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magazine さくいん(更新停止中)

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倉阪鬼一郎「無言劇」
飛鳥部勝則「ラミア虐殺」
柄刀一「シクラメンと、見えない密室」
小川勝己「撓田村事件 iの遠近法的倒錯」
マリー・ネフェカルテ(訳:的山鷸子)「カレーの歌」
novel さくいん

etc.

ヤミと帽子と本の旅人 第5話「クィル」
プラネテス 第5話「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」
藍より青し〜縁〜 第4話「怪〜あやかし〜」
【EVENT】 京都SFフェスティバル2003


 2003/11
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03/11/02(SUN)

■book【単行本・小説】 倉阪鬼一郎「無言劇」 創元クライム・クラブ [bk1][amazon]

倉阪鬼一郎「無言劇」  さすが、不毛な小説を書かせたら倉阪鬼一郎はすごい。笑ってしまいます。

 雀荘、将棋道場、囲碁倶楽部、ボードゲームの集積所ともいえる胡蝶ビルに激震が走る。あいついで行方がわからなくなったギャル雀メンバーが死体となって発見されたのだ。中堅ミステリ作家として暇な毎日を送る黒杉鋭一郎は牌や駒や石を握りながら、「これをネタに生かせないかなあ」、「事件を解決して便乗ブレイクできないものかなあ」、「それにしても俺は将棋上達しないね」、「麻雀大会で優勝したいなあ」、などと考えるのだった。

 作品の構造としては「内宇宙への旅」(→感想)+「四重奏」(→感想)という感じ。強引にもほどがある騙りの技、そしてとほほ感たっぷりの真相が渾然一体となった物語を、倉阪鬼一郎自身の分身であることは明白な主人公が横目で眺める、という趣向。とにかく全編を漂うこの不毛感はただごとではない。望んでる人間はたいへん少なそうなんですが、そんな物語を嬉々として組み立ててしまうのはさすが。カイヨワ「遊びと人間」の中で語られるゲームの定義をミステリに置き換えて考えてみるなど、一風変わったミステリ講義がはじまって期待していると、中途半端にあっさり終わってしまうあたりなど、なんともいいがたい味わいがあります。素晴らしくしょうがないですね。

 作者の用意した世にも馬鹿馬鹿しい仕掛けの中で、作者の分身である名探偵役が悪手をさしつづける物語。歯車の噛み合わなさ加減を楽しむ小説でしょうか。しかし、小説の中で「ギャル雀」なる単語を目にすると動揺します(w

○【ANIME】 ヤミと帽子と本の旅人 第5話「クィル」 (→公式

「うえあぁぁぁ! 生茹でのブロッコリーは固くて喰えんといつもいつもいつもいつも言っとろうがあぁぁぁ!!」 とブチ切れるガルガンチュア様。飛び交う皿、響き渡るバイオリンの旋律! しかしセイレンさん登場によりガルガンチュア様の機嫌はいきなり直り、奇抜なポージングで自己主張。下っ端三匹はたいへんであります。生茹でブロッコリー齧るセイレンさん口元アップがエロ〜い、というか、今までの展開は何だったのか。
 どうやら今回は原始世界に飛んだらしいリリスちゃん葉月さんムチムチ黄色饅頭。毛皮着た原住民たちに囲まれていきなり抜き身で切りかかる葉月さんは結構アレである。 「何でもやってみるもんでしょー」 お色気攻撃によりハジメ人間たちはリリス嬢の下に平伏す。と思ったら、目玉帽が原始の神に酷似していた所為。人語を解する乳でか原始娘クィルさん@山本麻里安が出てきて、 「私の名はクィルと申します!」(Repeat) 乳揺らしながら自己の存在をアピール。神として崇められたリリスたんはテーブルマジックを駆使してさらに人心を掌握してみる。柔肌マッサージさせまくる。ただまあ、生贄だのなんだのはさすがにいらんYO! 丁重にお断りしたら目玉獣出現してバトル! バトル! ズバッと斬ったらクィルさんぺたぺたしだして、嫉妬にかられたリリスたんは 「葉月〜 食べて〜♥」 またしてもハズレなり。しかし、このBGMギャグはたまりません……

03/11/03(MON)

○【ANIME】 プラネテス 第5話「フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン」 (→公式

 →第5話あらすじ
 休暇つかって月世界旅行に出かけたらなんか、いろいろあった! というお話。宇宙ネタ使った「人間交差点」とか、そんな雰囲気であります。気軽に月に行く時代だというのに撮影機材レベルはあんまし変わってませんな。原始的〜 しかしまあ、この監督は天晴れだとは思います。オハリ。

03/11/04(TUE)

■book【単行本・小説】 飛鳥部勝則「ラミア虐殺」 カッパ・ノベルス [bk1][amazon]

飛鳥部勝則「ラミア虐殺」  はははははは! 面白かったけれど、帯にあるような「背徳の本格インモラル・パズラー」かというと、どうかな――?

 ちょっと頭のネジがゆるんだような娘の身辺警護依頼を受けた探偵・杉崎は彼女とともに年末年始を雪の山荘ですごす羽目になった。彼女の親族をはじめとする山荘のメンバーはどいつもこいつも性格破綻者だらけ。到着早々、遭遇した首吊り死体を皮切りに、惨劇の幕が開かれた! 生き残るのは誰だ! みたいな。

 序章で語られているように、テーマは「怪物」で、で、そんなふうにしちゃうんだ! と吃驚。まあ、なんと申しましょうか…… ミステリ部分とそれ以外の部分、ともに強度としては弱く、薄っぺらいものの、その薄さが愉快な印象を与えてる気もするので、なんともいいがたい。あっさりとした文章表現そのものがミスリードとして機能している気もするし。

 この人のはほかのも読もうかな。たぶんこの作品は変化球なんだとは思うけど。会田誠の表紙イラストでちょっと驚いた「砂漠の薔薇」を候補として挙げておきます。

○【ANIME】 藍より青し〜縁〜 第4話「怪〜あやかし〜」 (→公式

 桜庭屋敷は幽霊屋敷! 屋根裏部屋には何が潜む? みたいなお話。雇ってるだけで大赤字っぽいドジっ娘メイド(何年働いてるのか)妙子ちんメインエピソード。葵たんの影がやたら薄いんで驚く。それにしてもどこまで広大なんだ、桜庭屋敷は! こんな役立たずメイドひとりで維持できるはずもありませぬ。今シリーズの繭さんは「ワるきゅーレ」におけるライネさん的ポジションなのですね…… と思ったら次回は彼女メインだった。

03/11/05(WED)

■book【単行本・小説】 柄刀一「シクラメンと、見えない密室」 ジョイ・ノベルス [bk1][amazon]

柄刀一「シクラメンと、見えない密室」  扉を開けるとオジギソウが挨拶をしてくれる、花に彩られた喫茶店「美奈子」。美しくもミステリアスな店主ママの名前は美奈、可愛らしい娘の名前は奈子、このふたりが悩める客たちが持ち込む不可解な謎を鮮やかに解明する、という趣向の連作短編集。

 だめだ、どうにも笑ってしまいます。この人の小説は真剣に読めません。不可能犯罪つるべ打ちな作品なら大丈夫なんですが、珍妙なロマンチック表現が頻出するとかなりキツいですね。
 ハシバミの神通力で死んだ女の謎、目には見えない密室の謎、雪の足跡の謎、同時に4ヶ所に存在した男の謎、提示される謎はどれもなかなか魅力的で悪くはないのですけれど、言葉の選び方など、腑に落ちない表現が目に余ります。どこまで真剣に書いてるのか、判断に苦しむ表現も多い。はっきりいってしまえば、「センスのない悪文」なのではないかと。それでいて、とくに文章に魅力があるわけでもないあたりが困りものです。

「遠隔殺人とハシバミの葉」における、ハシバミの枝で呪いをかけたら窓の向こうに見えるストーカー女が苦しみはじめたという怪現象に対する説明にはちょっと感心しました。(わざわざ呪文を唱えさせなくてもそのまま真相だけ教えてあげればそれ以降の悲劇は起こらなかったのでは? とちょっとだけ思いますが……)トリックメイカーとしての才はあると思います。本格作家としての心意気も感じますが、やっぱりどうにも苦手。この人の作品と芦辺拓の作品は似た理由で手を出しづらいですね。

 連作全体を通しての趣向も用意されてますが、とってつけただけ、という印象です。

03/11/07(FRI)

■book【単行本・小説】 小川勝己「撓田村事件 iの遠近法的倒錯」 新潮ミステリー倶楽部 [bk1][amazon]

小川勝己「撓田村事件 iの遠近法的倒錯」  今ごろ読みましたが、これはなかなかの傑作。素晴らしい!

 岡山県の過疎集落、かつて撓田村(しおなだむら)と呼ばれていた地域で東京からやってきた転校生の惨殺死体が発見される。両足を切断され、樹の上にくくりつけられ、額と両腕に奇怪な落書きを施されたその姿は生前クラスの人気者だったとは思えない無残なものだった。それを皮切りに次々と新たな死体が発見される。犠牲者たちの下半身は断ち切られ、まるで撓田村の伝承をなぞらえているかのようだった――。

 いうなれば、厨房性春日記と横溝正史パスティーシュの二重奏ミステリ。閉鎖的な地所を牛耳る旧家を巡る、いかにもな連続猟奇殺人事件の視点人物が、自意識過剰で脆弱な現代っ子中学生だったり(しかも旧家との縁はなし)、横溝正史的なものと身も蓋もない即物的なものという、相反するふたつの要素が物語の中で独立して存在することが奇妙な感覚を生み出しています。「iの遠近法的倒錯」(真の意味はラストに判明します)とはよくいったものであります。遠近法が狂ってる騙し絵みたいなものです。
 横溝を現代に甦らせるという同様の試みをした作品として、殊能将之「美濃牛」が挙げられますが、あちらが細かいサンプル切り貼りで構築された作品だとすれば、こちらはターンテーブル使ったミックスという感じ。こちらのほうが読んでてなんとなく腑に落ちるのは物語の流れから作者の意図が見えやすいからだと思います。

 読んでも読んでもしばらく何も起こりませんが、股間カチコチ中学生日記みたいな事件以前のパートもなかなか読み応えがあって面白いです。この小川勝己という人は鬼畜クライム作家として認識されてたりしそうですが、多分あれはひきこもりとかの反動が噴出してああなってるだけで、本質はおたく童貞小説家なんではないでしょうか。(注:「童貞小説を書く作家」で、「童貞の小説家」ではない) 探偵役の人物造形はとても楽しくて、小川勝己らしいな、と思いますね。再登場させてみてもいいと思います。「月も消えゆく夏休み」も出してくれ――

03/11/10(MON)

○【EVENT】 京都SFフェスティバル2003 (→公式

 今年は本会の1限目から出た! 若島正×大森望のスタージョン訳者対談。「スタージョンは変人で書いてるものもよくわかんなくて困る。しかたないから、わかんないまま訳す」 小川一水×野尻抱介「宇宙開発を小説にするということ」。「ええっ! 野尻さん、小説書くの嫌いなんですか! 仕事の小説に飽きたら趣味の小説書く僕には信じられないなあ。今後の予定はあれとこれとこれとあれと……」 (若者を見て眩しそうに目を細めながら)「私は小説書くの苦痛で、苦痛で…… 取材ばっかりしてたいです。延び延びのJコレ新作をとりあえず頑張ります。頑張る、予定」 「おしっこ」  冲方丁インタビュー「武器と少女」。「ネパールで、日本文化に飢えていた。登山者は全巻揃えて持ってこい!」 (しかし、冲方丁はカッコよくて吃驚した。萌えた) さっそく入浴。今年はリラクゼーションを心がけつつ合宿企画を満喫することに決めたのだ。オープニング。乾杯のビールですぐさま尿意を催し、終了後トイレに駆け込む。去年も今年もいつももだ! 先天的に膀胱が小さいのだろうか? 頻尿である。1コマ目。行くところがなかったので、寝る。そして起きる。また風呂に入る。湯気の向こうに誰ぞいる、と思ったら小川一水さんだったよ! 出る。三村美衣さんの原稿締め切りが近いとかで今年のライトノベル10選のネタ出しなどをお手伝いしているうちに、冲方×東×大森×倉阪という豪華メンツによる麻雀対決がはじまるとのこと。ぜひとも観戦したかったけれど、ギャラリー自分ひとりになりそうで、照れくさくて行けず。さまよい歩いた挙句、ジェンダーSF研究会のお茶会最後のほうに参加したら、「女子のSF花(?)道」みたいになってた。この企画はその後も大広間で続き、ワイン奉行古沢さんの燃料投入により異常にテンションが高まる。しかし、皆さん、幼少時から本読みまくってるよな――とその濃さにひたすら感心する。岩崎書店やらの児童書SFの内容、よく憶えているものだ。初対面だった実駒さんのハイパーテンションぶりにも圧倒されたが、彼女とタメはる女性がArteさんだということを途中で知ってさらに驚く。名札に本名書かれるとわからんのだった。しかし、今年の京フェスは酒だらけじゃないか? もうべろべろでありました。3コマ目。東浩紀vs.堺三保、というよりは東浩紀+堺三保に外部からツッコミ。しかし、イリヤからガンスリまできちんとチェック入れた上で鋭いツッコミを瞬時に入れてくるSFのえらい人は計り知れないな――ひたすら感心した。しかし、生で討論する東氏を目にするのははじめてだが、頭の回転が早い人だな――とこちらも感心。しかし、そのスペックに頼って全体俯瞰せぬまま話してそうな部分もあって(あちらもこちらも酔っ払いなので話半分だとは思うけど)、いわゆる「きみとぼく」戦争ものについて、「イリヤは戦意高揚小説。上遠野浩平ナイトウォッチシリーズでの抽象化とくらべると描き方がボーダーラインを踏み越えてしまってる」 「じゃ、ほしのこえはどうなの?」 「ぎゃふん!」 みたいなくだりがあったような。この異様な盛り上がりはその後SF雑誌の部屋に移動して続き、東氏がファウスト編集長の携帯にかけたりしていた。編集者にプライベートは存在しないのだな、と思った。(この時点で夜中2時過ぎ) 人間彼女…… そういえば、東京創元社の小浜さんが「佐藤友哉は天才だ!」とくりかえし口にしていて、今度ミステリーズにちょろっと呼んであげればいいのに、と思った。いつまでたっても終わらないので3時になったら寝た。終了後、からふね屋でモーニング。早めにオーダーしたから早めに来た。あいにくの雨だし、紅葉もまだだし、ということで、カレル・ゼマン「レトロスペクティブ」の中の1作品、「盗まれた飛行船」を観にいく。スケジュールの都合で観られなかったものがちょうど京都に来ていたのだった。たいへんとりとめがなく次の展開がまったく読めない冒険映画だった。面白かった。その後、錦通りの市場でお土産買って、実家へと帰省。そういや、タカアキラさん企画のヴァーチャル読書会に参加しなかったのは悪かったな、とちょっと後悔。でも酒と眠気でへろへろだったから、きっとそんなに面白いこといえなかっただろーなーと思います。

■book【単行本・小説】 マリー・ネフェカルテ(訳:的山鷸子)「カレーの歌」 ゴアマガジン [bk1][amazon]

マリー・ネフェカルテ(訳:的山鷸子)「カレーの歌」  これはなかなか素晴らしいです。「カレーの歌」、「閻魔庁」、「象虎さんと縁日」、「パナウル金環蝕」、「ドーナッツ少姐。」ほか全8篇を収録したデビュー短編集。

 表題作「カレーの歌」、「閻魔庁」、「クリケット忍法合戦」あたりがえかった。なかでも究極のスパイスを求めて村を出た少年の「はじめてのおつかい」話がどんどんとんでもなくなっていく表題作にはかなり驚愕しました。スパイス探求のためインド中を放浪する少年の精神の高揚がそのまま世界そのものに干渉していくあたりのくだりは読んでいて頭がくらくら。おい、そこで女神カーリー降臨かYO! みたいな。ただまあ、「ヴィジャイ・アーケードにふたたび足を踏み入れた僕の足元でアスファルトがぐにゃりと歪んだ。鼻の奥からそのずっと先のほうまでクミンとメースの入り混じった甘く芳しい匂いが駆け上がっていき、安定のカルダモンはどこかに消えた。縁取られたように世界の輪郭は白く輝きはじめ、やがてゆっくりと回転しはじめた。以前のように頭に思い描くだけでは、あの回廊は越えられない」 みたいにスパイスを鍵として非日常へ移行しているんで、インドの香辛料になじみのない日本人にはぴんとこない部分もあるかも。そこがちょっと残念。カレー+ドラッグ・パンク+ロード・ノヴェル(ただし神様ダンス付き)みたいな物語でした。
 植民地時代のインドを舞台に、悪代官と化して容赦なく年貢を取り立てるイギリス軍大尉が地獄に突き落とされる「閻魔庁」は、(なぜか)歌と踊りで進行するあたりがとてもおかしい。どちらかといえば鬼畜拷問ホラー小説なのに。中盤から唐突に閻魔視点の中間管理職苦労話になってしまうのも衝撃的。いったい、どうしたものかと…… あまりにもアホらしすぎる「クリケット忍法合戦」は、えーと。どこまで狙ってやってるのか、判断がむつかしいところであります。

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