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全世界の核兵器の8割を保有し、経済的にも他を圧倒する未来の日本。 その国力の源となったのが議会制民主主義に替わり採用された、クイズの正解者にあらゆる権限を委ねる「国民クイズ」。毎日オンエアされるテレビ番組で国政が左右されてしまうというきわめてラディカルな体制だ。 番組の司会者K井K一はかつて自ら国民クイズに解答者として挑み敗れた男。つまり国民クイズ体制の下ではまぎれもなく犯罪者。しかし刑罰として強制的に従事させられている司会者としては抜群の能力の能力を発揮している。国民の圧倒的な支持を得る彼は、いつのまにか権力闘争に巻き込まれていく。 欲望を全肯定した露悪的な社会のありさまや官僚腐敗の描写は風刺的で痛快。かなり笑える政治ドラマ。 他にあまり似た人のいないオリジナリティあふれる絵柄、隅々まで丁寧に仕上げられた画面で、みていて非常に楽しい。読んで損なし。 原作:杉元伶一 講談社 全4巻 シリーズ:モーニングKC 判型:B6
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アートな衝動に身を任せて放浪するシシオ青年。突然のインスピレーションで「創作モード」に切り替わって作る作品はたいがい外面はめちゃくちゃなのだが、なぜか心に訴えかける真の娯楽といえるもの。出会った人々の心の凝りをほぐさずにはいられない。ということで基本的には人情話。 特に、自分が幸せだった頃の家のミニチュアを作っている孤独な老女のエピソード、「思い出の我が家」(2巻に収録)や廃線の電車を無理矢理帆船のようなもの改造してその中に住まう元工員・現浮浪者を新たな世界に導く「走れ!キシャポッポ」にはほろりとさせられた。 また、「創作モード」に入っている時のシシオのぶちキレた様子が最高に楽しい。図案化され、イラスト的な絵柄にもかかわらず創作の情熱が画面から飛び出してくるようだ。読んでいるだけなのに自分も何かやったような気分になれて非常に気持ちいい。NHKの『できるかな』が好きだったという人にもそうでない人にもオススメ。 講談社 全2巻 シリーズ:モーニングKC 判型:B6
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高校時代を音楽に捧げた堺と正二。しかし大学受験を理由に、彼らのバンド「ムーズムズ」からはリズム隊が脱退してしまう。高校生活のラストステージを台なしにされて、堺はすっかりおかんむり。 いじめをやめさせるためとはいえ、カッとなって女の子に暴力を振るう。その報復にやってきた不良少年との乱闘の末停学をくらい、ギターを弾く腕も怪我してしまう。 どんどん悪くなっていく事態に堺と正二はすっかりやる気をなくしていく。 けれども、乱闘騒ぎの大もとのいじめられっ子、通称「ゴッホ」が二人の心に火をつける。地味で無口なゴッホは服飾デザインの道については炎の人だったのだ。 傷だらけのムーズムズは新たに衣装担当のゴッホをメンバーに迎え、高校生活のケジメをつけるべく文化祭のステージへあがる。 衝動につき動かされ、己の信じる道を行く堺とゴッホは実に爽やか。 だが、彼等は自分の内面をあまり言葉にしないし、かなり突飛な人物ではある。 そんな彼らとの距離を縮めるのが二人に比べれば明らかに普通の人、正二。 主役を張れない正二ではあるが、偉大なバカの堺に手を差し伸べ、いよいよ文化祭へと出発するリヤカーを威勢よくひっぱり、ステージで伴奏のギターを弾く、かけがえのない共犯者。 モノローグの担い手を彼にしている効果は抜群だ。 彼の目線を通すことで、読者である自分自身があたかも堺とゴッホの側にいたような、この物語がまるで自分の高校時代の事件であるかのような気分にさせられた。 素晴らしい第一話。完全にやられた。 以降、堺と正二がゴッホに寄せる恋心を軸に、徐々にヘヴィに、シリアスに展開する。 夢見るだけではおまんまは食えない。大志ある三人は居場所をもとめて足掻く。 真摯な思いはすれ違って、報われない。至らぬ言葉は大切な人を傷つける。悪いことをしているわけではないのに苦しくなっていく。純粋ゆえに苦悩はいよいよ深い。 困難に真剣に対峙するその姿は、第一話で身近な存在のように感じているだけに、痛烈に胸を打つ。 加藤伸吉の描く線にはいつも迷いは感じられない。が、この作品ではまるで、そうしないと描きたいものを頁の中に留めておくことができない、とでもいうかのようにとりわけ太く、濃い。 読み返す度に、青春という言葉から遠くはなれていくほどに、この作品は味わいぶかくなっていくと確信している。 なお、1巻にはこれまで単行本未収録だった「イサムダイアリー」「MY Mhz」、2巻には描き下ろし短篇「L&P Love and PARAPARA」と「夜ゲラ」が収録されている。 | ||||||||||||
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イサムダイアリー 週刊モーニング97.8.14号掲載 |
事故で死んだバイク乗りの友人のヘルメットを一年間かぶりつづけると心に誓った男・イサム。彼女とやるときも極彩色のヘルメットをかぶりっぱなし。 やがてイサムはそのヘルメットがもとでいろんなモノを失うに至るのだが、ある瞬間、友人が見たかもしれない、これまでとは違った世界が見えてきたのだった……。 設定からして既に加藤伸吉以外のなにものでもない。 前半の馬鹿馬鹿しい展開、そして後半のアートで強引なしめくくり。時間をたっぷりかけて描きこんだ画面も気持ちいい。 |
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MY Mhz モーニング新マグナム増刊創刊号掲載 |
サックスのフリー演奏で街頭の顰蹙を買っている青年。孤独な彼を癒すのはDJゼビコウなる人物の海賊ラジオ放送だった。 ある晩、番組の中でリスナーから送られた詩「ミンナノコトバ」が朗読される。やけにたどたどしい言葉でつづられたその詩は、意味のわからない言葉からでも気持ちは伝わるという内容だった。 青年は感銘を受け、停滞気味だった演奏にも熱が戻る。 そんなある日のこと。 死を目前にした老ライオンがラジオの声に惹かれてサーカスを脱け出し、ゼビコウのもとにやってくる。生放送でそれを知った青年は、たまらずゼビコウ宅に赴き、不思議な一夜を過ごす。 言葉を超えたコミュニケーションを題材にした、心あたたまる好短篇。 |
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講談社 全2巻 シリーズ:モーニングKC 判型:B6
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