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氷川透「密室ロジック」
成恵の世界 第1話「ボクの彼女は宇宙人」
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03/04/12(SAT)
【単行本・小説】 氷川透「密室ロジック」 講談社ノベルス [bk1][amazon]
タイトルからもわかるように、講談社ノベルス20周年記念企画である密室本の中の1冊として書かれた作品のはずが、脱稿したのが今年の1月、つまり20周年は過ぎてしまった(→氷川透本人サイト雑文参照)という非常にわかりやすい理由により普通のノベルスとして発売された。
パソコンメーカーとソフトハウスの合同コンパが開かれることになった。集合場所であるソフトハウス、株式会社ジョイットに集まった飲み会参加メンバーの間にはどろどろとした男女関係があって、そしてその中のひとりが殺された。殺害場所である第2会議室の左右の廊下には複数の人間がいて、非常階段へ抜ける廊下には監視カメラの目が光っていた。自殺はありえない。この状況の中、犯人はどこに消えたのか!?
うーん、困ったものだなあ。「真っ暗な夜明け」に登場するキャラの後日談ともいえる内容で、もちろん推理作家志望の氷川透も登場します。現場に居合わせなかった氷川はいわゆる安楽椅子探偵としての役割を担って事件の真相を暴くことになるわけですが……
個人的にいいたいことはすでに滅・こぉるさんに書かれてしまっている気がしますが、いくらロジック主体のミステリ作品とはいえ、文章としてちょっと厳しいものがあります。この作品、家ではなくてファミレスで読み終えた作品なのですが、あまりにもあんまりなのでページをたぐりながらソファから転がり落ちそうになることも(誇張でなく)しばしばありました。存在理由が感じられない冗長な表現で文章のほとんどが占められていて、文意をとることにすらときおり苦労した気がします。冴子が詩緒里を、詩緒里が冴子を、互いにどう思ってるのかが時々わからなくなるんですよね。
そのほかの登場人物にしても、気がある、気がないとか、セクハラだとか、どうだとか、そういう行動原理によってのみ動いている人間ばかりですごく平たい印象を受けます。論理パズルのピースとして用いられることが前提ではあっても、もうちょっとなんとかならないものでしょうか? もちろん、わざとこう設定したかもしれないわけですが、動機としての意外性にははじめから欠けてしまうような気がしてしまうのです。 「何しろ大学生によるサークルなんて、正直に言ってしまえば野獣の集まりにほかならない。誰もが舌なめずりしながら、異性とのハッピーを待ちわびている―――そう考えるべき場所だ。」(p.16) とか断言されてぎにゃーとか思ったというのもありました。なるほど、「そう考えなきゃいけない」場所なのか――
そういえば、「なぜそんなこと知ってるの?」的 だの、《体力には自信がある》系だの、そういう表現も自分基準では微妙で、しかも頻発でした。32ページなど、1ページの中に「○△的」という表現が4回もでてきて驚愕。思わず数えてしまいました。
肝心のロジック部分についても及第点マイナスくらいかな…… 三人称多視点による記述によって登場人物たちの内面が描写されるあたりなど、作品構造としては、ジル・マゴーン(訳:高橋なお子)「踊り子の死」(→感想)と似通ってる部分あると思うのですが、比較するとジル・マゴーンの巧さが際立ってしまう気が。前述の多視点描写については「踊り子の死」ですら、ちょっとアンフェアかな、と感じたくらいなんで、この作品についてはより引っかかる部分がありました。
論理主体のミステリを書こうという心意気はかいますが、小説としてのクオリティはもうちょっと上げないと苦しいのでは、と感じます。作者である氷川透のみならず、講談社の編集者だの校正担当の人にもそれは言いたい。
【ANIME】 成恵の世界 第1話「ボクの彼女は宇宙人」 (→公式)
うーむ、なかなかいい出来。これも原作読んでます。となりのクラスの女の子が金属バット振り回して、その正体は……!?というお話で(バレバレだけど)、ここだけ聞くと電波ノリの設定ながら、実際にはきわめてほのぼのした仕上がりになってるところがポイントかな。安アパートと銀河系連盟、ミクロとマクロの対比がセンス・オブ・ワンダーでしょうか。(よくわかりません) ローアングルからのヘソ出し、脳天フルスイング(流血つき)パンテーラなど、見せかたもヘンテコで面白いです。じつは主人公以外全員アブない人ではげしく自作自演という展開にも見えるところがちょっといいです。しかし、物事に動じない少年だ(w 原作読んでるけど、変わった味の再確認できてよかったから、こっちは毎週チェックしようかな。OPは新海誠担当の「Wind」プロモとアニメ「最終兵器彼女」横目で見ながらコンテ切ったという雰囲気の仕上がりですけど、まあ、ええんではないでしょうか。わはは。狂ったセンスの青春萌えアニメ。
03/04/13(SUN)
【単行本・小説】 北野勇作「北野勇作どうぶつ図鑑 その1 かめ」 ハヤカワ文庫 [bk1][amazon]
今月は「かめ」と「とんぼ」。来月は「かえる」、「ねこ」、その次の月は「ざりがに」、「いもり」で完結。3ヶ月連続、全6巻発売される北野勇作の最新シリーズ、その名も「どうぶつ図鑑」であります。
うーん、ハヤカワ文庫とは思えないポップなデザイン。イラスト担当の西島大介とデザイン担当の大塚ギチの手柄ですね。なんとなく、チョコエッグ「日本の動物コレクション」っぽい雰囲気で、モノとしていいもの感があふれております。コンビニでレジの横とかに置かれたらついつい買ってしまいそう。チョコエッグにおけるフィギュアのかわりにテーマになってる動物の特製おりがみが付録としてついてくるあたりもにくい感じ。企画の勝利でしょう。
忘れてた。ところで、小説本でした。「かめ」テーマの短編、「カメ天国の話」、「【カメリ第一話】 カメリ、リボンをもらう」、「かめさん」に加え、ショートショート連作、「おさる電車」、「蛍雪」、「蟻の行列」、「桜に亀」が「生き物カレンダー(一月〜四月)」としてまとめられて、計7篇が収録。100ページ強の本当に薄い短編集ですが、ちょっと足りない感じも武器になってるあたりが戦略的にたいへんうまいですね。
書き下ろし作品「【カメリ第一話】 カメリ、リボンをもらう」の主人公カメリが可愛らしくてとてもいいです。第2話はあるのかな? 掌編ながらとても美しいイメージの「蛍雪」も好み。
【単行本・小説】 北野勇作「北野勇作どうぶつ図鑑 その2 とんぼ」 ハヤカワ文庫 [bk1][amazon]
「かめ」と同時発売のこちらは「とんぼ」。(完全にかどうかはわからないけれど)世界設定が「かめくん」と共通していそうな短編を中心にまとめられたのが「その1 かめ」だとすれば、こちらは「クラゲの海に浮かぶ舟」、「ザリガニマン」と共通した雰囲気の短編が収録された1冊でしょうか。主人公が研究者とか、工場労働者とか、そんな感じであります。「新しいキカイ」、「トンボの眼鏡」、「西瓜の国の戦争」の3短編を収録。
小説としてはこちらのほうが好みでした。職場にいきなりやってきた「新しいキカイ」の話、「新しいキカイ」(すごい説明だ)、各地で頻発する自動機械の暴走がトンボ取りに変換されるキテレツSF、「トンボの眼鏡」、北野センスとしか形容しようがない戦争話、「西瓜の国の戦争」、どの作品も秀逸な出来であります。すばらしい。
切りとるのが勿体無いので、スキャン → インクジェットプリンタで出力、で折り紙のコピー作ってみたのですが、こちらの「とんぼ」についてはプリンタ用紙やコピー紙の厚さでは折ることはほぼ不可能でした。「かめ」については問題ありません。できるだけ薄い紙にプリントしないとダメみたいであります。おりがみの作図担当はSFと折り紙の人として名高い志村弘之。まさに適任。
03/04/14(MON)
【単行本・小説】 フィリップ・K・ディック(訳:浅倉久志)「ユービック」 ハヤカワ文庫 [bk1][amazon]
スクリーンプレイにあらず。さすがにこちらが優先だろうということで読みました。有名作でも未読のものは多い。びっくりするほどに面白くて、なるほど、傑作と呼ばれるにふさわしいな……と思いつつも、じつは読みかたがわからなくて読了までに時間かかった作品でした。
時は1992年(!)、超能力者を扱うホリス異能プロダクションとその能力を中和する不活性者を取り扱うランシター合作社は長年のライバル関係にあった。そして強力な能力者たちは不活性者の追跡を振り切って次々と姿を消していく。その動向にただならぬものを感じていたランシターのもとに依頼が舞い込む。どうやら消息を絶った能力者たちは月面に集結しているらしい。不活性者たち11人と能力者テスト技師であるジョー・チップ、そして自ら、最高のチームを結成して月面に乗り込んだランシターであったが……
うーむ、内容を簡潔に書くのがたいへんむつかしい作品であります。表4にあるあらすじは正直書きすぎていて、驚くべきことに本文の残り10ページくらいのところにある展開まで書いてしまっているので読まないほうが無難かもしれません。(と、書いても無駄かなあ。ここはまず読むところだと思う)
いわゆる「バーチャル・リアリティ」小説の先駆けともいえる作品なのですが、現代の人間が同じテーマで書いたとしてもたぶんこうはならないだろう、という想像力のオーヴァードライブがとても愉快です。世界を支配するルールが見えなくて、突拍子もないことがつぎつぎ起こるあたりは荒木飛呂彦が描く、能力が理解しがたくなったころのスタンド攻撃に近いかも。とにかくとんでもないです。物語中盤以降、ジョーらと不活性者が体験することになる悪夢世界の仕掛けや畳み掛けるようにエスカレーションしていくそれ以降の展開はすばらしい。異形の真相がばりばりと姿をあらわにするところなんか、かなり興奮しました。道具立てがちょっと安っぽくて、よく考えてみると世界単位の陰謀とかそういう話でもない、けっこう俗なレベルで落ちついてしまっているあたりも面白いですね。そこから現実を揺るがすというか。
ところで、「読みかたがよくわからない」というのは、集められた不活性者チームのひとりひとりを憶えなくちゃいけないのかなあ、と思いながら読んでいたから。すでに現実が揺らいでいることもあってとても苦労しましたが、はっきりいっていらない手間でした。悪夢世界描写がキモの作品で、登場人物についてはほとんどどうでもいいのね。
【単行本・小説】 連城三紀彦「どこまでも殺されて」 双葉社 [bk1][amazon]
なるほど。この人らしいトリッキーな作品でした。
現在までに7回殺されつづけているという「僕」による手記が冒頭に提示されて、その後物語は高校を舞台にした学園ミステリへと移行するわけですが、妄想としか思えない手記の内容に対する合理的な解決がなされるあたりの技巧はやはり連城三紀彦の手腕という感じでしょうか。うまいです。
ただ、比較的短めの長編であるからか、物語にさほど起伏がないまま進行してしまうあたりに物足りなさを感じる人はいるかも。探偵役となる女子高生がどんどん勝手に真相追求していって、ワトソン役の担任教師がその暴走をあわあわしながら見守るという印象のお話で、たとえば西澤保彦あたりが書いたとしたらほとんどいらないどろどろとしたエピソードとどんでん返し盛り込んで書くんだろうな……と思いながら読んでいました。根幹をなす1発ネタトリック以外はあっさり風味に仕上がってますね。
じつはトリック含めた作品の構成にいくつもの前例がある作品ですが、それら先行作品とくらべても真相の提示に枚数を割きすぎてるがゆえか、衝撃のレベルも若干落ちてしまっているような気もします。意欲作ですが、この人の作品としては普通な出来かな。
次は、「夜よ鼠たちのために」か、「私という名の変奏曲」を読もう。
【ANIME】 妄想科学シリーズ ワンダバスタイル 第2話「H2CO3にカンパイ!」 (→公式)
売れ残りアイドルグループがショタっ子マッドサイエンティストに身売りされてひどくぞんざいなあつかいうけながら月面めざすお話の第2話。
あ――、けっこうきれいにオチているような気が。瞬間で結末が予想される展開ではあるのですが、アイドル+宇宙のネタとしてはわりかし膝ポンものでした。なるほど、そうからめてくるか……
けっきょく、どこまでわかって書いてるのか不明な脚本が視聴者を混乱させているのかなあ。化石燃料使ったロケットは地球に優しくないといいながら炭酸のペットボトルロケットで飛んでいくというのはさすがにギャグでやってると思うけどな…… コクピットにおけるキク8号と春野さくら(ロリ童謡歌手)のかけあいはなかなか面白かった。妖精がみえる不思議フォーク少女は微妙だけど…… 裸で大気圏突入とか、ぜったいエロネタかましてきそうなあたりもある意味安定作かも。細かいことは気にすんな、気にすんな、HAHAHA!
ところで、キクちゃんがいきなり帰ってきたのには驚いた。けっきょく1週間待ったのか。「みっくすJUICE」の存在理由いきなり消滅ですな……(注:細かいこと)

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