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03/05/24(SAT)
【単行本・小説】 牧野修「呪禁局特別捜査官 ルーキー」 祥伝社ノン・ノベル [bk1][amazon]
牧野作品に文句つけはじめたらきりがないのですが、しかしオモロい。
破格のプロジェクトである世界初の霊的発電所が建設された実験都市・微笑町の周辺で呪的災害が続発する。前作から時は流れ、少年から青年へと成長した歯車創作(ギア)は新人呪禁官として災害の鎮圧に当たっていた。災害現場でギアはサイコムウと名乗る異形の人物人間に出会う。サイコムウはギアの師、竜頭の仇でもあった。テロを繰り返すサイコムウの最終目標は発電所の破壊だった。そうなれば地獄の扉が開いて世界は壊滅してしまうだろう。世界の命運をかけたギアの戦いがふたたびはじまった。
文句言いはじめたら本当にきりがない。ことストーリーについていえば、野放図にアイデアつめこみすぎて、結果ぜんぜんわけわかんなくなるか、どこかから借りてきたものそのまま使ってみるかの2択だし、複数の登場人物たち動かしてサスペンス盛り上げるのはぜんぜんできないし、物語の中でがんばるのは少年か爺で、たまに中年男が出てきたかと思えば、不条理なまでに理不尽な目にあってすぐ死ぬし(もしくは死んだほうがマシなくらい酷い目にあう)、女性キャラはマッチョかゴスロリか狂ったオタク女しか出てこない。こんなのばっかしだ! でもオモロい、オモロい、オモロ――い!! 魔術的文体の力とはここまですごいものなのか、というのを実感できます。これなんかけっこう普通の話なのに、この人が書くとどこかがちがう。
しかし、今回のはひどいです。出来が悪いとか、そういうんじゃなくて、ひどい。だって、前作「呪禁官」(→感想)とくらべても、ストーリー展開ほとんど変わらないし、そのわりにはレギュラー陣あんまし活躍しないし(なぜあんなのに油揚げさらわれるんだ?)、登場する女キャラはあいかわらずの牧野作品キャラだし(竜頭タン……)、ハリポタ+ソーカル事件だった前話とくらべるとパロディのきれはイマイチだし、文句言えばきりないけど、やっぱり面白い。なぜだ……!? この忙しいのに一気に読んでしまいました。とほほ。古橋秀之「ブラックロッド」(→感想)+戦隊ものみたくなってますね。それにしても、「ギアはいったい何者なのか?」という設定はきれいに忘れ去られてしまったのでしょうか? 不思議不思議。
めちゃめちゃ面白いんだけれど読み終えたあとでストーリーの説明ができない(ストーリーまでもめちゃめちゃだから)という点において牧野作品とルーディー・ラッカー作品は似てるような。過剰に詰めこまれた奇想がカオスを生じさせてわやくちゃになる「傀儡后」(→感想)と「……ウェア」シリーズ(「ソフトウェア」は比較的わかりやすいけど)、借り物の物語をアレンジして仕立てる「だからドロシー帰っておいで」(→感想)と、「3つの願い」をSF的奇想でそのままやってる「時空の支配者」、未読だけどそうらしい「空を飛んだ少年」など。まあ、だからどうだ、という話なんですが。
【ANIME】 宇宙のステルヴィア 第1話「ようこそ」 (→公式)
→ 第1話あらすじ
ほとんど前知識ないままに書きまする。シリーズ構成+監督:佐藤竜雄 キャラデザ:うのまこと、のXEBEC作品。
西暦2167年、強烈な光と電磁波が太陽系を襲った。地球から約20光年離れた恒星が超新星爆発を起こしたのである。強烈な放射能と電磁波は地球環境に甚大な被害をもたらしたが、それはさらなる災厄の前ぶれでしかなかった。約200年後にはプラズマ化した恒星の破片が地球に降りそそぐのだ。残された時間はあと189年。人類は自らの生存圏を守るために巨大宇宙基地「ファウンデーション」を建造、惑星を覆うバリアによって衝撃波から太陽系を守ろうと計画した。そして、若者たちは宇宙をめざす。
ほほお、これがしーぽんですか。少年少女たち、宇宙に飛び出す! といったエピソードで、おたがい素直になれないままに終わる母親との別離、新しい友人との出会い、上級生による歓迎の儀、そんな感じ。
そういえば、最近アニメに宇宙ものが多いのは単純にコストの問題ですかね。3DCGパートと2Dパート分離することによって労力と予算の削減が実現されて、宇宙を舞台にすればしかもモデリングするの機体だけですむ。柔らかいものはないし、ライティングも気にしないですむし…… いいことづくめかも。
肝心の物語についてですが、ホントに導入部なので書くことがほとんどありません。それにしても、服まで同じなのになぜ気づかないのか!(というか、こういう場合私服着てるからわからなかった、とか工夫するものでは?) しーぽんの服装センスがどうにも野暮ったいのはきっとわざとなんでしょうね。こういう人はいます。

【ANIME】 宇宙のステルヴィア 第2話「とまどい」 (→公式)
→ 第2話あらすじ
OPはまだ完成してないのかな? 「明日へのBrilliant road」、気に入ってるというわけじゃないんだけど、やけに耳に残るな―― 狂騒的なリフに追い立てられる感じ。
あ、前回書き忘れてたけど、ステルヴィアという宇宙学園を舞台にした少年少女の成長物語のようであります。しかし、グレートミッションの名のもとにこの子たちは遊ばれてる気もしますね。柔道や吹奏楽はともかく、刀鍛冶っていったい何? 育成もの学園SLGのムービーみてる気分。そして実習。身体ぴっちりのスーツがばいんばいんしてるのはお約束でした。松岡由紀は宇宙に来ても大阪弁少女っぽいですね。わらわらと飛び交う新入生操縦のビアンカは風物詩みたいなものなのだそうであります。あ、これが「しーぽん」の由来なのか! のほほん飄々とした雰囲気はなかなかよろしいけれど、しーぽんの声はちょっと微妙になってまいりました。下手とかじゃなくて、なんか、こう……

【ANIME】 宇宙のステルヴィア 第3話「ごめんなさい」 (→公式)
→ 第3話あらすじ
しーぽんは新しいパーティを組んだ! しーぽんはえらいことをしでかした! しーぽんは証拠隠滅をはかった!
ということで、ステルヴィアのコロニー内をあちこちたらい回しさせられるしーぽんご一行なのでした…… 世界説明と新キャラ顔合わせを兼ねたエピソードみたいですね。感触としてはRPG序盤に出てくるおつかいシナリオでしょうか。脚本担当は堺三保。
マシンルームへの道すじがありえなくて(あれだけのハッキングスキルあるならなんかべつの方法がありそうなものであります)、これまでのストーリー展開としては好悪別れるかもしれませんね。個人的にはもうちょっとドラマチックな展開用意するか、強引さをなくして本当にのほほんエピソードで終わらせるか、の2択のほうがいいかな。緊迫感盛り上げるにしても(失敗してるけど)ちょっとムリヤリすぎる気がするんですよね。服装設定もなかなかうまくて、年頃の女の子の普段着がよく表現できてると思いました。すごいありそう。美術的デザインふくめた人物設定はうまいんですよね。ただ、そこにドラマがないだけで。しーぽんは森博嗣S&Mシリーズの萌絵チックな娘さんなのかな。頭はいいんだけど、感性がズレてて無神経なところとかが似ています。ところで、ときどきみんな首が太いのはなぜなんでしょう?
【ANIME】 エアマスター 第8話「轟け! 中ノ谷美奈」 (→公式)
水着大会なのにまるでうれしくないのはあいかわらず。サンパギータ・カイをいかに出すかという苦心惨憺が忍ばれるエピソードで、原作読んでない人には何がなにやらだった可能性あり。説明不足でけっこうスベってるあたりは第1話のルチャマスター戦と同じかも。とほほほ。なぜにカイはリングコスチューム持参で海水浴来てるんでしょうね? シズナの登場についてもいきなしで原作のどこらへんを端折りたいのか推測できたりします。女子プロ編がなくなったかわりにカイがこのまま深道ランキング合流、という感じなんでしょう。しかし、マキは萌えないな―― お脳がバカだし、本当にしょうがない娘さんですね…… 次週から黒正義連合編に突入。放送コードに引っかかりそうだった長戸も出るらしい。わらわら雑魚のモブ処理をどうするのかがポイントでしょうか。
03/05/26(MON)
【単行本・小説】 ローレンス・ブロック(訳:田口俊樹)「泥棒は哲学で解決する」 ハヤカワ・ミステリ文庫 [bk1][amazon]
泥棒探偵バーニイシリーズ第4作。アトランダムに読んでます。
資産家コルキャノンの邸宅にバーニイは忍び込んだ。夫妻と番犬が家を空けるという耳寄り情報を彼に持ち込んだキャロリンもいっしょだ。楽な仕事、と思いきや、コルキャノン邸にはすでに先客の泥棒が! 乱暴に荒らされた屋敷の中で値段がつけられないような超希少コインを発見したバーニイの首尾は上々…… と思いきや、とんでもない事態が持ち上がる。翌朝、コルキャノンの奥さんが撲殺死体で見つかって、その容疑がバーニイにふりかかったのだ! どうやら第3の泥棒のしわざらしい。やがて第2の殺人までおこり、自らの潔白を証明すべくバーニイは犯人探しに乗り出した。
世界に5枚しかないはずの希少コインを巡る殺人事件にバーニイがまきこまれるというお話で、泥棒であるはずのバーニイが容疑者を一手に集めて名探偵まがいの謎解きをするというちゃめっけある趣向はあいかわらずおもしろい。
ただ楽しいだけのシリーズなので、ほとんど書くことがありません。プロ中のプロ、バーニイに対して対等の要求をする(分け前よりも扱いについてだけど)犬の美容師キャロリンはちょっとウザい気もしますが、レズビアンであるキャロリンとバーニイの奇妙な友情をふくめ、そこらへんの公平感が作品に独特の軽味を与えているのかもしれません。ライトノベルとはまたちがった感じの娯楽小説ですね。「金で何とかなる最良の警官」レイとバーニイの関係なんかにもオトナの余裕みたいなものがうかがえます。この人の作品読むときはいつもですが、ニューヨークの地理にくわしければもっと楽しいんだろうなあ…… というのは、ちょっと残念。
【ANIME】 宇宙のステルヴィア 第4話「がんばります」 (→公式)
→ 第4話あらすじ
OPはまだか! 味も素っ気もない。
しーぽん、ダメぽん。プログラム書き換えで無理矢理ビアンカを制御させようとして失敗。レイラ先生操縦するビアンカに激突した罰として通信用レンズ磨きを命じられる。まあ、廊下のモップがけみたいなものですね。あげく、ビッグ・フォーのひとりである超優等生町田初佳に 「ツイてないんじゃなくて、実力不足なんでしょ」 などとキツいこと言われてどこまでも落ち込んでいく。
眼鏡っ娘やよいたんの意外な過去があきらかになったり、アリサたんの底抜けの明るさ、レイラ先生のきびしいけれどいい人っぷりが強調されてたりしてソツのない脚本だと思いました。能力の圧倒的なアンバランスさを抱えながらあくまで宇宙を目指す(プログラム専業でいけば天才クラスなんだろうと思うけれど)しーぽんの動機付けを明らかにしていないのはわざとなんでしょうか? ちょっと不思議なキャラになってますね。無邪気に戯れるしーぽんアリサたんカットはよかったです。

03/05/27(TUE)
【雑誌】 SFマガジン 7月号 「ぼくたちのリアル・フィクション特集」 早川書房 (→公式) [bk1]
20代限定の若手SF作家競作という感じでしょうか。冲方丁作品と元長柾木作品のあいだにみられる激烈な差異に爆笑しました。いや、出来がどうとかそういう問題ではなく、もう、ぜんぜんちがう……
・ 冲方丁「マルドゥック・スクランブル "104"」
ハヤカワ文庫JA今月の新刊「マルドゥック・スクランブル」 [bk1][amazon] のプレストーリーにあたる作品らしいですが、めちゃめちゃおもろい。巨大企業の告発者である女性を警護する委任事件担当官たちの活躍を描いた物語なのですが、SFガジェットのライトノベル的昇華にも長けているし、アクションの盛り込みかたも最高に上手い。また非常に映像的で、たとえばこの短編をそのままシナリオにしてハリウッドで映画化してみてもきっと面白いものに仕上がると思います。
トレンチコートマフィアから「ボウリング・フォー・コンバイン」につながる銃を持つことの是非というキャッチーなトピックの盛り込み方といい、合法的に証人を始末するためにほとんど冗談みたいな罠が仕掛けられるという壮大かつ馬鹿馬鹿しいアイデアもよい。けっこう手放しで誉めてしまいましたが、この人はすごいですよ。
公式ページの黙契録なんか読んでると「キャラクター小説の作り方」はこの人が書けばいいんじゃないかと思ってしまう。頭いいなあ。
・ 元長柾木「デイドリーム、鳥のように」
わーお! ブギーポップから西尾維新、佐藤友哉たんにつながる路線のSFバージョン、といえばいちばんわかりやすいかも。映像が頭に浮かぶ冲方作品とくらべると静止画しか浮かばないこちらは本当にビジュアル・ノベル作家作品という感じであります。
他人の物語(=人生)を改変する特殊能力を持った主人公の物語なんですが、概念的で漠然とした巨大組織が背後にあるらしい / 運命とか未来とかそんな感じのディスコミュニケーション話 / 展開的には存外もりあがらない / とにかくすごいネーミングセンス / 問答無用で、ゴスロリorメイド選択…… / 「う、あ、えーっ?」 というか、なんでみんなこうなるんだ!? それがたいへんしりたい。
・ 吉川良太郎「ぼくが紳士と呼ばれるわけ」
わりと普通。前ふたつが(いろんな意味で)すごすぎるからかもしれないが……
錬金術が支配する19世紀末フランスを舞台にした作品なんですが、作品世界の設定のほうに意識がいきすぎているせいか、キャラがらみでけっこうなサプライズが用意してあるにもかかわらず、物語として若干の弱さを感じてしまうのが惜しいかも。主人公の印象もほとんど残りませんでした。うーん。
・ 長谷敏司「地には豊穣」
いかにもSFマガジンに掲載されそうな短編だな―― 専門技術を他者の脳に移植するための伝達言語テクノロジーをテーマに、民族文化とは何か? という問いかけをする物語、でしょうか。経験移植による人類の均質化は是か非か? というたいへん重いテーマを扱いながらもすべてにおいて控えめなのがこの人の作風で、たとえばイーガンあたりならばもうちょっと過酷なことをするのではと思います。主張が対立する日本人・アメリカ人技術者+実験モニタの老人というミニマム構成もこの人らしい。しかし、日本文化に対する考察はちょっと足りないような気もして、謙三の行動に「え! そうなの?」と思ってしまったりします。民族全体を見据えるようなマクロな視点ももっと入れておいたほうがよかったかも。
三村美衣「ライトノベル25年史」、鈴木謙介「物語なき時代に物語を紡ぐこと」、ともに興味深い内容でよかったです。「メディア別次世代フィクション・ガイド70」。ライトノベル・漫画については、書き手の中に若手がいくらでもいる / 「本格ミステリ」とか「純文学」とか、比較対象が存在しない、という理由から、好みの問題になってしまうかな、というのがあります。
03/05/28(WED)
【単行本・小説】 ジョー・R・ランズデール(訳:鎌田三平)「テキサスの懲りない面々」 角川文庫 [bk1][amazon]
ハップ&レナードシリーズ最新作。あいかわらずめちゃめちゃおもろい。一気に読んでしまいました。
いよいよ食い詰めたハップとレナードのふたりは鶏肉工場の警備をして日銭を稼いでいた。ある夜、レイプされたあげく殺されかかっていた娘を見つけたハップは、ヤク中の暴漢をなんとか撃退した。ハップが命を救ったのは鶏肉工場オーナーの娘で、ハップは感謝のしるしとして大金と1ヶ月の特別休暇を受け取った。こんなことはめったにない機会とレナードを誘いカリブ海クルーズへと繰り出したハップであったが……
前作「人にはススメられない仕事」(→感想)では、母性本能発揮して修羅となったブレットがいたせいか、やけに血生臭くなってた気がするのですが、今回はハップ中心のエピソードだけに、死屍累々築き上げられる超過激な内容でありながら、奇妙に内省的な物語になっています。シリーズ最高傑作だと思う「バッド・チリ」(→感想)あたりの感触に近くてよいです。
たまたま出くわしたヤク中を撃退したことが(たしかに正義感にかられての行動ではあったけれど)信じられない大金と特別休暇という形になって返ってきたということ、レナードの新しいボーイフレンドがいいヤツらしいこと、そのレナードといっしょに犯罪行為とは無縁なただの休暇旅行に出かけられるということ、懸命のリハビリの末に順調な回復を見せたハンソンと警察を辞めたチャーリイが組んで探偵事務所をはじめるらしいこと。ハップの周辺で今まで考えられなかったようなラッキーな出来事が相次いで、「これは星の巡りあわせがかわったのか……」と思いきや、それは、彼らを待ち受ける最大最凶のトラブルの前奏曲にすぎなかったというキッツイ展開で、まあ、無難に終わるはずもないのですが、いちど持ち上げて位置エネルギー高めておいてから地面に叩きつける容赦の無さが凶悪であります。あまりにもあんまりな展開に途中何度も叫んでしまいました。そ、それは酷すぎです! ぎゃ――!!
巻末で林家こぶ平もちょっと言及してますが、ストーリーとしては仁侠映画のそれですね。最低の生活からなんとか這い上がろうとあがいている女に出会った流れ者のヤクザがとんでもない揉め事に身内ともども巻き込まれ、苦しみながらも最後になんとかケリをつける、みたいな感じです。しかし、メキシコの描写なんかこれが現代のお話とはとうてい思えなくて、本当にこんななのか…… と半信半疑になります。マジックリアリズム的・ダメ中年・ハードボイルド・ピカレスクかな。読んでいてとにかく興奮します。このシリーズは大好き。
ところで、大自然の脅威による強制リセット技が使われないのは個人的にはちょっと物足りない。あのちっぽけな人間たちのいざこざなんかすべて灰燼に帰してやる! みたいな力技展開はかなり気に入っていたのでした。
【単行本・小説】 西澤保彦「猟死の果て」 ハルキ文庫 [bk1][amazon]
女子高生連続絞殺事件をあつかった警察小説。西澤保彦作品としてはたいへんめずらしい。
警察視点で描くことにより事件を客観視することが可能になりますが、そのぶん犯人や被害者、容疑者の抱える心の闇みたいな問題についても一定の距離を保つことになってします。匠千暁シリーズにおけるどうしようもない哀しさ、やりきれなさというものからは離れていってしまいます。
ところが、この「猟死の果て」では、犯人とほぼコンパチの精神性を有する刑事をひとり置くことで、警察サイドを連続殺人当事者として無理矢理位置付けるという荒業に出ます。具体的にネタは割りませんが、かなりキテレツなプロットです。
また、真相はともかくラストのオチについては逆に予想できてしまう気がして、この奇妙な試みが全面的に成功している気もしない、なんともヘンテコで歪な印象を受けます。いうなれば、<87分署>シリーズなどに代表される警察小説の枠組みの中にどこまでも幼児性を肥大させたあげく精神に破綻をきたした登場人物たちばかりを放り込んでミステリとして昇華させた作品でしょうか。一読まっとうですが、じつはかなりの珍品。
【ANIME】 エアマスター 第9話「進め! 黒正義誠意連合」 (→公式)
修学旅行でやってきたガクラン軍団黒正義誠意連合が巨乳マニアのあいだで話題騒然な美奈見つけて大興奮、エアマスター陣営と一大バトルロワイヤルを繰りひろげるという楽しい展開スタート! この作品ならではの醍醐味であります。
とにかく話が早すぎる! 作画はほとんど落書きなんですが、極限まで圧縮された超高速ストーリーがめくるめく感じであります。ほとんど忘れられてた(にちがいない)チャリ使い麗一やら棒使いの伸之助やら百壱烈拳の月雄など、オールスターキャスト勢揃いのバトルが楽しいです。マキvs.崎山のバトルも裏では進行するんですが、闘いの悦びに自分を見失って殺すモードに入ってるマキは激ヤバくて、思えばここらへんから主人公なのに株が急落↓↓していくのでありました。EDにうまいことつながって、いよいよ金ちゃん+長戸の黒正義連合がお目見え、さらにルチャマスター再登場という感じかな。来週の作画はちょっと力入ってるっぽいです。楽しみ。
03/05/29(THU)
【単行本・小説】 東野圭吾「おれは非情勤」 集英社文庫 [bk1][amazon]
なんだみんな、誤字が多いな……と思ってたら「非情」勤で正解でした。非常勤教師を探偵役に、彼が遭遇する奇妙な事件を描いたハードボイルド・非常勤教師・ジュブナイル・ミステリ。連載は「5年の学習」〜「6年の学習」あたり。
物語の基本構造は毎回同じで、クールなスタンスで生徒たちに接する「おれ」が「6×3」だの「1/64」だのといったダイイング・メッセージもどきが残された怪事件の謎を解き明かすことで、思春期間近の少年少女たち特有の悩みもまたあらわになる、という展開。たいてい赴任してきたばかりで容疑者にもなりえず、仮の職場なので教師の側にも取り込まれない、また、受け持ったばかりの生徒にもさほど思いいれはなくクールなスタンスを貫きとおせる……ということで、非常勤講師をハードボイルド探偵として中心に据えるのはたいへん上手い。物語としての無駄のなさに東野圭吾の熟達職人ぷりを感じました。
校舎から墜死した前任教師が死の直前にとった奇妙な行動、黒板に残された謎の数式、やけにおとなしい生徒たち、クラスのペットだったカナリアの死、というパーツが集まって1つの事実を浮かび上がらせる「10×5+5+1」がいちばんよかったかな。小学生・小林竜太を主人公にした「幽霊からの電話」もほろっとさせるいいお話でオススメ。ソツなく楽しい1冊でした。
【ANIME】 宇宙のステルヴィア 第5話「きっかけ」 (→公式)
→ 第5話あらすじ
ビシ! バシ! いきますでえ! 5大ファウンデーション合同体育祭のシーズンがやってきた! ステルヴィアの黄金時代を取り戻せ! いきなりはじまるスパルタ訓練にぐったりする予科生たちの前にグレートミッションという名前のニンジンがぶら下げられる。がぜんやる気をみせる生徒たちであったが……
ビアンカのカスタマイズにしーぽんはひっぱりだこ。彼女の能力アンバランスに興味津々になるアリサたんほかなんですが、なんでプログラム系技術職方面を志望しないのか、という動機付けについてはいぜん不明。ビッグ・フォー相手のアストロボウル選抜演習が終わったあとも妙に淡々としています。なんだか、普通に学園ものでしたね。

03/05/31(SAT)
【単行本・小説】 チャック・パラニューク(訳:池田真紀子)「インヴィジブル・モンスターズ」 早川書房 [bk1][amazon]
いつものごとく、あまりにも異常、という表現はどこか矛盾していますが……
男の子が言う。「見て、ママ。あそこ! あのモンスター、お店のものを盗もうとしてる!」
その場の全員がいたたまれなくなって、身を縮こまらせる。全員の頭が、自分の股間でものぞこうとしているみたいにがくりと垂れる。それまでにも増して一心にタブロイド紙の見出しを読む。
モンスター・ガール、感謝祭の七面鳥を万引き
鳥たちは病院の駐車場に停まった車の割れた窓からなかに入りこんだ。カササギは、刑事が軟組織証拠と呼んだものを平らげた。骨片はたぶんくわえて持ち去った。
「その、ほら、お嬢さん」刑事は言う。「石に叩きつけて割るんですよ。髄を食べるために」
わたしはメモ用紙に鉛筆で書く。
〔は は は〕
何者かのライフルから発射された弾丸によって顎の骨を吹き飛ばされ、顔の下半分と未来を失ったファッション・モデルの奇妙な半生の回想録、かな……? じつはデビュー作「ファイト・クラブ」(→感想)以前に書きあげられていた作品で、その後出版社に持ち込まれたものの、「理解不能」とつき返されたそうです。たしかに、これだけワケがわからない小説もめずらしい。
最悪、ほんの数行ごとの断絶によって時間も空間も飛び越えながら錯綜する物語、執拗に繰り返される強迫観念じみたフレーズの反復、倒錯しきったキャラ設定など、「ファイト・クラブ」でみられるこの人の作風はこの作品ですでに確立されています。
あえていうならば、プロット自体にもかなり共通した部分があって、とんでもない結末をむかえた主人公がこれまでの半生を振り返るといいうのは毎度のことだし、時系列をシャッフルさせた構成は「ファイト・クラブ」と共通、過酷な運命に直面した主人公が謎の上位存在に導かれてとんでもない地平に至るという展開も全作品に共通ですね。
それにくわえて人物相関に関する情報さえもほとんど与えられない今回はたいへん辛い戦いです。ぜんぜんわかりません。しかし細部はおもしろいから、我慢してそのまま読み進めて、でも作品の全体像はつかめない。ラスト近くに用意された(伏線なき)ミステリ的サプライズによって、やっと世界が開けてみえる感じでしょうか。もう1度最初から読み返して「なるほど、これがやりたかったのか」と納得します。やっぱり異常ですね! 「モンスターズ」なのは、なるほど〜
小説としてやってはいけないことばかりしていますが、そのぶん刺激的で、しかし、途中で投げ出す人間も多そうではあります。こんな小説書く人間はまちがいなくチャック・パラニューク以外にはいない。倒錯したジグソーパズルみたいな作品ですね。
読みやすさの順番でいえば、 「サバイバー」(→感想) > 「ファイト・クラブ」 > この「インヴィジブル・モンスターズ」 かな。
ところで、『ファイト・クラブ』のあの衝撃が甦る超過激小説! というコピーは正しいですが、直接表紙に印刷しないでくれ、と思いました。
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