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外の世界に向けてなにかを強く訴えるわけではない。けれども、見事に完結した作品を描き続ける津野裕子の最初の単行本。 どの作品もトーンの明暗は別として幻想的。あるかなしかの淡いストーリー。ちょっとした思いつきを形にしたものばかり。だからこそ惹かれる。日常の喧騒とかけはなれた、ほとんど異常なまでの潔癖さで丁寧に作り込まれた世界がここにはある。 「だから、なにがいいたいわけ?」などと無粋なことをいわずに、こういう世界もあるのだ、ということを確認してほしい。純文学の味わい。 青林堂 判型:B6
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漁港の町に転校してきた岩波少年と、魚を父に持つという不可思議な噂の美少女・中沖白玉の常ならぬラブストーリー連作短編を中心に据えた2冊目の単行本。 より鮮明かつ力を増した描線が心地よい。作品の構成も以前にもまして巧みだ。 行方不明になった年上の少女を探すことで自らの精神を救済する少年の物語「雨宮雪氷」、お伽話のようでいて現実逃避の悲しい夢ともとれる「喜見城」、点描的、断片的なイメージをつなぎ合わせて綴る「A TASTE OF HONEY]……。 なかでも最後に収められている短篇「岩波くんの夢」のしめくくり、「海の方で花火があがる/おれはもうすぐその音で目覚めるのだ」という夢と現実が混淆するデジャヴュのようなモノローグにはゾクゾクさせられた。 客観とも主観ともつかず十分な説明もなしになしくずしに進行してしまう「夢」という題材と、マンガお得意のコマ単位での視点変更という技法の組み合わせが絶妙だったからだ。 青林堂 判型:A5
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時々、夢日記をつけている。けれども残念ながら、夢の魅力を存分に記せたためしはない。 短篇集『鱗粉薬』には夢を題材にした作品が多く収録されているのだが、そこには自分が掬おうとしてもいつもこぼれ落ちてしまう、夢の成分が見事に抽出されている。 「きくかてん」「鱗粉薬」「サンディッシュ・メモ」は夜見た夢そのまま、みたいな作品。悪夢でもなんでもない、辻褄があっているようでいてそうでもないような、起伏の少ない夢を丹念に作品として構築してある。極上の夢日記だ。 『雨宮雪氷』から続く連作「A TASTE OF HONEY」は相変わらず謎めいているが、[帰宅]の前半と後半のエピソードの不連続性はかなり夢らしい。 こうしたいかにも夢日記という作品以外も、多くは題材として夢を選んでいる。 「PALE BERYL」は、夢と現実を等距離に捉える主人公の視点が印象的。夢の中で答えを掴む、というストーリーも魅力的だ。 「スイングシェル」は逆に、様々な設定のディテールがよりあわさって、夢うつつで曖昧な境地へ逸脱していく。 夢で見た風景に招き寄せられた男の物語、「季節風」はまるでボルヘスの短編小説。 単行本一冊通して読んでみると、虚構と夢と現実の境界がとろけて渾然一体となる、不思議な気分になれる。 青林堂 判型:A5
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