華倫変


カリクラ

カリクラ  短篇集。
 基本線は「外れた人の話」。一話一人のキャラクターを追っかけていく。わりと社会的にはどうしようもない領域に属するキャラクターを扱うだけに、内容も必然的にそれなりの世界。それをクールな視線で眺めるというのはちょっと根本敬みたいだがそれほどディープではない。ネガティヴといえばネガティヴな姿勢なので万人にオススメ、というわけにはいかない。
 本当なんだか嘘なんだかわからない微妙なところに話を落として余韻を残すというのも好きなようで、突飛なキャラクターものの作品以外はほぼそのライン。「張り込み」はそれが功を奏しているミステリー作品。
 1巻に収録されている中では「赤い鎖骨」と「ピンクの液体」が特に秀逸。
 「赤い鎖骨」はいつもバカ呼ばわりされているOLと、彼女をバカ呼ばわりしながらも劣情を覚える上司の支配従属関係を単なるバカかもしれない主人公からの視点で語る、叙述トリックともとれる作品。
 ちばてつや賞受賞作の「ピンクの液体」はこれも、本当のことを言っているかどうかあやしいかぎりの医学生と23歳なのに女子高生といつわってデートクラブで働くフリーターの間の真偽不明のあやふやな物語。本当かどうかわからない医学生の優しい言葉を、フリーター女が信じようとするラストシーンは、この単行本の白眉だ。
 2巻はヤンマガ本誌に掲載された「テレフォンドール」全5回と1巻には収録されなかった短期集中連載「カリクラ」の残りのエピソードを収録している。
 ひたすらキャラクターで引っ張る馬鹿馬鹿しい「大林寺先生」、アナルセックスの世界をさしたる情熱もなく描いた「バナナとアヒル」などの軽めの作品も楽しいが、やはり見どころは、運命のなすがままに性病で死んでいく夜鷹の人生最後の日々を描いた「桶の女」や、異常な恋人との日々を振り返る「テレフォン・レディ」などの作品。
 自分と自分をとりまく世界の距離が妙に離れた感じ、世界との関わりが希薄な自分の人生に対してすら傍観者めいた主人公たちの視点が印象的だ。

講談社
シリーズ:ヤンマガKC
判型:B6
ISBN初版発行本体価格
14-06-336721-5 C9979 \505E1998/02/06\505
24-06-336737-1 C9979 \505E1998/05/07\505

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