの組み合わせが見事。

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