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『アルコールラムプの銀河鉄道 ・上巻 〜 プリオシン海岸の情景 〜 』 1996年12月10日発売 / 三和出版
初単行本。着色はカラートーンです。6重貼りして色に深みを出したのですが、
印刷したらボケてしまいました。でも逆にそれが妙な味わいにもなりました。ケガの巧妙ですね。
その後、仕事で何度かカラー原稿を描いているうちに、カラートーンは4重貼りが限界だと 経験上分かりました。 また、ここに描かれた絵の舞台となっているのは 僕が10代の頃に住んでいた千葉県・浦安市のアパートで、
「部屋の壁の隅っこを、自分の夢想を乗せた銀河鉄道が突き破ってゆく幻視を視ていたら、 いつのまにか麻理果がそんな僕をじっと見つめていた」
・・・という、1986年12月8日の明け方に、麻理果が初めて僕の前に現われた時の様子を 描いています。
「バグダット・カフェ」「エル・トポ」「月刊STARLOG」「ブレードランナー」「X-FILE」 「スターウォーズ」「シャイニング」など、背景に描き込んだ「他人の虚構」に浸っている僕を、 麻理果が冷淡に見つめていたという訳です。 また、テレビモニターに映っている「WEYLAND YUTANI」というのは、映画「エイリアン」で リプリーが勤めている輸送会社の名前。それと、麻理果の 右肩横の壁に張られた奇妙な絵は、僕が最も愛する映画「惑星ソラリス」の劇中イメージで、 自殺した物理学者ギバリャンの自室の扉に張られている絵。 絵の下の文字は、ロシア語で「人間」と書かれています。
←クリックすると、大きい画像で御覧になれます。 両方とも原画を取り込んであります。下は、表紙の初期構想段階のラフ画です。 左が第1案で、右が第3案。この、銀河鉄道のレールを破壊している第3案は、 僕としては『銀河鉄道の行先を、麻理果が不確定にする』というイメージを表現したかったのですが、 何となく、怪獣が街を破壊しているイメージにも見えるのでやめる事にしました。
左の第1案も、最終稿と比べるとイメージが整理・変更されているのが分かると思います。
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『天気輪の丘で視た世界』 1997年10月14日発売 / 三和出版
これも着色はカラートーンです。重ねを3重貼りに落とした為、前より鮮明な色合いになりました。
「アルコールラムプの銀河鉄道 上・下巻」の中巻として出すよりは、別のベクトルで位置付け したかったので敢えて中巻にはせず、その代わり下巻より前に発刊しました。
表紙の麻理果はかなり気に入ってます。 また、ここの背景は「X-FILE」の主人公、モルダーの仕事部屋をイメージして描きました。 「I Want To Believe」という劇中のモルダーの心情そのままに、 僕も麻理果の真実を知りたいからです。
麻理果の周りの壁に貼られているレポートやイラストは、そうした訳のわからない存在である麻理果の イメージを浮き彫りにする為、宇宙人恐怖症の僕が勝手に描き入れた恐怖のイメージです。 その中のひとつとして、麻理果が手にしている本は「オズの魔法使い」の原本。 これは映画「未来惑星ザルドス」の劇中から持ってきたイメージで、「WIZARD of OZ」の 「WI」と「of」が消されている事で一目瞭然ですね。これを使用したのは、麻理果という存在が アリスの様な超現実ファンタジーではなく、オズの様な不気味な世界に棲む魔女に近いと 感じているからです。それと、麻理果の右手の背後にある絵は、NASAのジェット推進研究所が 1989年に発表した宇宙探査機・ボイジャーの、海王星ミッション時期のイメージイラスト。 海王星の北極から南極に、衛星トリトン (赤丸がそれ) を視野に入れて、下降しながら探査する ボイジャーの航路 (実際にこの航路で海王星を探査し、太陽黄道面から48.3度の角度で 現在も下降している) が描かれています。 遥か昔から、人類がその真実を知りたい「I Want To Believe」と願っていた太陽系の 神秘のヴェールを剥ぎ取ったボイジャーの様に、僕もいつか 麻理果という存在の真実のヴェールを剥ぎ取ってみたいという願望を込めて描き入れました。
←クリックすると、大きい画像で御覧になれます。3点全て原画です。 最初、左下の白黒画の麻理果を描いたのですが、原稿用紙に描いた位置が
悪かったので、トレスして位置修正し、背景全てを描き込んだのが右下の原稿です。
それをデジタルコピーしてカラートーンを貼ったのが、上の着色原画となっています。
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『アルコールラムプの銀河鉄道 ・下巻 〜 蠍の火 〜 』 2000年4月5日発売 / 三和出版
上巻から3年半も経ってようやくこの下巻が出せました。オマケに原稿入稿間際に風邪をひいて
ブっ倒れた為に巻頭の描き下ろし漫画が間に合わず、発売日も延ばしてしまいました。
実は単行本に収録する作品数はあと2冊出せる程度の量を持っているのですが、
気に入った作品だけを詰め込みたかった為、敢えて発刊を延ばし続けました。
これも着色はカラートーンで、上巻が深紅を基調にした色使いだった為、この下巻は 深い青を基調にして「冷たさ」を表現してみました。 また、この下巻の表紙は「アルコールラムプの銀河鉄道 上巻」からイメージを繋げてあり、 絵のテーマになっているのは「轢殺」です。 つまり、「上巻」や「天気輪」で使用した、映画や言葉などの「他人の虚構」とは違い、自分の個人的な 思い出深い身の回りの品物やオブジェ、そして自分の漫画からのイメージを描き入れる事によって、 こうした自分の記憶 (或いは、歴史) を麻理果という妖婦ごと銀河鉄道で轢き殺すという、 一種の自己破綻を表現したかった訳です。
←クリックすると、大きい画像で御覧になれます。 下の2枚は原画です。 |
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『アルビレオ観測所からの監察 〜アルコールラムプの銀河鉄道編纂集〜 』 2002年9月10日発売 / 司書房
2年振りに出した単行本。
編纂集という事で、初期作品の総括的な意味合いも含めて創ったのですが、
ロゴのデザインが酷過ぎます。これは僕とデザイナーの責任ではなく、ひとえに
発売元の司書房の営業が、『もっと目立つ色にしろ』という、スーパーマーケットの
チラシ的な発想でしか、発売を許可しなかった為です。
ロゴのデザインや、色の使い方など、デザイナーと色々と話し合ったにも関わらず、
全て没になり、結果的にこんな装丁になったワケです。
意気込んで制作した本だっただけに、これには流石に凹みました。
ロゴだけでなく、表紙の人物や背景の色の発色も僕が指定したものとは違っており、
これにも辟易しました。
※左の画像(一番上)をクリックすると原画を見る事が出来ます。
単行本をお持ちの方は、発色の違いを見てみて下さい。(特に肌の色・艶)
今回のメインタイトルである『アルビレオ観測所からの監察』というのは、実を言うと
最初の単行本『アルコールラムプの銀河鉄道』で使おうとしていたサブタイトルです。
つまり、
『アルコールラムプの銀河鉄道〜プリオシン海岸の情景〜』
ではなくて、
『アルコールラムプの銀河鉄道〜アルビレオ観測所からの監察〜』
にするつもりでした。
けれども、巻頭のカラー描き下ろし漫画の内容から、『観測所』よりは『海岸』の方が
しっくりすると思ったので、当時はこのサブタイトルを使いませんでした。
今回、編纂集として発売される事になったので、それなら『監察(決して"観察"ではない)』に
似合うと思った為、このタイトルをメインタイトルとして冠したというわけです。
※下の画像は、僕とデザイナーが考えていたロゴの一部と、ロゴの配色の一部です。
全部で11パターン作ったのですが、ここには最終的に残った5点を載せました。
没になって腹立たしいので、本当はこんな感じにしたかったのだという事を提示しておきます。
左上の白黒画像は、表紙のラフスケッチです。
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