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”カッちゃん”こと東部克彦少年は、幼い頃から世間の欺瞞に気づき、普通の人間関係を構築することができなかった。 「全てから等距離にいたい」「全てから自由でありたい」、と彼は願う。 全てから等距離であるには自らを無限遠に置かねばならない。神のごとき孤独を味わいながら、カッちゃんは、「拡散」する。文字どおり体が粉々に散り、世界中に拡がっていくという怪現象。どこにでもいて、どこにもいない、希薄な存在となっていくカッちゃん。 時折、そんな彼を現実に呼び戻す人たちがいる。 幼なじみのあざみ、公衆便所と蔑まれる母子家庭の少女・雫、アフリカの未開の地の少女・ミラ。彼等にとってはカッちゃんは忘れ得ぬ人物であり、彼等の思いがカッちゃんをかろうじて世界につなぎとめている。 存在するということは他者と関わることだ、他者と関わることなしには存在できない、ということを悟りつつもどうしても拡散してしまうカッちゃん。長い彷徨の果てに彼はついに居場所を見いだすが……。 6年の歳月を経て完結した、正面切った哲学的寓話。これはまぎれもなくすべての「きみ」のための物語だ。 カケアミでいっぱいのペン画もストーリーの深みと調和して、スーパーヘビー級のパンチ力で読者を圧倒する。写実的な人物画に抵抗がある人もいるだろうけれども、是非読んで欲しい。 全2巻 講談社 シリーズ:アフタヌーンKCデラックス 判型:A5
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優しかった兄が遠くの街で死んだ。 その事実を受け止めかねていた妹の麗寧(れねい)は、中学校の入学式の前夜から、「つづき夢」をみるようになった。 夢の世界は、現実と重なる部分が多い。クーと名乗る死んだ兄そっくりの男や、幼なじみの亮太そっくりのキョムがいて、麗寧の家を探す旅の道連れになっている。 しかし、麗寧の記憶の中の兄とは違って自堕落でいい加減で下品で野蛮なところがあるし、キョムは、常にぽ〜っとしている亮太よりはかなりクールだ。 旅は毎夜続く。現実世界で眠りにつくとクーの世界へ。クーの世界で眠れば現実世界へ。 二つの世界を行き来するうち、つづき夢の世界と現実の世界の距離は近づいていく。 夢の中で得た符牒が、現実世界で意味を持つ。現実に先駆けて夢の中で前触れのような事件が起こる。 ついには、夢の中で、それが夢だとわかったまま行動できるようになる。 醒めてみる夢の中、麗寧は、生きている時には知ることの出来なかった、兄の真の姿を知り、その死と向き合えるようになる、というのが1巻。 クーの世界という装置を通して、多感な少女が現実と折り合いをつけていく、というのが全編を通した骨子であるようだ。続く2巻では、クラスメートや家族との人間関係に悩んだ麗寧が、ある事故をきっかけに再びクーの世界へ赴く。このエピソードでは、牧歌的なクーの世界の危険で暗い側面がよりクローズアップされ、物語の奥行きをさらに増している。 是非続きを描いて欲しい。 「夢の中で明らかになる真実」というモチーフ、少女の成長ストーリーも魅力的だが、舞台となるクーの世界のユーモラスな風物一つ一つの造形が素晴らしい。思わず単行本をだきしめたくなるような美しい小世界がここにある。 描きこみの密度の高さは相変わらずだが、「拡散」よりもソフトな絵柄で、格段にとっつきやすい。 講談社 シリーズ:アフタヌーンKC 判型:B6
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