![]() | 素朴でありながら装飾的な絵柄とメジャー誌では決して許容されるはずのない観念的で難解かつ平板なストーリーが魅力の、類希な作家、三五千波の作品を読もうと思った場合、古本屋でガロのバックナンバーを探すか、同人誌を買うという方法が考えられる。 また、東京コミティアやコミケ等のイベントには「つくりもの」というサークル名で参加しているので興味のある人はカタログをチェックの上行ってみるといいかもしれない。同人誌作品は中野タコシェで委託販売もされている。 |
| ぜんまい ガロ93年9月号 |
ガロマンガ新人賞入選作品。 「ぜんまい」「わらび」という名の風変わりな夫妻が輪廻転生をめぐって議論するという4頁の小品。 |
| ストーリーテラー ガロ95年8月号 |
波瀾万丈のフィクショナルな人生の体現者、「ストーリーテラー」たる和装のおかみさんに対して、まり子は悩みを打ち明ける。 三人の男性に求愛され、そこそこにドラマティックな境遇にある彼女はまっとうに生きていこうと考えているが、どうしたらわからないのだ。 おかみさんはその悩みへの答えとして、たちどころにいくつかの物語を編み上げるが、それらはどれも現実離れしている。それを聞かされたまり子は、自分の求めているものが起伏のない、ただの安定した普通の生活である、ということに気付く。 経済的、社会的自立を目指す女性が読んだら激怒必至かもしれない哲学問答短篇。 |
| 鍵と快楽 ガロ95年11月号 |
親に捨てられて人でなくなった源太と、超現実的存在のミダレさまはこの世の外にある、自分たちの世界にたどりつくための鍵を探していた。ついに残るは最後の鍵だけ。 そしてそれは「なくなったおうちの鍵」。 最後の鍵を手に入れることでミダレさまの影の国は救われ、世界は動くらしい。ということは、世界の変革は内面への完全なる沈潜というとても後ろ向きな方法によってもたらされる、と主張しているのかもしれない。暗喩だらけのとても抽象的な作品。 |
| ソウルレスポップ ガロ95年12月号 |
無垢で無力な自分を肯定する清純派歌手・パンジーは、心優しい人たちの人気者。 パンジーのファンであるあゆみも心優しいつもり。心優しいので人に迷惑をかけないよう、義理で見合いし、結婚することが決まったので、パンジーと決別することにした。パンジーの無垢な世界を大切に考える彼女には、泥臭い生活へ踏み出していく自分がパンジーにとって迷惑なものだと考えたからだ。 最後の機会だからと、あゆみはパンジーに会いに行き、思いのたけを吐露する。けれども、パンジーの世界は「しょせんきれいごと」だ、ととても現実的な捨てぜりふを残す。 結局は人にどう思われるかだけを考えているあゆみと、きれいごとを振りまく仕事に撤しつつも目的を持って生きるパンジーとの対比が面白い。 |
| 古着でSha la la ガロ96年7月号 |
アケミは自分の欲望に忠実な現代的な娘さん。彼女がいらなくなった家具を捨てていると、それを拾う者がある。それはアケミがその作品についてはひとかけらたりとも知らないが、テレビに出たりするので顔は知っている女流詩人、ジュディス塩屋。有名人とお近づきになれたアケミは調子にのって自分の身勝手な夢を語り出すが、即座にジュディスに一蹴されるのだった。 それなりに説得力のある言葉を吐く高潔なジュディスではあるが、実は生活者としてはかなり出来が悪いということ、酒代にも窮する情けない経済事情にあることも明らかになって両者痛み分け。 |
| 本屋に毎日行く女は不幸か? ガロ96年10月号 |
他人と違っていることを誇示するため、変態雑誌を立ち読みし、百科事典を読んで断片的な知識ばかりを仕入れ、特に目的もなく金持ちの愛人をやっている主人公は確かに不幸かも。 それはそれとして、本屋をパトロールする「知と学問の女神みね子」がいきなり登場するカッ飛んだ展開に君はついてこれるだろうか! |
| クジャクのメモリー ガロ96年12月号 |
過去三年分のデートのことは克明に覚えているが、考えることを徹底的に嫌うクジャクと、その彼氏との恋の終わりを描いた短篇。 「まともな男なら女の言うことなんか相手にしないもんだぜ」という台詞をはじめとして、一面の真実を突くドギツイ言葉のオンパレード。 |
| 卦見の話・お守り他6篇 ヤングヒップ増刊・平成50の怪談 平成9年 ワニマガジン社刊 |
原作付きのホラー短篇。ホラーとはいいながら全然怖くない。 三五千波の絵柄には三五千波のストーリー以外は合わないのではないかと推察される。 |
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姫菫 第一号 1993/05/03発行 |
第一号とはいうものの、第二号は存在しない。週刊モーニングなどに描いている砂川美於との合同誌。 収録作「春の嵐」は、春の嵐の子たるトレリス少年が父を求めて旅立つ、というお話なのだが、正体不明の父は結局登場せず、謎めくままに終わる雰囲気マンガ。 |
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メルヒェンクライス 1993/05/23発行 |
かなり初期の作品を収録。いずれも小品。 昔話を下敷きにした「うぐいす」以外は、筋らしい筋のない作品。ミステリアスで耽美的で世界の役に立たなそうな贅沢な雰囲気は感じられるものの、読み通すのはかなりツラい。 |
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SANGO CYCLE 1994/05/03発行 |
短篇集。「鏡川」は土着の伝承を下敷きにしたラヴストーリー。とはいってもそこはそれ、女性と社会の関わりに関するひねくれた意見ももりこんであったりもする。頁数も多くて読みごたえあり。 「つると羽衣」は、生死というもののない、人間に作られたモノの視点から人間の儚い生をちらっと眺める、というお話。着眼点としてはなかなかだが、もうちょっとわかりやすく展開できないものか。 |
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つくりものがたり 1994/11/03発行 |
「真桑桃」「水のカーテンけごん」の2篇を収録。 いずれも自分のすべきことがわからない、と考える人が主人公。ともに抽象的ではあるが、進むべき道を見いだすところで結ばれている。 難解かつ曖昧でおよそエンターテインメントとは言い難い、たいへんわがままな作品ともいえるが、他人の夢をのぞき見するような不思議な感覚は味わえる。 |
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きれいごと エレガンス 1995/07/30発行 |
ありのままの自分を頑なに肯定する娘・優雅と、あるべき自己へ近づこうと考えるその恋人がささいなことで喧嘩をする。そして互いを理解しないままなしくずしに仲直りするというお話。 話の展開には起伏はあまりないが、ぎっしりつめこまれた登場人物の内面描写や、時折登場するやや間抜けてもいる細密な日常の描写がそれを補って余りあり、むせかえるほど。 |
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邪悪なるひとさらい 1998/05/05発行 |
のっけから主人公が「バカなヤツなんてみんな死ねばいいんだわ。」とのたまう「図書館に毎週行く女も不幸か?」を筆頭に、ヒドイ女を扱ったアンチ・フェミニズムな短篇を多く収録。 世間的な強者にとっての善を信奉し、世の中に役立たないものを抹殺するマチガイ・ハンターなるものが登場する「フロッシイハアト・ダリアパアプル」がかなり強烈。 明らかに中途半端なため全貌は掴めないが、なにやら壮大なロマンを予感させる舞台設定の「女学生の道」も、深読み好きの人には面白いかもしれない。 |
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イヴォンヌの母 1998/11/23発行 |
あやは人形作りが好きな少女だったが、結婚を機に現実的になり、それをやめる。彼女に作られた人形のイヴォンヌにとってそれは裏切りと感じられた。 やがてあやには息子・ヒサマが生まれ、彼はイヴォンヌを気に入り、一緒に遊ぶようになる。それをいいことにイヴォンヌはヒサマを亡き者にしようと試みるが……。 珍しく筋立てのきっちりした作品。 |
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種馬青年こけし 1999/08/15発行 |
短篇集。 「キライな人間を許すことができない。だから働くのが苦痛なのです。」と仰る社会不適合青年サユリちゃんと、「性交は罪、生殖は義務」と考えるレズビアンが人工授精によって結ばれるというのが「種馬青年こけし」の骨子。 「自分以外の者を愛すること」の不自然さ、を主張する極北エロマンガ。 高校生にもなって「お姫様ごっこ」遊びに耽溺する女の子たちが、外の世界と交われず、ひたすら閉塞していく様を描いた「ポエムの森」も、かなり問題あり。 「イヴォンヌの母」も再録してヴォリュームたっぷりお買い得。 |
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Private Beach 2000/02/13発行 |
8Pのコピー誌。 男に肌を見せることを嫌う娘さんが、ひとりだけで思う存分楽しもうと、プライベートビーチを借りる。 彼女は、海にさえ入れば魚のように泳げるものと都合よく考えていた。しかし実はカナヅチであり、自分の思い込みと現実との差を思い知らされる。 普通は、そうした挫折体験により、娘さんの頑なな姿勢は崩れそうなものだ。そういう風にお話は作られがちだ。しかし、この作品では主人公の姿勢は最後まで変わらない。他者を意識するけれども受けいれない。 短いこともあり、かなり説明不足な印象。 |
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誰よりも速く走れる靴 2000/05/05発行 |
8Pのコピー誌。 勝ち負けをつけることや、競うことを避けたがる、女の子が主人公。足の遅い彼女は謎の男から靴をもらう。 男が言うにはそれは「絶対」的に速い靴であり、実際彼女がそれを履くと、競争などという比較問題の世界を離れて宇宙空間にぶっ飛んでしまうのだった。 それとともに物語も「競争の是非」云々といった問題点からはるかかなたに飛び去る。 置いていかれた競争相手の「飛び道具とは卑怯なり」という台詞といい、後味はわりとコミカルでそれはそれでいい。 ただ、投げかけた疑問に、きっちり焦点をあてて回答を出していくためには8Pでは全然足りない。 |
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少年犯罪 2000/08/27発行 |
主人公のニッキ少年は、部屋にひきこもってはスパイスとリキュールのきいたお菓子ばかり作っている。 その反社会性を治療するために、彼が押し込まれた矯正施設「ヨシワラ・ハウス」。そこで行われる治療とは、性欲を満たしてやることで少年から破壊衝動を取り除く、というものだった。 「少年が犯罪を犯す」のではなく、「少年であること」それ自体が犯罪、という画期的な見解にもとづいた、なかなかにかっこいい短篇。一部に間抜けなディテールがあるけれどもそれはご愛敬。 |
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心中機械 2000/12/30発行 |
自殺を試みては失敗し続けるコトナリ少年。彼は天使に愛され、彼の体は生物の理を外れていたのだ……。 そんなコトナリ君を死なせるべく、心中を試みるユカリ君。 あらすじとしてはなかなかにロマンティックで魅力的。ただ、最後にコトナリ君がまたしても死ねない理由については説明が足りない。 なお本作は、PC導入により全編フルカラー印刷。線も非常に太くなっている。 |
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歌うてづるもづる 2001/05/04発行 |
潔癖症の行かず後家の女教師と、少年のような女生徒の繰り広げる反恋愛的遊戯を中心としたお話。 題材は非常にユニーク。いつものように。ただし、それを読み取るには相当の理解力が必要。 最後の場面で唐突に出現する大阪弁に象徴されるように、余計なことをしているので伝えるべきは何かというところがぼやけている。 |
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