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03/07/01(TUE)
【単行本・小説】 ポール・アルテ(訳:平岡敦)「死が招く」 ハヤカワ・ポケット・ミステリ [bk1][amazon]
変わり者で知られていたミステリ界の重鎮が、銃でこめかみを打ち抜かれ、油が煮えたぎるソテー用フライパンの中に顔と両手を突っ込んだ姿勢で発見された。書斎には内側から鍵がかけられて、現場はいわゆる密室状態だった。自分をセンセーショナルに飾り立てるための覚悟の自殺だと思われたが、検死官の調べによれば、その遺体は死後24時間以上経過したものであった。そして、この現場の状況は、殺された作家が構想中の作品「死が招く」とそっくり同じシチュエーションだった……
えーと、これ、フランス語辞書引き引き原書で読んだらきっと面白いんじゃないでしょうか。短いし、5〜6行訳せば、なにか起きるし。
ただ、日本語訳で読むとあまりにそっけなくて、不可能犯罪の解決に必要な伏線部分と大仰な会話以外はほとんど何もないので、カー好きな国内作家、たとえば芦辺拓あたりに同じトリック使ってクローン作品書いてもらったほうが面白いものになるような気が。このネタ使うにしては尺が短い。状況を的確に伝えるための描写も足りてない印象を受けました。邦訳されることで「フランスでひとり孤独に(推測)こんなもの書きつづけてる作家の作品」というおかしみは消えてしまっていて、もしこれが「カーの完璧なクローン」ならば、まず同じように日本語で読めるカー作品から読むべきだとも思います。前作「第四の扉」(→感想)にあった新本格的な趣向も失われているんで、怪奇趣味+不可能犯罪+密室な、「古典だね」という印象が残りました。まあ、このほうが二階堂黎人的には喜ばしいのかもしれないけれど……
ところで、「ナプキンの上に置かれた半分だけ水の入ったコップ」って、いきなり目を奪われるほど魅力的な謎なんでしょうか。加湿用の習慣かもしれないじゃん! 検死官の見解を待つまでもなくそれが息絶えた直後の死体なのか死後24時間以上経過したものなのかは一目瞭然だと思うのですが、そちらのほうが不思議でしょう。当然、死後硬直もしてるでしょうし。(というか、硬直した死体の体勢をどうやって変えたのでしょうか、そちらも不思議)
03/07/02(WED)
【雑誌・MOOK】 季刊「en-taxi」 No.02 SUMMER 2003 [bk1][amazon]
アメリカの一極世界支配に対する特集「怪物がめざめた夜」は未読ですが、それ以外の記事はざっと目を通しました。
舞城王太郎「W」は想像の双子の姉をこしらえて萌えてみたり、内緒で描いてるギャルゲ系ギャグ漫画「ラリアットポイント」(ただし電波系でもある)を描いたりしながら日々を過ごしている高校生の物語。佐藤友哉作品に登場しそうなダメ人間を舞城が書いてみた感じ。正直、最近の舞城王太郎にはついていけません…… 枚数が枚数とはいえ(2段組12ページ)、もう少し何かあってもいいのではないでしょうか。「いくえみ綾」という単語が舞城作品に出てきたのはちょっとびっくりしたけど。 吉田豪「YAWARA、その愛。」は、YAWARAちゃん(仮名)のラヴ戦略に絡み取られ、少しずつ逃げ場を失っていくヨシ君(仮名)の苦悩を描いた小説、というよりは芸能ゴシップ妄想でしょうか。これはなかなか面白かったですが、ヨシ君(仮名)の内面描写がちょっと淡白。葛藤が狂気につながるみたいな展開があったほうが心情的に納得できるかも。あっさり承服しすぎ〜という気もします。悪夢小説を書きたかったのではないのか? 色川武大「百」をとりあげた「文学の器」はなかなか興味深い内容だった、というかじつは「百」未読なのでぜひ読みたいですね。「麻雀放浪記」の印象からひょっとして無頼と勘違いしてる人がいるかもしれないけれど(よく読めば、賭博を通じてしか他人とコミュニケーションできない人間ばかり登場する物語だとわかる)、この人は基本的にひきこもり小説の人だと思うのです。ところで、坪内祐三はジャンル小説をわりと軽視してる人なのかな。「幻想小説もSFもリアリティがなくて読めない」とか乱暴にひとくくりしてるけど、幻想とSFじゃ構造として対極だと思うのだ。サリンジャーに対する村上春樹の心境変化について書いた評論はちょっと面白かったけれど。
あいかわらず対象層のみえない不思議な雑誌で、内容みる限り、柳沢きみお「大市民ディレクターズカット」登場のセンセイ視点の人が狙った雑誌なんじゃないかと思うのですが、載せる小説は舞城とか前号の石丸元章だったりと不思議なチョイス。それにしてもこの装丁は最悪だ、捨てたい……「ODAIBA MOOK」「超世代文芸クォリティマガジン」というセンスにも辟易。しかし、判断に困る雑誌であります。
03/07/03(THU)
【単行本・小説】 カズオ・イシグロ(訳:土屋政雄)「日の名残り」 ハヤカワepi文庫 [bk1][amazon]
執事としての「品格」を追求することに半生を費やしてきた初老の執事スティーブンスがひょんなことから短いドライブ旅行に出かけることになり、その道すがら、過ぎ去った執事としての日々のことが頭をよぎる。長年仕えたダーリントン卿のこと、執事の鑑だった父親のこと、かつて同僚だった女中頭のこと、屋敷で催された重要な会合のこと…… 栄光ある日々は輝きをましてスティーブンスの胸のうちで生き続ける。
見え方の少しずつちがうふたつの世界が重なり合って展開していくような物語。偉大な執事をめざし自己鍛錬を続けるスティーブンスの認識する現実と実際のそれとはズレが生じていて、執事口調で語られるそれら思い出の裏から、「本当は何が起こっていたのか?」という真実の姿が透けて見えます。それは、不断の努力の果てに達した場所はどこだったのか? そこからの景色は? という残酷な問いにもつながってきて……
何の疑問も抱かぬままに自身の生き方をつらぬいてきた人間が旅に出ることで自己を見つめ直す、という展開はクリスティー「春にして君を離れ」(↑)と共通している部分が多いですが、比較的ストレートに謎解きをしてしまう「春にして……」とくらべて個人の認識差によって多重世界を幻出させるような技ありの構成が光っていると思います。のどかだけどひどく残酷な話ですね。お父さん関係のエピソードは心底ひどいと思われましたが、しかし、ありそうな話ではあります。
・ カズオ・イシグロ・インタビュー
【単行本・小説】 アガサ・クリスティー(訳:中村妙子)「春にして君を離れ」 ハヤカワ文庫 [bk1][amazon]
ハヤカワ文庫NVから出てるこのシリーズはまったく手をつけてませんでした。
クリスティー作品まとめて読んだのはけっこう若い時分のことで、「愛の小説」というシリーズタイトルからハーレクイン・ロマンス的なものを想像して敬遠してしまったのでした。それは失敗でした。これはなかなかの傑作です。
弁護士をしている優しい夫、結婚して家から巣立っていった子供たち―――ジョーンの生活は満ち足りたものだった。バクダッドからイギリスへの帰途中、15年近くぶりに学生時代の旧友と再会したジョーンは彼女との会話をきっかけに自分の過去を振り返り、今までの生活を見つめなおしていく。やがて浮かんだのは自分や夫、子供たちに関する思いもよらぬ考えだった。それは次々と浮かび上がってきて、頭から離れなかった。
旅の最中、砂漠で足止めを食らってすることがなくなった主婦が今までの幸せな結婚生活を回想しているうちにだんだん怖い考えになってしまうというお話で、これもセルフイメージと実物の間にある埋められない溝にまつわる物語であります。ジョーンの中で都合良く改変されて了承されている現実と実際に起こったことはあきらかにちがうわけですが、それを決して認めようとはしないジョーンの頑なさ、鈍感さがなかなかいい具合に憂鬱にさせてくれます。表4にある「揺れ動く女の心を繊細に描く」というフレーズは決してまちがってはないのですが、たぶん、たいていの人の予想を超えていやな話なのではと感じます。「混乱する鈍感女の心情をしつこく描く」かな。ラストのオチがたいへんいいです。人間って、そんなものですよね。
もっと混乱した筆致で書けそうな部分も淡々とすましてしまってるところがクリスティーらしく、その淡白さが好みなのでした。
03/07/05(SAT)
【単行本・小説】 板東眞砂子「神祭」 角川文庫 [bk1][amazon]
「神祭」、「火鳥」、「隠れ山」、「紙の町」、「祭りの記憶」5篇収録の短編集。薄い。
いずれの作品も高知を舞台にした土着ホラーで、母親の墓を参ってる姿を目撃されたのち忽然とその姿を山中に隠した中年公務員が不意にあらわれてはあることないこと村の噂を吹聴してまた消えるという「隠れ山」、知恵遅れの女ヒサの目を通した世界の仕組みを紙漉き層の中のどろどろした溶液に例えて描いた「紙の町」の2作がよかったです。
怪異を怪異として書いて、比較的さらっとしてるのがこの人の持ち味なのかも。食べると祟りがあるという謎の鳥ミズヨロロと少年の性の目覚めを描いた「火鳥」とイアン・マキューアン「夏の終わるとき」、「最初の恋、最後の儀式」(「最初の恋、最後の儀式」所収)あたりを比較してみるとずいぶんちがう。個々の精神における混乱はさほど描かれないのですね。
【特撮】 爆竜戦隊アバレンジャー 第18話「誰だ? アバレキラーだ!」 (→公式ページ)
→ストーリーあらすじ
人生に退屈していた天才外科医が爆竜の卵とひそかに契約を結び第3勢力「アバレキラー」に変身、アバレンジャーに宣戦布告してくるというお話。 都市を破壊する爆竜たちをみて、 「こんなの初めてだ! ときめくぜっ!」(ドカーン) 「なんだ、お前ら! いい子ちゃんになっちまうのかよ!」 「ふうん、面白いじゃん! ゲームにスリルがふえて」 「死、あるのみだ!」 「本当のゲーム、これからだ」 など、名言には事欠かきません。アバレブルー+イエローのふたりがかり攻撃を鼻であしらうその強力パワー、歩く核融合炉も同然なその危険性、何よりそのDQN思考、DQN発言、たいへんすばらしい。これからがたいへん楽しみ。そういえば、ヤツデンワニ製作担当の方はご愁傷様であります。
【特撮】 爆竜戦隊アバレンジャー 第19話「よろしくアバレアミーゴ」 (→公式ページ)
→ストーリーあらすじ
アバレキラーのスーツは力のみを追求して作られたプロトタイプ、そのパートナーとなるのはその凶暴性ゆえに封印されていた最凶最悪の爆竜トップゲイラー。トップゲイラーの卵を孵化させるべく、アバレキラーは凌駕たちのダイノガッツを奪っていたのだった! トップゲイラー復活の阻止すべくアバレキラーのもとに向かう凌駕たちだったが、そのころ東京湾には謎の巨大反応が、そしてギガノイド第五番「狩り」までもが登場して、というたいへん緊迫した展開。途中まではたしかにそうだった。なぜかポール牧みたいのが出てきて、「アミーゴ」の理由はそれだけなのか、と思った。ギガノイド第五番「狩り」がマシンガン攻撃してたのにはちょっとがっかりしたけれど(クラシックならば弓矢攻撃だろ〜)、股間を隠してお亡くなりだったのがいかにも噛ませ犬っぽくショボくわかりやすかった。先週今週とアバレキラーの魅力の前にエヴォリアン勢は影が薄い。当然のようにトップゲイラーも復活してアバレキラーがさらに強大な力を手にしたところで〆。次週以降も目が離せません。
03/07/06(SUN)
【単行本・小説】 柄刀一「OZの迷宮 ケンタウロスの殺人」 光文社カッパ・ノベルス [bk1][amazon]
「3000年の密室」にて長編デビューする以前「本格推理」に掲載された作品と新作を、あるミステリ的趣向のもとに構成した連作短編集。「密室の矢」、「逆密室の夕べ」、「獅子の城」、「絵の中で溺れた男」、「わらの密室」、「イエローロード 承前 / 承運」、「ケンタウロスの殺人」、「美羽の足跡」の8作が収録されてます。勘の鋭い方ならば「OZの迷宮」そして各編タイトルからピンとくるでしょうが「オズの魔法使い」をモチーフにしていて、しかし肝心なのはそこではありません。
密室の中で射殺された男、水回りのない密室状態のアトリエで溺死した画家、下半身が馬、上半身が人間の骨から構成された白骨死体など、奇怪な意匠を凝らした不可能犯罪をあつかった作品が多く、なかなか面白いです。こういうトリック考えさせたら柄刀一はなかなか達者だな、と感じますが、文章の意味が取りにくいがゆえにミステリとして複雑化しているだけなんじゃないかなあとも思って、それはけっこう毎度のことかも。どの話も頭の中で事件全貌を整理するのに時間がかかって大変でした。
倒叙視点を取り入れた犯人当てや、死体が持っていた何十枚もの硬貨から全てを解明する話まで(多分に妄想的推理ではあるけれど)、個々の作品のバラエティの豊かさは評価できますが、やはり読んでいてわからなすぎる気が。ちょっとつらいです。
「逆密室の夕べ」、「絵の中で溺れた男」、「ケンタウロスの殺人」あたりが気に入りました。(派手なの選んだだけかも) 大貫竜哉の可愛らしいオブジェを使った装丁はなかなかよいです。 「本編必読後のあとがき」は絶対に最後に読むこと。
03/07/08(TUE)
【単行本・小説】 色川武大「百」 新潮文庫 [bk1][amazon]
色川武大の遺作集。念のため書いておきますと、色川武大というのは「麻雀放浪記」著者である阿佐田哲也の本名で、1961年に中央公論新人賞を「黒い布」で獲ってるから作家としてのキャリアはこちらの名義のほうが先。川端康成文学賞受賞の表題作に加え、「連笑」、「ぼくの猿 ぼくの猫」、「永日」の計4篇を収録。
明治生まれの元海軍エリート軍人でしかし退役した後は生活力のない頑固なだけの人間になってしまった「父」、父親よりも20年下で現実への適応力がある働き者の「母」、社会とは相容れず無頼の日々ののち物書きになった「私」、それより6つ年下で会社にも普通に就職して世間ともそれなりにうまくやっている「弟」、この4人を中心とした微妙であり異様でもある家族の関係を描いた連作集で、色川武大本人とその家族のことを描いた私小説作品と呼んでもまず問題はないでしょう。
私と弟の話である「連笑」、私の話である「ぼくの猿 ぼくの猫」、父と家族の話である「百」、父と私の話である「永日」、すべての作品に色濃く影を落としているのはやはり父親の存在。挫折した軍人である父親の期待にも添えない罪悪感が猿の幻となって私を苛みつづける「ぼくの猿 ぼくの猫」にしても、100近くなり老耄から周囲にますますきつくあたるようになった父と、彼を見守る私そして弟夫婦の話である「百」、その続編ともいえる「永日」、唯一、私と弟を中心にした「連笑」にしても、父親との対峙を怖れ生家を逃げ出した私が、父親と私の板挟みになった挙句ある種の諦観を抱いたまま生きるようになってしまっただろう弟に対して罪悪感を抱くお話で、その根源はやはり父親にあるのです。
父親を中心としたどこか歪んだ家族関係が描かれているわけですが、しかし、この人の書くものには凄みがあります。私小説的な記述と妄想描写の境界が消失してしまってる「ぼくの猿 ぼくの猫」、ラスト数行で幻想が爆発する「百」、自ら進んで入院することになった父親を私が見舞うことにした後の展開が凄まじい「永日」、もう、なんといっていいのか。心が震えます。
第15回三島由紀夫賞公表で筒井康隆が舞城王太郎「熊の場所」を「心の闇に降りていく手前、ここから先が文学になるという所で引き返しているわけであり、怪異談になってしまった」 と評しているのですが、ここらへん読むとその言葉の意味がわかったような気がします。たとえば「百」におけるラストの処理と「熊の場所」におけるそれを比較してみると頷けるかも(両方読んだ方はおわかりかと思うのですが、単なる連想比較です)。
これぐらいすごい本ばかり読みたいものですが、なかなかそうもいかないかな。色川武大の小説はもっと読もう。
【単行本・小説】 谷川流「涼宮ハルヒの憂鬱」 角川スニーカー文庫 [bk1][amazon]
第8回スニーカー大賞<大賞>受賞作。ずいぶん前に読み終わっていたのですが、感想書いてませんでした。
入学早々、「ただの人間には興味ありません。この中に宇宙人、未来人、超能力者がいたら、あたしのところに来なさい。以上」 なるハジけた自己紹介をかましてクラスメイトの度肝を抜いた美少女、涼宮ハルヒ。宇宙人でも未来人でも超能力者でもないになぜか彼女に興味を持たれた俺は彼女の作った同好会に無理矢理入会させられる。「SOS団」なるふざけた名前の同好会でふざけた活動を続けるハルヒだったが、彼女の周囲ではもっとふざけた事態が進行していたのだった……
周囲の反応そっちのけで突っ走る美少女だけが、彼女をとりまくさらに異様な状況に気づかない、という物語で、全ての傍観者たる役割を与えられたキョンこと俺の一人称で書かれている理由がやっとわかりました。えーと、とても丁寧な仕事で、伏線の回収などたいへんきちんとしていて感心させられました。物語がちょっと逆説的な構造してるところも技ありだと思います。チェスタトン「木曜の男」をちょっとほうふつとさせるようなところもあるような。
また、達者な新人さんだなあ、と思ってたら、電撃文庫から同時期に出した「学校を出よう!」著者プロフィール読んで吃驚。俺より年上なのか…… 破綻やアンバランスさがみえなくて安定している理由がちょっと理解できたような気がします。なかなか上手いのではないでしょうか。
【単行本・小説】 おかゆまさき「撲殺天使ドクロちゃん」 電撃文庫 [bk1][amazon]
うーん、なんかWeb上に載ってるような小説だな――― ワンポイントドクロちゃんイラストはお絵描き掲示板の投稿みたいだし、「私立メフィスト学園」とか、そんな印象。
机の引出しからあらわれた撲殺天使のドクロちゃんが魔法アイテム・撲殺バット「エスカリボルグ」で、主人公である中2男子を撲殺して復活させて撲殺して復活させて撲殺するお話。超電磁スタンガンを持つライバルキャラのサバトちゃん(サバトなんだから頭の角は山羊だろう……)、幼馴染のお嬢さんキャラなどが登場します。なんというのか、キャラの扱いといい、ネタの扱いといい、これ以上ないくらいにちゃんとしていない1冊。あ、そうか! ライアーソフト馬鹿路線、という雰囲気なのかも。
03/07/09(WED)
【単行本・小説】 田中啓文「UMAハンター馬子 闇に光る目」 学研ウルフ・ノベルス [bk1][amazon]
すぐ読めた。あいかわらずすごい装丁のような気がするUMAハンター馬子シリーズ第2弾。学研M文庫からだった第1作「湖の秘密」とはレーベルを違えてウルフ・ノベルスからの発売になりました。ムー伝奇ノベルス大賞の受け皿とすべく新レーベル立ち上げたものの、作品の数が足らなかったからでしょうか。架空戦記+SFの林譲治に「帝国海軍ガルダ島狩竜隊」 [bk1][amazon] なんていう帝国海軍ミーツロスト・ワールド小説書かせたりしてるし。
で、馬子。「おんびき祭文」なる語り物歌謡の継承者であり、見た目コテコテの大阪のおばはんでもある蘇我家馬子が、薄幸の一番弟子イルカとともに不老不死伝説を求め全国を巡業し、ついでにその土地土地のUMA伝説を解き明かしていくという連作シリーズで、伝奇と神話とUMA知識と駄洒落を駆使して田中啓文が繰り出す新説・珍説とアクションとやっぱり駄洒落が渾然一体となった伝奇ギャグミステリであります。第4話「恐怖の超猿人」、第5話「水中からの挑戦」、第6話「闇に光る目」の3話を収録。各話タイトルの元ネタは「ウルトラセブン」の第45話、第42話、第14話から(調べた)。そのまんまです。
あいかわらず楽しいだけですが、そこがよいのです。ヒバゴン → 飛騨のヒダゴンという展開が微妙に苦しい「恐怖の超猿人」は、むしろひだり神伝説と歴史上の某人物、そして某神話(ネタバレになりそうで詳しく書けない)のリンケージがたいへん愉快だったし、古事記とグロブスター組み合わせた「水中からの挑戦」は名作「オヤジノウミ」っぽい趣向のグロゲロホラーでたいへん気持ち悪い。「闇に光る目」におけるチュパカブラにまつわる強引すぎる珍説も笑ってしまいました。謎の粉の正体とか、「根暗蚤本」とか。それがどんなものであれ、この人なりの過剰なサービス精神がうかがえるところが田中啓文作品のいいところですね。
【ANIME】 なるたる 第1話「それは星のカタチ」 (→公式)
→ストーリーあらすじ
うおおお、こらまたすごいOPですな―― こんな話でしたっけ? とか思ってしまいます。貝塚ひろ子たんの鬼がデフォルメされて行進してるよ! その後さりげなくさらわれてるし。試験管!?
月刊アフタヌーン連載中の鬼頭莫宏「なるたる」アニメ化。「骸なる星 珠たる子」の略で「なるたる」ですだ。OPとこの第1話だけ見たら少年少女メルヘンみたい。いやあ、たしかにメルヘンなんですけど、「残酷な」と頭につく部門。じつは「ゴーレッツゴー大人を殺せ〜ガッツじゃぜー♪ それが〜若造の〜♪ 祈り〜♪」(ピカー!)みたいなお話であります。神話の時代から脈々と受け継がれる「親殺し」をモチーフにした物語なのですが、この作品ほどアニメ化が心配される作品もなくって、どこまで行けるか、腹括っていただけるかがポイントかも。リミッター外したかのような残酷な世界の中に少年少女たちをいかに放り込むかがキモの作品なだけに、それがアニメでどこまで再現できるか、ですね。「エイリアン9」レベルくらいまでやってくれるといいなあ。第1話からいきなり止め絵構成されてたり、手足の異様に長い独特の人物造形はがんばって再現されてると思いましたが、それが萌えにつながるかといえば微妙なラインでしょうか。個人的には、髪を下ろして腹巻してるあたりやスク水のあたりは大丈夫だったんですが。ホシ丸に乗ってシイナが空飛ぶシーンがバストアップ中心に構成されてたりするのはちょっとダメダメかも、と残念。鬼頭莫宏作品的にはココこそが重要でしょうに。シイナ@真田アサミは平常心すぎるからさほど関心もなくって、苛められっ娘の佐倉明たんが登場してからが勝負かも、と思いました。しかし、そのまま裸でホシ丸持ち帰るのはいくらなんでも大胆すぎる(w EDの雰囲気はイメージそのままですね。


【ANIME】 HAPPY☆LESSON ADVANCE 第1話「ピカピカ☆制服祭り」 (→公式)
うーん、あいかわらず。中華娘が襲いかかってくるようになったようだ。タイプ取りそろえた学園の美人女教師たちが押しかけママとして同居はじめるという極めつきにブッ飛んだ設定を使って、非常にまったりとしたドタバタ劇をえんえん続けるというお話で、それ以上でもそれ以下でもないです。そここそがこの作品のカラーで、新シリーズ第1話も学園高等部の新制服デザインオーディションをママ教師ズモデルにして行うという意味不明すぎる展開がポイント。お前ら、ふだん着ないじゃないかよ! というツッコミが空しく宙を切る。井上喜久子お姉ちゃんの制服コスプレは声だけでも熟れ熟れですな。ママ教師の誰かに個人的関心寄せるようになったら物語的な破綻をきたすような気がするんでしかたないといえばしかたないですが、意味不明なチトセのヤクザレぶりは感情移入を妨げるな―― 過剰なサービスてんこもりぶりは多分に評価に値します。
【ANIME】 ダイバージェンス・イヴ 第1話「Mission2」 (→公式)
うーん、わからん。EDだけが頭に残る…… あの、投稿誌でしかお目にかかれないようなエロ水着はなんなのだろうか…… ■
03/07/10(THU)
【単行本・小説】 A・E・コッパード(訳:西崎憲)「郵便局と蛇」 国書刊行会 [bk1][amazon]
ケース付きのハードカバーを久しぶりに買いました。この本についても作者についてもほとんど知識はないのですが、翻訳作品集成(A・E・コッパード)を見るに、これが唯一の邦訳短編集で、「郵便局と蛇」巻末書誌によれば、日本版独自の編集みたいです。「銀色のサーカス」、「郵便局と蛇」、「うすのろサイモン」、「若く美しい柳」、「辛子の野原」、「ポリー・モーガン」、「王女と太鼓」、「幼子は迷いけり」、「シオンへの行進」の9篇を収録。
なんとも形容がしがたく、説明もむつかしい。心に奇妙な余韻を残すものの、それが何を意味してるのか結局判然としないという不思議な作品集であります。とくにキリスト教にかかわった作品はどう解釈していいものやらわかりません。この本ラストに控える、男と修道士と女マリアの奇妙な道行きを描いた「シオンへの行進」なんか、さっぱりわからない。なんなのでしょう、これは……
ひょんなことから虎の皮を被ってライオンと闘うはめになった中年男が檻の中で見たものを描いた「銀色のサーカス」、街道に立った1本の柳とその近くに建てられた電柱の交流を描いた「若く美しい柳」、薪拾いに森に入った中年女たちが芥子菜の野原を会話しながら歩くだけの話「辛子の野原」、トムとエヴァの夫婦とその一粒種デヴィッドのやるせない物語「幼子は迷いけり」、このあたりが比較的わかりやすいお話でしょうか。いわゆる日常譚に分類される物語であります。とはいうものの、「銀色のサーカス」においてわざわざサーカス団団長がそんな申し出をした理由は不明ですし、ほかの作品にも奇妙な点はそれぞれ残されたまま。それが静かな物語の中に不可思議な戦慄をつけ加えているような気がします。
超自然的な要素が加わる幻想譚についてはさらになんともいえない可笑しみがくわわって、ひょっとしたらこれがコッパード独自の味なのかも。これはいったいなんだったのか……!? と聞き返したくなるような奇怪な展開ばかりです。郵便局に立ち寄った男が、山の頂上にある沼には近づくなと局員に警告されて、でも結局行ってしまってありえないものと遭遇する「郵便局と蛇」、いきなりの主役交代や、おいおい、このエレヴェーターは何? という「うすのろサイモン」、太鼓……太鼓ですかッ! という「王女と太鼓」、どれもヘンテコで、静かで美しいゴースト・ストーリー「ポリー・モーガン」以外はかなりとんでもないお話ばかり。
寂寥とした荒野をとぼとぼ歩いていて、ときおりきれいな花が咲いていたり、ぎょっとするような奇怪なことが目の前で起こったりするんだけど、「ほお」と呟いて、またひとり歩きつづける感じ、といってしまっていいのだろうか。やはりこの人の作品の魅力を言語化するのはむつかしい。これといってメッセージ性もないし、二転三転するドラマがあるわけでもなく、ただ、なんか起きるだけのお話だし、何も起きない場合もあるんだけど、それがなんとも心に残ります。
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