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novel

トム・フランクリン(訳:伏見威蕃)「密猟者たち」
ジェイムズ・エルロイ(訳:小林宏明)「自殺の丘」
ジェイムズ・エルロイ(訳:小林宏明)「キラー・オン・ザ・ロード」
クリスチアナ・ブランド(訳:恩地三保子)「ジェゼベルの死」
パーシヴァル・ワイルド(訳:巴妙子)「探偵術教えます」
有川浩「塩の街――wish on my precious」
柴村仁「我が家のお稲荷さま。」
沖田雅「先輩とぼく」
パーシヴァル・ワイルド(訳:巴妙子)「悪党どものお楽しみ」
ファウスト vol.02
novel さくいん

etc.

必殺仕置人 vol.02 収録:第4話「人間のクズやお払い」第5話「仏の首にナワかけろ」第6話「塀に書かれた恨み文字」
超重神グラヴィオンツヴァイ 第4話「波の底より」
光と水のダフネ 第3話「ネレイスほど素敵な商売はない?」
巷説百物語 第4話「舞首」
巷説百物語 第5話「塩の長司」
MEZZO −メゾ− 第4話「嘘の殻 EPISODE NEGA」
R.O.D. - THE TV - 第12話「紙々の黄昏」
超重神グラヴィオンツヴァイ 第5話「夢見る孤島」


 2004/02
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04/02/02(MON)

○【時代劇】 必殺仕置人 vol.02 収録:第4話「人間のクズやお払い」第5話「仏の首にナワかけろ」第6話「塀に書かれた恨み文字」 [amazon]

必殺仕置人 vol.02 収録:第4話「人間のクズやお払い」第5話「仏の首にナワかけろ」第6話「塀に書かれた恨み文字」  未見だった初期仕置人を観てみた。vol.02は、に・ほ・へ(サブタイトル頭文字が第1話から順に「い・ろ・は・に・ほ・へ……」になってて、サブタイから第何話かわかるので便利)。若き黒沢年男が無法の新興ヤクザを演ずる第4話、首吊りロシアンルーレットが印象に残る第5話が素晴らしかったです。

 第4話「人間のクズやお払い」は「力こそ正義」とうそぶき、親分衆の会合に乗り込んでだまし討ちで皆殺しにするなどしてのし上がる狂犬ヤクザ・聖天の政五郎 vs. 仕置人。かつては政五郎の右腕で、足抜けの際に利き腕を奪われた博打打ち・弥七を演ずる林隆三もやたらカッコよかった。マンネリ化した後期作品とは異なり、ただ殺して終い、ではないのもよい。僧侶に化けた鉄が政五郎の右腕を破壊、力という後ろ盾をなくした政五郎が手下に嬲り殺されるさまを遠くから見物するという因果応報の構図が素晴らしくハードでぞくぞくします。監督は三隅研次。

 第5話「仏の首にナワかけろ」は善良な小市民を装い大家夫婦を謀殺、娘まで手篭めにする(まさに軒先を貸して母屋を取られる状態)芋屋・安蔵の底知れぬ不気味さ、倒叙型サスペンスにも似た緊迫した展開、首吊り阿弥陀による妙にウエスタンっぽい決着(まあ、仕置人は時代劇ウェスタンなんだと思いますが)が印象に残る名作。鉄の佐渡時代の命の恩人でもある安蔵を演ずる山田吾一の邪悪な笑顔がとてもよいです。安蔵に濡れ衣着せられたうえ、いいように操られ、あげくとばっちりでえらい目にあった黒達磨の親分@遠藤辰雄は災難でした……

 第6話「塀に書かれた恨み文字」は辻斬りの真犯人である大名@中尾彬の罪状を暴き立て、関係者を切腹へと追い込むことに成功したのち、「奴らに侍らしい最期なんか迎えさせねえ」とわざわざ仕置に向かうあたりが凄まじいです。

○【ANIME】 超重神グラヴィオンツヴァイ 第4話「波の底より」 (→公式

 グランナイツの諸君は全員好き放題やってますね…… 地熱発電基地調査に潜ったG-シャドウが消息を絶った。探索に向かうグランナイツの残りが海底で目にしたものは、基地と同化して成長を続けるゼラバイアの姿だった! トーガ、リィルの成長が描かれたエピソードなんですが、まあ、普通でしょうか。そんな危ない基地の中、生身で探索に向かう世間知らずおふたりさんはいかがなものか。緊張感足りないなあ。バンク使用のせいか、海底で戦ってる気がほとんどしなかったのもなかなかむつかしいものですね。オミソの娘さんたちは爆乳を揺らしたり、股間を見せたりして必死でアピールしてました。あと、サンドマン分が足りません。

○【ANIME】 光と水のダフネ 第3話「ネレイスほど素敵な商売はない?」 (→公式

 こ れ は ひ ど い しかし、面白い気もする。ふしぎふしぎ。バイクでひったくられた娘の結婚費用取り返してくれという依頼なんですが、もうちょっと穏やかな手段はとれないものか…… たかがひとり身柄確保するだけのために地下カジノで銃撃戦はじめたり、たまんねえ! いくらなんでも頭悪すぎでしょう。眼鏡っ娘、じつは元ヤンキーというパターンで「ごくせん」みたいなことやってる話でしたね。しかし、やっぱり前貼りアクションは卑怯だと思う今日この頃。次回、「チャカチャカバンバン」、お楽しみに! スゴいセンスに殺される――

04/02/03(TUE)

■book【単行本・小説】 トム・フランクリン(訳:伏見威蕃)「密猟者たち」 創元コンテンポラリ [bk1][amazon]

トム・フランクリン(訳:伏見威蕃)「密猟者たち」  うーん、かっこいい。しみじみと素晴らしい。鬱蒼と茂り、その中に闇を内包した森+工場な南部ゴシック短編集。少年時代を回想した序文を幕開けに、アメリカ探偵作家クラブ(NWA)最優秀短編賞に輝いた「密猟者たち」ふくむ10作品を収録したデビュー短編集。本当に傑作ぞろいなんですが、個人的な琴線に触れたのは「序 ハンティング・シーズン」、そして表題作「密猟者たち」、「グリット」、「デュアン・フアレスのバラード」、「ダイノソア」。

 森でのサバイバル技術だけを父親から叩き込まれ、読み書きもできずほとんど人間のなりをした野生動物のように育った無法の(概念的に欠落してるのだが)密猟者兄弟をほとんど殺し屋みたいな伝説の狩猟監視官が追いつめていくサスペンス中篇「密猟者たち」は大傑作。最近「必殺仕置人」観てる気分にシンクロしています。内面も描写されなければ、ほとんど喋りもしないゲイツ兄弟と、彼らに愛弟子の監視官を殺され、仇討ちにやってきているらしいフランク・ディヴィッド、ともにどこか人間を超越してしまった存在として描かれているのがよいです。血生臭くも美しい。借金を種に違法な夜間操業を強いられる工場長の苦境を描いた「グリット」は、物語密度としては比較的さっぱりしているものの、どんどん深みにはまっていく中年男の苦悩がみごとに表現されていてよいです。地質環境調査官と老ガソリン・スタンド主人の会話中心に進行する「ダイノソア」は、トピックの組み合わせセンスが見事。「デュアン・フアレスのバラード」にみえるわかりやすくストレートな狂気の描かれ方も好きですね。

 読みたい本は山のようにたまってるんですが、この本についてはもう1巡読んでみようかな。

○【ANIME】 巷説百物語 第4話「舞首」 (→公式

 →あらすじ
 やはり百介たんは頭おかしいとしか思えないのですが…… 「なんだかんだ言ったって、人殺しじゃないか!」 と罵ってた又市一味といっしょににこにこお団子食って、お吉@島本須美が出てきたらでれでれ鼻の下伸ばして家に転がりこんだ。島本須美(性欲)>怪談話>人としてのモラル が確定。美袋くんレベルの虐待ワトソンっぷりですが、それでこんなに思春期少年みたいでいるとは、どこか精神に欠落がみられるはずだ! またも原作とぜんぜんちがう話になっていて、いろんな相手に犯されまくる島本須美の首が布団の上で舞ってる、みたいなお話になってました。誰が誰の首をはねたか? な首切りミステリが近親相姦サイコサスペンスになっておりました。でも、おもろいだす。最近一粒で二度楽しめるのかな、とか思えてきた。せっかくなんで、もっとお吉さんがエロいほうがよかったかも。

○【ANIME】 巷説百物語 第5話「塩の長司」 (→公式

 →あらすじ
 またも、こんな話だっけ……!? 行き倒れ、馬飼い長者の屋敷で開放された百介。獣肉喰いにとり憑かれたかのようなその家の主人は12年前盗賊に襲われてから人間が変わってしまったらしい。ミステリ的な真相提示に趣きをおいた小説版から現代にも通用するインモラル描写でショック与えるようアレンジを変えてみたようですね。馬の生肉食べてるうちに妖怪化したみたいで、熊本方面から苦情が出そうなんで変更したのかも。いろいろあるなあ。色設定も背景美術もなんかすごくて、異形世界、って感じでした。しかし、こんだけ酷い事の片棒担いでるのに百介のこの屈託のなさはなんなんだ。泡吹いて死んでる人間がいるのに「わはははは ゆかい ゆかい」で終わってる。お銀さんのサービスシーンがないから新キャラ投入なのか! と思ったら錯覚でした。

○【ANIME】 MEZZO −メゾ− 第4話「嘘の殻 EPISODE NEGA」 (→公式

 なんともはや、また微妙な…… 先週と同じ時系列でこんどは海空来視点。かつての仲間だった桜に再会した海空来さんでしたが、桜さんはどうやら海空来さんの命狙ってるらしい!? という展開。先週のゲンコツ女が桜さんなんですね。2つの流れが一瞬だけ交錯していた、という構造なんですが、ただそれだけのような。感心するところはとくにありません。しかし、これはいつの時代だ。人間と見分けつかないエロロイドが開発されてるわりにはディスコ描写(クラブに非ず)があんまりにもあんまり。野良猫ロック! という感じだしなあ。萎え萎え私服センスのふたりが殺し合いしておりました。OVA版(→感想)の敵役だったサイコ女桃実と海空来さんが……というのはシナリオに盛り込めなかった設定なのかもしれませんね。精神観応してるような描写もOVA版にはあったし。

04/02/04(WED)

■book【単行本・小説】 ジェイムズ・エルロイ(訳:小林宏明)「自殺の丘」 扶桑社ミステリー [bk1][amazon]

ジェイムズ・エルロイ(訳:小林宏明)「自殺の丘」  これだけ旧装丁なのが気になる。買いなおそうかしらん。ロイド・ホプキンズ3部作完結編、なんですが、じつはホプキンズがなかなか出てこないというストーリー展開で、物語の中心はむしろ銀行強盗を企てる自動車窃盗犯ライスだったり、その相方ガルシア兄弟だったり。

 結局、天才的捜査官のメンタリティがじつは犯罪者のとほぼコンパチ、立場上善と悪とにわかれているものの、過去体験も血を分けた兄弟並みに共通している、というのをやりたかったシリーズなわけで、それは「血まみれの月」(→感想)ラストの展開やら、「ホプキンズの夜」(→感想)の天才精神分析医ハヴィランドの思考パターンがホプキンズのそれに酷似しているあたりに顕著にあらわれてます。ロックスターにしようと稼ぎのすべてを注ぎ込んでいた女に逃げられたライスが、自分をハメ、女をそそのかした男に対する復讐と再浮上のために銀行強盗を企てる今回のお話についても、別居中の妻や娘たちに対してほとんどストーカーの隣りみたいなことをしているホプキンズと似たようなものだな、というのがありますね。違法捜査っぷりにも磨きがかかってます。 「いつものように押し込みをやる連中の気持ちがわかった。犯罪とはなんとスリルがあることか」 ガルシア兄弟とホプキンズにもとある共通項が存在するのですが、ならば「血まみれの月」以来ご無沙汰なホプキンズ兄にも登場願えればよかったかも。ジョーズのテーマを口ずさみながら標的に迫るボビー・ブーガル・ガルシアの変態性はなかなかよかったです。

 でもまあ、当初の予想よりはあっさりした読後感。ライスが比較的普通人だったからかも。

04/02/05(THU)

○【ANIME】 R.O.D. - THE TV - 第12話「紙々の黄昏」 (→公式) [amazon vol.01 / vol.02 / vol.03 / vol.04]

 香港からの三姉妹呼び寄せ真相が明らかに! 第10話での展開受けてすぐこれってのはやはりやらしいことはやらしいんですが、一介の編集者のサポート領域は明らかに超越してるだろってこと考慮すれば導き出せないことはない。でもやはりやらしい。(嫌いだといってるわけじゃないですよ) 雇われだってこと強調してたり、それなりの気遣いを見せてるような素振りがあったり、微妙なポジションにいる人なんでしょうなあ。ひさびさの三姉妹会議が効果的に使われてました。いろんな体液たれながして悶えるねねね先生は絶妙にエロい。ところで、読仙社のセキュリティシステムはどうなってるんだ、と思われました。あのロボはなんなんだ!? 正面から堂々と乗り込みすぎですよ! 傀儡とか使え! 作画的なキレはちょっと足りない気もしますが、やはり大盛り上がり大会。最強の敵登場で次回に引き――

04/02/06(FRI)

■book【単行本・小説】 ジェイムズ・エルロイ(訳:小林宏明)「キラー・オン・ザ・ロード」 扶桑社ミステリー [bk1][amazon]

ジェイムズ・エルロイ(訳:小林宏明)「キラー・オン・ザ・ロード」  めちゃめちゃ面白い! しかしながらロイド・ホプキンズ3部作で描いたことの集大成的内容がこんどは連続殺人犯の手記として表現されているわけで、視点こそ逆転しているものの、続けて読むと意外性はさほど感じられないかも。

 特筆すべきは殺人鬼プランケットの少年時代における心象描写。アメコミの悪役、シュラウド・シフターとそのガールフレンドが登場する空想映画のくだりでしょうか。孤独な少年のガイド役として、また起きて見る悪夢として登場する彼らがプランケットを暗黒に誘っていくあたりは迫真の筆致であります。成長し、必要とする上位存在が現実にいる人間に変わってからはむしろ普通になっていきましたね。中盤以降の展開はかなり驚きで、胸が高鳴り、サイコー! とか思ったんですが、終わってみると(エルロイ的には)けっこう普通だったような。幕切れをああするのならば、FBI監察官のパートの分量はもうちょっと多めにしておいたほうが効果的だった気もします。

04/02/07(SAT)

■book【単行本・小説】 クリスチアナ・ブランド(訳:恩地三保子)「ジェゼベルの死」 ハヤカワ文庫 [bk1][amazon]

クリスチアナ・ブランド(訳:恩地三保子)「ジェゼベルの死」  恋人の浮気に出くわした青年将校が発作的に自殺して7年。彼の死にかかわる3人に脅迫状が届いた。ひとりは彼の恋人、ひとりは浮気相手、最後は彼を現場に導いた女。アトラクション劇の最中、その女、悪評高きジェゼベルがセットの塔から落ちた。首には締められた跡があり、どうやら絞殺されたうえで突き落とされたらしい。しかし、塔の周囲では鎧衣装の騎士たちが馬上で演技中。舞台は一種の密室であった。

 これはすごい。仮説が構築されてはすぐに崩されて、というパズラーの醍醐味全開です。田舎者のベテラン警部(レギュラーキャラのコックリル)vs.都会の新米警部の推理合戦や、思わず笑ってしまうような趣向が用意されていたり(しかもその趣向自体が引っかけとして機能している)、とにかく楽しめます。思うのですが、論理をひねくりまわした最後明らかになる真相がわかりやすくインパクト強烈というのは名作の条件なんじゃないでしょうか。ネタバレしやすいところがよい。読者に感情移入させないような登場人物ばかりなのも正解。本格ミステリのお手本です。

04/02/08(SUN)

■book【単行本・小説】 パーシヴァル・ワイルド(訳:巴妙子)「探偵術教えます」 晶文社ミステリ [bk1][amazon]

パーシヴァル・ワイルド(訳:巴妙子)「探偵術教えます」  たのしいたのしい。おバカでよいです。
 通信教育で腕利きの探偵になったと勘違いしているお屋敷お抱え運転手が、事件の渦中にいるという自覚もないままとんでもない暴走をして、なぜかあさっての方向から事件を解決してしまうという短編連作シリーズ。「P・モーランの尾行術」はじめとする全7講を収録。

 ホームズばりの職業推理法を学んだモーランが導き出したとんちんかんな答えが偶然うまくいってドハデな大団円を迎える「P・モーランの推理法」、消失したダイアを探すモーランがバカ正直に古典ミステリを手本にして大惨事な「P・モーランと消えたダイアモンド」、幕切れにふさわしい意外な結末、「P・モーラン、指紋の専門家」がよかったです。

 モーランと通信教育講座の主任警部、ふたりの往復書簡でストーリーが進行していくという趣向をとっているのですが、モーランの手紙から炸裂するピュアな頭の悪さはたいへんすばらしい。センスがないとなかなかこんなふうには書けないと思います。感心しました。
 アホな子に頼んだばかりに依頼人がえらい目にあい、責任を感じた第3の探偵役が登場する「消えたダイアモンド」はストーリー展開としては正しいのですが、シリーズとしてみると変化球。(しかし、モーランにバケツ持たせて廊下に立たせたいお話であります)モーランのみている事件と実際に起こっている事件とのあいだに生じたズレを楽しむところがよいのだと思います。モーランの師にあたる主任警部がセコくてそれほど頭がよくないところもポイントで(意外なカッコよさをみせますが)、霞流一の解説にもあるように、バカ師弟ものの変形として、落語っぽくほのぼのとなごみます。

 無学なモーランがスペルミスをするという設定で、たまに出てくる「指文」ってなんだろう? とずっと考えてたんですが、終わり近くになって「指紋」のことだと判明。それはちょっと無理があるような気が。

■book【単行本・小説】 有川浩「塩の街――wish on my precious」 電撃文庫 [bk1][amazon]

有川浩「塩の街――wish on my precious」  第10回 電撃ゲーム小説大賞大賞受賞作。

 え――! マジ!? 人が結晶化し、世界が塩に飲み込まれんとする世界を舞台に、嗜虐心をくすぐる女子高生とサバイバル生活に強そうなワケあり男がともに暮らしていく、というお話。文章も端正で、昨年の「キーリ」な感じ? と思ったら、ちょっとちがった。こんな、いつ自分が結晶化するかわからない状況で人間が正気を保ってられるはずがないし、秋庭のような発想は当然するのでは。しかし、切な系エピソードだけとりだしたあげくにこのケリのつけかたというのはちょっと微妙な気がします。古くはバラード「結晶世界」とか久美沙織「真珠たち」とか、世界に対するビジョンがもうちょっと必要でしょう。破滅SFなのかと思ったら「リング(注:激ネタバレ)だったり、「怪獣もの」だったりするのはいいのかしらん…… 1冊まるごと使っての壮大なギャグだったらどうしようかと思われました。旧約聖書ネタは当然使うわなあ。

■book【単行本・小説】 柴村仁「我が家のお稲荷さま。」 電撃文庫 [bk1][amazon]

柴村仁「我が家のお稲荷さま。」  第10回 電撃ゲーム小説大賞金賞受賞作。

 妖怪に狙われた三槌家末裔を守るため、先祖が封印した大霊狐を解封してみたら、ミーハーな金髪美女になってしまって、あまり緊迫感がないままマターリと日常をすごしてしまう、というお話。序盤、凝った表現使おうとしてうまくいってない個所もちらほらみかけたけれど、書き慣れるにつれだんだん普通になっていく。しかし、ヤマがないストーリー。いかにも怪しげなキャラが登場したなと思ったら解説役だったのでした。
 

■book【単行本・小説】 沖田雅「先輩とぼく」 電撃文庫 [bk1][amazon]

沖田雅「先輩とぼく」  第10回 電撃ゲーム小説大賞銀賞受賞作。

 容姿端麗、なれどお脳がアレという、ハルヒとかそんな名前でもおかしくない先輩とちびっこいぼくが、「おれがあいつであいつがおれで」、となるお話。ネタバレなので書かないけれど、導入部での掴みが強力なのはよい。先輩が一通り試したなら、自分もしてみればいいじゃない! なかなか面白いな、と思ってたら後半で早くも微妙になってしまう。先行きが危ぶまれるかもしれません。

 

○【ANIME】 超重神グラヴィオンツヴァイ 第5話「夢見る孤島」 (→公式

 遊園地島にゼラバイア反応あり! 満喫してコスプレして(巫女?)巨大化して合神して触手でイヤボーンで、勝った!! 便利便利。そんなんでええのか展開で、文句言う気さえ失せる今日このごろ。こんなのサンドマン様じゃないよ! さあ、寝るか……

04/02/09(MON)

■book【単行本・小説】 パーシヴァル・ワイルド(訳:巴妙子)「悪党どものお楽しみ」 国書刊行会 [bk1][amazon]

パーシヴァル・ワイルド(訳:巴妙子)「悪党どものお楽しみ」  これもたのしい。
 ギャンブルから完全に足を洗い堅実な農夫生活を送っていた若者が、ふとしたきっかけで知り合ったお調子者の男の頼みで、シロウトを食い物にするイカサマ賭博師たちのトリックをつぎつぎと暴いていくという短編連作シリーズ。「シンボル」、「カードの出方」ほか全8篇を収録。

 農夫としての毎日に喜びを感じ、イカサマ師退治には乗り気でない主人公ビル・パームリーをあの手この手で担ぎ出そうとするギャンブル好きのボンボン、トニー・クラグホーンがよいですね。依頼心が強く図々しい、でも憎めないトニーは、森英俊の解説にて言及されているように、のび太。頼みの綱ビルがドラえもんだと考えればわかりやすいかも。トニーのしっかりものの奥さんはしずかちゃんかな。

 ビルとクラグホーン夫妻の出会いを描いた「カードの出方」、どんでん返しと爽やかな読後感「良心の問題」、ビルになりすまして腕利きギャンブラーと対決するはめになったトニーの悪戦苦闘を描く「ビギナーズ・ラック」、水着姿で衆人環視というロケーションで行われるビーチ・ポーカー無敵の男のトリックにいちどは完全敗北したビルが立ち向かうという「火の柱」がよかったです。収録作品の中ではミステリ要素の強い「火の柱」は解決編におけるトリック暴きが印象的。また、上手のイカサマ師に打ちのめされ、ぼろぼろになって生家に戻ったビルが、厳格な父親とポーカーで勝負するという「シンボル」が連作プロローグとしての役割を見事に果たしています。これがあるとないとではえらくちがいますね。

 読者をとにかく楽しませてやろうというネタのバラエティ豊かさと古びることのないユーモア感覚がすばらしい。1927年の発表とはとても思えないセンスのよさが光ります。

04/02/10(TUE)

■book【単行本・雑誌】 ファウスト vol.02 講談社 [bk1]

ファウスト vol.02  →公式ページ
 自画自賛とかヨイショ記事が少なくなってずいぶん普通になりました。講談社が出してる痛い電撃hp。

 ざっと通して読む。なかなか読みやすく600ページ近くもあっというまでしたが、やはりバラエティの幅は狭いですね。ちょっと毛色の変わった作品が乙一だったり舞城担当するトム・ジョーンズ翻訳だったりするのがなかなかむつかしい。滝本竜彦、佐藤友哉、西尾維新についてはまったくいつもの感じでそんなに面白くないんですよね。もともと「ゼロの波」とかそういう単語でひとくくりにできてしまうような作家だけ集めて小説雑誌作るというコンセプト自体に無理があるから……はvol.01読んだときにも感じたことで、もちろん自覚の上で立ち上げたんでしょうけれど、この調子で何回も続けられるのか? という気はやはりしてしまいます。

 乙一(イラスト:小畑健)「F先生のポケット」。屋根にひっかかってた白いひらひらは四次元ポケットで中からひみつ道具が出てきた。牛乳ビン眼鏡のへっぽこ女子がけっこうとんでもないことをした。やっぱり淡々とうまいですね。 「そんなものを今回、挿絵にしなくてはならない小畑健先生も大変だなと思う」 みたいな記述は余分だと思うけれど。 滝本竜彦(D.K)「ECCO」。ナチュラルな魅力にあふれた転校生女子に嫌がらせしようとしたイジメられっ子男子が「あれ?」とか思う。そこまでしてこのプロローグとオチを用意しなくてもいいような気も…… トム・ジョーンズ(訳+イラスト:舞城王太郎)「コールド・スナップ」。おもしろい。しかし、「”ぼくたちの時代の海外文学”はここからはじまる!」 とかいうアオリは、えーと。だって、舞城が好きなだけなのでは。舞城にはバリー・ハナとか訳して欲しい。 清涼院流水(西島大介)「成功学キャラ教授」。「秘密室ボン」のとなり。イラストの使い方はおもしろい。 佐藤友哉(鬼頭莫広)「黒色のポカリスエット」。覇王の過去エピソード。あいかわらず説教したくなる内容。鬼頭莫広に頼まなくていいんじゃないのか? 西尾維新「新本格魔法少女りすか 影あるところに光あれ。」。死ぬと成長して強くなる10歳少女が猟奇的な固定能力者と闘う。流石にもうちょっと捻りがいるでしょう。うえお久光はこういうのやりたいのかな? TAGRO「LIMBO」は黒TAGRO。ファウスト賞に似たような作品ばかり送られてくるというのはまあ、しかたないんじゃないでしょうか。ほかのライトノベルの賞だってきっとそうだと思うしなあ。vol.03が出なかったら受賞作発表の機会ってあるのかな。

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