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02/12/11(WED)
【MOOK】 「このミステリがすごい! 2003年度版」 宝島社 [bk1][amazon]
買ってきました。そのままランキング書いちゃうのはさすがに問題あると思うので、ざっと読んだ感想だけ箇条書きにて。
・ 横山秀夫絶好調。2003年には7冊単行本出す予定だそうだ。(でも、森博嗣は25冊。なんじゃそりゃ。)
・ ミステリ仕掛けがむしろ余計な、乙一「GOTH」(→感想)の評価はちょっと高すぎる気がする。前半に収録されたホラー部分にウェイトを置いた作品のほうが出来がいいように思うのだが。「暗黒系」、「リストカット事件」は光るけど書き下ろしは無理矢理な部分が多い連作集に感じられた。
・ ジム・トンプスン「死ぬほどいい女」(→感想)を取り上げてる一方で、ジャン・J・ヴォートラン「グルーム」(→感想)を評して、 「本作のように英米のミステリーのものさしで測ることの作品もあるのだ」 というのはいまいちピンとこない感想だ。作者がフランス人だからこうなったという作品でもない気が。
・ 古処誠二「ルール」が巻末の国内ミステリリストから落ちているのはなぜだろう。インタビューまで掲載されているのに。
・ 「入神」に続く竹本健治マンガ2作目は来年出るのだろうか。
・ 貫井徳郎って、年1500枚以上書いてるのか…… でも、単行本は年1冊。
・ 今年、「2冊も」 本が出た倉知淳が、 「2冊も」「2冊も」 とおおいばりだ。
・ 麻耶雄嵩のところには 「風邪引いた」 と書いてあった。
・ この(たぶん)1人で書いてる座談会はなんなのだろう。
・ 第1回「このミス大賞」金賞受賞作、浅倉卓弥「四日間の奇跡」、選者たちからベタぼめされてるけどそんなにすごいのだろうか? ちょっと気になる。
・ ランキングされている作品で、積読そのほか手がついていない作品は、連城三紀彦「人間動物園」、芦辺拓「グラン・ギニョール城」、古川日出男「アラビアの夜の種族」、海外では、コニー・ウィルス(訳:大森望)「航路」(上・下)、マイケル・スレイド(訳:夏来健次)「髑髏島の惨劇」、ジェレミー・ドロンフィールド(訳:越前敏弥)「飛蝗の農場」あたり。これだけで年内は大忙しだな……
・ これから読もうと思ってるのは、伊坂幸太郎「ラッシュライフ」、光原百合「十八の夏」、ジェラルド・カーシュ「壜の中の手記」、アントニイ・バークリー「レイトンコートの謎」(この他の作品も)、ジョー・R・ランズデール「ボトムズ」、エドワード・ケアリー「望楼館随想」あたり。山口雅也「奇偶」も読みたいけれど、あの装丁が邪魔していまいち食指が動かない。なんとかならなかったのだろうか、あれは。また、全く知らない作家では逢坂剛がちょっと気になる。
02/12/12(THU)
【MOOK】 探偵小説研究会・編著「2003 本格ミステリベスト」 原書房 [bk1][amazon]
昨日「このミス」やった以上、こちらも取り上げざるを得ないような気が。こういう総括本読んでる間に積読を消化すべきかしらともちょっとだけ思うけど…… 「このミス」同様、ざっと読んだ感想だけを箇条書きにて。
・ 本格となれば、やはりベテラン・中堅作家がランキング上位を占めることになるなあ。今年も笠井潔の作品を読めなかったのは(いまだ1冊も読んでいない)ダメだったかも、と思う。
・ 有栖川有栖「マレー鉄道の謎」が意外に上位で驚いた。
・ 霞流一の「首断ち六地蔵」を評価するか、「デッド・ロブスター」のほうを評価するかでその人の本格感が別れる気がする。
・ この人、自分の予定がぜんぶ動物でいえるんだよね…… 「ヒツジ、ウサギ、サル、ニワトリ」、だそうであります。
・ 各作品の紹介文は「このミス」よりこちらのほうが興味深いけれど、評論文になってしまってるから、未読作品でも読んだ気にさせられてしまうような。いいんだろうか、悪いんだろうか。
・ カッパ・ワンの4人、「写本室の迷宮」、「ロンド」、ここで評価されている本格系新人作品をどれも読んでいないというのも痛い(俺が)。というか、この本に言及する資格ないような気がしてきました。
・ そういえば、「本格ミステリ・マスターズ」も1冊も読んでないぞ……
・ 海外で本格となるとさすがにコマ自体の数が少ないなあ。ポール・アルテ「第四の扉」高評価については多分に「フランスでも新本格っぽいことしてた作家がいた!」というある種の共感で点が甘くなってるような印象を受ける。作品のレベルとしてはまだ小手調べである気が。
・ しかし、何も読んでいない。この1年間、俺は何を読んできたのだろうか?
02/12/13(FRI)
【単行本・小説】 古川日出男「アラビアの夜の種族」 角川書店 [bk1][amazon]
なるほど、なるほど、なるほどなあ。これは凄い本なのではないでしょうか。「渾身の1980枚!」とかいって普通の出来ならば御免こうむる量の作品なのですが、圧倒的な筆力でぐいぐいと読まされてしまいます。
階層が合ってるかどうか自信がないのですが、物語りの物騙る物語の物語りが物語る物語の物語とでもいえばいいのかな。
物語の舞台は聖遷歴1213年(西暦にして1798年)エジプトの首府カイロ。偽りの平穏に満ちたイスラムの地に黒い影が迫り来る。それはコルシカ島出身の若き常勝将軍、ナポレオン・ボナパルトが率いる侵略軍だった。
フランス艦隊の有する近代軍事力の前にエジプト騎兵隊は無力だろう、そう考えたエジプト内閣のイスマーイール・ベイは、若く優秀な彼の奴隷(=家臣)であるアイユーブの提案により奇妙な作戦を実行に移す。読むものの心を虜にし、狂気に導き、破滅させるという禁断の本「災厄の書」フランス語版を製作、それをナポレオンに献上するという作戦だ。
かくして、物語を伝承する唯ひとりの語り部、ズールムッドを囲む千夜一夜が幕を開けたのだった……
そもそも、アラビアンナイト爆弾投下して敵軍司令官を腑抜けにしようという計画からしてとんでもない発想ですが、夜会の席で語られる 「この計画のため新たに創造(想像)された」 物語の内容がまたすごい。これだけ荒唐無稽なお話もなかなかないなと思いました。余程の実力がないとこの馬鹿馬鹿しい内容をここまで読ませることはできないと思います。阿呆なことをするために最高レベルの才能を惜しみなく使ってるというか。遊んでるとしか表現しようがないルビの冒険や、人がばたばた死んでるのにどこかとぼけたムードが漂ってくるユーモア感覚は(会話センスとかも)古橋秀之の「ブライトライツ・ホーリーライト」(→感想)あたりの感覚に似てますね。「指輪物語」撮り終わったらピーター・ジャクソンを監督に呼んで映画化してみても面白そう。
そういえば、アーダム=ウィザードリーのワードナですよね。げらげら笑いながら読んでたのですが、そこらへんじつはハリポタだった牧野修「呪禁官」(→感想)の作りっぽいところもあると思いました。ぬけぬけとそういう大ネタ使って、でも感動させられてしまうあたり。こ、こしゃくな〜(w
そんなサービス精神にあふれたギャグ満載の娯楽作でありながら、いくつもの入れ子構造を成している凝りに凝った物語構成や、そしてなにより古川日出男の「物語は世界を変えうる」という熱い創作姿勢が伝わってくるところが素晴らしいです。装丁もいいし、これはたいへん愉しい本ですね。
純真無垢というか天真爛漫というか、とんでもない状況にいるのに、「お腹いっぱいになったら眠くなったぞ、ムニャムニャ…… よし、寝ちゃえ――!」 みたいなアホ主人公、サフィアーンがあまりにいとおしい。
02/12/14(SAT)
【単行本・小説】 連城三紀彦「人間動物園」 双葉社 [bk1][amazon]
数十年振りの大雪で交通機能が麻痺しかけた地方都市、県警本部に入った1本の電話からその事件は幕を開けた。隣家の4歳になる少女ユキが何者かに誘拐されたというのだ。それにしてもなぜ隣家? 通報主の家に向かった捜査員が目にしたものは震える字で書かれた少女の母親からの手紙だった。
「警察に連絡したらただちにユキを殺すと犯人から連絡がありました。この家にはいたるところに盗聴器がしかけられていて身動きが取れません。かわりに警察に連絡してください」
犯人の耳となった盗聴器の監視によって孤立無援状態を強いられる母親というギミックを導入した誘拐サスペンスで、しかし連城作品の特色ともいえる、事件の構図がばたばたと翻って意味を変えてしまう仕掛けの妙はそのまま。どこか微妙にちぐはぐな印象をうける登場人物たちの言動が裏返って見えた真相の中で新たな意味をもって甦ってくるあたりの見せ方も流石で、事件現場の周辺で以前から頻発していた動物を巡る小事件―――犬、猫の誘拐、山羊のひき逃げ、や、大物政治家の贈収賄スキャンダルなど、誘拐とは無関係かと思われていた数々のトピックが有機的に絡まりあって思いもよらなかった事件の全体像を結ぶラストなんかも驚きであります。
ただ、この人らしく意外性に満ちた愉しい作品ではあるものの、仕掛けの提示だけにこだわってるような印象も受けて(そこがこの人らしい気もするけど)、どうも中途半端な描き方に終わってしまった登場人物も多いような気もします。あからさまに伏線のために用意されたパーツというか。この作品は95年初頭に「小説推理」誌に掲載されたもので、今年になって何故かいきなり単行本化されたものなのですが、作品全体の雰囲気はそれよりまだ古く、たとえば「幻影城」あたりに掲載された作品といわれても信じてしまいそうな部分はあるかも。
そういえば今年は連城三紀彦の新刊が2冊も出た年でしたが、幻想味が出ていた「白光」(→感想)のほうが個人的には好み。装丁にしても、意味はわかるけれどいかんせん地味すぎるのでは?
02/12/15(SUN)
「ちよすけが消す予知」
映画「マイノリティ・リポート」観てきました。ちなみにディックの原作は未読。
うーん、なんでしょうね、ジョジョの「オインゴボインゴ兄弟の冒険」(→FLASH) みたいなお話でした。
予知能力者によってこれから起こるはずの犯罪が実行前に抑制されてしまうという未来社会を舞台に、自分が一面識もない他人を殺している現場を予知された犯罪予防局主任刑事が事の真相を探りながら逃げまくるというお話。
ヴィジョンとして未来が記録され、犯人も現場もあらかじめわかってしまうという条件の元で犯罪は実行可能か? というSFミステリとも呼べそうな作品で、小ネタ+大ネタのトリックが使われています。(しかし区分的にはバカミス)
そもそも犯罪予防局の人員にしてもシステムにしてもどちらもヘタレとしか形容しようがないのでは……? 当然犯罪者を捕縛することが主な業務になってるはずなのにものすごく効率悪いことばかりしています。被害者と加害者の名前が刻まれた球がころころ回って落ちてくるあたりのくだらないギミックは好みなのですが、原作に附加したのだろうアクションシーンのほとんどに意味が全然なかったり(特に自動車工場)、( ゚д゚)ポカーン なその後の逃走シーン、後半入ったあたりにあるデパートでの風船シーン、犯罪現場のヴィジョンに写る謎の男の正体など、ツッコミどころ満載で楽しいことは楽しいのですが、考えてみるとほとんどギャグしかない映画なんですよね。とほほほほ。
母親の胎内にいるときに新種の麻薬による薬害を受けたせいで予知能力が開花したというプレコグの設定とか、スラムに問答無用でスパイダー放って住人スキャンしまくるあたりのさりげなくヒドイ描写なんかは悪くないと思うのですが、定期的に盛り込まれるサスペンス展開のほとんどに意味がないので「適当に緊迫感盛り上げればいいというものでも……」と感じてしまいます。視覚的にはすごいけど脚本的には安い出来だと思われました。それにしても「ほとんど状況変わってないじゃん!」みたいな印象しか受けないあのラストカットは心がこもってなさすぎです。いったい何が言いたかったのだろうか……
【単行本・小説】 芦辺拓「グラン・ギニョール城」 原書房 [bk1][amazon]
森江春策シリーズ。
時は1930年代、舞台は酔狂なアメリカ人大富豪の手によって大西洋を越え移転されることが決まったヨーロッパの古城アンデルナット城。そこに集められた富豪の親類、友人、そしてアマチュア探偵ナイジェルソープの前に謎の中国人があらわれ、そして雷鳴とともに不可解な事件が……
いっぽう時空変わって現代日本。たまたま関西国際空港から乗った特急の中で苦悶の表情を残して倒れた男の最後を看取った森江春策は 「グラン・ギニョール城の謎を解いて……」 という男のダイイングメッセージをもとに個人的な捜査を開始する。やがて森江は「ミステリ・リーグ」なる幻のミステリ誌に掲載された「グラン・ギニョール城」なる未完の作品の存在を知ることになる。物語に吸引されるが如くグラン・ギニョール城を追い求める森江の前にやがて信じられないような光景が広がる。
あとがきにて昨今の安易なメタ・ミステリの流行、しかも言葉の定義がひとり歩きして作中作をともなった入れ子構造ミステリを指すものとし意味が変化してしまってるメタ・ミステリに対する違和感を表明した芦辺拓が、あえて自分がメタ的構成を使って作品を書いたとしたらどうなるか? についてひとつの回答を示した作品であり、黄金期に書かれたミステリと現実の事件とがしだいにクロス・オーヴァーしていき、しかも幻想には逃げていないという趣向をとったものであります。凄まじい力技ではあるものの起こりえないことはない、現実世界と地続きのものとして事件が処理されているあたりは注目に値すると思います。本当に、本当に強引ですが…… これ以外の道具立てとしたら、SF仕立てにするかあるいは麻耶雄嵩ばりの歪んだ世界を構築するかのほかには方法がないんじゃないでしょうか。
発想や趣向、本格マニアが喜びそうなお遊びも含めてよくできたミステリだとは思いますが、小説としてはさほど魅力を感じない作りで、そこがたいへん残念に感じられました。ざっと書いてしまうのは勿体無いネタのような気がします。
たとえば、このような構成をとってる作品なのに作中作パートと現実パートの文体がほぼ同一で最初から地続きになってしまってるような印象を受けるのはマイナスではないかと思いますし、あまり考えて無さそうな常套句の連発も気になる。
プロローグにおいていきなり、「犠牲者を押さえつける悪鬼どもの顔はいずれもニタニタと笑みくずれ、ひいきチームの勝利を望む野球ファンのような期待に満ちていた。」 とか書いてあって、「これは本気なのかな? ギャグなのかな?」 としばし悩んでしまいました。伏線なんだとは思いますが、グラン・ギニョール風なのにこれかよ! と……
02/12/16(MON)
【ANIME】 オーバーマン キングゲイナー 第14話「変化ドミネーター」 (→公式)
な、なんじゃこりゃ、凄すぎる…… こんなアニメ久しぶりに見ました。不定形クリ−チャ−が縦横無尽に飛び交ってるのを見てるだけで楽しいなんて、そんなものなかなか作れないのではないでしょうか。ここ数年見た作品の中でもベストかも。
ネットゲームでのゲイナーのライバルとして第1話(→感想)からさりげなく出演していたシンシア・レーンがヴァーチャ空間以外で初登場するエピソード。キッズ・ムントの命を受けてシンシアはバイカル湖周辺まで出張してきた。彼女の目的はアスハム率いるセント・レーガン部隊の殲滅にあったのだが……
しかしこのアニメ、女が怖いアニメだな―― 情け容赦の欠片もないシンシア・レーンのキャラはかなり強力なものがあります。アンダーゴレームの五百羅漢攻撃を手当たり次第に斬って捨てて、遊び飽きた玩具の如くザッキポイ捨てにして(酷すぎ……)、たまたま遭遇しただけのキングゲイナーにまで牙剥いて来るんだものなあ、恐ろしい性格であります。萌えるとか萌えないとかそういうレベルを超越したキャラばかりが出てくる。要所要所でさりげなくゲイナー君に釘刺してくるサラもなかなか怖いし。
しかしこのドミネーターの作画、変幻自在としか形容できないなあ……と心底驚いたのですが、EDテロップ見て納得。原画担当の人数が30人とかになってます(ちなみに他の回は10〜15人くらい)。そりゃすごいわけだわ…… キングゲイナーにもうちょっと見せ場あったらなとも思いましたが、それは次回以降のお楽しみかな。しかし、こんなオーバーマン出しちゃって本当にスケジュールは大丈夫なんでしょうか。ザッキの再登場はあるのだろうか? という問題ともどもたいへん心配です。虫の好かないキャラではあるものの、あのまま終了ではザッキがあまりに不憫すぎるので…… そういえば、あの小動物のガンバりには驚いた。



【ANIME】 灰羽連盟 第10話「クラモリ 廃工場の灰羽達 ラッカの仕事」 (→公式)
これもなかなか頑張ってるなあ。期待を裏切らないままちゃんと終わりそうでうれしい。お札やローブに刻まれた灰羽文字(?)見てるうちに「なるたる」もこんなふうにアニメ化できればいいな――と思いました。モニュメントっぽいデザインを取り入れた異世界構築の手法なんか共通したセンスですよね。
わりとあっさり回復できてしまいそうなラッカさんとくらべてレキさんはまたもひとり取り残されたままで、物語の中心はやはり彼女へとスライドしてしまう印象であります。苦悩レベルの深いキャラへと移行していったのでしょうか。レキさんにもそういう仕事紹介してあげればいいのに……

【ANIME】 灰羽連盟 第11話「傷跡 病 冬の到来」 (→公式)
お菓子のお返し(ドーナツ)持ってラッカさんとダイ(灰羽の子供)は廃工場を訪ねる。こちらはなんだかストリート系(w かつてレキと駆け落ち騒動を起こしたらしい廃工場のヒョコ@鈴木千尋、ヒョコを巡ってレキに対して複雑な感情を抱くミドリ@水野愛日らと出会ったラッカにミドリは、 「あなたはレキのこと何も分かってないのよ、何も」 と言った。早く巣立ちたいと心の底で願うも同時に巣立ちたくないとも思うレキと、レキを救いたいと願うも同時にレキとは別れたくないと思うラッカ、アンヴィバレンツな思いを抱く2人が中心となって物語は終幕へと閉じていく。 「空っぽの笑顔を貼りつけて私たちは歩く どんな時でもレキは優しい 誰にも心配かけたくないから 誰にも頼りたくないから レキは笑う どうしてもっと早く気づいてあげられなかったのだろう」 まったく、いい感じですね。 「もう、終わりにしよう」
02/12/18(WED)
「GO! 駕籠に御加護」
たいていはコンビニで済ませてしまうのだけれど、たまにはスーパーに行く。物珍しいぶんだけ余分な買い物して、余計にお金使ってしまうことがほとんどで困ったものだと思っている。物思いに耽りながら買い物してたらしい昨日はしかし何を考えていたのかまったく思い出せず、漠然とした思考が煙のようにたなびいて僕の頭から後ろに流れていくうちに家に辿りついたような記憶だけが残っている。何がなにやら。ドアの鍵取り出そうと右手をポケットに入れて、ふと左手を見るとそこにはスーパーのカゴが。
たぶんコンビニの気分だったのだろう、そのまま帰ってきてしまったようだ。真剣に驚いた。近所の人ともそれなりにすれ違った気がする。闇にまぎれて返しに行った。
【単行本・小説】 小川勝己「まどろむベイビーキッス」 角川書店 [bk1][amazon]
西東京市にあるキャバクラ「ベイビーキッス」におけるどろどろとした人間模様とキャスト(キャバ嬢)のひとりであるみちるが運営するSHIHO's Paradiseにおける荒らしの惨状が2重写しになったような物語。テーマは「匿名性」なのかもしれません。
源氏名≠本名で、そこでの言動≠本心とはならないキャバクラという空間に勤務するキャバクラ嬢が、魂の救済場所として求めたのが現実と同様にハンドルネーム≠本名となるWebページなのがこの作品のポイントで、どちらに向かってもそこには刹那的な生があるだけなところが小川勝己の作品っぽい気がします。
顔文字連発の厨房カキコ、「お祭りワショーイ」、「小一時間ばかり問い詰めたい」などの2ちゃん公用語が飛び交うその内容から「2ちゃんノワール」だの評されてる作品なんですが、縦書きだとAA貼れないこともあって現在の2ちゃんねるの雰囲気そのまま出すのはむつかしそう。仔猫惨殺実況したディルレヴァンガーに対する追い込みなんかを目にしちゃうとこの作品で出てくる荒らしなんて可愛いものだと思えてしまうというのもあります。ネットwatch板あたりでは日常茶飯レベルだし。
ただ、この作品で重要なのはそこにはなく、さして極限状況とも思えない2つの空間の狭間で勝手に苦しんだあげくとんでもないことをしでかす暴走迷惑女を描きたかっただけではないかと。
ミステリ的な要素もあることはあるのですが、それらもすべて(たぶんわざと)中途半端に仕上げてあって、これで驚く人はいないんじゃ? と思えるくらいにバレバレだったり、妙に古臭いことを平気でしてたりします。一番のミスリードは「ベイビーキッス」の見取り図なのかも(w いろんな意味において(わざと)心にもない作りをした作品だという推測はたぶん当たってるんじゃないかなあ。
なかなか面白くてあっという間に読んでしまいました。ひどく冒涜的なお祖父さんの思い出の使い方やら、やはりこの人らしい作品だと思います。「まどろむ」=「MAD ROM」というのはちょっと上手いですね。
【ANIME】 第3期ギャラクシーエンジェル 第21話「注文の多い寿司」/ 第22話「棚からボタ餅ファミリーセット」 (→公式)
・ 第21話「注文の多い寿司」 →ストーリー紹介
ペラペラ給料袋もらった夜(現金支給なのか)、腹いせに街へとくり出したエンジェル隊の面々が入った店は頑固タコ親父が経営する「寿司道場」だった、というエピソードで、なにやら「こち亀」でありそうな展開のお話といえる(w ミルフィーユ+ヴァニラの白2人(ミルフィーユはちと疑問あるが……)とフォルテ蘭花ミントの黒トリオで露骨に扱いちがうあたりがありがち。
「あるじゃねえか…… 目の前に……」 あまりの空腹にブチ切れたフォルテはんが店の主人を直接かじって(;´Д`) 哀れ、そのまま活け造りとして「いただきます〜 ご馳走さま〜」されるのかと…… 、(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル ミルフィーユあたりがペロッとね! さすがに第3期ではそんなインモラルな展開は無理なのでした。しかし、このオチはいまいち意味不明だな……


・ 第22話「棚からボタ餅ファミリーセット」 →ストーリー紹介
なんか知らないけど見初められて大金持ちの養女になった蘭花さんがその財力をフルに生かしてどこまでも増長しまくるというお話。ありがちだ。フォルテはんブチ切れ展開がカブってるな…… 神輿担がせたり紋章機黄金にきらめかせたりと発想が異常に貧困なあたりがきわめてこの娘さんらしく心がなごみます(w 「ガンバです! 蘭花さ――ん!!」 こ、こいつは…… とっつかまって何されちゃうのかな? (エロ同人のネタだ……) と、DokiDokiしながら見ていたけれど、日曜朝だからこんな(ありがちな)感じ、 「ゲ・ゲ・ゲ・ロ・ロ・ロ・ゲロゲロゲロゲロ♪」 輪になっていっしょに踊ってるミルフィーユがすんばらし――いオチ。

02/12/19(THU)
【単行本・小説】 東野圭吾「仮面山荘殺人事件」 講談社文庫 [bk1][amazon]
だいたい400枚くらいでトリック主導型のミステリが読みたいな、とふと思って、初期〜中期あたりの東野圭吾作品を2冊読んでみた。この「仮面山荘殺人事件」は1990年の12月に発表された。本当は「十字屋敷のピエロ」も読もうかと思ったのだけど、それには時間が足りなかった。これは今日の気分なので明日読むかどうかはわからない。
互いに動機のある人間たちが閉鎖された空間に集い、結果、誰かが殺されるといういわゆる「吹雪の山荘」ものの変形で、この作品では別荘に避暑にやってきた8人の男女のもとに逃亡中の銀行強盗が押しかけて彼らを拉致するという展開になる。ライフルで脅されながらなんとか巡回中の警官にSOSを伝えようとするも、脱出の試みはとこごとく失敗に終わる。強盗犯以外の誰かが邪魔しているのだ。いったいなぜ? 緊張と不安の中、やがてひとりが死体となって発見される。状況から考えて強盗一味の仕業とは思えない。では誰が? というお話。
語り手の婚約者が3ヶ月前に事故死した事件が本当は殺人なのかもしれない、というかすかな疑いが、逃亡中の銀行強盗の乱入という事件によって膨れ上がり、互いに疑心暗鬼に陥っていくさまが非常にスリリングに描かれていてなかなか楽しく読めた。強盗犯による拉致監禁からの脱出サスペンス+記憶を頼りにした事故死の真相究明を巡る論理的推理という構成で、しかも大胆な伏線を張った大技までが用意されていて、簡潔で鋭い作品だと思う。文庫版あとがきではこの作品と同じトリックを使おうとしていたものの先を越されて途中まで書いてた作品を泣く泣く破棄した折原一の怨み節が聞こえる(w
今の東野圭吾なら少なくともこれの1.5倍くらいの分量使って描写しそうな気もするくらいにシンプルな構成ながら悪くないと思う。ちょっとクイズみたいなお話だけど、後味の悪い幕引きも含めて評価の高い作品で、感動や感服はしないけど、なかなか感心しました。
【単行本・小説】 東野圭吾「ある閉ざされた雪の山荘で」 講談社文庫 [bk1][amazon]
これも同じくらいの分量で同じようなシチュエーションを扱いながら、さらに先鋭化したワンアイデア作品で、1992年の3月にノベルス版として刊行されたものが文庫化されたもの。
タイトルどおり、まさに「吹雪の山荘」ものなのだけれど、劇団のオーディションに合格した7人の男女がある山荘に集められ、殺人劇の通し稽古を行うというところがちょっと普通の展開と違う。その劇には台本のようなものはなく、殺され役として選ばれたらしい人間がひとり、またひとりと姿を消していく。殺人鬼が横行する吹雪の山荘の中に閉じ込められたという設定で残された役者たちは演技を続けなければいけないのだ。しかし、血に染まった凶器が発見され、彼らの間に疑念が生まれる。これは本当に芝居なのだろうか? 誰か本当の殺人犯がいて、自分たちを皆殺しにしようとしているのではないだろうか?
前述したようにある大仕掛けトリックを扱ったワンアイデア作品で、ただここで使われているトリックの発展形ともいえるものを使った作品をいくつか目にしてしまっていたため、それほどのインパクトを受けなかったのは残念だ。実際に可能かといえばちょっとむつかしいような気がしないでもないけれど、この作品でも用いられているように演劇的な要素を絡めたり、ハイテクノロジーを駆使したりと応用が利くシチュエーションは用意しやすいトリックだと感じた。これもまた、折原一、黒田研二あたりが好みそうな傾向の作品ではある。
ただ、ちょっとエンディング直前あたりの展開が心情的に唐突にすぎるような気はした。クールなまま通してもよかったような気もする。
02/12/20(FRI)
「感電? 志賀が死んでんか?」
最近印象に残った漫画。わりにいまさらっぽいけど……
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広江礼威「BLACK LAGOON」 1巻 [bk1][amazon]
恐い女の人が殺して殺して殺して殺すお話。帯で伊藤明弘が大絶賛してるのはまあ頷けて、要は書きたいものが共通なんでしょうね。優柔不断な優男が否応なしにデッドオアアライブな状況に放り込まれてしまうという物語導入部も「ジオブリ」あたりとコンパチだし。ただ、萌え+日活アクションの銭湯戦闘漫画である「ジオブリ」よりは凶悪かな。いきなり主役を喰った戦闘メイドさんには驚きました。人間じゃないよ、この娘さんは……
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月野定規「おませなプティ・アンジュ」 2巻(完結) [bk1][amazon]
けっきょくアンジュはブッ飛びすぎてて読者がついてこれなかったのでしょうか、反応がきわめて真っ当な悪魔っ娘の魔耶とラブラブ♥していました。海の中で…… とか、毛布の下で…… というシチュエーションはエロいですね。白目むいて涎垂れ流しという描写はいつもの感じであります。ラストのオチはけっこう吃驚したんですが、きちんと本物もあったみたいで、よかったよかった。
もうちょっと書こうと思ったのだけれど。うーん、漫画の感想書きにくくなってるな―― 小説のそれとは微妙に使う脳の部位が異なるのだろうか。そういえば志村貴子の新刊買ってない。総じてだめだめ。
【ANIME】 灰羽連盟 第12話「鈴の実 過ぎ越しの祭 融和」 (→公式)
鈴の実なるアイテム使って年越しのその時まで無言でいる「過ぎ越しの祭」なる行事を描く、なんだかアタゴオルシリーズみたいな展開の回でした。無言祭のはずなのに、みんなけっこう喋ってましたが…… ヒョコ、ミドリらとレキのわだかまりも無事解消されたようで、これで心残りなく旅立てる、めでたしめでたし、かも。
スケジュールがタイトなせいもあってか、止め絵と単純なアングル中心の構成でしたが、もともと動きをみる作品でもないのでそんなに問題ないでしょう。「落下」の真の名前は「絡果」かな。

【ANIME】 灰羽連盟 第13話「レキの世界 祈り 終章」(完結) (→公式)
だめだこりゃ! こんなのめでたしめでたしなんかになんね――YO! と思わず思ってしまう、病んだ内面世界を暗い色調に変えて叩きつけたかのようなレキの部屋には驚愕しました。今までの展開はいったい何だったのか。あの列車がオールドホームを破壊して空に飛んでいく、みたいな展開ならばワンダーだったかも、とちょっとだけ思いました。それにしてもいきなりです。
レキが石塊の「礫」の意ではない、というのは大方の想像通りだったのでは、と思うのですが、伏線も収束させてそれなりきちんと終わることができてよかったですね。まさかここまでレキの個人的な物語に全体のバランスが傾くとは思わなかったけれど。
作画そのほかについては第8話「鳥」(→感想)あたりがピークだった気もしますが、かなりキツ目なスケジュールながらこの最終話でも見せ場は作っていたので、スタッフなかなか頑張った! えらい! という感じですね。シリーズ通して安倍吉俊が脚本担当していたこともあってか、非常にプライベートな印象を受ける作品として仕上がっていたのはマルかも。作品世界に合った音楽もたいへん良かったです。



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