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チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)「ファイト・クラブ」
西尾維新「戯言シリーズ」に関する言説クリップ
西尾維新「戯言シリーズ」に関する言説クリップ(その2)
ジョー・R・ランズデール(訳:尾之上浩司)「モンスター・ドライヴイン」
折原一「七つの棺」 
浦賀和宏「地球平面委員会」
恩田陸「象と耳鳴り」
チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)「サバイバー」
novel さくいん

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第3期ギャラクシーエンジェル 第37話「恋文かき揚げ」 / 第38話「銀河薔薇紅茶」
オーバーマン キングゲイナー 第21話「オーバーマンの闇」
魔法遣いに大切なこと 第6話「魔法遣いになりたい」


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03/02/11(TUE)

○【ANIME】 第3期ギャラクシーエンジェル 第37話「恋文かき揚げ」 / 第38話「銀河薔薇紅茶」 (→公式

 なんだかガラクシひさしぶりにみたような錯覚がある。先週の視聴がちょっといい加減で、今週分みるのが遅れたからかなあ……

・ 第37話「恋文かき揚げ」 →ストーリー紹介 キャプチャの質が何気に上がってる……… ボード変えたのかな(w

 ヴァニラさんに恋文が舞い込んで、残りのエンジェル隊メンバーがうはうはするお話。中佐の部屋がにわか少女漫画喫茶化したり、「DokiDoki♥イマジネーションRePure」とかいうギャルゲを蘭花さんが実名プレイしてたりする事実が判明するのがポイント。鹿威し → 亀 → 花火のイメージ映像が意味するものは何か!? という、ヴァニラさんいじりエピソードでありました。
 脚本は玉井☆豪。繰り返しギャグながらテンポ良くてなかなか楽しめましたが、えーと、このオチはちょっと安直ではないかな。

ゴスロリヴァニラさんヴァニラさんの「……」破廉恥発言に頬を染める蘭花さん

・ 第38話「銀河薔薇紅茶」 →ストーリー紹介

 ロストテクノロジー回収の単独任務に無事成功、エンジェル基地へと帰還する蘭花さん紋章機の前にあらわれたのは、女海賊CCデビルの宇宙海賊船だった! というエピソードで、同じく金巻兼一脚本担当回でいうならば、第1期5話「廃校のテリーヌ思い出仕込み海賊風」(→感想)と似た印象のお話。ちゃぶ台ひっくり返しがデフォルトになってるかのような最近のガラクシ見てると意外に思えるかもしれないですが、第1期の序盤って半分くらいこういうのだったような。男好きの強欲娘という不遇な扱い受けてる最近の蘭花さん的にはじつは人情家で世話焼きという点、アピールできてよかったのではないでしょうか? 5〜6話にいちどくらいはこういうエピソードくわえてみたほうがシリーズ通してのバラエティは出るような気がするんだけどな。(と、最近思い直してきました
 これもオチはバレバレなんですが、そのバレバレなところがいいのではないでしょうか。暇つぶしの長電話に無理矢理つきあわされるココモという描写はなかなかよし。

女海賊CCデビル@沢海陽子

03/02/12(WED)

○「そうか! 嘘か!」 「詭弁か?」 「いかんべ……」 「聞かそうか?」 「嘘!」

サイコロを一度しか降れなければ
一の目が出る確率は
その目がでるか出ないかの二分の一である
たくさんの回数を降れてこそ
さいころのそれぞれの出る目は六分の一なのである


 砂色の世界・日記(2/10)における確率論否定についてですが、いろいろ考えてみたものの、「これは!」という回答は示せないような気もします。
 ただ、「でるか出ないかの二分の一である」 という表現自体が否定すべき確率論に支配されたものなので、ここを 「でるか出ないかの二通りである」 と直してしまえば、べつだん矛盾のおきない普通の表現になってしまうような。また、サイコロを振って目が出ない可能性も考慮すべきですね。
(斜めに立つ / 爆発する / 通行人が食べてしまう / じつはサイコロっぽい新種の生物で落下と同時に羽化して飛び立つ etc.etc.)

 また、「サイコロの目が出る」という状態をどう定義するかにもよります。天を向いた面にある目をサイコロの目として認識するべきか、床などに接地している面をサイコロの目として認識するのか、落下後、静止したサイコロから厳密に東西南北の方角から観測して最も大きく見える面をサイコロの目として認識するとか。6通りの認識の仕方をする人間がサイコロを取り囲んで観察すれば、1の目が出る人間が必ず1人いるはずで、1の目が出たと認識した人間の数は観察した人間全体の1/6ですね。これは1回の試行ごとに確実にあらわれますし、確率論の問題でなく、「サイコロの目の定義」と「割り算」の問題となります。

 サイコロを振るという行為にたいし純粋物理学的に厳密に言えば,『全く同じようにサイコロを2度振る事は出来ない』というのは明白な事。

 1度しか振れないと思ってるのは単なる気のせいで、同じ私たちが同条件でサイコロを振ってるのかもしれません。1度しか生きられない私はじつはものすごい数がいて、充分な試行回数に足りているのではないでしょうか。イーガン「宇宙消失」みたい。
 ひょっとして新たなる物理法則が発見されるたびに、それに適応できない宇宙の我々は死滅してるのかもしれないしな―― じつは保証も何もされてないのでは? サバイバルレースの生き残りがたまたまここにいるような気がしてるだけなのかも。

■book【単行本・小説】 チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)「ファイト・クラブ」 ハヤカワ文庫 [bk1][amazon]

チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)「ファイト・クラブ」  生への実感が希薄な男たちが週にいちど集まって手加減なしの殴り合いをして充実した夜をすごし、そして日常へと戻っていく。 「ファイト・クラブ規則第一条:ファイト・クラブについて口にしてはならない。 ファイトクラブ規則第ニ条:ファイトクラブについて口にしてはならない。」 かくて秘密は守られる。発案者である「タイラー」と車会社のリコール調査員をしている「ぼく」だけではじめた秘密喧嘩倶楽部「ファイト・クラブ」はしだいに規模を拡大していき、やがて、タイラーは全世界を相手にした徹底破壊プロジェクトを画策しはじめる……。

 あまりにも錯綜した文章で、何が起こってるのかさだかでない描写も多い。語り手である「ぼく」の中で妄想と現実の境界が失われて、下手したら2行おきくらいにそのどちらかが表面にあらわれては消えて、残りのひとつと交代する、みたいな痙攣にも似た文章がものすごい。もっとも、すごすぎてきちんと理解できてるかといわれると、ほとんど自信がありません。

 たとえば、ナパーム、プラスティック爆弾の製法など、暴力・破壊行為やそれに付随するさまざまな事柄について事細かに説明することで、どこか醒めた印象を作品に与えて、叙述者に内省語りを可能にさせるあたりの見せかたはスプラッタ・ジャンク小説における平山夢明の手法とも共通する部分がありそうな気がします。
 不眠症に悩む「ぼく」がまずはじめたことが、精巣ガン患者互助グループ、住脳寄生虫宿主患者互助グループ、白血病討議グループなどに嘘ついて潜り込んで患者たちとともに大泣きすること、自分以外の誰かの真の苦痛を実感することだったなど、独創的なトピックのあつかいはかなり興味深く感じました。センス良し。まるで強迫観念に縛られたかのように繰り返しあらわれる言葉のリフレインは麻薬的で(それも夾雑ブツ混じりの)ちょっと癖になりそうです。第2作「サバイバー」ももうすぐ届くんじゃないかな。読みます。

03/02/13(THU)

○「NISIOISIN」

 楽だった。

 本当に怖い話 -西尾維新著「戯言シリーズ」について-(好き好きおにいちゃん!) に対する反応クリップ集。

・ 土踏まず日記 02/08第弐齋藤
・ 白黒学派 02/08
・ 戯言返し 02/09バーチャルネット転校生・双海詩音16歳
・ 心に残るあの台詞 02/09まいじゃー推進委員会
・ こどものもうそう 02/12
・ 詩音メモ 02/12 (バーチャルネット転校生・双海詩音16歳) 注:こどものもうそう 02/12 への反論。
・ 「絹れあ」日記 02/12MINE Yuka's Webpage
・ 孤立無援 02/12
・ カンタン系[改訂復刻版] 02/12
・ 遅れてきた青年 02/13
・ 感情生活。2 02/13#20:12
・ 雑談、はじめまして、お知らせその他書き込みロビー その2まいじゃー掲示板ツヴァイ 注:発言394あたりから(発言番号まちがえてたので訂正しました)


 西尾維新作品について総論書くことに何回も失敗している理由はといえば簡単なことで、まだ「サイコロジカル」読んでないから。なんとか誤魔化せないかとあれこれ思案したけれど、それはないかな、とも思ったので、さすがに読んでから書きます。

 「kagamiさん@好き好きおにいちゃん!は、戯言シリーズ嫌いなんだねえ……」くらいの感想しかなくて(あえていうならば、維新同盟に140人参加してるのにはちょっと驚いた)、そもそもどこまで本気で書いてるのかわからない文章なので、返す言葉もとくにありません。
 むしろ、こどものもうそうの米光さんと同じく、「詩音16歳」さんの「戯言返し」そのほかの言説のほうが気になったりします。
 たとえば、「いーちゃんに代表される登場人物や世界の「空虚さ」は、決して肯定・共感すべきものではなく、反面教師として捉えるべきものだと思います」 というくだりや、02/10づけの、「『そもそも殺人は悪である』という基礎的な認識が、『戯言』シリーズやミステリを読むうえでは必要不可欠」 あたり。……うーむ、そういうものなのかなあ。
 「反面教師として捉えるから問題ない」 という意見は 「サイコだらけだから問題あり」 というkagami氏の意見を裏返しているだけで、小説作品に倫理を求めている点においてはまったく変わらないような。 「しかし、もしも両者が読み手の中で混同されてしまうようなら、由々しき問題だと思うのです。殺人に限った話ではなく」 にしても、それは単に読み手側で何とかすべき問題で、そんなこといいだしたらほとんどの小説表現は制限されてしまうのではないでしょうか。それが児童書ならばそれなりの配慮はなされるべきかと思いますが(しかし、絵本の中にも空恐ろしい表現は点在すると思う)、「戯言」シリーズは一般向けレーベルからの発売ですし、そんなこと考えなければいけない理由はないと思われます。これって「言葉狩り」「表現狩り」「作品狩り」に向かう思考の流れで、嫌い/好きの差こそあれ、kagamiさんの意見の根底に流れるものは同質なのでは。

 また、伏線の集合体がたまたま小説の体をなしてるのがミステリなので、「殺人=悪」などという意識はとくにいらないと思います。それはまあ、パズルを解くうえで倫理観が必要か? という問いと同義だと思われます。多くの作品において、殺人や犯罪が作品内で悪として糾弾されるのは、現実世界と地続きにしておいたほうが小説世界に入りやすい / 犯人が糾弾されるほうが展開として面白いから / 探偵が正義の側にいるほうが落ち着きがいいから くらいの理由からではないでしょうか。

 観音遊歌さん@MINE Yuka's Webpageについては、もうちょっと気を落ちつけてから書くべきだと思われます。これでは、反論をしたいのか、個人攻撃したいのかがわかりません。

・ このページにおける西尾維新作品の感想

・ 「クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言使い」
・ 「クビシメロマンチスト 人間失格・零崎人識」
・ 「クビツリハイスクール 戯言使いの弟子」
・ 「明けない夜とさめない夢」(同人誌「タンデムローターの方法論」収録)


 注:翌日の日記に補足・訂正があります。

03/02/14(FRI)

○「NISIOISIN……」

 思い浮かばなかった。

 反応クリップ集に、心に残るあの台詞 02/09まいじゃー推進委員会)、カンタン系[改訂復刻版] 02/12遅れてきた青年 02/13感情生活。2 02/13#20:12 を追加しました。

 転叫院さんの文章読んでるうちに、「自分にしか理解できないような文章を、また書いてしまったのか……」と大後悔。思うところがうまく伝えられなかった。すみません、昨日の文章に補足と訂正をさせてください。

 まず、昨日の文章でもこれは書いておくべきだったのですが、本の読み方は各人それぞれで、どれが正しいものか簡単にいえるわけでもなく、ましてや正しい読み方をしなければならない理由もとくにないことを断った上で文章に補足させていただきますと、
 西尾作品の危険性を憂えているkagami氏の文章に対して、「反面教師として捉えるべきものだから問題ない」 としてしまうのは果たして反論として成立しているものだろうか? というのが、こちらの主張です。
 倫理性の欠如を問題にしているkagami氏の主張は、言ってみればたいへん真っ当かつ実直なものなのですが、それはたとえば、スプラッタ映画を見て、「こんな生命の尊厳が蔑ろにされてる映画なんて!」と憤るのと変わらない、「そんなこと、言われてもなあ……」 という類のものではあるんですよね。それに対して「反面教師」という言葉を持ち出して反論するというのは、作品の中に倫理性が存在しているか否かを問題にしているという点に於いて同等であるし、倫理性という枠組みの下で作品を飼いならしたうえで評価するということなのでは、と感じるのです。

 それって、kagami氏が感じている西尾作品の危険性を倫理フィルターを通してスポイルしたうえで評価した、というだけなのでは? 個人的な読み方として問題がないことはもちろんですが、kagami氏の意見に対する反論としてそれを持ち出すのは、ちょっとどうかな……と感じるのです。

 ということかなあ。kagami氏の主張の是非についてべつに何も問題にしていません。

 これって「言葉狩り」「表現狩り」「作品狩り」に向かう思考の流れで、嫌い/好きの差こそあれ、kagamiさんの意見の根底に流れるものは同質なのでは。

 については、まったく意味不明だと思うので(「戯言シリーズ」が若年層に熱狂的に受け入れられる社会に対する危惧は書かれていたけど、だから回収しろ! という論旨はどこにも存在しない。僕の単なる脳内妄想。すみません)、全面的に撤回します。

 ところで、発言撤回についてはともかく、あっさり全文削除するのはないよなあ…… と「絹れあ」日記読んで思いました。だってこれ、紹介依頼のメール受けて掲載した唯一の非無断リンクですよ。

03/02/15(SAT)

■book【単行本・小説】 ジョー・R・ランズデール(訳:尾之上浩司)「モンスター・ドライヴイン」 創元SF文庫 [bk1][amazon]

ジョー・R・ランズデール(訳:尾之上浩司)「モンスター・ドライヴイン」  血まみれドロドロのスプラッタ・ホラーとも、若くしてダメっぽい少年たちを主人公にした青春小説とも、外宇宙からの侵略SFとも読めるスラップスティックぶっとび小説。ピーター・ジャクソンのデビュー作「バッド・テイスト」Amazon)あたりの大馬鹿スプラッタ映画にみられる、あまりにも阿呆らしすぎて怖いとかそういう問題ではなくなってしまう常軌を逸した狂ったノリがポイントの作品であります。(この作品が書かれたのは1987年で、時期的にもちょうど同じくらい) とても楽しい。

 グループのリーダー格、ウィラードが家具工場をクビになって、町からオサラバするという。
 これといってなんの特徴もない「ぼく」、大の特撮マニアで優秀な頭脳の持ち主ながら黒人ということで差別を受けてるランディ、巨乳のガールフレンドをアメフトチームの巨漢に奪われたばかりのボブの3人は、ウィラードのお別れパーティーとして、ドライブイン・シアター《オービット》で金曜の夜をいっしょにすごすことにした。ビールとスナックをいっぱい買い込んで、血まみれホラー観ながらオールナイトで大騒ぎしよう!
 そんなぼくらの前に赤い怪彗星が襲来して、シアターにいる全員は黒い闇で覆われた異空間の中に閉じ込められてしまった。脱出しようとした人間はみんな身体が溶けてしまった。観客であるはずのぼくらは、今まで観ていたB級スプラッタさながらの凄絶な生き残りサバイバルをするはめになった。はたして、ぼくらは生還できるのだろうか……?

 250ページもないような分量でこれだけトンデモない展開の話をやってしまうところがまずすごい。とにかくスピーディーで信じられないようなことがどんどんおこる。(個人的には第一幕のラストでのけぞりそうになった)
 ひどく興ざめな気がするので、くわしい展開については書きませんが、闇で覆われた空間の照明がわりがスクリーンに映る血まみれホラー映画というのはなかなか面白いアイデアだと思います。つまり、スクリーンの内側と外側(現実)で同じような状況が続いているというわけ。

 また、これだけ気が狂いそうなことが次々とおこる話であるにもかかわらず、語り手である「ぼく」の内省語りに何の変化もみられない点もまたすごくて、徹頭徹尾トーンの変わらない訥訥とした語りによって、まるで爽やかな青春小説のような印象を受けてしまうのです。驚き。(もちろん、それは錯覚なのですが……) あっという間にぐいぐい読める、ジェットコースター・アホ・青春ホラーとしてたいへんオススメです。脳みそをどこかに外してから読むと吉。

■book【単行本・小説】 折原一「七つの棺」 創元推理文庫 [bk1][amazon]

折原一「七つの棺」  熱烈なミステリ好きが災いしてエリートコースから転落、片田舎の警察でくすぶりつづけている不運な探偵役、黒星警部シリーズの短編集で、文庫化にあたり、2作品加えて「五つの棺」→「七つの棺」とした増補改題版。
 密室を題材にした古今東西の有名ミステリを元ネタにしたパロディ連作ともいうべき作品で、山前譲氏による解説によれば文庫化にあたって各作品タイトルにも手が加えられているようであります。
 そういえば、「密室の王者」、「脇本陣殺人事件」と、内側から目貼りされた密室が2作に登場するところに折原一のこだわりを感じます。最近の作品では有栖川有栖「マレー鉄道の謎」など、他の作品でも目にすることが多い種類の密室ですが、個人的にはいまいちリアリティを感じません。というか、部屋に目貼りなんかしたことがないんですよね……

 ま、いいや。収録作の中では「脇本陣殺人事件」が密室トリック、意外な真相、そしていわずもがな、横溝正史「本陣殺人事件」に対するパスティーシュのクオリティなどの理由からいちばん優れているような気がしました。作者の看板となっている叙述トリック物とはまたちがった味わいでなかなか面白いです。そして、くだらないです。(注:誉めてます)

■book【単行本・小説】 浦賀和宏「地球平面委員会」 幻冬舎文庫 [bk1][amazon]

浦賀和宏「地球平面委員会」  木尾士目「げんしけん」みたいな話なのかと思ったら、けっこうちがった。

 大学に入学したばかりのぼくの前に降りそそいだのはピンクのビラ。そこには、「新委員募集中。あなたも信じてみませんか――。地球が平面であることを」 と書かれていた。屋上からビラを撒いていた女の子に惹かれたぼくは、ビラにあった委員会部室に足を運んだ。どうにもヤバそうな委員会メンバーの様子に、ぼくは入会を躊躇するが、委員長であることが判明した件の女の子、宮里真希は執拗にぼくの勧誘を続ける。いったい、なぜ? そして、そんなぼくの周辺で奇怪な事件が起きはじめる。倉庫への放火、学長室金庫からの盗難…… いったい何が起こっているのだろうか?

 いわゆる異常動機ものに分類されそうな作品で、ぬけぬけとした伏線の隠し方がポイントなのかも。ラストページ、最後の1行の〆はなかなかきれいだと思います。ただ、あのミッシング・リンクみたいなものはかなり無理矢理だと思われました。これはさすがに思いつかなかった。一発ネタとしてさらっと読めてそれなりに楽しい種類の作品ですね。

03/02/17(MON)

■book【単行本・小説】 恩田陸「象と耳鳴り」 祥伝社文庫 [bk1][amazon]

恩田陸「象と耳鳴り」  退職判事である関根多佳雄を中心に関根ファミリーが探偵役を務める連作短編シリーズ。この人は誰かな、と思っていたら、「六番目の小夜子」に登場した関根秋の父親だった。そうえば、そうだった。
「曜変天目の夜」、「新・D坂の殺人事件」、「給水塔」、「象と耳鳴り」、「海にゐるのは人魚ではない」、「ニューメキシコの月」、「誰かに聞いた話」、「廃園」、「待合室の冒険」、「机上の論理」、「往復書簡」、「魔術師」の12短編を収録。

 西澤保彦氏による解説にて引用されている、 「SFの魅力は、しばしば<センス・オブ・ワンダー>という言葉に還元される。本格ミステリにはそれに対応するキャッチフレーズはないし、空想の翼を広げて飛翔するSFとは反対に、世界を一点に収斂させるために縮もうとする。」(「迷宮逍遥」より) という有栖川有栖の言は本当に正しく、もう少し付け足すならば、合理的な説明がつかなそうだったり、単に無関係なものだと思われてきたいくつもの謎・事柄が一点に収斂していき、そして解明された瞬間にそれらは弾けて、今まで目にしていた光景がぱたぱたと翻り、まったく別のヴィジョンに変化してしまうカタルシスこそが本格ミステリを読む醍醐味ではないかと感じます。散りばめられた伏線がさまざまな軌跡を描きながら、漏斗状の物体の中を転がって、やがて飛び出してくるイメージなのかな。
 でも、恩田陸のミステリ作品はこのイメージじゃないんですよね。1点から1点への極端なショートカットというイメージ。
 幼い頃出かけた旅行先のイギリスにて巨大な象に踏み殺された男を目撃した、それ以来象をみると耳鳴りがする、という老女の言葉に端を発する表題作「象と耳鳴り」にしても、いかにも魅力的な謎が提示されて、でもそれは収斂することなく、いきなり別の形へと変貌を遂げてしまう。「あ、いわれてみればそういう考えかたもあるね」くらいで唐突に話が終わってしまう。後日談もなにもないので、その解が正しいものなのかは読者にはわからない。作品の中に隙間があって、なんとなく骨格標本みたいな印象を受けます。その隙間のぶん、風通しはいいし、読者側にもイマジネーションを働かせる余地が生まれるのでしょう。

 どれがベスト、というよりは、どの味わいが好み? という感じだと思うのですが、恩田陸らしいという点において、「曜変天目の夜」、「象と耳鳴り」、「誰かに聞いた話」、「廃園」あたりを選びます。

03/02/18(TUE)

○【ANIME】 オーバーマン キングゲイナー 第21話「オーバーマンの闇」 (→公式

 第13話「ブリュンヒルデの涙」(→感想)に続く下井草伊井乃弼、作画監督担当回。漢字ばかりであります。Aパートだけだった前回とくらべて今回はABパート通してと、スケジュール的になかなか厳しいのかなあと思ったりしました。これはまあ、富野由悠季御大の作監ネームで、投入できる人材資源の関係から、厳しい出来が予想される回は自分で泥かぶるつもりなんでしょうね。DVD化の暁には修正加わるといいな。吹雪の中、シンシアが落涙するカットの涙の軌跡にはちょっとギョッとしました。

 さて、キッズ・ムント総裁自ら乗り込んできた今回のエピソード、前回、友達だと思ってたゲイナーを図らずも(というか、認識不足のため)怪我させてしまったことで心に深い傷を負ったシンシア・レーンと、彼女を助けるためにシベリア鉄道に乗り込むゲイナーとサラ、この3人を軸にして物語は進行しますが、やはり今回のポイントはアスハムお兄様かな。いくら、シルエット・マシンが使用不能になることがあらかじめ予想できたとして、あんなハジケた登場の仕方しなくても…… これだけ緊迫した場面に、あんなギャグすれすれの展開さらっと入れてしまうところにこの作品の懐の深さ感じます。あんなの、やすやすと操れるものなのでしょうか??? あと、キッズ・ムント総裁目にするたびに、オースティン・パワーズのドクター・イーブル連想して笑ってしまいます。カマっぽいところも似てるし。

 これからラストに向けて、オーバーマンとはいったい何か? という根源的な謎に向かっていくのかもしれませんね。修理のとき、血まで流してたしなあ。予告見たら、アスハムさん、ひょっとすると来週にて退場? とか思えてきて、ちょっとドキドキ。

シンシアさんのママンらしい。量産型ドミネーター、ブラックドミ×2。

○【ANIME】 魔法遣いに大切なこと 第6話「魔法遣いになりたい」 (→公式

 なんとなくほっておいたら感想書くまでにえらく時間がたってしまった。さっさと片付けちゃえばよかった。
 なんかもう、すべてが唐突きわまるのでコメントしてたらきりがなさそうであります。うーむ…… ユメたんの指輪+テレビのニュースに同時に注目させるための展開、「立ち上がったユメがTVリモコンすべらせてボリュームアップ、指輪が転がる」 というのもいかにも無理矢理だし、とってつけたような先週の施設育ちカミングアウトは今回のための伏線だったらしいですが、いくらなんでも、いきなりだろうよ…… テレビのニュースで施設名発表される前にもう驚愕してるやん! >ケラ。 ところで、ミリンダさんはスーパーをクビになりそうであります。
 ケラさんが子供思いのいいやつだ、ということだけは伺えるエピソードですが、小山田事務所に勤めて2年余りになろうというのに、魔法使いが如何なる存在か、という点がまったく理解されてないというのはよくわからんな…… 指輪で魔法が使えるなら、指輪巡って殺し合いでも発展してそうであります。そりゃ、まあ、生まれつきだろうよ。親が欲しいというのと、魔法遣いが必要、というのは≠な気がするしなあ。
 と、思ったら、さらに驚愕の展開が! 公式ページでもこんなことになってますよ。やけにあっさりジョブチェンジ――!! そのように「生まれる」ものじゃなかったの!?
 ところで、死にかけてる少年を園長と見舞い客ふたりにまかせてほったらかしってのもえらく酷い病院であります。「魔法遣いに大切なこと」ワールドの医療制度は闇ですね。少年にどんな処置してるのかもさっぱりわからない。心電図+点滴だけ? 病院専属の魔法士だって、結局、姿すら見せなかった。ツッコミ入れながら観るなら、こんなに素晴らしい作品もないですね。ミリンダさんの胸の谷間はよかった。

03/02/20(THU)

■book【単行本・小説】 チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)「サバイバー」 早川書房 [bk1][amazon]

チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)「サバイバー」  ボーイング747-400のコクピットにたったひとり僕は座っている。僕がハイジャックした2039便の中に僕以外の誰もいない。パイロットもパラシュート降下したこの機はオートパイロットで西に向かって飛んでいる。そして僕は、僕の物語をボイスレコーダーに向かって語りかける。それはすべてが間違った方向に転がった物語だ。この物語をきみが聞くとき、僕はもう死んでいるだろう。僕に残されたのはあと数時間、さあ、身の上話をはじめるとしよう。アクション。

 これはすさまじく刺激的な作品です。カルト教団の中で生まれ育ち、本部の崩壊ののち、信者たちの集団自殺からも取り残された最後の生き残りが、ハイジャックした機体の中で最後に語る数奇な半生の物語。ということで、この本の章立て、ノンブルに関しても、第47章、347ページからはじまって、ゼロに向かってカウントダウンされていくという変則的な構成になっています。

 えらくとんでもないことばかりが起きる物語でありながら、モチーフの選択については前作「ファイト・クラブ」(→感想)とかなりの部分が共通しているように感じて、それはたとえば「ファイト・クラブ」において、過激さをどんどんエスカレーションさせていき、しだいにコントロールできなくなっていく喧嘩倶楽部を傍から傍観していることしかできなかった「ファイト・クラブ」の「ぼく」と同じく、自分からは何ひとつ決定しようとはしない、圧倒的に無為な男を主人公に選んでいるのもそのひとつ。また、ほとんど擬似恋愛といってもいい、奇妙な恋愛のかたちが描かれる点についても共通していると思います。

 これ以上ないくらいに過激な展開が待ち受けているにもかかわらず、肝心の主人公は本当に何もしません。信者の自殺に見せかけた連続殺人鬼の跳梁といった主人公の命を脅かす危険な要素が存在するにもかかわらず、主人公は黒カビの生えたタイル磨きや庭の芝刈りなどを続け、連続殺人鬼の話題は物語からあっという間に追い出されてしまいます。
 カルト教団の中で生まれ育ち、自己決定能力をあらかじめ奪われている男のひとり語りという設定によって、このような展開になるのでしょうが、まるで達観したかのような、感情を消失した(しかし饒舌でリフレインを多用する)語りの向こう側に透けて見える圧倒的な無為の存在がたいへん奇妙で興味深いです。

 最近の作家の、こういうトーンの「ダメ人間」小説の場合、ドラッグ、もしくは妄想を使って幻想味を附加するケースが多いように感じるのですが、この人の作品はちょっとちがう。どちらかといえば、「ひきこもり」小説のメンタリティに近い部分があるのでは、と考えます。上位存在の言いなりになり続けたひとりの男の物語。ヒロイン(?)として登場するファーティリティの設定は非常におもしろいですね。前作より格段に読みやすくなってるし、たいへんにオススメであります。

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