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03/06/11(WED)
【ANIME】 エアマスター 第11話「たたみこめ! 摩季対金次郎」 (→公式)
vs. 黒正義誠意連合クライマックス。坂本ジュリエッタに摩季パパ、復活再合流の崎山+蓮華など、オールスターキャストによる一大バトルもついに決着。倒錯レベルでいえば坂本ジュリエッタを軽く凌駕する性の野獣(ただしホモ)長戸という強烈なキャラも登場してえらいことになっておりました。中盤以降、摩季vs.金次郎の流血ボコりあいがえんえんただ続くだけというけっこうすごい内容で、こんなのみたの「スクライド」最終話以来かも。その片割れが女子高生であるところにこの作品の特異性があるような気がします。そもそも、最初の打撃吸収の段階から殺す気マンマンだよな――と思ったりした(w 緊張感溢れる展開の緩和剤としてなぜか仲良く酒酌み交わしてなごみモードに入ってる坂本ジュリエッタ摩季パパ加えてみたりとキャラ配置にも余念がない。殺伐としきらないこの独特のムードがよかったりするのでした。ところで、ふたりとも頭が丈夫ですよね…… カイ登場の順番が前後したものの、次週からは女子プロ編突入。崎山株↑↑の予感。

【特撮】 爆竜戦隊アバレンジャー 第17話「戦場のアバレかっぽれ」 (→公式ページ)
→ストーリーあらすじ
「私たち竜人はダイノアースでエヴォリアンに弾圧を受けてきました。そしてアナザーアースに来てからも戦いの連続……」 アスカは心の休まる時の無かったこれまでの半生を振り返る。そこにいきなりあらわれたスケさんは彼の心を癒すべく伝統芸能のかっぽれを踊りはじめる。しかし、バーニア兵の動きにも似たかっぽれの舞いはアスカの心に悪夢の記憶を呼び起こさせ、ショックのあまりアスカはそのまま気絶してしまう。 「わたしのかっぽれに感動して気絶したアスカくんが早く目覚めますように」 勘違いしたまま近所の神社で願を掛けるスケさんの目前にトリノイド:アヤメ+眼鏡+鼠=アヤメガネズミが出現、スケさんの頭にアヤメを咲かせる。スケさんはいい笑顔をしてみる…… と、書いてみたけどワケわかんないなあ。さすがは浦沢脚本、「アバレリーガー金縛り」(→感想)以来のシュールネスですね。
状況に負けない平和を愛する心をスケさんの戦争記憶と結びつけてなんとなくいい感じにまとめたお話なんですが、よく考えてみるとスケさんのかっぽれさえなければ何の問題も生じなかったような気もしないでもない。やはり元凶はあの老人か! 梅雨前線山脈火山攻撃が大惨事ならば、あの大津波も大災厄ではないかと…… 都市壊滅してるのでは? 第5の戦士らしきニューフェイスの影も見えて、続きがたいへん楽しみなのでありました。しかし、やっぱりスケさんをアバレシルバーとして登場させるべきだとは思うね。(ただしスーツアクターなしで、ひどい)
03/06/12(THU)
【単行本・小説】 パトリック・マグラア(訳:宮脇孝雄)「血のささやき、水のつぶやき」 河出書房新社 [bk1][amazon]
パトリック・マグラアのデビュー第1短編集。これはかなり面白いです。
「天使」、「失われた探検家」、「黒い手の呪い」、「酔いどれの夢」、「アンブローズ・サイム」、「アーノルド・クロンベックの話」、「血の病」、「串の一突き」、「マーミリオン」、「オナニストの手」、「長靴の物語」、「<蠱惑の聖餐=凄惨>」、「血と水」の13篇を収録。
いかにもゴシック小説にありがちな古典的な主題を現代風のアレンジを施したうえで作品として甦らせるあたり、またその中にグロテスクで悪趣味なユーモアを潜ませるあたりは「百物語異聞」 [bk1][amazon] にまとめられている倉阪鬼一郎の初期短編群とも似た感覚ですね。この短編集読むまでは気づかなかったのですが、じつは作家性として共通する部分があるのかもしれません。
どれも粒揃いな奇妙に心に残る作品ばかりですが、あえて挙げるならば「失われた探検家」、「黒い手の呪い」、「アンブローズ・サイム」、「アーノルド・クロンベックの話」、「串の一突き」、「マーミリオン」、「長靴の物語」、「<蠱惑の聖餐=凄惨>」が比較的好みでした。たくさん挙げすぎでしょうか。
12歳になるイヴリンが自宅の庭で目にしたものは、小さなテントに横たわって熱病に冒されているひとりの探検家だった……という、「失われた探検家」は現代イギリスにヴィクトリア時代アフリカの幻影が忍び込んでくるという話で、佐藤哲也「ぬかるんでから」に収録されてる「夏の兵隊」とちょっと共通したテイストの叙情的な短編。ヴィクトリア時代のインドで男女が遭遇した怪異を巡る物語「黒い手の呪い」においてもアフリカは登場します。敬虔な青年神父の抑圧され行き場を失った衝動が爆発したのちに何が起こったのか? を描いた「アンブローズ・サイム」はいかにも馬鹿馬鹿しい展開を様式美に彩られた筆致で綴ったしらじらしい作品でついつい笑ってしまいました。<死の庭師>との悪名を誇る死刑囚にインタビューを試みることになった女性記者の味わう恐怖を描いた「アーノルド・クロンベックの話」はこの作品集の中ではめずらしく素直な展開のお話で、物語の〆がきれい。美術愛好家だった叔父が自殺前に残した妄想的な手記を巡る「串の一突き」は、たぶんJ・S・レ・ファニュ「緑茶」に対するオマージュで、猿が精神分析医に置き換えられているのでは、と推測。(作品の中には「レ・ファニュ」という名前のカフェも登場する)この短編集の中の白眉がこれでは、と思います。またもアフリカが登場します。美しく広大な屋敷マーミリオンに住まう農園主一家が没落していく過程を現代の猿専門女性カメラマンが追う「マーミリオン」は端正なゴシック小説でこれはいい出来。そして、がらっとテイストを変えて、核戦争下、シェルターに身を潜める家族の残虐なふるまいが長靴視点で語られる「長靴の物語」はジュリアン・バーンズ「10 1/2章で書かれた世界の歴史」ばりの奇想をひたすら悪趣味に仕上げた作品で、こんどはギルバートなる一匹の蝿の通過儀礼を描いた「<蠱惑の聖餐=凄惨>」も同じくグロだけど、楽しい。
これは余談ですが、アーヴィン・ウェルシュはマグラアに相当な影響を受けているのでは。「マラボゥストーク」(→感想)は、マグラアの「グロテスク」(→感想)+この作品集の隠しテーマとなっているアフリカへの執着という気がしないでもないし、短編集「アシッドハウス」(→感想)収録の「ザ・グランストン・スターの利益」における語り口は「<蠱惑の聖餐=凄惨>」と共通しているような気がします。
03/06/13(FRI)
【特撮】 爆竜戦隊アバレンジャー 第15話「アバレ世間は鬼ばかり」 (→公式ページ)
→ストーリーあらすじ
父親との確執を描いた幸人(アバレブルー)メインエピソード前編。
トリノイド:鮫+車+マーガレット=シャークマーガレットの「嫌いっ!」攻撃により、いちばん嫌いなものが襲いかかってくる魂の牢獄にアバレイエロー、ブラック、ブルーの3人は閉じ込められてしまう。 らんるの前に現れたのは納豆+エアロビレッスン、アスカの前にはジャンヌの幻影が、ブルーの前には鬼面の幻覚が出現する。(トラウマを抱えてないせいか、アバレッドだけはひとり平気) 鬼面の男は幸人の実父、三条コーポレーション総帥の三条総一郎で、「全ては金で買える」と口にしてはばからないその亡者っぷりに反発した幸人は家を出たのだった。親子の確執を断ち切るため、今までの養育費を父親に叩きつけて縁を切った幸人だったが、トラウマの根は深かった……
前編なのであまり書くことなし。新しい爆竜も登場しそうで、後編が楽しみ。らんるの幻覚だけはどうでもいいレベルなのが楽しい。あのインストラクターが嫌いなんじゃないのか?
【特撮】 爆竜戦隊アバレンジャー 第16話「乗ってけ! アバレサーフィン」 (→公式ページ)
→ストーリーあらすじ
続き。嫌っていたはずの父親とまったく同じことをしている自分を自覚した幸人はその幻影をなんとか打ち破り、「嫌いっ!」攻撃を無効化する。新しく登場した爆竜の力も借りてパワーアップしたシャークマーガレットを倒してエンド。えーと、前後編使ったわりには普通かな。けっきょく父親との会話もないままなんとかしちゃうのはいいのか悪いのか。天真爛漫すぎるアバレッドにはトラウマ攻撃が効かないというオチもまあ、普通でした。あのエアロビインストラクターは竹内先生だそうで、ジャンヌの幻影みたく斬り殺しちゃうのかと思ったら、ちがった。
03/06/15(SUN)
【ANIME】 金色のガッシュベル!! 第11話「無敵フォルゴレ!」 (→公式ページ)
あ――、みてたらマグロ喰いたい! 熱を出して寝込んでるはずの清麿。今日の清麿は一味ちがう……!? いっしょに魚かぶりついてくれるし、 「いやあ、鈴芽、いちだんとキレイだねえ」 あれ、いつもより優しい!? 「鼻! 鼻! 鼻――!!」 「あ!」 というわけで、原作ファン全員が心待ちにしていたはずと推測する無敵フォルゴレ&キャンチョメエピソード。いやあ、動くとオモロイ。すげえ、オモロイですよ。 「もげ! もげ! もげ! (ウッ! ワーオ!!)」 ガッシュと同じく魔界の落ちこぼれだったキャンチョメがイタリアの映画スターであるフォルゴレ引き連れて日本にやってきた! ガッシュをカモにするために! というストーリーで、清麿の部屋だけでほぼ展開する密室劇という構成のコント的お話ながら、「ちちをもげ」「無敵フォルゴレ」などの挿入歌もあいまって異様に飽きさせない内容。これからもたびたび登場していい感じの味をふりまいてくれると思うので、このコンビにはこれからも期待したい。いやあ、ひたすら楽しいですね。

【ANIME】 成恵の世界 第10話「コスプレ大作戦」 (→公式ページ)
「どうしたの、何をおこってるの?」 「きりり、悪い子でチュー。またひとつのカップルを破局に追い込んでしまったでチュー」 ゲーマーズ → アニメイト(アニメ内ではmanimate)コンボでデート中彼女ほっぽり出して魔砲少女四号ちゃんコスの中学生声優にうつつ抜かしたら、そら怒るでしょー。 「後悔しないわね」 2次元存在魔砲少女四号ちゃんにカズくん取られるのかと不安な成恵たんがコスプレの世界にハマっていくというストーリーでありました。それにしても、なにゆえコスプレバトルという展開になるのかしらん。夜中に呼びつけられた挙句、コスパーツ作りの手伝いさせられる丸尾くんはうれしいんだか、うれしくないんだか。それにしてもあえていいたい。カズくん最低! でも丸くおさまってしまうのだ――ラブラブだから、という当世風オタカップル究極ストーリーでありました。市販品ですますのはやはり若干のさみしさがあります。どうにもノリノリの成恵たんは多分に徹夜明けハイだったようで、しかし審査委員長の一存で決まってしまうのは少々納得がいかね――― コスプレエッチとかしそうですな。


03/06/18(WED)
【単行本・小説】 若竹七海「依頼人は死んだ」 文春文庫 [bk1][amazon]
ハードボイルド女探偵、葉村晶が活躍する連作短編集。ほぼ同じ形式をとる「プレゼント」(→感想)の続編的位置付けなんだと思います。小林舜太郎が登場しないのは単純に人気の関係でしょう。
「濃紺の悪魔」、「詩人の死」、「たぶん、暑かったから」、「鉄格子の女」、「アヴェ・マリア」、「依頼人は死んだ」、「女探偵の夏休み」、「わたしの調査に手加減はない」、「都合のいい地獄」の9編を収録。
善意という名目の元に展開されるエゴイズムを描かせたらやはり絶品で、しかも犯人役のみならず依頼人から事件関係者まで登場する人物のほとんどが人好きしないので、読んでいて刺が突き刺ささるような心持ちになります。物語がどう転んでも後味悪くならないわけがないので、覚悟しながら読み進めても、さらに衝撃を覚える真相のやりきれなさもまず素晴らしい。日常のほんの隣にある人間の悪意や狂気を暴き立てて、しかしどろどろとした雰囲気にはしあげていない、その乾いたセンスがたいへん好みですね。
また、たいへんバラエティに富んだ構成にもなっていて、もし分類するとすれば、エゴに満ちた関係者が多数登場するハードボイルドタッチの「詩人の死」、「たぶん、暑かったから」、「依頼人は死んだ」、「わたしの調査に手加減はない」と、過去に起こった出来事の真相を暴くミステリタッチの「鉄格子の女」、トリッキーな構成によって意外な真相を提示する「アヴェ・マリア」、「女探偵の夏休み」、そして、この本の最初と最後を飾る「濃紺の悪魔」、「都合のいい地獄」でしょうか。
容赦なく調査対象にくらいついて隠された真相を暴いていく女探偵葉村の存在を揺るがすようなホラー的敵役を登場させた物語で作品をサンドイッチすることで、ハードボイルドという形式そのものに揺さぶりをかけるような構成を取っているのはなかなか面白いと感じました。つまり、偏執的ともいえる調査ののち(それには彼女なりの理由があるのですが)露にされる真相をしかし冷ややかに眺める葉村に対して、事件から距離を置くことすら許さない、というあたりであります。若竹七海はいじめっこですね。
【単行本・小説】 上遠野浩平「しずるさんと偏屈な死者たち」 富士見ミステリー文庫 [bk1][amazon]
あんまり具合がよくないらしいしずるさんは入院したっきりで、彼女の友人らしいよーちゃんはしずるさんを見舞いに病室へと足を運ぶ。長い黒髪を揺らしてベッドの上で微笑むしずるさんはどこか達観したような表情を浮かべながら、しかし、謎めいた、そしてちょっと不気味な事件の数々に興味を示すのだった……
百合っぽい雰囲気の美少女コンビ片割れが見舞いがてら持ち込む奇怪な殺人事件の真相をベッドに寝たきりの探偵役少女が解き明かすという安楽椅子もの。快刀乱麻の推理を驚くというよりも、「――あーあ、みんな、いっそのこと星になってしまえばいいのに……」 などと薄幸の少女につぶやかれて、ガクガクブルブルするところが読みどころのお話で、うひ〜、気まずいからやめてくれ〜 を楽しみましょう。それは、ひさびさに訪ねた祖母に「あとはもう、ボケる前にお迎えがきてくれさえすれば……」などとポックリ話をえんえん聞かされる心境に似ています。しかし、美少女。しずるさん。
ミステリとしては非常にオーソドックス、あっさり風味で、まるで妖怪のように細工された死体の謎(「しずるさんと唐傘小僧」)や、キャトルミューティレーションのように心臓だけくり貫かれた死体の謎(「しずるさんと宇宙怪物」)のように猟奇事件を扱いながらも、昨今の若手作家の作品にみられるようなミステリ的逸脱や暴走はみられません。その点ではちょっと物足りなくも感じますが、これはドラゴンマガジンという掲載誌の関係もあるのかも。いや、講談社ノベルス刊の作品もけっこう普通かな…… 例によって他シリーズと世界は微妙にリンクしているようですね。
たとえるならば、探偵役が縁起でもないことずっと言ってる「探偵ガリレオ」(→感想)でしょうか。第1話くらいの後味悪さでずっと突っ走ったほうがよかったような。
第1話、物語冒頭の一文。 「第一発見者は、よりによって山の中で迷子になっていた遭難者からのものだった。」 えーと……
【ANIME】 エアマスター 第12話「名のれ! ファミレスラーズ」 (→公式)
しっかし、異常なテンション。ひょっとして単なる噛ませ犬だと錯覚してる人もいる? と不安になってしまうアニメ版崎山香織が大爆発するエピソードで、この回により崎山株急上昇↑↑はまちがいないことですが、それにしても燃えますね。完全脇役トミコが微妙に可愛かったのにもびっくりしました。
なんやかやあってタッグ組んで女子プロ参戦することになった馬鹿ふたり(崎山+マキ)。殺る気マンマンの崎山はともかく、何にもわからないままに参戦してそうなマキの呆けっぷりもすごい。この娘さんは大丈夫でしょうか? で、武道館決戦(いきなりだな)ファミレスラーズ1回戦の相手が崎山香織因縁の同級生で、高校当時ボコボコにやられた忌まわしい記憶を振り払うべく崎山がデビルマン化するという展開。土井美加の熱演が光っておりました。ちなみに、掲載誌がヤングなアニマルということで、原作では「鼓膜」→「処女膜」だったりして。なぜルチャが登場してるのかは来週判明するはず。ところで、誰もかれもマスクしてる意味ないような気がするのですが、トミコがセコンドについてる理由もわからない。君はリングに立ってるつもりなんじゃないの?

03/06/19(THU)
【単行本・小説】 ジョー・R・ランズデール(訳:鎌田三平)「凍てついた七月」 角川文庫 [bk1][amazon]
89年発表、ハップ&レナードシリーズをはじめる前のランズデール・ノンシリーズもの。「バッド・チリ」(→感想)そして最新作である「テキサスの懲りない面々」(→感想)にゲスト出演してるブタ飼いのタフガイ、私立探偵ジム・ボブ・ルークが登場します。
額縁屋を営む平凡な男、リチャード・デインは夜中に奇妙な物音を聞いた。リビングには強盗がいて、銃を取り出すとリチャードに向かって発砲してきた。リチャードは反射的に男を射殺してしまう。血や脳漿はカウチやリビングの壁に飛び散った。
強盗の名前はフレディ・ラッセル、ケチな悪党だと警察は言った。リチャードの正当防衛もあっさり認められた。しかし、だからといって彼の気は晴れなかった。フレディには服役中で出所間際の父親がいるらしい。息子を殺された怒りから強盗の父親ベンはリチャードの幼い息子を付け狙う。警察の警備もかいくぐって、易々と家に侵入したベンをなんとかリチャードは撃退し、ベンは警察に逮捕された。これで全てのかたがついたかと胸をなでおろしたリチャードは現場でベンの財布を拾った。その中に収められていた写真はひどく間違っていた。周囲で起こっていることすべてが間違っていることにリチャードは気づいた。
自分のしたことに落とし前をつけようという父親たちの物語で、これ以上ないほどにシンプルなプロットながらぐいぐいと読ませます。狂気に満ちた、血で血を洗うような展開になるのは毎度のことながら、暴力を嫌う内省的で平凡な男リチャードを物語の中心に据えることで読者の共感を呼ぶようなつくりにしてあるのは上手いです。これは前述のハップ&レナードシリーズでハップを語り手にしているのと同じだと思われます。レナードの位置にいるのは暴走する助っ人探偵ジム・ボブ・ルークでしょうか。
しかし、これだけ血生臭い物語がこんなふうに爽やかな読後感を与えるのはランズデール独特の魔法みたいなもので、たいへん奇妙で心地よい感覚です。やはり人間性の描き方がポイントなのでしょう。郵便配達夫ジャックとベンのエピソードとそれに続く展開なんかはじつにうまいと思いました。リチャードの妻アンとベンの関係性の描き方も腑に落ちます。シンプルでいて胸を打つ物語なので、この作品からランズデール作品に入門してみてもいいかも。
ところで、自分はマジック・リアリズム作品ではなくて、サウザン・ゴシック作品が単純に好みなのでは、ツボにはまってしまうのではないか、と巻末の三橋暁氏の解説読んで思いました。(サウザン・ゴシックというジャンル区分があることすら知りませんでしたが) そういえば、マキャモン「遥か南へ」(→感想)に異様に感情移入しながら読んだのもそれが理由なのかもしれないし、このあいだ読んだマグラア「血のささやき、水のつぶやき」(→感想)の評価が高いのもそれが原因かもしれません。(マグラアはアフリカですが) なぜだろう、南米文化にはまるで興味ないのに…… ここらへんはちょっと調べてみたいですね。
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