魚喃キリコ


Water.

Water.  初の単行本。主にガロに掲載された作品を収録した短編集。
 余分なものを削ぎ落としたシャープでスタイリッシュな絵は大変魅力的で非常に目に付く。イラストだけでも食っていけるのではないかと思う。しかしこの作品集ではその絵の完成度にマンガとしての他の部分がまだ追いついていない。
 自分を決して振り返ってはくれない、それでも大好きな彼につくす女の子の話、「ヨルとハルとラヴ」のような読ませる作品もあるが、イラストに言葉を添えたような作品がかなり多い。残念ながら、強力な絵それ自体が語り出すところまでには到っていない。
 流行に身を委ねていて格好いいけどなにか覇気のないスカシた若者たちのスケッチという感じの題材も、嫌いな人は徹底的に無関心になってしまいそうなタイプ。

青林堂
判型:A5
ISBN初版発行本体価格
4-7926-0265-3 C0079 P980E1996/01/20\951

blue

blue  COMICアレ!掲載の長編作品。
 桐島カヤ子は同級生の遠藤雅美に憧れていた。遠藤はちょっとわけありで周囲とあまりなじんでいなかったが、桐島が思い切って声をかけてみると意外にもすぐ仲よくなれた。
 遠藤と付き合うようになって桐島の世界は広がり、また、自分自身の価値や可能性にも気づいていく。一方的なあこがれの対象だった遠藤は対等な親友になったが、高校生活の終わりは否応なしにやって来る。
 東京へ出て行くことになった桐島、地元に残る遠藤。
 別れの際に「ずっと忘れない」と変わらぬ友情を口にする桐島。けれども二人共にそれがどうしようもなく不可能なことに気がついているのだった。
 女子高生の会話や高校生活のリアリティ、以前にもまして洗練された絵、切なくて美しいストーリー。文句なしの傑作。オススメ。

マガジンハウス
シリーズ:MAG COMICS
判型:A5
ISBN初版発行本体価格
4-8387-0896-3 C0079 \950E1997/04/24\950

痛々しいラヴ

痛々しいラヴ  短編集。
 連作短篇の「その鮮やかさをどうやって忘れたらいい?」「ライフプランニング」の出来はいい。しかし頁数の少ない作品だと、食い足りないストーリーのわりに饒舌すぎるモノローグと達者な絵とのバランスが悪い。

マガジンハウス
シリーズ:MAG COMICS
判型:A5
ISBN初版発行本体価格
4-8387-0937-4 C0079 \950E1997/08/21\950

ハルチン

ハルチン  Hanakoに連載された、いわば魚喃キリコ版『るきさん』。
 ガサツでいい加減でいつも貧乏しているハルチン推定25歳のなんてことない日常を描いている。欲しいものがあると食費を削ってでも買ってしまったり、ダイエットにはすぐ挫折したりする、等身大の主人公の姿にはかなり心和める。シリアスで切ない作品をわりと多く描いてきた感のある魚喃キリコだが、この方面でも立派なものだ。
 相変わらずかっこいい絵の魅力に加えるに、この単行本は全編オールカラー。眺めるだけでも楽しい。

マガジンハウス
シリーズ:MAG COMICS
判型:A5
ISBN初版発行本体価格
4-8387-0967-6 C0079 \1200E1998/03/19\1200

南瓜とマヨネーズ

南瓜とマヨネーズ  事件としての恋愛が日常になったとき、苦痛は倍加し、幸せは埋没しがちになる。
 絶え間ない成功の末だけが幸せではない。当たり前であることの幸せというものもある。けれどもそれは、それを失う危険に遭ってみないとわからない。
 本編の主人公ツチダは、覇気をなくしている恋人との生活を楽にするため、売春までして金を稼ぐ。
 そうやって日常を守ろうとする一方で、昔好きだった男に恋心をぶつける。
 愛と恋との間でシリアスに揺れる女心を洗練されつくしたシンプルな線で描いた、筋の通った実に読みごたえある作品。
 連載時はなんてダウナーな作品だろうと思ったものだが、単行本になってみると、ラストに向かって集束していく抑制された展開に感嘆した。連載で読んでいた人も是非。

宝島社
シリーズ:Wonderland COMICS
判型:A5
ISBN初版発行本体価格
4-7966-1634-9 C9979 \848E1999/11/25\848

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