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小学校の入学式に遅刻した少女、シノブは世界に居場所をなくしたような感慨に襲われる。そこに居合わせた自称「天狗」の師匠。シノブは家族もそれまで属していた社会も捨て、師匠の導くままに天狗になることを決意する。 時は流れて15年後。成長したシノブと師匠はルンペンのような生活をしていた。それでいて天狗としての自尊心だけはあり、あくまで孤高を気取る師匠の生き方にシノブは疑問を抱く。 そんな折、偶然のきっかけで生家を訪れたシノブ。そこには弟と一緒に天狗のこしらえた泥人形「しのぶ」が暮らしており、もはやシノブの入り込む隙間はなかった。 人間にも天狗にもなりきれないシノブはもがく。シノブがつきつけた「天狗とは何なのか、どうあるべきなのか」という問いはなまけ者の師匠をも動かす。伝説の大天狗Z氏の助力を得て師匠は日本を天狗の国にすべく画策する。 日本全国を揺るがす数々のスペクタクルな大事件を経て、やがて物語はシノブと天狗のアイデンティティの問題に収斂していく。 己のなんたるかを見つけ出した登場人物たちはそれぞれ思い思いの場所へと去っていく。自由人の気概を取り戻して飛びさる師匠はかつてのかっこよさを取り戻した。過去を清算して未来をみつめるシノブのラスト3頁の表情は穏やかで、かつ次の一歩を踏み出そうという前向きな意志を漂わせている。実に凜として気分がいいしめくくりだ。 筆を多用して、真っ黒けから真っ白けまでさまざまに使い分けられる画面の密度、「このまま映画にしたら……」と思わずにはおれないダイナミックな構図。この絵を見るだけでも買う価値あり。 講談社 全4巻 シリーズ:アフタヌーンKC 判型:B6
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アフタヌーン四季大賞受賞作をはじめ、モーニング増刊やCOMIC CUE等で発表された短篇を収録。『大日本天狗党絵詞』のような、一点に集束していく類のものではなく、思いつき重視の、わりととっちらかった内容の作品が多い。 切実なムードを漂わせながらもほとんどなにも起こらない「南天」。ファンタスティックかつ非現実な一瞬をもたらすために全ての頁があるかのような、「象の散歩」「象夏」。 かと思えば、社会との摩擦に悩む子供心を描いた「THE WORLD CUP 1962」や「あさがお」もある。更には西遊記を通して”フィクション”の存在意義を問う、ちょっと異色な「西遊記を読む」まで。 どれをとっても興味深い作品だが、お気に入りはよしもとよしともとの共作「あさがお」。近所の危ないお兄さんの観察日記をつける少女、という題材の魅力もさることながら、お兄さんが月に向かって跳ぶ場面の迫力や浮遊感は、これはもうきっと、映画では出せない。枠線がないから。 雑誌掲載時に読み逃していた人は是非この機会に、白黒のくせにやたら鮮やかな作品群に触れていただきたい。また、感心にも切り抜きコンプリートしていた人は、描き下ろし「まるいもの」を読んで幸せな気分になろう。 イーストプレス シリーズ:CUE COMICS 判型:A5
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